僕は無敵の結界術士 〜素敵なお足の女神様に頼まれたとあっては、転生するのもやぶさかではないです(ぺろぺろ)〜   作:龍々山ロボとみ

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第080話・対よろです

 

 硬く踏みしめられた地面の広場が、冒険者ギルドの裏手にありました。

 

 広場の端のほうにはごろごろした石とか折れた木剣とかが落ちていて、訓練場みたいに使われていると分かります。

 

 僕は広場の中央に立って、いきりたった冒険者の人たちを順番に見渡します。

 

 そしてお嬢様に習った貴族の礼法で、ゆっくりと頭を下げました。

 

「それでは皆さん。対戦、よろしくお願いします」

 

 頭を上げると、何人かの若い男たちが順番の取り合いをしていて、やがてそのうちの一人が意気揚々と僕の前にやってきました。

 

「へへへ、悪いなお嬢ちゃん。手加減はしてやるけど、ちょいとばかし痛いかもしれねぇぞ」

 

 手には木剣が握られています。

 僕はもう一度、小さく頭を下げました。

 

「それではよーい、始め!」

 

 受付嬢さんが審判役のようです。

 よく通る声で開始の合図をします。

 

「おりゃあっ!」

 

 合図を聞いた若い男の人が大きく木剣を振りかぶり、僕に向けて振り下ろしてきました。

 

 ……うーん。

 

「結界作成」

 

 遅すぎますね。

 

 僕は相手が木剣を振り上げたのを見てから手を合わせ、自分の周りをデフォルト結界で囲みました。

 

 ガギン、と木剣が結界壁を叩きます。

 

「お、一発じゃ無理か! だが、結界ってのは何発も叩いてやれば……!」

 

 そう言いながら、若い男の人は何度も何度も木剣を結界に叩きつけます。

 

 何度も何度も。

 

 何度も何度も何度も。

 

 何度も何度も何度も何度も……。

 

「はあっ、はあっ、はあっ、はあっ……!」

 

 やがて連打していた若い男の人の手が止まりました。

 

 顔から汗が垂れ落ち、息が上がって肩が上下しています。

 

「もうおしまいですか?」

 

 僕がたずねると、若い男の人は顔を歪ませながらさらに打ち込んできます。

 

 おおおおお! と吠え猛りながらガムシャラに結界を叩いてきました。

 

 けど、それだけですね。

 

 三分ほど待ってみましたが、最後は木剣が手から滑り飛んで、両手両膝を地面について息を荒げています。

 

 これ以上待っても続きは来そうにないので、僕は結界を解除して飛んでいった木剣を拾い、若い男の人に歩み寄って首筋に木剣を突きつけました。

 

「まずは僕の勝ち。……で、良いですか?」

 

 受付嬢さんのほうを見て聞くと、受付嬢さんは少しだけ悔しそうな顔をしたあと「勝者ナナシ様!」と言いました。

 

 一人目。僕の勝ち。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 二人目。一人目より少し歳のいった男の人です。

 手には木製の棍棒が握られています。

 

 対戦開始の合図とともに相手の人は棍棒を両手で持って大上段に振り上げ、僕に向かって振り下ろしてきます。

 

 僕はまた振り下ろしに合わせてデフォルト結界を作成し、棍棒を受け止めました。

 

 二人目の人もしばらくガンガンと棍棒を叩きつけてきていましたが、やがて棍棒が根本からベキリとへし折れてしまい、「……降参だ」と言いました。

 

 二人目。僕の勝ち。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 三人目。二人目よりさらに歳のいった男の人です。

 手には長剣が握られています。

 

「真剣だが、まさかダメとは言わないよな?」

 

 はい、もちろんです。

 

 対戦開始の合図とともに相手の人は素早く踏み込みながら長剣で切り付けてきましたので、僕もそれに合わせてデフォルト結界を作成します。

 

 長剣と結界がぶつかりました。

 

 ガキンッ!

 

 と大きな音がして、長剣が半ばから折れました。

 折れて飛んでいく剣の先端が周りの人たちに当たると危ないので、別の結界を使って受け止めます。

 

「はい、返しますね」

 

 僕が、受け止めた剣先を男の人の足元に投げ返すと、男の人は「……はははっ! こりゃまいった、降参だ」と言いました。

 

 三人目。僕の勝ち。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 で、その後も、合わせて二十人ぐらいが挑んできてくれましたが、やはりというかなんというか、誰も僕の結界を破ることはできません。

 

 まぁ、この人たちにティラノ君を超える脅威度があるとは思えませんでしたし、それも当然のことなのでしょうが。

 

