僕は無敵の結界術士 〜素敵なお足の女神様に頼まれたとあっては、転生するのもやぶさかではないです(ぺろぺろ)〜   作:龍々山ロボとみ

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第4章・再び極魔の大森林・天人ナナシ編
第052話・森への帰還


 

「ううっ……、しくしく……、とうとう森に入っちゃった……」

 

 カベコプター・屋形船スタイルを操縦する僕の隣で、ジェニカさんが悲しみの涙を流しています。

 

 先日、極魔の大森林に向かっていることを知ってからというもの、秘境行きをなんとか回避したいジェニカさんと、ジェニカさんにも一緒に来てもらいたいお嬢様との間で何度も話し合いが行われまして。

 

 最終的にはジェニカさんがお嬢様に押し切られる形となり、こうして皆で森に帰ってくることができました。

 

 えへへ、久しぶりですね!

 

 森の皆さんごきげんよう!

 皆のアイドル、ナナシが帰ってきましたよ!

 

 僕は、上空からカベコプターを狙って下降してくる大きなタカみたいな鳥を結界球で捕獲し、布団圧縮袋みたいにどんどん空気を抜いて密着させ、窒息させます。

 

 うーん、さすが。

 早くもアツいお出迎えですね。

 

 クギャアアアア……!?

 

 身動き一つ取れなくなったタカ君の断末魔を聞きながら、今日の晩ご飯を考えます。

 

 うん、今日は焼き鳥ですね。

 炭火でじっくり焼きましょう。

 

 ジェニカさん、焼き鳥は塩派ですか、タレ派ですか?

 それとももしやレモン派? ちょっと変わり種のタバスコ派というのも聞いたことがありますが。

 

 まぁしかし、なんでもいけますよ。

 しっかり美味しく焼き上げてみせますとも。

 

 僕は、群れで襲いかかってきているハゲワシみたいな鳥たち(先ほどのタカ君よりは小型ですが、それでも僕を掴んでヒョイっと飛べるぐらいには大きいです)を順番に捻り潰しながら、窒息したタカ君の首を捻じ切って血抜きを始めます。

 

 このハゲワシたちは、あんまり美味しくないんですよね。

 だから適度に潰して威嚇しながら、さっさと撤退させます。

 

 血抜きが終われば今度は羽をむしり、丸裸にしたところで腹をかっ捌いてハラワタを取り出していきます。

 

 血と内臓の臭いにつられてきた他の飛行生物たちも適当にあしらっていると。

 

「森に入ったとたんに次から次へと巨大生物が襲ってくる……。ほんとにここは、極魔の大森林なんだね……。ああ、お父さんお母さん、私はもうダメかも……。孫の顔も見せずに先立つ不幸をお許しください……」

 

 僕は、悲嘆に暮れるジェニカさんを慰めます。

 

「大丈夫ですよジェニカさん。この森は僕にとっては実家のようなものですから。皆さんがこの森に滞在する間の身の安全は僕が保障します。ジェニカさんは大船に、……ああ、いえ、屋形船に乗ったつもりで、どーんと構えていてください」

 

 あ、屋形船にはもう乗ってましたね、てへ。

 

 と、最後はフランクジョークで締めたものの。

 

「ううぅ……。でも、ナナシくんは二十四時間私につきっきりでいてくれるわけではないでしょう……?」

 

 それはそうですね。

 僕はお嬢様の従者ですので。

 

 お嬢様からの指示があればそちらを優先することになります。

 

 あとお風呂とかお手洗いとかベッドの中とかまではご一緒できませんし。

 

 それでも、森の中には僕が作った神殿と、その神殿やログハウス、広場を囲む大きな結界を張っています。

 その中にいれば、この森の生き物たちに脅かされる心配は決してないですよ。

 

「それはそうなのかもしれないけど……、やっぱり、怖いものは怖いよ。ナナシくんの結界のすごさは十分に分かってるつもりだけど、私なんか一瞬で踏み潰せる生き物たちが棲んでる森の中に入って、落ち着いているなんてむりだよ……」

 

 ふむ、そうですか。

 では、こうしましょう。

 

 僕は、手の平を合わせます。

 

「結界作成・簡易概念鎧」

 

 そして作成した不可知の簡易版概念結界鎧(裸の王様とは違い、僕と着ている人だけは存在を認識できます)をジェニカさんに着せました。

 

「へ……? これって」

 

「今、ジェニカさんに着せた結界鎧は、物理防御力をデフォルト設定のままにするかわりに、不可知機能と概念防御を備えたまま他人に着せることもできるようにしたものです。どうですか、森の生き物が発しているプレッシャーも、感じなくなったのでは?」

 

「……確かに、森に入ってから感じていた、心がザワザワする感じがなくなった」

 

「この森自体が強力な魔力で満ちていますし、この森に棲む生き物たちはどいつもこいつも生物としての格が高いので、普通の人は本能的な恐怖を感じるのだと思います。しかしその結界鎧は恐怖の源となる視線や重圧なども遮断できますので、その結界鎧を着ている限りは心穏やかにいられるものと思います」

 

 僕は、ジェニカさんの瞳をじっと見つめます。

 

「ジェニカさんが秘境入りを怖がる気持ちも分かります」

 

 僕にはこの森の生き物に立ち向かうための力がありますが、ジェニカさんにはありません。

 危険地帯に丸腰で入っていくのは恐怖が付き纏うものです。

 

 しかし、ジェニカさんには僕という仲間がいて、僕は決してジェニカさんのことを見捨てたり裏切ったりしません。

 

 たとえお嬢様の指示でジェニカさんから離れているときでも、その結界鎧は必ずジェニカさんを守りますし、何かあれば結界鎧を通じて僕にも伝わりますので、すぐにジェニカさんのもとに駆けつけます。

 

「……ほんとに、守ってくれる?」

 

 はい、もちろんです。

 

 それにジェニカさんはお嬢様と対等な立場で契約をしているわけですので、普段の指揮系統はさておき、緊急時の優先順位は同列である、と僕は思っています。

 

 もし、お嬢様とジェニカさんが、同時に別の場所でピンチに陥ったとしたら。

 僕は、影分身で二人になって、それぞれのところへ助けに行きます。

 

「ナナシくん、二人になるの?」

 

 なります。なってみせます。

 

「そっかぁ……」

 

 そう言うとジェニカさんは、

 

「それなら、……よろしくね、ナナシくん。……信じてるから」

 

 穏やかに微笑んで、それから亜空間に手を突っ込みました。

 

 亜空間から取り出したのは、僕が作った女神様像(バニーガール服で体育座りしている姿のもの)でした。

 

 ジェニカさん?

 

「私もちょっと、女神様像に祈っていい? この森で過ごす間の、みんなの安全と健康を」

 

 そう言うと、ジェニカさんは静かに手を合わせて目をつぶり、お祈りを始めました。

 

「女神様、女神様。どうか私たちをお守りください。どうか私たちを、見守っていてください。どうか、どうか……」

 

 ジェニカさんは、それからしばらく手を合わせたまま、じっと女神様像に祈りを捧げました。

 

 僕は、その様子を黙って見守りながら、カベコプターを飛ばし続けました。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 そして、とうとう森の拠点に帰ってきました。

 




ナナシ「ただいまですよ!」
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