原神世界に聖剣が混入しました   作:Haganed

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魔神任務序章編の最後なので初投稿です
遅ればせながら、投稿しました
以前、評価をいただいてからランキングに載った上、そこから一気にお気に入り登録とかUAとか増えて内心驚きました
総合日間ランキング10位ありがとうございました。これからも拙作を読んでいただけると幸いです
お気に入り登録等、ありがとうございます




追い風に導かれ

 教会を出てリサと別れた聖司は1人城下町の方に向かい鹿狩りまで足を運んでいた。到着すると、先客に蛍とパイモンとガイアが訪れており、聖司に気付いたパイモンが彼を呼びかける。

 

 

「おぉうセイジ、おはよう!」

 

「パイモン殿、おはよう。良い朝だな」

 

「おう! こんな日にはニンジンとお肉のハニーソテー日和だぜ!」

 

「えらく具体的だな」

 

「アンバーに奢ってもらえるから喜んでるの」

 

「なるほど、タダ飯か」

 

 

 聖司の疑問に蛍が答え、彼は納得したように頷いた。喜んでいるパイモンを見ていると、間に居たガイアが聖司に向かって語りかける。

 

 

「おいおい、お前も俺を無視するなんて。長い付き合いだってのに酷いもんだ」

 

「薄情とは欠片も思っておらなんだ癖に」

 

「つれない事を言うなよ。俺とお前の仲じゃないか」

 

「印象最悪だったであろうがお互い」

 

「えっ、そうなのか?」

 

「目覚めた当初、戦い慣れていない俺にスライムをけしかけてきたぞ」

 

「うわぁ……」

 

「あぁ、そんな事もあったなぁ」

 

「こっちはこっちで全然悪びれて無いし」

 

 

 そうした会話が繰り広げられ、ガイアはアンバーがやって来たことを察知してその場を去り、やって来た彼女はガイアの行動に愚痴をこぼした。アンバーはそこで鹿狩りに居た蛍とパイモン、聖司の3人を見て朝食に誘い、そのお誘いに乗って朝食を摂った。

 

 蛍とパイモンの分であるニンジンとお肉のハニーソテーはアンバーが奢り、聖司自身は漁師トーストと松茸のバター焼きを頼みそれらを食していく。尚、聖司が食べている物をパイモンはじっと見ていた。

 

 

「セイジ、その……ごめんね」

 

「んむっ?」

 

 

 唐突に謝られた聖司はフォークを口にしたままキョトンとしたが、思い当たることを頭の中で探していた途中でアンバーは謝った理由について話し始める。

 

 

「セイジのことをその、モンドの敵だなんて……そんな事考えたことも無かったのに、あの時だけ」

 

「ああ、あれか。別に気にしておらんよ。メギドによって操られておったのだ、致し方あるまい」

 

「でも、セイジを敵だと言ったのは事実で!」

 

「嘘の認識を刷り込まれていたのだ。その発言をしたのは事実でも、何者かの手によって言わされていたのであれば、俺の矛先はメギドに向けられるのであってアンバー殿等では無い。それに、あの本の内容の全ては本心から書いたものだ」

 

「────えっ?」

 

「ちょっ、それ言っちゃうのか!?」

 

「えっ? えっ?! えっ、知ってたの2人とも!?」

 

「本物の枢機卿の救出作戦の際に居たからな、知っておるぞ」

 

 

 困惑するアンバーの反応には特に気にする素振りを見せず、聖司は淡々と本の内容について言及していった。あの本の内容そのものは、聖司がモンドで過ごした3ヶ月間の中で感じたことやその解決策になるのではと考えて書いたものである。

 

 ただ本来はこれを出そうとは思っていなかった為、自身のバッグに入れて肥やしになろうとしていた所に、あの嘘つきウルフメギドの事件が起きた。国を巻き込んだ嘘を付くために使用した事情を説明すると、アンバーは多少の理解はしたものの、同時にある危険性について追求する。

 

 

「でもそれって、1歩間違えたらセイジは」

 

「モンドの国民に誤解されたまま自主的にこの国を去るつもりでもあった。それで世話になった国の危機を救えたのであれば、それもまた本望であったさ」

 

「でも……」

 

「まぁ結果は既に成功に収まっているでな。もしもの過去を気にするより、今とこれからの未来について考えてくれ」

 

「ガイアにスライムをけしかけられた時の事は根に持ってるのにか?」

 

