僕は無敵の結界術士 〜素敵なお足の女神様に頼まれたとあっては、転生するのもやぶさかではないです(ぺろぺろ)〜   作:龍々山ロボとみ

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第138話・同情と共感は交渉の基本です

 

「なっ……!?」

 

 スーちゃんさんが「なぜそのことを知っている!?」みたいな表情をしました。

 

 つまり、どういうことです?

 

「ごめんね。真名看破してたら見えちゃった。たぶん貴女は、このダンジョンの管理者として造られた模造生命体(ホムンクルス)なんじゃない?」

 

 へぇ、そうなんですか。

 

「だ、だったらなんだって言うのよ! あたしのこと、不出来な人形だってバカにするつもり!?」

 

「え。いや、全然そんなつもりはないけど。ただ、魔族だの人間だのとか、種族や生まれで張り合う必要はないじゃん、って言いたかっただけで……」

 

 そういえば、と。

 フェアちゃんは続けます。

 

「お人形といえば、私も以前までは高貴なお手振り人形だとか言われてたね。笑って皆に手を振るだけのお人形さんだって」

 

「はあっ!? なによそれ!」

 

 その反応に、フェアちゃんがピクリと反応しました。

 

「……皆からは、敬われるけどどこか距離を置かれてて、近づいてくるのは、私じゃなくて私の肩書きに興味がある人たちばかりだったなぁ。私のことをいやらしい目で見てくる人もいたし……」

 

「そ、そんなのって……!」

 

「皇女殿下としての私には、私の気持ちとか意思は全く必要なくてさ。皇帝陛下(おとうさま)の言いつけを守るためだけに何かをやって、もし失敗したら家を追い出すとか言われたりして」

 

「そんなのってひどいじゃない!」

 

 義憤にかられたようなスーちゃんさんの様子に、フェアちゃんは皇族の笑顔(ロイヤルスマイル)から素の笑顔に切り替えました。

 

 うおっ、うまいですね。

 

「けど今はね、ちゃんと私のことを見てくれる人たちと、楽しい毎日を送ってるよ。お人形さんでも犬でもなくて、新人冒険者のフェアちゃんとして見てくれる人たちと一緒に」

 

「そうなの……?」

 

「うん。ナナシたちが色々手伝ってくれて、このダンジョンの攻略をするようになって。毎日が新鮮で、素敵なことがたくさん起こるの。見たことのないものを見たり、美味しいものを食べたり。だから私、ナナシには感謝してるし、……このダンジョンにも、感謝してる」

 

「え、ダンジョンにもって」

 

「ここでの活動がなかったら、私は今もお人形さんのままだっただろうし。その扱いを変えられたのは、ナナシたち仲間と、ゲヘナダンジョンのおかげなの。……ねぇ、スー」

 

 フェアちゃんがすすっとスーちゃんさんににじり寄り、自然な感じで手を握りました。

 

 あー、一気にいきましたね。

 

「私ね、ナナシたちの力になりたいの。そしてそれと同じぐらい、貴女の力にもなりたい。このままナナシが攻略を進めていったら、貴女とこのダンジョンはどうなるの?」

 

「そ、それは……」

 

「貴女が倒されたら、このダンジョンは消えちゃうんじゃないの? せっかくお友達になれたのに、そんなことになったら、私、悲しいな」

 

「と、友達って……、あんた」

 

「違うの? こうして一緒にご飯を食べて、お互いのことを知り合って、……お互いの境遇に()()したんなら、それはもう友達なんじゃないの?」

 

「友達……。あたしと、あんたが……」

 

「うん。……ねぇ、スー。私、せっかくできたお友達が困っているなら、なんとかしてあげたいって思う。友達と友達が争うようなことになりそうなら、そうならないように一緒に知恵を絞りたいと思う。スーのこともワンダーコールのことも悪いようにはしないって、初代皇帝陛下の名に誓うから。だから、ね……?」

 

 フェアちゃんが真剣な眼差しでスーちゃんさんを見つめると、スーちゃんさんは照れたように顔を下に向けました。

 

 ああ、堕ちましたね。

 

「貴女とこのダンジョンのこと、もっともっと教えて? 皆にとって良い方法を、私にも考えさせて」

 

 大丈夫、任せて。

 と、フェアちゃんが言います。

 

「仲良くなりましょう、スー。私と貴女なら、きっととっても仲良くなれると思うから」

 

 コクリ、とスーちゃんさんが頷きました。

 

 いやぁ、見事なものですね。

 皇族の交渉術(ロイヤルネゴシエーション)が決まりました。

 

 結局この後フェアちゃんが、根掘り葉掘りこのダンジョンのことを聞き出してくれました。

 

 僕とメラミちゃんとキャベ子さんは、その邪魔をしないように黙々(もぐもぐ)とすき焼きを食べ進めたのでした。

 

