僕は無敵の結界術士 〜素敵なお足の女神様に頼まれたとあっては、転生するのもやぶさかではないです(ぺろぺろ)〜   作:龍々山ロボとみ

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第096話・必須事項の確認

 

 ◇◇◇

 

「なるほどのぅ……。ダンジョン攻略に伴う転移の際に、ダンジョンデーモンの最後の攻撃を受けた、と。しかもそれは魔力器官であるツノを自壊させることで瞬間的に威力を増大させたものだったのじゃろう。だから場所だけでなく、()()()()越えて転移したということか」

 

 僕の話を聞いた教授が、そのように話をまとめました。

 

「ええと、つまり、……どういうこと?」

 

 イェルン姉さんが首を傾げ、ミーシャ姉さんが呆れたようにため息をつきます。

 

「つまり、ナナシ様は未来に来てるってことよ」

 

「未来って……、今は現在(いま)でしょ?」

 

「今は現在(いま)だけど、ナナシ様からしたら未来なの!」

 

「???」

 

 イェルン姉さんが余計に分からないという表情を浮かべ、ミーシャ姉さんが額に青筋を浮かべます。

 

「というかナナシさん、ダンジョンデーモンの討伐までしていたんですね……! これは捗る……! ああ、また一曲書かなくては……!!」

 

 後ろでロビンちゃんがまた興奮しているのはさておき、僕は教授に訊ねます。

 

「教授。僕が、転移してくる前の時間場所に戻るためには、何が必要ですか?」

 

 教授はしばらく考え込み、それから答えます。

 

「……少なくとも、転移してしたときに消費された量以上の魔力、時空間転移のためのスキルまたは転移陣、転移先の正確な座標。この三つは必要じゃろうな」

 

「では、それらを揃えるために、僕がすべきことはなんですか?」

 

「まず、魔力量の問題を解決するためには魔石を集めるのが正道じゃろうな」

 

 魔石を?

 と思っていると、ミーシャ姉さんが教えてくれます。

 

「魔石とは、主に魔獣の体内から採れる魔力を帯びた石のことです。他にも地層から出てくる魔晶石などもありますが、基本的にはまとめて魔石と呼びます。ナナシ様が討伐依頼で退治したもののなかにも魔石をもつものはいたはずですが、……そういえばナナシ様は、討伐証明部位以外は持ち帰ってきませんでしたね。まさか、ご存知なかった……?」

 

 いえ、それは知ってます。ティラノ君とかからも出てきたツルツルした石のことですよね。

 

 メラミちゃんに教えてもらって取り出してはみましたけど、なんかどれも小さいしそんなに綺麗じゃないしお金に換えるぐらいしか使い途がない(ギルドポイントには直結しないって聞きましたし)って言うのでそのまま放置してましたね。

 

 しかし、あれがどう役に立つのですか?

 

「魔石は、魔力を溜め込んでおける性質があります。余剰魔力を注ぎ込んでおけば魔力を保管しておくこともできますし、いざというときに魔力を引き出して使うこともできるのです」

 

 燕青貝の真珠みたいに魔力電池的な扱いができる、ということですか。

 

 それなら数を揃えて全ての魔石に目一杯魔力を注ぎ込んでおけば、僕の限界を超えた魔力放出量を実現できるということですね。

 

「魔力量については、とにかくたくさん、あればあるだけ良いとしか言えん。お前さんの魔力量はワシには分からんし、転移の際に消費された魔力量など知るよしもないからな。お前さんはとにかく魔石を集めて、どれほど大量の魔力が必要になっても大丈夫なように備える必要がある」

 

 なるほど。分かりました。

 

「次にスキルじゃが……、帝国建国当時の記録によれば、この帝国の初代皇帝陛下の直臣のひとりが、時空間跳躍転移術という超々稀少(ウルトラレア)スキルを所持しておったそうじゃ」

 

「あ、それなら聞いたことあります! 幻惑の大魔導師ヒキ=ダッシ様ですよね!」

 

 ロビンちゃんが、作詞作曲の手を止めて声をあげました。

 

「ヒキ=ダッシ様の武勇伝は、初代陛下を讃えるお話の中でも不動の重騎士ガビゴーン様に次いで人気があるんですよ! どんな強敵でも時空の狭間に引きずり込んで倒し、意識の一部を常に未来に転移させておく擬似未来視で、初代陛下の窮地を何度も先読みで対処したと言われています!」

 

 ほほう。

 そんなすごい方がいたのですね。

 

 しかし、そんなすごい人が持っていたのと同じスキルが必要ということですか?

 

「必要じゃなあ。というより、場合によってはそれ以上のスキルが必要かもしれんぞ。二百年もの時間跳躍をするのに、七文字級スキルでも心許ないわい」

 

 そうですか……。分かりました。

 

「そして最後に転移先の正確な座標、……これは、元々の時間場所をどれだけ正確に指定できるかということじゃ。せっかく元の時間に戻ったのに別の大陸や海の底だったりしたら目も当てられんし、場所はよくても時間が数年単位、ヘタすれば数十年単位でずれていては意味がないのじゃろう?」

 

 いしのなかにいる!

 に、なったり浦島太郎になったりしたら意味ないということですね。分かります。

 

 ……しかし。

 

「最初の魔石云々はともかくとして、あとの二つははちゃめちゃに難易度が高くないですか?」

 

 めちゃくちゃ珍しくて強力なスキルと、砂漠に落ちた針を人工衛星から見て探すかのような果てしなさが必要ということですよね。

 

 それって実現可能なんでしょうか?

 

「超絶めちゃんこに難易度は高いじゃろ。しかし、それぐらいせんとお前さんの望みは叶わんということじゃ」

 

 ふむ。つまり教授は、現実的に可能かどうかはさておき、僕がお嬢様の元に帰るために本当に必要なことを真面目に考えてくれたわけですね。

 

 いいでしょう。

 それなら僕のやることはひとつです。

 

「分かりました。それなら身命を賭してやり遂げることにします。ありがとうございます、教授。おかげで道が開けました」

 

 僕がお礼を言うと、教授は「ふぅむ」とアゴヒゲを擦りました。

 

「無理難題を言うな、と怒るかとも思ったが……。良かろう。そこまで本気なら、お前さんに良いことを教えてやる。魔石の問題とスキルの問題を解決するつもりなら、迷宮都市に行くがよい。この帝都からなら鉄道で一駅じゃ。スーパーバチボコビッグタートルを退治し、ダンジョンデーモンの討伐経験まであるお前さんなら、あるいは本当にやり遂げられるかもしれん」

 

 迷宮都市。

 名前からしてダンジョンの関わっていそうな都市ですね。

 

「帝都の北、約二十キロメートル先の平原に存在する巨大ダンジョン。その入口を取り囲むようにして作られた街じゃよ。この国の冒険者の大半は、一度は挑んだことがあるじゃろうて」

 

 と、そのとき。

 

「……ナナシちゃん、迷宮都市に行くの?」

 

 ずっと頭の上に疑問符を浮かべたままだったイェルン姉さんが、僕にそう聞いてきたのでした。

 

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