岩王帝君の遺体に滅茶苦茶無礼を働いたので初投獄です(違)
久々に書こうとすると手が止まってしまうんですよね。なのでお待たせしすぎました
湯屋に向かい体を洗い、着ていた衣服を洗って乾かし別の服に着替えてから、1人玉京台に戻った聖司は自身に向かってきた案内の元、群玉閣と称される場所へと案内されたのだが────
「おほほほほ! なぁ、これはどういう仕組みで動いているのだ!? 鉱石自体に浮力があるのか? それとも何か人工的な力で浮かばせているのか!? 初めて見たぞこのようなもの! なぁこの鉱石の産出場所は? どのようにして形成されたのだ? 加工技術はどのようなものなのだ!?」
「アンタちょっと黙っててくれ!」
「嫌だ!」
「元気よく拒否するな!」
とまぁ、空中に浮かび動く石に興味を示し案内役の人間を困らせる事態が起きていた。子どものように初めて見るものに興味を持ち、緑色の鉱石を観察したいがためにうつぶせになって上半身を外に出し、その鉱石をまじまじと観察し始めるものだからさぁ大変。
どこぞの
外観周りは満足したのか、今度は早く内装を見たいと言って先にと向かうので、ようやく正気に戻った案内役であったが、ウハウハな気分の聖司を止められる筈もなく4回のノックが行われた後に彼は内部へと入っていった。
大きなシーリングライトに目を見張り、中国風の建築様式に目移りしていた聖司は迷うことなく床にしゃがむと、ネタを書き記した紙とペン、インク瓶はバッグの中に入れたまま器用にペン先にインクをつけて不要分を落とし、素早い動きで記し始めていく。
自由奔放に動き回るものだから、案内役の人間も彼の行動に対してかなりキレ気味に言及した。
「アンタ状況を分かっているのか!? ここ群玉閣だぞ! アンタが会う相手はあの璃月七星の『天権』様だぞ!? 好き勝手に動き回って良い所でもなんでもない事を理解してるのか!?」
「……璃月七星? 天権?」
「おまっ、まさか全然知らないとか言うなよ? 大体の人間が知ってる事だぞ!?」
「全く知らん」
嘘だろ、という様子であんぐりと口を開け、案内役の風貌が5年ほど老けたような印象へと変わる。そのような変化を無視してネタを記した紙に書き記していくと、彼らの前に1人の人物が現れ、今の状況についての説明を求めた。
「なんの騒ぎ? ここが群玉閣であることを理解しての行い?」
「ゆ、玉衛様! 大変申し訳ございませんすぐにこの者を連れて去りますれば我が愚行とこの者の無知への御赦しを何卒!」
「一応その天権殿とやらに呼ばれておるのだが」
「呼ばれた?」
案内役は内心で“お前ちょっと黙ってろ!”と毒づくも、疑問符を浮かべた玉衛と呼称された彼女に向かって答える。
「は、はい。迎仙儀式の場に居合わせており、真意は分かりませぬが天権様がこの者をお呼びになった事は事実でございます。しかしながら目に余る行いが目立っており、天権様に会わせても良いものか判断がつかず……」
「いや、上司の言い付けは守らねばならんのでは?」
「ん誰のせいでェ……?!」
もう抑えることは出来なかったらしい。このやり取りで案内役がかなり苦労している事を察した玉衛と呼ばれた少女は、ネタ帳になっている紙を聖司の手から取り上げ、その中身を確認した。
「あっ」
「貴方、名前と出身は?」
「どうした急に?」
「いいから答えなさい」
少々高圧的にも見える彼女の対応だが、特に気にする事はなく聖司は自己紹介をする。
「名は神官 聖司。出身は分からん」
「ふざけてる?」
「いや全く。そも3ヶ月ほど前に何も知らぬまま目覚めたが故、出身など皆目検討もつかん。強いて言うなれば、遺跡の中で発見されたと伝え聞いているが」
「嘘をつくならもっとマシな嘘をつきなさい。これから千岩軍に貴方を引き渡すわ」
「へあっ?!」
正直に答えたと思いきや、まさかのブタ箱行き確定演出にさしもの聖司も驚いた。当然、彼の案内役もまた驚いたことで上手く口が動かなかったし舌も噛んでしまったが、それでも目の前の彼女に向かって言い伝えた。
