僕は無敵の結界術士 〜素敵なお足の女神様に頼まれたとあっては、転生するのもやぶさかではないです(ぺろぺろ)〜   作:龍々山ロボとみ

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第2章・暗妖の大礁海・ゲソ喰いナナシの無人島探訪編
第023話・平坦な旅路


 

 拠点を飛び立ち、森の上空を東向きに進み始めてから五日目となりました。

 

 ようやく森の東端が眼前遠方に見えてきました。

 

「お嬢様、とうとう極魔の大森林から出ますよ」

 

 僕は、僕の背後で大きめのクッションにもたれてリラックスモードのお嬢様に向けて話しかけます。

 

「ほんと? いよいよ森が終わるのね。長かったわ……」

 

 お嬢様は、手に持っていた結界製タブレット(板状の結界壁の表面を、指で触ると反応して描画が変わるようにしたものです)から顔を上げて、少し疲れたような表情を浮かべました。

 

 ちなみに、タブレットの操作面には僕特製のナンプレの問題が表示されており、他にも詰将棋とか絵合わせパズルとか色々できるようにしてあります。

 

 それ以外にもお嬢様の周囲には結界製のルービックキューブや知恵の輪、立体パズルなどがたくさん置いてあり、なるべく退屈なさらないようにしてはいたのですが。

 

「休憩の時以外はずっとカベコプターの中で座りっぱなしだから、身体もにぶるし退屈も極まってきたところよ」

 

 身体活動推進派のお嬢様は、やはりどうしても退屈を感じてきたようです。

 

 まぁ、飛行機とか夜行バスでずっと座りっぱなしだとしんどいですもんね。

 

 カベコプターは平均時速が三十キロ少々しか出ませんし、景色もずっと森で変わり映えしませんし。

 

「森からある程度離れたら少しは自分の足で歩きたいわ」

 

 とのことですので、僕たちは森の端から五十キロメートルぐらい離れたところで昼休憩をし、午後からは自分たちの足で歩いて東を目指すことにしました。

 

「うぅーん。久しぶりに歩くと気持ちが良いわね」

 

「そうですね! 今日はこのまま、夕暮れまで歩くようにしましょうか」

 

 もちろん、移動速度を考えればカベコプターにずっと乗っているほうが距離は稼げるのですが。

 

 まぁ、そこまで急ぐ旅でもありませんし、そもそもどのぐらい進めば海に着くのかは全然分からないまま行っているわけですし。

 

 無理して精神的疲労を溜めるのもあまり良くないと思いますので、のんびりできるときはのんびりしようと思います。

 

 せっかくのお嬢様との二人旅ですので、なるべくお嬢様が満足のいくようにしたいと思いますし。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 しばらく歩いていると、それなりに整備された道に突き当たりました。

 

 森の外縁に沿うようにして北北西に向けて伸びているほうと、森から離れるようにして東南東に向けて伸びているほうとの二択だったので、東の海岸を目指す僕たちは東南東向けに道を歩きます。

 

「誰にもすれ違いませんねぇ」

 

「ここは、町や村からは離れているんじゃないかしら。まだ森も近いことだし」

 

 なるほど確かに。

 

 僕たちは普通に暮らしていましたが、あの森って普通の人間は絶対近づかない秘境の地なんでした。

 

 この道も、たぶん交易などの都合上どうしても必要だから存在するだけで、普段はあまり人が通らない道なのかもしれません。

 

 結局この日は、日が暮れるまで道を歩き続け、夕暮れになったところで野営をすることにしました。

 

 道から少し外れたところに結界小屋(ベッド二つが並んだ寝室に、脱衣所とシャワー室とトイレがついたものです)を作成します。

 

 小屋のそばで結界製のかまどを作り、焚き火をおこして鍋をいくつか火にかけます。

 一つの鍋にはたっぷりの水を入れて沸騰させ、もう一つの鍋ではダシ用の乾物と干し肉を入れて煮ます。

 

 その間に、小麦粉を水と混ぜて練った物を薄く伸ばして細切りにし、水だけ入れた鍋でゆでました。

 

 しばらくゆでたらお湯から取り出して器に盛り、ダシ汁と煮たお肉を入れます。

 

 最後にネギに似た風味の野草を細く切って散らすと完成です。

 

 今夜は肉うどんです。

 お嬢様には器と一緒にフォークとスプーンをお渡ししました。

 

「今日はメンなのね。美味しいけど、ちょっと食べにくいのよね」

 

 スプーンの上でフォークをくるくる回して巻きつけて食べるお嬢様が、申し訳なさそうに言います。

 

「それはまぁ、おうどんをパスタ巻きにするからだと思いますよ。前にも言いましたけど、おうどんはずるずるすするのが正式な作法ですので」

 

「さすがに、食べ物をすすって食べるのは無理ね……。いくらなんでもお行儀が悪すぎるわ。貴方の生まれ故郷とやらに行って食べるなら、やらなくもないけど」

 

 郷に行っては郷に従え、というやつですね。

 

 なので僕も、フォークにくるくる巻いておうどんを食べています。

 お嬢様の従者として、恥ずかしい真似はできませんので。

 

 二人でおうどんを食べた後は、調理に使わなかったお湯をシャワー用の貯水タンクに入れて温水にし、順番にシャワーを浴びて着替えます。

 

 着替え終わったら火を消して、結界小屋の周囲にさらに別の結界を二重で貼ります。

 一番外側の結界は人間なら通れる結界で、二番目の結界は僕とお嬢様以外通れない結界です。

 

 自分のベッドの上で夕方の礼拝を済ませると、結界小屋に使っている結界壁の光量を落として室内を暗くします。

 

「おやすみなさい、ナナシさん。良い夜を」

 

「おやすみなさいませ、お嬢様。また明日も良い日でありますように」

 

 こうして僕とお嬢様は眠りにつき、今日一日を終えたのでした。

 




ナナシ「すやすや……」
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