サブタイトルの使い回しなので初投稿です
お気に入り登録は減ったり元に戻ったり、評価は下がりとありましたが、ここまで来たら魔神任務序章編は書ききってやります
蛍とディルックが風魔蝍龍と退治している中、炎と風の障壁の中で聖司とウェンティ2人の意識はとある場所で揺蕩っていた。
聖司からすれば、この空間に訪れるのは2度目。しかし再び訪れたこの場所であの時みたくあった束縛感などは無くなっており、まるでどこまでも自由になれたような気分を感じている。
少しして、聖司の目の前に風と共にウェンティが姿を現す。いつものにこやかな笑みに、どこか真剣味を含ませたような表情をしながらウェンティは聖司を見つめながら、口を開いた。
「セイジ、良い? 改めて説明するけど、今から肉体にある記憶から聖剣の分離能力を使っていた記憶を、魂の君に移す。でもこの方法は君の魂に負荷が掛かるし、失敗したら君は廃人になる。それに使えたとしても、たった1度きり。それでも君は、あの力を望むかい?」
「ええ、勿論。俺はトワリンを倒したいんじゃない、救うためにこの選択肢を選んだんだ。だから、お願いします」
「敬語はいいよ、気楽に喋って。じゃあ────早速いくよ、心の準備は整っているかい?」
無言の首肯を行い、聖司は同意を示す。それを確認したウェンティは聖司の元へと歩み寄り、両手を彼の頬に添えると、続けて1つ頼み事を言う。
「少ししゃがんでくれるかい?」
「ああ、失礼」
少しだけ膝を曲げてウェンティの背丈に合わせたところで、ウェンティは自身の額を聖司の額に合わせる。
「────行くよ、セイジ」
「お願いします」
そのやり取りを皮切りにウェンティは聖司の魂に干渉を始めた。風が魂の姿である聖司の周囲を回るように流れ始めた途端、彼に激痛が走る。
「ア゙ア゙ッ゙!!?」
「セイジ、耐えて……!」
「ぎ、ぎっ……あ゙が゙っ」
聖司の魂に肉体が持っていた記憶が流れ、しかし魂はそれを拒絶していた。自分では無い自分、本来他人とも呼べる肉体の本当の持ち主の記憶は、彼の精神に絶大な負荷を与えている。これに耐え切れれば望む力は手に入るが、耐え切る前に壊れてしまえば全てが水の泡。
何を思ったか、強く握りしめていた手をゆっくりとウェンティの手首に持っていき、魂が壊れそうな感覚を味わないながら、聖司は1つ謝罪をした。
「ごめん、少しだけ……良い?」
「良いよ」
ウェンティの了承を得た聖司は、彼の手首を掴むとそこから激痛に耐えるために力を入れる。掴まれた手首へかかる握力に、さしもの神も苦痛に顔を歪めた。またもう片方の手首にも同じように力を入れて掴んだことで、ウェンティの魂に更なる痛みが襲ってくる。
だが、その痛みをウェンティは甘んじて受け入れた。痛いことに変わりは無いが、自分自身が壊れるかもしれない恐怖と戦っている聖司に比べれば、なんてことの無い痛みであるから。
「あ゙あ゙が……ゔあ゙……!」
「頑張って、セイジ……!」
2人がそのような事を行っていると、突然聖司の体が青く光り始める。この事態にウェンティは危険を察したが、今ここで終わらせれば求めていた力を得られなくなるかもしれない。この事象に対してどうするべきか思考を巡らせていると、青く光っている彼が、誰かに語りかけるようなうわごとを呟いた。
「はあ゙っ゙、はあ゙っ゙……助け、たいんだ……!」
「セイジ────」
「たの゙む゙! たっだ、1度だげ! 1度だけでい゙イ゙! トヷリン゙を゙! 俺に゙、救ゔだめ゙の、ヂガラ゙を゙くれ゙! 」