 とちゅうから僕は、面倒なのでまとめてかかってきてくださいとお願いをしたうえで、二人目の人の折れた棍棒の先っぽを削って簡易な女神様像を作りながらデフォルト結界の中で時間潰しをしていましたし、外にいる人たちが全員力尽きたあたりで女神様像が出来上がったので結界を解いて外に出ます。

 

「女神様、女神様。いつもありがとうございます。女神様からいただいた結界術のおかげで、僕は今日も健やかに過ごせています」

 

 女神様像を地面に置いてその前にひざまずき、女神様に感謝の祈りを捧げていたところ。

 

 最初に僕に挑んできた若い男の人や、その人と仲良さげな人たちが、揃って文句を言ってきました。

 

「ふざけんな、なんだその結界は!?」

 

「絶対ズルだろ! 普通の結界がそんな硬ぇハズねえだろ!?」

 

「つーか初手で引きこもって出てきやしねぇじゃねえか! 俺たち全員倒せるとか言ってたのはどうなんだよ!」

 

 ふむ……。

 

 僕はずっと審判役をしてくれていた受付嬢さんに目を向けます。

 

「……確かに、ナナシ様の結界術が凄まじいということは、よく分かりました。護衛依頼などなら、皆様ノドから手がほど欲しがられる実力だと思います。……しかし、守っているだけでは……。たとえば、討伐依頼など際は、どうされるおつもりですか?」

 

 ふーむ……。

 

「それなら、結界での完全防御態勢は取らないことにして、もう一度戦ってみますか? もちろん、結界術を完全に使わずに戦うことなどはしませんが、適宜の局所的な防御などにとどめますし、一度作った結界は五秒以内に自動解除されるように設定します」

 

 という感じで譲歩案を出してみると、先ほど文句を言ってきた人たちがノッてきました。

 

 あらためて、一人目に対戦した若い男の人と向き合います。

 

「へっへへへ! 今度こそ、アンタに世間の厳しさってやつを教えてやるよ!」

 

 若い男の人は、先ほどと違って腰に吊っていた長剣を抜いて構えています。

 

 本気でやってやるということなのでしょうが、しかし。

 

「なるほど。しかしそれなら、一人ずつでないほうがよいのでは? 後ろではやし立てているお友達と一緒にまとめて来ていただいてもかまいませんよ? 結果は変わりませんので」

 

 提案してみると、皆さん顔を怒気に染めて、次々に獲物を構えます。

 

「このクソガキが……!」

 

「もう謝っても許さねぇ」

 

「ぜってー泣かす」

 

 全部で五人。

 僕を取り囲むように立ちました。

 

 受付嬢さんが、さすがに少し心配そうな顔で僕を見ています。

 僕は、ニコリと笑って頷き返しました。

 

「それではよーい、……始め!」

 

 合図と同時に五人全員で切り掛かってきたので、僕は正面の一人に向けて一歩踏み出します。

 

 正面の人は右手で持った剣を斜めに振り下ろしてきているので、右手の外に向かうように半歩さらに斜めに踏み込みつつ剣をかわし、同時に右の拳を突き上げるようにしてミゾオチに捻り込みました。

 

「ぐおっ、」

 

 一人は呼吸困難で崩れ落ち始め、残りの四人の獲物が空振って地面に刺さったぐらいのタイミングで僕は正面の人の隣にいた人のコメカミ目掛けて中指を尖らせた形の右拳を打ち込みます。

 

「ぐうっ!?」

 

 さらにその人を突き飛ばして奥にいた人にぶつけつつ今度は正面にいた人の反対隣にいた人に向き直って踏み込みました。

 

「はっ!? なっ!?」

 

 剣を振り下ろしたままだったのでそのまま寄って中指を立てた拳で喉仏の下を突き込み後方に飛ばすと、ようやく地面から剣を抜いて再び切り掛かってきていた四人目の人の横薙ぎを、小さく作った結界壁で受け止めました。

 

「ぐっ!? がっ!?」

 

 とんっと踏み込んで顎先を蹴り上げた後は、押し飛ばされた二人目に巻き込まれて倒れていた最後の人に向き直りました。

 

 この時点でもう一対一の状況ですが、こちらは普通に立っていて、向こうは獲物が手から落ちて尻もちをついた状態ですので。

 

「ま、まいっ、」

 

 蹴りやすい高さにある頭を、回し蹴りで蹴り飛ばしてあげました。

 ベギッ、と鈍い音がして、最後の人がばたりと倒れます。

 

 何か言おうとしていましたが、まぁ、いいでしょう。

 

 というわけで。見回してみますが五人全員痛みでうめくか、意識を失って動かないかの状態です。

 

 対戦開始からここまで十秒ぐらいでしょうか。

 

 僕は、驚いた表情になっている受付嬢さんを、あらためて見つめます。

 

「僕の勝ち、……でいいですよね?」

 

 はいそれでは。

 次の方、来てください。

 

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