「パイモン、一切れやるから口を閉じよ」

 

「三切れほしい!」

 

「この強欲ものめ」

 

 

 バターを纏う焼き松茸を三切れ与え、パイモンはその味わいに舌鼓を打った。聖司自身も松茸を一切れ食した後、話の締めとしてこのように答える。

 

 

「兎も角だ、俺自身はそこまで気にしていない。アンバー殿も、そう気負いする必要も無いということだ」

 

「そっか。うん、分かった」

 

「ささ、飯の続きを楽しむとしよう。こんな良い日なのだ、楽しまねば損というものよ」

 

 

 それから3人は食事の時間を楽しみ、注文したものを全て食べ終えた後アンバーはジンが2人を呼んでいることを聞き、蛍とパイモンと聖司は彼女と別れて教会へと向かって行く。聖司は2度目の教会であったが、中へと入ってみるとそこでウェンティとジン、そしてバーバラの3人と合流した。

 

 

「やあやあ、英雄たちのご到着だね」

 

「蛍、オイラたち英雄だってさ!」

 

「セイジもだよ」

 

「俺は英雄などと呼ばれるような人間では無いのだが……まぁ、それは良かろう。ジン殿、して用とは?」

 

「ああ、だがその前に。改めてセイジ、そして栄誉騎士。モンドの為に尽力してくれたこと、西風騎士団とモンド国民を代表して礼を言いたい。おかげでファデュイからの圧力も無くなり、風魔龍がモンドに危害を加える事も無くなったと聞いた。ありがとう」

 

「私からもお礼を言わせて。2人とも、モンドの為に動いてくれて本当にありがとう」

 

 

 ジンとバーバラからの礼を貰い、蛍とパイモンはそれぞれ笑顔の表情で答え、聖司は目を瞑り1つ首肯して彼女らの感謝を受け取る。そうした前置きが終わって、次にジンは若干申し訳なさそうな表情をして、このように述べた。

 

 

「それでその、君たちを呼んだわけなんだが……天空のライアーの返却についての事なんだ」

 

「「あっ」」

 

「あぁ……誰が今持っておった?」

 

「えっと、はい……」

 

 

 おずおずと手を挙げて現在所有していることを示す蛍。その様子は悪いことをしている自覚を持ったまま自白する子どものような様子で、そんな彼女を見たバーバラはその様子に気付くものの、変わらず普段のままの対応で言った。

 

 

「ん、どうしたの? 別に貸出料とかは問題ないよ、教会には寄付金もあるから」

 

「えっと、その、えへへ?」

 

 

 パイモンが前置きして、蛍は持っていた天空のライアーを見せた。そう、破損した天空のライアーを見せたのである。これにはさしものバーバラとて、驚かずにはいられなかった。

 

 

「いぃやぁああああ!?」

 

 

 バーバラの絶叫が教会中に広がり、彼女は風神に懺悔しながら膝を付く。その風神はすぐ近くに居るのだが、彼女がそれを知る由は無い。そのような嘆きを聞いて、ウェンティは致し方ないという様子で天空のライアーを蛍から受け取ると、まるで魔法にでも掛けられたかのように天空のライアーは元の姿に戻った。

 

 元に戻った天空のライアーをすぐに抱きしめたバーバラは、すぐに元の保管所までそそくさと向かい、それを見届けたウェンティがすぐに逃げるようにと言う。何故かと思っていたが、すぐに答えは出た。

 

 

「あの時かけた幻術、100%完全無欠じゃないからさ」

 

「なにっ?!」

 

「それじゃあ、急ごー!」

 

「ちょっ、逃げるな吟遊野郎ー!」

 

 

 先んじて逃げていくウェンティを追いかけるようにして、蛍とパイモン、聖司は教会を出ていくのであった。

 

 

 

 

 

▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲

 

 

 

 

 

 ウェンティ、蛍とパイモン、聖司がそれぞれ外に出てから事態は急展開を迎える。ウェンティを狙ったかのように突如として、ファデュイのデッドエージェント2名が襲いかかった。

 

 

「ッ、ウェンティ!」

 

 

 蛍はそこに風の刃を飛ばし、聖司は跳ね蹴りで対処。風の刃で飛ばされたデッドエージェントの1人は難なく着地したが、蹴りをくらったもう1人はそのままダウンする。気絶した1人を連れて撤退し、蛍がデッドエージェントが消えた場所まで向かったその時、聖司は1人足音を聞いて振り向いた。

