僕は無敵の結界術士 〜素敵なお足の女神様に頼まれたとあっては、転生するのもやぶさかではないです(ぺろぺろ)〜   作:龍々山ロボとみ

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第082話・対ありです

 

 紅髪の女の子(メラミちゃん、というみたいですね)は相対する僕を見て、思わずといった感じに鼻で笑いました。

 

「ハッ、なんだテメー、よくよく見ればひょろっちいツラとナリしてんな。そんなんでよくコイツらをボコれたな」

 

「まぁ、はい。皆さん僕より弱かったので」

 

「はーん、言うねぇ。……アンタらも恥ずかしくねーのか、こんな女みたいなナヨっとした()()に転がされてよー! まさかとは思うが、女みてーな見た目に騙されて手ぇ抜いたんじゃねーだろーな!」

 

 メラミちゃんがそう言うと、受付嬢さんや周りの冒険者たちが揃って動揺したようでした。

 

「えっ……、ナナシ様は、男性なのですか……?」

 

 受付嬢さんが呟き、僕は「そうですよ。僕はスーパーバリアマンです。つまり男です」と答えます。

 

 いやしかし、ちょっと驚きました。

 

「こっちに来てから初めてですよ、僕のことを男だと見抜いた人は」

 

 隠してるつもりも騙してるつもりもないのですが、こちらに来てからというもの会う人会う人全員が僕のことを女の子だと間違うので、最近はなんかもういっかなと思って、あえて訂正しないようにしてるんですよね。

 

 だというのに、この子は一目見て僕のことを男だと見抜きました。

 

「ああっ? んなもん見りゃ分かるだろ。肉も骨も男の形してるし、立ち方だってそうじゃねーか」

 

 なるほど。おそらくこの子は、眼が良いのでしょう。

 

 僕も人を観る眼の良さに関してはそれなりの自負がありますので、分かります。

 

 じーっと見てると、相手のことがなんとなく分かってくるんですよ。

 隠しているようなこととか、見落とされがちなこととかが。

 

 あっ。ということはもしかして。

 

 僕が無言で手を合わせると、メラミちゃんはバッと後方に飛び下がりました。

 

 おおっ、やっぱり。

 

「おいおい、不意打ちか? けどそういうのは見えねーところからするもんだ」

 

 この子、()()()()()()()()()ますね。

 

 起点が見えるということは、たぶん僕と同じように魔力の流れも見えるのでしょう。

 

 魔力の流れが見えるなら、魔力操作の拙い相手にならまず負けることはない(魔力の流れを読めば相手が次に何をしようとしてるのか丸分かりになるので)ですし。

 

 だからこそ、この場で一番偉そうに振る舞えるのだと思います。

 

 僕と同じように、この子からしても、このギルドにいる他の皆さんはレベルが低いように感じるわけです。

 

 ナルさんとかレミカさんならその辺りがほとんど読めないですし、最近ではお嬢様も魔力の流れが読みにくくなってきているのですけど。

 

 この子はたぶん、お嬢様に近いぐらいの強さは持ってそうに見えます。

 

 なるほどなるほど。それなら。

 

「この程度で不意打ちだなんて、そんなまさか。それにしても貴女は他の皆さんより強そうですね。肩周りと手首周り、それにふくらはぎの筋肉(にく)のつき方を見れば分かります。素晴らしいですね。見惚れてしまいそうです」

 

「なんだ急に? けどまぁ分かってんじゃん。アタシは強ぇ。この街では敵なしさ」

 

 自信ありげに胸を張る紅髪の女の子に。

 

「だから僕もちょっとだけ本気を出しますね。貴女を完膚なきまでにボコボコにして、ケチョンケチョンにしてあげます」

 

「……あ゛ぁっ?」

 

 僕はニッコリ笑って煽ってあげました。

 メラミちゃんは、額に青筋を浮かべて低い声を出しました。

 

「大丈夫ですよ、僕に勝てなくても恥じることはないですから。上には上がいるというごく当たり前の事実を噛み締めて、今日のところは地べたに這いつくばってくださいな」

 

「ぶちのめすぞ!!」

 

 素早く臨戦態勢に入るメラミちゃん。

 受付嬢さんが慌てて手を上げると「よ、よーい、始め!」と言いました。

 

 次の瞬間。

 

「オラァっ!!」

 

 素早い右ストレートが僕の顔面に突き刺さりました。そしてメラミちゃんはギョッとした表情を浮かべます。

 

「なっ……!?」

 

 それはそうでしょう。

 僕の顔には透明で粘着性のある結界壁で作った仮面が被されているのですから。

 

 僕の鼻っ柱を殴ったはずなのに鉄より硬い感触に阻まれ、慌てて引こうとした拳が粘着力で固定されて動かせないのですから。

 