「お、おおおお待ちい゙ッ!? ゆ、玉衛様! この者の不明瞭な点や頭の可笑しさからして千岩軍に送られても致し方無い紛うことなき不審人物でございますが確かにこの目とこの耳で天権様が連れてくるようにとのお達しを私がいただいた事は事実になります! 天権様の御命令に背くような行いになってしまっては貴女様の立場も危うくなりかねません!」
「よく息継ぎ無しで喋られるな」
「お前さえ居なければこんな労力使わずに済んだのだがなぁ?!」
かなりご立腹な様子を見せる案内役の気迫に、それを見ていた聖司と玉衛と呼ばれた少女は僅かに押されて少し距離を取る。すぐに自分の発言に気付いた案内役は咄嗟に彼女に向かって土下座をして謝罪の意を示し、これ以上は口を開かないように徹底した。さしもの聖司も、これには言葉を詰まらせる。
「お、おう。その……失礼した」
「色々と遅いような気がしないでも無いのだけど……、取り敢えず言い分は理解したわ。今から確認を取ってくるから、外で少し待って────」
「その必要はございません」
玉衛と呼称された少女の背後から1人の女性が現れ、彼女を見て少女は何かを察した。
「百曉。ということは、本当に呼ばれているのね」
「はい。モンドからの来訪者が訪れると言伝を頼まれ、こうしてお迎えにあがった次第です」
「モンドから? あなた、それならそうと言えば良かったじゃない」
「モンドは別に出身でもなんでも無いぞ。単に3ヶ月間ほど世話になっただけであって」
聖司は声を出しながらゆっくりと立ち上がり、案内役を立ち上がらせるために手を差し伸ばしたが、案内役はそれを無視して1人で立ち上がる。そこで聖司は案内役に向かって一礼をしたあと、百曉と呼ばれた彼女のもとへと向かった。
「それで、俺は何処に向かえば良い?」
「この階段を下りた先です。ご案内します」
「相分かった。それとっ」
聖司は玉衛と呼ばれた少女の所持していた自分のネタを記した紙を取り返し、すぐにバッグの中へと放り込みインク瓶の蓋を閉め、ペンを片付ける。
「ちょっ」
「返してもらったぞ。あれは物書きにとっての生命線なのでな」
「言えばすぐに返したと思わなかったのかしら?」
「没収されそうな雰囲気で返せと言ってもな」
何か言いたげな雰囲気で玉衛と呼ばれた少女は彼を睨み付けるように見つめたが、その視線を全く意に介さず聖司は百曉と呼ばれた彼女の案内について行き、目的の人物との再会を果たした。
聖司が案内された先で待ち受けていたのは、整然と並ぶ家具の配置と多くの巻物。奥に配置された椅子に腰かけていた天権と呼ばれていた彼女は、百曉に進むよう誘導された彼が部屋に足を踏み入れると椅子から立ち上がり彼を迎え入れる。
「態々ここまで来てくれて感謝するわ。湯屋のついでに逃げるのではないかと思ったのだけど」
「その台詞は斯様なことを微塵も思ってないと言っているのと同義だぞ。それに呼ばれた身だ、行かぬ選択肢こそ不誠実であろう」
「中々殊勝な心掛けね。さ、此方にいらして」
彼女の案内に従い、更に部屋の奥へと歩を進めていく聖司。物珍しさから視線が引っ切り無しに動き回っていたが、ある程度の距離まで来たところで目線を彼女の方へと戻した。
「そんなに珍しいものでもないわ。ただの仕事道具や書類ばかりの部屋よ」
「貴殿にとってはそうかもしれんが、俺にとっては宝の山と同じだ。内装の情報を見て、小説に活かせられる。それに多くのものが初めて見るものばかりだ。道中で乗ったあの浮遊する石とかもだな」
「あら、あなた物書きなの?」
「これでもモンドでは多少名の通った物書きではある。とはいえ未だ大海を知らぬ蛙に過ぎぬし、本業は冒険者でな」
それを聞いて考える素振りを見せる天権は、僅かな時間の経過のあとに聖司に訊ねる。
「1つ良いかしら?」
「何か?」
「風の噂で聞き及んだ事なのだけど、少し前にモンドで痛烈な批判を書いたエッセイ本が出回ったことを聞いたことがあるの。何でもモンド以外では聞いたこともない作者の著作物だったらしいのだけど、何か知っていたりは?」
「風の噂、か。モンドならいざ知らず、璃月にまでその話が届いていたとは……悪事千里とはまさにこの事だな」
