僕は無敵の結界術士 〜素敵なお足の女神様に頼まれたとあっては、転生するのもやぶさかではないです(ぺろぺろ)〜   作:龍々山ロボとみ

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第101話・実力差と苦悩

 

「…………攻略初日で、三十階層クリア……、ですか」

 

 僕たちの話を聞いたメイド長のフラーさんは、冒険者ギルドに報告したときのミーシャ姉さんと同じような表情(なんだかこう、軽い頭痛に耐えているみたいな、そんな表情です)を浮かべました。

 

「さすがナナシだね♪」

 

「……うぅむ」

 

 ニコニコ笑顔の殿下の隣で僕たちの話を聞いていた護衛隊長のロコさんも、似たようなお顔です。

 

 皆さんどうされたのでしょうか。

 偏頭痛ですか?

 

「なんにしても、ナナシちゃんや他の皆が無事に帰ってきてくれて良かったわ。初日から誰か大ケガしたりしないか心配だったから、ホッとした」

 

 と、シラフのイェルン姉さんが言いました。

 

 ははは、イェルン姉さん。

 さすがにそれは心配しすぎだと思います。

 

 それにこんな序盤からつまずいているわけにはいきませんので。

 もう少し深く潜るまではこんな感じでサクサク行ってきますよ。

 

「それでも心配なものは心配なの! ……けどまぁ、こんなにスムーズに進めるんなら、ゲヘナダンジョンって実はそれほど危なくないところなのかしら……?」

 

 すると、ロコさんとフラーさんが顔を見合わせ、フラーさんがイェルン姉さんにすすすっと近寄りました。

 

「イェルン様。おそれながらお伝えしますが、今までの公式の最短記録でも三十階層の攻略までは二か月ほどを要しています。そして一般的な冒険者の大半は、その生涯を費やしても三十階層まで到達できません」

 

「そ、そうなの……!?」

 

「はい。ナナシ様の攻略速度が異常なだけです。……実は私やそちらのロコッピなども訓練の一環として潜ったことがありますが、私は二十階層、ロコッピは三十階層のフロアボスを倒すことができませんでした」

 

「……皇族護衛の任にあたるため厳しい鍛錬を行なっている我々であっても、そうなのだ。ナナシ殿の強さはあまりにも人並み外れていると言える」

 

「そうなのね……。やっぱりナナシちゃんってすごいのか」

 

 イェルン姉さんの言葉に、ロコさんとフラーさんが揃って頷きました。

 

 あまり褒められすぎても照れてしまいますね。

 

 けどそもそも、本当にすごいのは僕ではなくて、あくまでも女神様からいただいた僕の結界術ですし。

 

 それに。

 

「僕だけがすごいわけでもないですよ。今回は急いでいたのでほぼ僕一人で攻略しましたけど、メラミちゃんやキャベンシアさんも三十階層のフロアボスぐらいなら問題なく倒せると思います」

 

 肩慣らしというか腕試しというか。

 メラミちゃんとキャベンシアさんも二十五階層あたりの時に何度かダンジョンエネミーと戦ってみました。

 

 結論として、二人ともまったく問題なく戦うことができていました。

 

 三十階層のフロアボスの硬さと魔力の圧の感じから考えれば、それぞれ単独で戦っても負けることはまずないと思います。

 

「なんと、そうなのか」

 

「それはなんとも……、頼もしい限りですね」

 

 驚くロコさんとフラーさんに、フェアネス殿下が言います。

 

「ふふふ。二人がそんなに驚いた顔するなんて。それが見れただけでも、ナナシたちについてきた甲斐があったね」

 

 そうですか。

 ところで殿下、ひとつお願いがあるのですが。

 

「なぁに?」

 

 この家の台所役として、専門の料理人を雇っていただくことって可能ですか?