 それはもう驚いていることでしょう。

 

「えいっ」

 

 僕は仮面結界をその場に固定したまま数歩下がり、手を合わせました。

 

 メラミちゃんを取り囲むように結界を張って閉じ込めると、僕は助走をつけて駆け寄り、両足で踏み切って足を揃えると、メラミちゃんを囲んだ結界壁にドロップキックを喰らわせました。

 

 衝突の瞬間、結界の位置固定を解除して結界ごとメラミちゃんを吹き飛ばすと、缶蹴りで蹴られた缶みたいに結界が地面を転がっていきます。

 

 数秒後、自動的に消滅した結界の中からメラミちゃんが出てきました。

 

「て、テメェ……! ナメやがって……!」

 

 メラミちゃんは少しだけ目を回した様子でしたが、すぐに頭を振って気を取り直すと再び殴りかかってきます。

 

 そのたびに僕は、結界で包んでから転がしたり、高く持ち上げてから落としたり、結界首輪で足首を捕まえて逆さ吊りにしたりして、メラミちゃんをあしらうようにして戦います。

 

 直接殴る蹴るをするのではなく、相手のしてくることを全部無効化して膝をつかせてあげる感じですね。

 

「くそっ……! くそおっ……!!」

 

 そのたびにメラミちゃんは、悔しさで歯ぎしりし、怒りで顔をしかめ、疲労感で息を荒くします。

 

 そして何度も何度もかかってきては地面に転がされて、身体中砂だらけになりました。

 

 とうとう四つん這いのまま立ち上がれず、顔だけを僕に向けてきます。

 あまりにも転がされすぎて、目が回っているのかもしれません。

 

「なんなんだお前……! なんでこんな……!?」

 

 涙目になっているところ悪いのですが、そちらから来ないならこちらから寄りますね。

 

 僕はスタスタと歩み寄るとシャベルのような形(スコップ、のほうがいいでしょうか? とにかく大きくて土を掘るやつです)にした結界壁で地面ごとメラミちゃんをすくい上げて、ひっくり返して地面に落とします。

 

「ぶわっ!?」

 

 掘られた地面に落とされて、上から土をかけられた紅髪の女の子は、慌てふためいて自分の上の土を払いのけます。

 

 そこに何度か掘り返した土をかけてみます。生き埋めにならない程度に手加減しつつ、穴からは抜け出せない程度に大量の土を何度も何度も上からかけてあげます。

 最後にもう一度シャベル型結界壁でメラミちゃんごとすくって穴の隣の地面にポイっと落とすと、箒型の結界壁でメラミちゃんの上に積もった土を払いのけてみます。

 

 土まみれのメラミちゃんは、もう立ち上がる気力を失ってしまったようでした。

 

「もうおしまいですか?」

 

 僕が問いかけても返事がありません。

 うーん、思ったより早かったですね。

 

 いや、見た感じ才能はあるけどそこまで真剣に努力してきてないように見えたのと、今の実力に満足してしまってこれ以上の上を目指さずにお山の大将になってしまっていそうだったので。

 

 ちょっと雑に力の差を見せつけてあげて、鼻っ柱をへし折ってあげたらまた努力し直すきっかけになるかな、と思ったんですけど。

 

「……テメーいつか、ぶっとばす。けど今日は、……もう、いい」

 

 ギラリとした目を僕に向けてそれだけ言うと、ぐうっと倒れ伏して動かなくなりました。

 

 ふむ。これはあんまり折れてない感じでしょうか。

 

 まぁ、すぐにヘコたれるよりは良いのかもしれませんが。

 

 それよりも。

 

「受付嬢さん。……えっと、ミーシャさん、で合ってますよね。これは僕の勝ちでいいですか?」

 

「…………」

 

 受付嬢さんは無言で頷きました。

 

 よし、それなら。

 

「そちらのメラミちゃんと貴女は、約束通り僕と晩ご飯を食べましょう。なるべく良いお店を紹介してください。どれだけ高くてももちろん僕がお支払いしますので」

 

「……それは、その」

 

「お約束を守っていただけるのなら。僕は明日からこの街の冒険者ギルドの一員として一生懸命頑張って活動します。辺境伯様の覚えめでたくなるまで全力を尽くすつもりですし、この場の皆さんでは手に余るような依頼でも真剣にこなしてみせます」

 

 そう言ったところ、受付嬢のミーシャさんは数秒ほど頭の中で計算を巡らせているようでした。

 

 そしていろいろな事情を勘案したようで、やがて計算が終わると「……仕方がありません、ご一緒させていただきます」と言ってくれました。

 

 わーい、やったね!

 

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