 

 それと同時にパチン、と指を鳴らした音が響き、次に吹雪が発生し彼らを襲った。蛍は距離が離れていたため事無きを得るが、ウェンティが風を操って吹雪を逸らすも聖司諸共脚を凍らされ身動きが取れなくなってしまう。

 

 

「2人とも────っ!?」

 

 

 助けに入ろうとした蛍であったが、即座に飛び出た1人のデッドエージェントが彼女の体勢を崩して拘束し、身動きを封じさせた。

 

 

「ハムスターが1匹、それと余計なのも捕まったみたいね」

 

 

 そう言いながら3人の前に部下を引き連れて現れる、ファデュイ執行官の1人『淑女』。彼女は隣に立つ聖司には目もくれず、ウェンティの顔を掴みかかろうとして、その腕を聖司によって止められる。

 

 

「誰の許しを得て、勝手に触れているのかしら?」

 

「知ったことか……!」

 

ブレイブドラゴン!

 

 

 彼女に見えぬように起動させたワンダーライドブックにより、ブレイブドラゴンを召喚し炎によって氷を溶かす。初めて見るものに注意が向いた隙に、聖司は右足で前蹴りを放ち彼女を蹴飛ばした。

 

 

「ぐうっ!?」

 

「ウェンティ、逃げ────!」

 

 

 言い切る前に、聖司に向かって蛍術士による電撃が彼を襲い、炎と雷による過負荷反応が発生したことで、その爆発により聖司が吹き飛ばされていく。

 

 

「がっ!?」

 

「セイジ!」

 

 

 吹き飛ばされた聖司の方に向かって駆け寄ったウェンティは、彼の容態を確認し問題が無いことを知ると安堵の表情を浮かべたが、忠告を聞かなかったウェンティに聖司は声を荒らげた。

 

 

「逃げろと、言った筈だ! 貴殿を狙っているのだろう、なら早く行け!」

 

「なら君も逃げて! 彼女の狙いは多分僕だ、でも君はさっきので目を付けられてしまった!」

 

「これぐらい、どうってことない! それに今は、目を付けられても特に問題ないのでな!」

 

「違う! 君は──!」

 

 

 ウェンティが何かを言おうとした途端、そこに猛吹雪が割って入る。蛍を拘束しているはずのデッドエージェントを巻き込むほどの猛吹雪とともに、肉体が急速に氷漬けになっていき、遂には聖司の首から下の全てが氷塊に包まれ、ウェンティは下半身全てが氷漬けになった。

 

 

「やってくれたわね」

 

 

 2人を氷漬けにさせた淑女は、口の端から血を垂れ流しており、負傷した状態であるため蛍術士の1人に支えられながら2人に近付く。負傷させた聖司を睨み付けながら、淑女は口を開いた。

 

 

「アンタ、このままタダで済むとは思わないことね。この私に屈辱を与えた代償は高くつくわよ!」

 

「ハッ、この程度で値段が付くとは。安売りするものでも無かろうに」

 

「減らず口が……でもまぁ、今はアンタに構ってる暇は無いのよ!」

 

 

 聖司を睨み付けていた淑女は、その視線をウェンティに切り替えたあと直ぐに、彼の腹部へと目掛けて元素力を込めた一撃を叩き込み、その体内から何かを取り出す。

 

 

「ウェンティ!」

 

「神の心は手に入れた、もうここに用は無いわ────アンタはそこで氷漬けになってなさい!」

 

 

 そして氷塊に包まれている聖司に向けて、怒りの限りの吹雪を放出した。1秒とも経たない内に残された頭部も氷漬けになり、聖司はその動きを完全に停止する事となる。

 

 

「セイ、ジ……!」

 

「そんなっ……!」

 

「騎士団が来る前に、さっさと撤退するわよ」

 

 

 淑女の一声で、蛍を拘束していたデッドエージェントは彼女に一撃を与えて気絶させたあと、赤い血溜まりのようなものに吸い込まれる形で姿を消し、淑女らも続いて姿を消そうとした。が、大きく何かが割れる音を聞いてしまい、足を止めて氷塊に包まれている筈の聖司の方を振り向いてしまう。

 

 

ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ッ!