 うん、美味しい。

 

 

 

 ◇◇◇

 

「ふむ。つまり、ゲヘナダンジョンを完全攻略するとスキルオーブが四つもらえると」

 

 食後。

 ワンコちゃんが出してくれたお茶を飲みながら確認します。

 

「うん。八文字級が一つと七文字級が一つ、六文字級が二つだって」

 

「それなら、現状だとどうなるんですか? 僕たち、九十階層まで来ていますけど」

 

 するとスーちゃんさんが答えてくれます。

 

「現時点だと、渡せるのは第六位階が一つだけね。だってあんたたち、まだワンダーを倒してないじゃない」

 

 ふむ。

 

「じゃあ、例えばワンコちゃんを倒したら七文字級のやつがもらえたりするんですか?」

 

「んー……。システム的には、そうかしらね」

 

「ちなみにこのダンジョンって、倒したエネミーはまた次に来た時に復活してるじゃないですか。そのへんの判定ってどうなんですか?」

 

「それはまぁ、討伐されたら一旦消滅して再構築されるからね。で、その時に魔石とドロップ品を落とすのよ」

 

 ふーん。なら。

 

「ワンコちゃん。試しに僕がナナシチョーップって言いながら軽く手刀しますので、や〜ら〜れ〜た〜って言いながら消滅してみてくれません?」

 

「えいよぉ」

 

 いきます。

 ナナシチョーップ。

 

「うわー。や〜ら〜れ〜た〜よぉ〜」

 

 そうしてワンコちゃんは、光になって消えました。

 数秒後、光が再び集まってワンコちゃんになりました。

 

「どうかねぇ?」

 

「待って待って待って!? ワンダー今どうやったの!?」

 

 いえ、ワンコちゃんって光の化身みたいな存在なのでしょう?

 それにここにある体は分霊、……つまり分身体みたいなものだとお聞きしました。

 

 だから、形だけ消滅してもらってから再構築してもらいました。

 

「で、どうですか?」

 

「はっ!? えっ!? ……いや、倒した判定にはなってないけど……」

 

 うーん。それなら。

 

「ドロップ品をもらってみましょうか。ワンコちゃん。魔石とドロップ品を出せますか?」

 

「出せるよぉ。……ほれ、魔石」

 

 ワンコちゃんが、手のひらの中に光を集めると、それはそれは美しく綺麗な魔石になりました。

 なるほど。こうやれば魔力を結晶化できるんですね。

 

「それとほら、ウロコを一枚あげようかねぇ」

 

 そう言うと、ワンコちゃんは自分の首元にあるウロコを一枚剥いで僕にくれました。

 

 すごい。ものすごくキラキラしてて綺麗です。

 思わず僕は、そのウロコを口に入れて舐めてみました。

 

 うぅーん!

 美味しい!!

 

 とっても甘くて優しいお味です!

 これは、いつまででも舐めていられますね……!!

 

 僕はしばらくの間、ひたすらワンコちゃんのウロコを口の中で転がして味わっていたのですが、

 

「……? 皆さん、どうしました?」

 

 なんだか皆さんが、僕を見つめて固まっています。

 ワンコちゃんなんかは、真っ赤になったお顔を両手で挟んでオロオロしています。

 

「な、ななしぃ……。その、そういうのは……、皆の見とらんところでやってほしいんじゃが……」

 

 ああ、ごめんなさい。

 意地汚いところを見せてしまいました。

 

「で、どうですかスーちゃんさん」

 

「……あ、うん。えっとね……。……あー、九十階層クリア扱いになったわ……」

 

 そうですか。やったね!

 

「それならこの魔石とウロコはどうしましょうか。ワンコちゃんにお返ししたほうがいいですか?」

 

「ふぇっ!? いやいや、いいよぉななし。それはもう、ななしにあげるよぉ……!!」

 

 そうですか?

 あれ、ひょっとして僕が舐めちゃったのを気にしてます?

 綺麗に洗ったらいいですか?

 

「気にしているといえばそうじゃけども……! あのじゃな、ななし、その……」

 

 はい。

 

「……! そ、そうじゃ! 龍は、一度人から受け取ったものは返さんし、反対に一度渡したものは決して受け取らないんよ! だからそれは、ナナシにあげるよぉ!?」

 

 あ、そうなんですね。

 それならはい、ありがたく受け取ります。

 

 というわけで、とても大きな魔石と素敵なウロコをゲットしました。やったね!

 

 なお、ウロコを真名看破してもらったところ「光老龍の龍顎鱗」と出てきまして。

 

 これってもしかしなくても、龍顎鱗(りゅうがくりん)徽章(ブローチ)の原材料なのではないでしょうか。わーお。

 

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