自虐気味にそのように話す聖司の反応を見て、ある程度の確証を持った彼女は再度彼に訊いた。
「知ってるのね?」
「まぁ、あの場に居たからな。いやはや大変であった、あの時はモンドの住民の殆どが信じられないような物を見るような目でその作者を見ておったわ。信頼されていたらしいのか、裏切り者だのといった声もあったぞ。おぉ、怖い怖い」
のらりくらり、という言葉が似合うような物言いをしてそのように喋る聖司。白々しさを感じるそれであったが、今は言及するつもりも無いのか、彼女もただ“そう”と言って頷くだけに留めて本題に入った。
「なら早速本題に入りましょう。貴方が岩王帝君の遺体に触れてまでして確かめたかったことについて、話してくれるわよね?」
「────うむ、良かろう。ただ、なるべく公にせぬ方が良い内容であることを考慮してもらいたい」
周辺に人がいないかの確認を済ませた聖司は、天権に向かってモンドで起きていた風魔龍の1件について話をし始める。解決していたという情報を知っていた彼女であったが、聖司がその仔細を知っている当事者の1人と聴いて静聴した。そして風魔龍に寄生していた新種の魔物についての情報を開示すると、あの時の行動の意図を彼女は理解する。
「成程。つまり、帝君の遺体にその新種の魔物と同じ存在ないし同様の力に侵蝕されていないかの確認だった。というわけね」
「新種の魔物の厄介な所は、神の目の所有者でも有効打を与えられない点だ。生半な攻撃は殆ど通用せんと思って良い……まぁ、今回はその痕跡も見た限り無かったのでな。ひとまずその点に関しては安心しても良かろう」
「そう、それなら良かった。貴方の行動の意図も分かったことだし、刑を執行せずに済むわね」
「おぉ、そういえば忘れていた。場合によっては刑罰が下るのだった」
「貴方、よく能天気と言われない?」
「興味の無いことはすぐ忘れてしまう性質でな」
「自分に下されるかもしれない刑罰を、興味無いで済ませるのはどうかと思うわよ」
「おろ?」
どこか腑抜けた様子の聖司の反応に呆れていた彼女であったが、彼からの口からあることについて問いかけられたことに反応した。
「天権殿、今度はこちらから質問しても良いだろうか?」
「貴方、本当に世間知らずというか、命知らずというか……」
「む?」
「私に質問したい人間は山のようにいるけど、普段はそんな機会が来ることは滅多に無いの」
「ほぉん」
「まぁ、今回は貴重な情報の対価の代わりとして1つだけなら答えてあげてもいいわ」
「ふむ、では訊くが」
間の抜けた返事が返ってきたことで今までの緊張が多少緩んだ彼女であったが、聖司の口から告げられた一言でもう一度張り直す必要に駆られることになる。
「岩王帝君の死の裏で何を企んでおる?」
「────企み、というのは?」
「あぁ、惚ける必要は無い。大方の予想はついておるし、この事についての答え合わせをしてもらいたいだけでな。場合によっては貴殿らと協力して事に当たりたいとも考えておる……聞くだけ聞いても損は無いと思うぞ」
数瞬の時が経って彼女は聖司に話の続きを促したことで、彼はここに来るまでの間に推測したことを話し始めた。
「そうさな、では改めて事の始まりについて話すとしよう。迎仙儀式が行われ岩王帝君の遺体が落ちてきた時、貴殿は真っ先に殺害と断定したが、そこで何故他殺と断定できたのかについて思考を巡らせた。しかし考えた結果、どう考えても他殺は厳しいとしか判断できんかった」
「その根拠は?」
「直接的に手を下すには年に1度の儀式を狙う必要があるが、民衆や兵も多く集まるその日に殺害を実行したとしても、失敗する確率の方が高い選択肢を取る理由が見当たらん。また何らかの方法で年に1度の顕現日以外を狙ったのだとしても、見つけ出すまでに費やす時間、労力、そして殺害のための手段を揃える諸々を考えると、見返りが合わなさすぎる。ましてや、それを知った神が気づかぬ振りをする道理も無い。ともすれば奇妙にも残った可能性として────岩王帝君は自死を選んだのではと考えた」