 

 

 青い力の解放と共に、聖司が氷塊から脱出していた。もはや常軌を逸しているその光景に内心驚愕する最中、獣のような雄叫びを挙げながら聖司は飛び出して突っ込んでいく。

 

 力を纏った拳が彼女へと迫り────その攻撃は届くことは無かった。淑女が作り出した氷の槍が、聖司の腹を貫いて動きを止めたのである。

 

 

「━━━━ゴフッ」

 

「最初から、こうして殺していればよかったわね。ケダモノにはお似合いの最後よ」

 

 

 氷の槍が消え去り、腹に穴の空いた聖司は地面に落ちたあと、腹部からドクドクと血を出して意識を失った。倒れ伏すサマを一瞥し、淑女と部下は姿を消すと同時に、物音を聞き付けてやって来た西風騎士団がその場に駆け付け、その惨状を目にする。

 

 気絶させられた蛍。神の心を奪われて意識が途絶えたウェンティ。そして、もはや死に体も同然の聖司。その3人の姿を、ジンも見た。

 

 

「バーバラを呼んでくれ! 早く!」

 

 

 血塗れに倒れ伏す彼の元へと一目散に駆け付け、服が汚れるのも厭わず聖司を抱きしめるジン。止血を試みようとしても、血はとめどなく流れており、彼女の処置は徒労に終わった。

 

 

「早く、はやく……! このままでは、彼が!」

 

 

 大粒の涙を溜めるジンは、もうどうすれば良いのか分からず、ただただ風神に願うばかりしか出来なかった。

 

 そうして漸く、バーバラも駆け付けて1番悲惨な状態にある聖司を見て一瞬口を抑えたが、無意味になったとしてもいの一番に聖司の治療へと取り掛かろうとして、彼の異変に気付く。

 

 

「えっ、嘘……どういう」

 

「バーバラ、バーバラ頼む……! お願いだ、早く彼を助けてくれ! このままではセイジが死んで」

 

 

 バーバラは聖司の肉体に触れ、その異変に信じられないと頭で思いながらも、言語化せずにはいられなかったのか、その口からある一言が零れた。

 

 

「────()()()()?」

 

 

 

 

 

▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲

 

 

 

 

 

 時は過ぎ、夜。月明かりと星々の光が夜空を照らす風立ちの地、その地にある七天神像の背後の巨木にウェンティ、もといバルバトスは休んでいた。

 

 そこに蛍とパイモンがやって来る。バルバトスは悟ったかのように、様々な事情を説明した。神の心のこと、襲来してきたファデュイ執行官シニョーラに関わること、そして次の旅の行き先についてのこと。

 

 そうして幾つか聴き終えた蛍は、バルバトスにこの質問を投げかけた。

 

 

「ねぇ、ウェンティ。彼は……セイジは一体、何者なの?」

 

「理由を聞かせても?」

 

「今までもそうだったけど、貴方は彼をとても気にかけていたし、知っている様子だった。トワリンも彼の事を知っている雰囲気だった。でもそれ以上に、ある事を聞いたの」

 

「それは?」

 

「血塗れで、どう考えても治るはずのない怪我が、セイジの体から綺麗さっぱり無くなっているってこと」

 

 

 それを聞き、バルバトスは静かに瞼を閉じる。やがて緩慢な動きで両瞼を開けて、どこか観念したかのような視線を向けながら、彼は言った。

 

 

「そっか、セイジの異常に気付いちゃったんだ。祈祷牧師の彼女」

 

 

 その言葉に無言の肯定が入り、バルバトスはゆっくりと木の根元に腰掛け、蛍を座るように促す。彼女はその場に座り、パイモンは彼女に合わせるように下がった。

 

 そうして聞き入れる状態となった彼女らを確認し、バルバトスは木の葉の先から僅かに出ている夜空を見上げながら、重い口を開く。

 

 

「むかーしむかし、このテイワットでは7つの神座を手に入れるために、数多くの魔神が争っていた時代がありました。たった7つの神座を手にするために、多くの犠牲が出ていた時代──そんな激動の時代に、【聖剣の英雄】は現れたのです」

 

「聖剣の英雄って……まさか!」

 

 

 パイモンが驚きの声を挙げ、バルバトスはその答えを告げる。

 

 

「名を、神官 聖司。

 激動の時代の始まりと終わりを知る()()()()()

 それが、彼の正体だよ」

 

 

 




次回、璃月編に突入
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