そう叫んだ途端、青い光の明るさが増し始める。魂からの願いは、彼の中に眠るある力へと聞き届けられたらしく、青い光は聖司の心臓の辺りに収束された。そして収束された青い光は、すぐに聖司とウェンティを包み込むほど急速に膨張し、空間をその色で支配していくのだった。
場所は戻り、風龍廃墟。今なお蛍とディルックの2人が風魔蝍龍へと対峙し、防戦一方の戦いを強いられていた。百足と風の砲弾、百足を撒き散らしていく突進や叩き付け、濁流の如き百足の放出などなど、台座に降り立っても接近できる隙の無い攻撃によってである。
トワリンに寄生したムカデのメギドは、本来百足の持つ毒の効果の発動時間を速めて使用することが出来る。だからこそ放出され、撒き散らされ、飛ばされた百足への対処で2人は手一杯になっていたのだ。
対する風魔蝍龍は、防戦を強いられているその2人で遊んでいた。メギド形態であっても神の目を持つ者を圧倒できる力を持っている事に加えて、今やかつて四風守護とさえ呼ばれたトワリンを手中に収めている。早い話が、この戦いに負けるとは思っていないのだ。
とはいえ、こうも一方的な状況が長く続けば飽きが来る。実際、内心で風魔蝍龍は退屈していた。甚振ることに飽き始めて、百足と風の砲弾を障壁の中に居るであろう聖司とウェンティに向けて放ってみたが、2重に阻まれた障壁によって妨害され結局届かず。
このまま遊びながらジワジワと嬲り殺しにするのも良いが、変わらない戦況に飽き始めて風魔蝍龍は攻撃を止めて天高く飛翔した。突然の行動変化に何事かと戸惑っていると、風魔蝍龍の身体に風の元素力が集約され始めていく。その様子を見たディルックが、危機感のままに叫んだ。
「不味い! 今すぐここから逃げないと死ぬぞ!」
「2人は!?」
蛍とディルックは障壁に包まれた2人の居る方向を見やる。未だにこの障壁は発生しており、望んでいるものが手に入っていないことを悟るも、風魔蝍龍は風の元素力を増幅させており、すぐにでも逃げなければ落ちて死ぬ未来が待っていた。
ディルックは考える。ここで見捨てるべきか、或いは無理矢理にでも2人を運んで別の台座に移すか。そうして考えている間も風魔蝍龍は力を溜めており、遂にはその百足だらけの肉体に膨大な風の元素力が集約された。
「走れ!」
2人には、この選択肢しか無かった。ディルックが叫んだことで本人と蛍は台座の端に向かって駆け出し、ウェンティが用意した風の種を取りに向かう。
風魔蝍龍は大量の風元素を纏ったまま上空から台座へと突進し、勢いのまま台座を破壊した。間一髪のところでディルックと蛍は風域を作り出し、それに乗って別の台座へと移動することが出来たが、ウェンティと聖司は障壁を展開したまま落下していく。
「セイジ……! ウェンティ……!」
「フハハハハア! 命惜シサニ仲間ヲ見捨テルトハ、存外オ前達モ非情ナノダナァ?!」
突進して台座を破壊した風魔蝍龍が下から現れ、蛍とディルックの目の前に移動しながら言った。その発言に蛍は噛み付く。
「誰のせいで……!」
「オ前達ノ実力不足ノセイダロウ? 救エルモノヲ救エズ、守リタイモノモ守レズ。自ラノ命ヲ天秤ニ賭ケテ、己ヲ優先シタ弱キ者」
「ぐっ……!」
何も言えず歯噛みする蛍は、その手に持つ剣への握力を強め、悔しさを感じていた。それはディルックにとっても同じことであったようで、2人の目には激情が宿っている。しかし風魔蝍龍はそれらを一蹴し、悍ましい嘲笑を掲げて宣告した。
「モウソロソロ良カロウ。人間トノ戯レニ付キ合ウノハモウ終イダ! アノ龍騎士ト神ガ居ナイ今、ココニ留マル意味モ最早無イ! 疾ク、失セヨ! 人間!」
