僕は無敵の結界術士 〜素敵なお足の女神様に頼まれたとあっては、転生するのもやぶさかではないです(ぺろぺろ)〜   作:龍々山ロボとみ

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第041話・風の吹かないビーチバレー

 

 ◇◇◇

 

「ハローチェ! こっちだ!」

 

 強烈な踏み込みで、砂浜を走っているとは思えない加速をするナルさんに、ネット際のお嬢様がボールを上げました。

 

 コートの横幅をめいっぱいに駆けてからあれだけの高さに跳べるナルさんもすごいですし、そこにドンピシャで合わせてトスを上げられるお嬢様もさすがです。

 

 ナルさんの右腕がムチのようにしなりながら、結界球をスパイクします。こちらのコートの最奥角を狙ったボールをレシーブするために、僕は砂めがけてダイブしました。

 

 届けっ……!

 

 直後、ドンッと両腕にかかる衝撃。

 ビリビリとしびれるほどの重さを、なんとか上に弾きました。

 

「ジェニカさん!」

 

 僕は、顔から砂に突っ込んだもののすぐに起き上がり、ジェニカさんの名前を呼びながらネットに向けて駆けます。

 

 ネット際で待ち構えていたジェニカさんがわたわたとボールの下に入り、ふわっと高く、ボールを上げました。

 

 ボールはレフト寄り、少しネットから離れていますが、高さは十分です。

 

 僕は落ちてくるボールのタイミングに合わせて助走を始め、高さだけならナルさんに負けないくらい、強く踏み切って跳びました。

 

「くっ……!」

 

 ぼくの正面をブロックで塞ぎにきたお嬢様が、悔しそうな声を出しました。

 滞空の高さは僕が勝っていて、このままだと上から抜かれると分かったのでしょう。

 

 レシーバーのナルさんはクロスサイドで構えているのが見えます。

 

 お嬢様の頭の上を抜くべく、まっすぐに打ち下ろしました。

 するとお嬢様、とっさに両手を空に向けて、打ち下ろしのボールを真上に弾きました。

 

 うわっ、ワンタッチ取られた!

 ソフトブロックなんて教えてないのに!

 

 さすがお嬢様、という思いと、これまたヤバい、という思いが半々になりながらボールの行方を目で追います。

 

 ボールは相手コートのエンドライン付近に落ちていき、ナルさんが追いついて高くレシーブを上げます。

 

 それをお嬢様が強引にスパイクしてきたので、僕がレシーブをして、ジェニカさんがトスを上げます。

 

 少しライト寄りに流れたトスに合わせて跳びましたが、今度はお嬢様がきっちりストレートを塞いでいます。

 

 僕が逃げるようにクロスに打つと、待ち構えていたナルさんの正面に入ってしまいました。

 

 お嬢様が、トスに入ります。

 

「もう一回、よ!」

 

 お嬢様が再びトスを上げました。

 今度は正攻法です。

 

 レフトのアンテナギリギリに伸びる美しいトスに合わせて、これまた高々とナルさんが跳躍しました。

 

 こちらのコート、ジェニカさんはネット際のままです。

 

 ブロックもスパイクもレシーブもお世辞にも上手とは言えず(というか、ジャンプしてもネットからギリギリ手の平が出るくらいです)、高いトスをなんとか上げるのでやっとなので、実にやむなしです。

 

 僕は、コート中央から少し右寄りに構えて、クロスとストレートのどちらに来ても拾えるように集中します。

 

 果たして、ナルさんはストレートを狙いました。

 

 またしてもエンドラインギリギリ、サイドラインいっぱいを狙った強烈なスパイクです。

 先ほどよりも力強いのではないでしょうか。

 

 僕は腕を弾かれながら、なんとかボールを上げました。

 痛みで腕がじんじんします。

 

「あ、ナナシくんごめん!」

 

 ジェニカさんのトスが、今度は少し低いです。

 

 僕は不十分な助走でのスパイクを諦め、相手コートの二人のちょうど間に落ちるように、指先で軽く突いて返しました。

 

 再びレシーブに備えます。

 

 するとなんとお嬢様、ファーストタッチで返球してきました。

 しかも、ネット際で待機していたジェニカさんを狙ってです。

 

 ジェニカさんが慌ててレシーブしましたが、これも低いです!

 そしてこれをトスで上げてもジェニカさんではスパイクできません!

 

 僕がむりやり拾って返すと、それをナルさんがきれいにレシーブし、再びレフトサイドへ走ります。

 

 また正攻法で来ますか。

 今度こそ、きちんと高く上げます。

 

 と、待ち構えていたところで、

 

「……隙ありよ」

 

 なんとお嬢様、トスではなくアンダーに切り替えて、ネットギリギリに落としてきました。

 

 うわっ、えぐいところ!?

 

 僕は全力で走り込み、ネットに向かって飛び込んで拾い上げました。

 

 ボールは……、ネットを越え、……って、えっ!?

 

 お嬢様、僕が上げたボールをそのままダイレクトで打ち返そうとしています。

 

 僕はとっさに身体を起こしたのですが、

 

「せやっ!」

 

 お嬢様が打った、と思うと同時に、目の前に誰かが飛び込んできて、

 

「きゃっ!?」

 

 なんとジェニカさんがブロックに飛びついていて、お嬢様の打ったボールを叩き落としたのです。

 

 うっそ!? すごい! むぎゅっ!?

 

 バランスを崩したジェニカさんが僕の上に倒れてきたので、僕はジェニカさんの下敷きになりました。

 

 苦しい……! けど柔らかい……!

 

 僕はジェニカさんの下から抜け出すと、頭を振って髪に入り込んだ砂を落とします。

 

 そして相手コートの二人を見ると、実に悔しそうな表情でこちらを見ていました。

 

 僕は、二人の足元に転がったボールを見て、ジェニカさんとハイタッチをしました。

 

 やったね!

 勝ちました!

 

 ナルさんが、ふぅ、と息を吐きます。

 

「さすがに、ハンデ十五点はやりすぎたか」

 

「いえ、最後のジェニカさんが頑張ったからよ。あそこで叩き落とされるなんて、思わなかったもの」

 

 お嬢様がボールを拾って、パンパンと砂を払いました。

 

「それじゃあ次は、私がジェニカさんと組むわ。さぁ、ハンデは何点にする?」

 

 こうして僕たちは、強化合宿最後の日を、陽が暮れるまでビーチバレーをして過ごしました。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 そして翌朝。

 僕たちはカベコプターに乗り込んで浜辺を離れ、ナルさんの実家に向かったのでした。

 




ナナシ「さぁ! 行きますよ!」
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