 

「キャベンシアさんが、それはもうたくさんご飯を食べる人なんですけど」

 

「うん、そうだね」

 

「キャベンシアさんに全力を出してもらえるようになると今後のダンジョン探索が楽になると思うので、毎日お腹いっぱいになってもらえるようにしたいのです」

 

「んー、分かった。追加の人員を回してもらえるように、皇帝陛下(おとうさま)に言っておくね」

 

 よろしくお願いします。

 たぶん、料理当番が五人ぐらいいれば、キャベンシアさんの食事量を賄えると思いますので。

 

「え、そんなに?」

 

「あと、毎日今までの二十倍ぐらいの量の食材の仕入れが必要になると思いますので、そちらもお願いします」

 

「そんなに……?」

 

 だって、たぶんキャベンシアさん、僕がお会いしてからまだ一度も満腹になったことがないと思うんですよね。

 

「あれだけ食べるのに?」

 

 あれだけ食べるのに、です。

 今日も最後は空腹になりすぎて動けなくなってました。

 

「うぅーん、そうなんだね。だから今も、台所で何か作ってもらってるのか」

 

 そうなんですよ。

 ちなみに、メラミちゃんは帰ってくるなり「晩飯まで一眠りする」と言って自室に入ってしまいましたし、勇猛楽団はロビンちゃんの曲作りのお手伝いをしているようです。

 

「それならフラーシフォン。今日のところは調理に入れる皆で手分けして、キャベンシアの食べるご飯を作ってあげて」

 

「了解致しました。さっそく手配します」

 

 すすすっと音もなく歩いて台所に向かうフラーさん。

 僕も調理をお手伝いすることにして、メイドの皆さんと一緒にたくさんご飯を作りました。

 

 そしてキャベンシアさんだけ先に食べ始め、冒険者ギルドの勤務が終わったミーシャ姉さんが帰ってきたところで、皆で晩ご飯にしました。

 

 そして最後までご飯を食べ続けたキャベンシアさんが悲しそうなお顔でフォークとスプーンを置き、ごちそうさまになったのでした。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 翌日。

 再び六人でゲヘナダンジョンに挑みます。

 

 三十階層のリトライクリスタルからスタートして、小さな滝と崖、段々の渓流が連続する地形をどんどん進んでいきます。

 

 このあたりの階層は、とにかく渓流に沿って下へ下へと下っていき、一際大きな滝から身を投げるか、滝の横の切り立った崖のような岩場の中から足場にできる部分を選んでロッククライミングの要領で降りていくかして次の階層に行きます。

 

 もちろん僕たちは滝の上からカベコプターで降りていくのですが、ここはとにかく飛行モンスターがたくさんいて、次から次へとキリがないぐらい襲ってきました。

 

 それと、勇猛楽団の皆さんが少しずつ疲労の色が見え始めてきたため昨日よりもスローペースで進み、三十四階層で昼休憩を挟んだあと、夕方ごろに四十階層に到達。

 

 ライオンの頭とヤギの胴体とコウモリの翼と蛇頭のシッポとクマの前足とカモシカの後足を合わせた姿をした大きな飛行生物をバラバラに切り刻んで倒し、リトライクリスタルに辿り着きました。

 

「はい、タッチ」

 

 クリスタルに冒険者証を触れさせてから皆さんの顔を見てみますが、メラミちゃんはまだまだ余裕そうで、勇猛楽団の三人は、やはり疲労が出始めている様子です。

 

 そして。

 

「……すまない、ナナシ」

 

 大きな滝からザバザバと落ちていく水音に負けないほど大きな腹の虫が、キャベンシアさんのお腹から鳴っています。

 

 持ってきていた食料のほとんどはすでに食べ尽くしてしまっており、本日これ以上の探索は難しそうですね。

 

「キリが良いので、今日はここまでにしましょうか」

 

 僕がそう言うと、メラミちゃんは「おう」と頷き、勇猛楽団の三人は心なしかホッとしたような表情を見せ、

 

 キャベンシアさんは悲しそうなお顔で「……すまない」とだけ言いました。

 

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