「……それ、他の人の前では
わざわざ絶対という部分を強調するように彼女はそう忠告する。しかし同じように思っていた、もしかすればという可能性の1つとして。
「しかしながら自死を選んだとされる理由が分からん。大抵は精神的な負荷に耐えきれずそのまま、というパターンが多いが……いやかなりの年月を生きてきて疲弊したのか? 神の中で最古参であれば有り得なくない、のか?」
「岩王帝君が疲れ果てて自死、ね。璃月の民からしたら想像もしたくないわ」
「まぁ、死の真相については後に回すとしよう。本題に入らねばならん。貴殿が岩王帝君の死を他殺と断定したのは何故かと考えている内に、俺と同じ思考になった者が居るのではとも思った。そしてこの群玉閣に来て確信を持てた、貴殿は何者が敵であるか炙り出すための策を敷いたのではとな」
そこで一旦話を止めた聖司は、紙が多く張られた掲示板へと足を向けて歩き出す。その中で一際大きく貼り出されている地図のようなものを見ながら再開した。
「では敵とはなんだ? と考え、思いつくものを総当たりした。個人か、集団か? 可能性が高いのは集団の敵であろう。どのような規模の敵だ? 個人ではなく集団の敵、ましてや璃月七星という国の中枢が敵と認定する集団とは? アビス教団か? 確かに厄介な相手ではあるが敵とは呼びにくい。寧ろ国という視点からして敵として見るものの最たるは────有史以来、自国へ侵攻する他国と決まっておる。そしてそれに当てはまる敵を、俺は知っている。氷の女王が統治する国スネージナヤ、その国の組織たるファデュイこそ敵なのではと結論づけた」
右足を少しだけ上げて、左足を軸にくるりと回って聖司は彼女へと向き直り、両の掌を自身の腰の位置で見せながら問う。
「というのが、俺個人の推理だ。どうだろうか?」
彼の問いかけに天権は拍節の長い拍手でもって答え、感心した様子で口を開いた。
「貴方、よくこの短い時間でそこに行き着いたわね。正直、もっと時間が掛かっても可笑しくないと思っていたぐらいよ」
「推理小説やミステリー小説で鍛えられたのでな。して、その反応であれば当たっているとみて良さそうだな」
「ええ。まぁ、帝君の死の真相については私もまだ詳しくは知らないから何も言えないのだけど、私の考えは読み解かれたと言っても良いわ」
コツ、コツ、と鳴る床を歩く音が聖司へと近付いていく。彼女は個体距離と称される程の間隔まで詰めて訊ねた。
「貴方、名前は?」
「神官 聖司という」
「あら、貴方がそうなのね」
「俺を知っているのか?」
「西風騎士団の代理団長から、私に手紙が届いていたのよ。貴方と、栄誉騎士の彼女を探していたのだけど……まさか、その1人とこんな形で出会うとは思ってなかったわ」
聖司はその発言で納得し、今度モンドに戻った時にジンに謝礼をする必要があるなと考えていると、天権は彼にそこを退くようにと言う。そのとおりに聖司は退くと、彼女は掲示板に掲載している大きく目立つ紙を彼に見せながら1つ頼みごとをした。
「協力して事に当たりたい、と言ってたわね。なら、私から1つ頼んでも良いかしら?」
「その地図と関係している事か?」
「話の早い人は好きよ。この辺りでファデュイの人間が何をしているのか探りを入れてきてほしいの」
「良かろう。ただその前に、蛍殿とパイモン殿と合流したい。今はどこに居るやら」
「彼女たちについては私たちに任せて、動向が掴めたら迎えを寄こしておくわ」
「そうか、ならば俺は俺の仕事をしよう。ところでだが」
「何かしら?」
「────ここで人目につかぬ場所を教えてもらってもいいか?」
彼女はその頼みに頭を捻らせることになった。
【後書きキャラ紹介】
『神官 聖司(オリ主)』
・小説家としての好奇心に歯止めが利かない状態にある。そのくせ、真面目にするときは真面目になるので、その変わり身の温度差でグッピーが死ぬ。
『天権』
・ジンからの手紙で璃月に訪れることは知っていたが、人相までは分かっていなかった人。その内の1人のオリ主を見つけて協力関係を結んだ。最後の質問の意味は後々知ることになる。