風魔蝍龍が啖呵を切り、百足が滴る鋭利な爪を2人に見せつける。蛍とディルックは構えるが、最早それしか出来ない事実に更に歯を食いしばった。そして風魔蝍龍が2人に向かって突撃しようとした途端、この空間の下側から3回同じ音が聞こえた直後、とある音声が流れた。
「この曲は……!」
「本当に、随分と待たせられた……!」
2人がその曲へと反応してすぐ、下側からブレイブドラゴンに騎乗した聖司とウェンティの姿が現れ、風魔蝍龍の前に立ちはだかる。聖司の持つ火炎剣烈火は、赤熱し赤い光を伴って輝いていた。
「すまん、待たせたな!」
「やっ、2人ともお待たせ!」
「コノ後ニ及ンデ我ガ眼前ニ立ツカ、死ニ損ナイ共!」
風魔蝍龍が現れた2人に対してそう発言するが、ウェンティは器用にブレイブドラゴンの上で立ち上がり、その発言を言い返した。
「トワリンにあるドゥリンの結晶に干渉しなきゃ、すぐに倒されてた奴に言われてもねー!? 死に損ないはそっちの方じゃないのかなー!?」
「何ダト……? コノ我ヲ侮辱スルカ、最弱ノ神如キガ!」
「侮辱う? 事実でしょバーカ!」
「ナラ先ズハ、オ前カラ始末シテヤル!」
「さぁというわけで、お膳立ては済んだよセイジ! トワリンを救って!」
「本当に口は回るな貴殿は! だが、今はありがたい!」
聖司はソードライバーに聖剣を納刀し、ドラゴニックワンダーライドブックの表紙を押し込んで必殺技の発動準備を行う。
「2人とも、これを使って!」
必殺技の発動準備に取り掛かった仮面ライダーセイバーと同じくして、ウェンティは蛍とディルックの前に風域を作り出した。その風域が出来上がったところで、2人は顔を見合せるとその風域に向かって走り出し、風域の中でジャンプして風の翼を広げると、風魔蝍龍を優に越える高さまで飛び立った。
風魔蝍龍は怒りに身を任せてブレイブドラゴンに乗る2人に向かって風元素を纏いながら突撃を行い、同時に仮面ライダーセイバーも火炎剣烈火を抜刀してブレイブドラゴンを発進させる。
【烈火抜刀!】
「覚悟せよ、メギド!」
「消エ失セヨ、矮小ナル者ヨ!」
ブレイブドラゴンと風魔蝍龍の距離が徐々に狭まっていき、互いにギリギリ擦れ違うほどの間隔で避けあった直後、赤熱して赤く輝く火炎剣烈火の刃が風魔蝍龍の体に入った。
そのままブレイブドラゴンは全速力で進み、聖剣の刃が風魔蝍龍の肉体を斬り裂く。だが、風魔蝍龍が感じているのは何故か、トワリンへの干渉が
「馬鹿ナ!? コレハ一体!?」
「これが、トワリンを救う力だ! ハアア゙ーッ!」
風魔蝍龍の肉体を斬り、火炎剣烈火を振り抜くとその一刀でメギドとトワリンが分離し、メギドは本来の姿となって空中に飛ばされ、トワリンは突進の勢いのままに台座へと突っ込んで力無く伏せた。
「今だ2人とも、首の結晶を破壊して!」
その合図で蛍とディルックは風の翼をしまい、台座に伏せているトワリンの首にある毒の結晶目掛けて落下攻撃を仕掛ける。かなりの高低差から放たれた2人の一撃が結晶に直撃した瞬間、罅が入り破壊された。
時を同じくして、仮面ライダーセイバーは聖剣を納刀し、再びドラゴニックワンダーライドブックの表紙を押し込み必殺技発動の準備を行う。
「お前の物語の結末は、俺が決める!」
すぐに仮面ライダーセイバーはブレイブドラゴンを足場にして跳躍すると、メギドへ体の向きを合わせて3度表紙を押し込んだ。
仮面ライダーセイバーの全身に高熱の炎が発生し、それを帯びたままメギドへと足を向けてライダーキックを放つ! 直撃したメギドは灼熱の炎に身を焦がしながらセイバーと共に落下していき、遂には体内にあるアルターライドブックごと破壊され貫かれた!
「ハアア゙ア゙ア゙ー゙!」
「ギィヤア゙ア゙ア゙!!??
馬鹿ナッ、コンナ所デェエエエ!!!」
断末魔と共にメギドが爆発四散し、突き抜けた聖司は先回りしたブレイブドラゴンの背に乗って回収される。これで漸く全てが終わったと思ったのも束の間、全ての台座が音を立てて崩壊を引き起こし始めた。
「不味いっ、ブレイブドラゴン!」
聖司の意思に応えたブレイブドラゴンが全速力で蛍とディルック、そしてトワリンの居る台座に向かっていくが、全速力でも間に合わず崩壊していき蛍とディルック、トワリンが落下していった。
「トワリン!」
「ウェンティ待t!?」
聖司の引き止める声を無視し、ウェンティが飛び降りてトワリンのもとへと落下していく。すぐにでも行きたいが、優先順位を間違えることなく聖司は蛍とディルックを助けにブレイブドラゴンを発進させた。
自発的にトワリンのもとへと落下していったウェンティは、落ちていくトワリンへにしがみつき目を閉じる。彼の体から光が溢れ出し、その光がトワリンの身体へと流れ込んでいくと身体の色が変わっていった。変化が終わるとトワリンは目を覚まし体勢を整えて落下していく蛍とディルックをその巨体で受け止めた。
「トワリン、無事か!?」
「話は後だ。今はここを脱するぞ!」
「ああ!」
そのやり取りの後、聖司を乗せたブレイブドラゴンと3人を乗せたトワリンは風龍廃墟から脱し、2体の龍は大空へと飛び出した。
そうして4人は危機を脱して、ウェンティは目を開いて色を変えたトワリンの姿を視界に収める。そのようにしていると、トワリンがウェンティに────否、バルバトスに向かって訊ねた。
「何故、我を助けた? 最早我は、敵の魔の手に堕ちていたにも関わらず。それに、何故我に風神眷属の力を与えたんだ? バルバトス」
「そりゃあ、君を助けたかったからに決まってるじゃないか。君の苦しんでいる姿をもうこれ以上見たくなかったし、それにあの時力を与えてなかったら、そのまま落っこちてただろうしさ」
「だが、我は君に酷い事を言ってしまった」
「あの時の君は、ちょっと混乱してただけだよ。気に病むことじゃない。それに、セイジが大切な人だってのは本当の事だしね」
トワリンは大空を駆けるブレイブドラゴンに騎乗する聖司へと視線を向けて、彼に向かって訊ねる。
「聖剣の英雄よ、聞いてもいいか?」
「……むっ、俺か?」
「トワリン、彼はまだ記憶が戻ってないんだ。混乱させるようなことはお口チャックしてて」
「記憶が……あぁ、そうなのか。ならば────セイジよ、何故我を助けた? 自らが壊れるかもしれない賭けに出てまで、何故?」
「そんなもの決まっておろう」
変身状態を維持したままの聖司は、仮面越しではあるがトワリンの方に顔を向けて、当然のごとく答えた。
「苦しんでいるのならば、何者であろうと助ける。それが仮面ライダーに選ばれた、俺の成すべき事だからな」
堂々とした様子で言った聖司の答えに、トワリンはかつての記憶が呼び覚まされる。そこで見た記憶の彼と、同じような声色で答えていた聖司の姿が脳裏に浮かんで、トワリンは懐かしげに言った。
「あの時と、何ら変わりないようだな。セイジは」
「ふふっ、でしょー?」
「あの時……?」
大空を飛び、トワリンとブレイブドラゴンはモンド城から離れた星拾いの崖まで向かい、到着すると背に乗った4人は地上へと降り立つ。変身を解除して生身の姿へと戻った聖司は、光とともに消えるブレイブドラゴンを見送ったあとトワリンへと振り向いた。
「我を救ってくれたことに感謝する、人間たちよ。おかげで脅威の魔の手から抜け出せた。バルバトス、セイジ、君たちには借りが出来た」
「そんな堅苦しいのは無し無し。ここは自由の国モンドだよ、君はこれから自由にどこまでこの空を飛んでいいんだから」
「そうか。では、これから我は、我自身の意思でこのモンドを守護しよう。この救われた命と恩に報いるために」
そう告げてトワリンは身を翻して大空へと飛んでいった。自由に大空を駆けていく守護龍の姿を見送り、4人はこれから待っているであろうモンドの未来に思いを馳せたのであった。
【後書きキャラ紹介】
『神官 聖司(オリ主)』
・たった1度のチャンスを使って、トワリンからメギドを引き剥がして救う。トワリンからは聖剣の英雄と呼ばれていた。
『蛍(原作主人公)』
・オリ主らと共にトワリンを救い、同時にモンドの危機を救った。
『ディルック』
・オリ主らと共にトワリンを救い、同時にモンドの危機を救った。
『ウェンティ』
・オリ主が使っていた聖剣の分離能力を目覚めさせ、トワリン救出に多大な貢献をした。聖剣の英雄という単語に関して、何か知っている様子。
【本作オリジナルメギド】
『ニワトリムカデメギド』
・本作に登場するオリジナルメギド。龍とニワトリムカデアルターライドブックによってアビスの魔術師が変身した姿。元ネタは沖縄の民話である【龍とニワトリ】から。
・スペック
身長 194cm
体重 99.9kg
特色/力 百足を操る 龍種の支配
・容姿
ボロボロの鶏のガワを被った百足の群れ。群れは常に人の形を取っているが、よく観察すると百足は常に動いている。