僕は無敵の結界術士 〜素敵なお足の女神様に頼まれたとあっては、転生するのもやぶさかではないです(ぺろぺろ)〜   作:龍々山ロボとみ

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第087話・キャラバン大行進

 

 馬車の列……キャラバンは、僕たち護衛の冒険者とともに大量の商品、移動中に必要な荷物を乗せてゆっくりと街道を進みます。

 

 お馬さんの足音がカポカポ鳴って、馬車の車輪がキュラキュラと回ります。

 

 護衛役の冒険者の皆さんは、馬車の周囲を一緒に歩いて警戒したり、交代で馬車に乗って休憩したりしています。

 

 僕も隊列の真ん中あたりでてくてくと歩いています。

 

「いやはやしかし、相変わらずすごいですなぁ」

 

 商隊長さんが天を見上げて呟きました。

 

 商隊長さんは、なぜか僕の隣で一緒に歩いています。

 馬車の中にいなくていいんでしょうか。

 

「ナナシ殿の結界術、いまだに圧倒されてしまいますな」

 

 そして僕は、馬車十数台からなるこのキャラバンの列全てを覆う形で巨大結界を作成し、キャラバンの移動に合わせて結界を動かしています。

 

 外から見たらめちゃくちゃ馬鹿でかい光の壁に囲まれた一団が道を歩いている形です。

 

 めっちゃ目立ちますよね。けど、安全には代えられませんので。

 

「こんなに大きい結界が我々の商隊に合わせて動いているというだけでも末恐ろしいのに、自由自在に形状変化可能で、しかもおそろしく頑丈。そんな結界を朝から晩まで出していても疲れ知らずとなれば、なるほど、わずか一月ほどでCランクまで昇格するのも頷けますな」

 

 機嫌よく褒めてくれるので、僕は「いえいえそんな」と謙遜をしておきます。

 

「それを言うなら他の皆さん、特に他の冒険者の皆さんが寛容でしたので」

 

 僕が、こうやって全てを結界で覆ってしまうと、他の護衛の冒険者たちの仕事が減ることになります。

 

 なので、最初はこうした巨大結界を作るのは遠慮しようかなと思っていたのですが。

 

 他の冒険者の皆さんから声を揃えて「いや、それやってよ。マジで」と言われ、他の皆さんがもらう分の報酬の一部を僕の取り分として回す約束で、僕の結界術が火を吹きました。

 

 これにより僕は、交易交流街に着くまでひたすら大結界を張りっぱなしにし、移動中も休憩中もこの商隊をガードしているのです。

 

 辺境伯様の住む街を出て今日で三日目。

 

 道のりの半分を越えたあたりになりますが、おかげさまで誰一人負傷するどころか武器を抜くことすらなく、平穏無事な旅程となっています。

 

 と、そこに。

 

「おおーい、ナナシー」

 

 先頭の馬車のホロの上で昼寝をしていたはずのメラミちゃんが、こちらに向かって駆けてきます。どうしたのでしょう。

 

「あっちのほうにデケー牛の群れがいるから何頭か狩ってくるわ。運ぶ板を貸してくれ」

 

 お、良いですね。

 行ってきてください。

 

 僕はふよふよ浮かぶ結界板(引っ張ると自在に伸縮するやつです)をメラミちゃんに預けると、メラミちゃんは浮遊板を引き連れてキャラバンの進路の右前方向に駆けていきます。

 

「……牛?」

 

 と、商隊長さんが首を傾げます。

 

 およそ二時間後にメラミちゃんが帰ってきて、仕留めた牛数頭を目にした時、商隊長さんは乾いた笑いを浮かべました。

 

「……まさかとは思いましたが、本当に剛突牛でしたか。凶暴かつ群れで突進してくるこの暴れ牛を、よく一人で相手しましたな」

 

「お? ああ、まぁな。向こうから突っ込んでくるから、ツノ掴んでねじって転ばせて首をへし折ってやればラクショーなんだよな、コイツら。おい、ナナシ。コイツの肉、ウメーからよ。今日の晩飯これ焼いてくれよ」

 

 良いですね、焼きましょうとも。

 

 そのまま行進中に大結界の外で結界包丁を使ってバサバサとさばき、この日の晩ご飯として結界網で焼いて美味しくいただきました。

 

 なお、さすがに僕とメラミちゃんの二人ではお肉を食べきれないのと、他の皆さんがめちゃくちゃ食べたそうにしていたのでキャラバンの全員でお肉を食べました。

 

 そして残ったお肉のうち半分は自分たちの分にして、残りの半分はお金に余裕のある商人さんに買い取ってもらいました。

 

 

 

 ◇◇◇

 

「てかさー、ナナぽんの結界術ヤバすぎじゃね? なしてこんなスゴいん? 悪魔に魂でも売った系?」

 

 焼肉パーティーの翌日、勇猛楽団のヘリーちゃんが僕の隣で一緒に歩きながら話しかけてきました。

 

 ヘリーちゃんの後ろにはユニ子ちゃんとロビンちゃんがいて、メラミちゃんはまた先頭の馬車のホロの上で昼寝をしているみたいですね。

 

 しかし、ふふふ。

 ヘリーちゃんは目のつけどころがいいですね。

 

「この結界術は、僕の敬愛する偉大なる女神様からいただいたものですからね。それはもう、すごいのです」

 

「神様パワーかー。てことはナナぽんは神官タイプなん? 確かに結界術使うのってそっち系が多いかー?」

 

 ああ、いえ。

 僕自身は女神様のことをとても信仰していますが、神官とか巫女さんとかみたいなのとは違うと思います。

 

「ほへー。よく分からんけど、ウチもナナぽん拝んでたらおこぼれに預かれちゃうとか? はにょはにょウェーイってしてもオケ丸?」

 

「いえ、僕じゃなくて女神様像に祈ると良いですよ」

 

 僕は、結界布製の肩かけカバンから、手製の女神様像を取り出して、ヘリーちゃんに手渡しました。

 

「うっわ、チョーカワイイ! そんで細かっ! え、まさかこれナナぽん自分で彫ったん? やっべ、マジパねぇっしょ」

 

 女神様像を掲げてすげーすげーと騒ぐヘリーちゃんにつられて、ロビンちゃんとユニ子ちゃんも女神様像に目を向けます。

 

「ふわあぁ、すごい……。ナナシさん、手先も器用なんですね……!」

 

 ロビンちゃんは、キラキラとした瞳で女神様像を見つめます。

 

「ナナシは実にアーティスティックだね。良かったら今度はぼくの像を彫ってよ」

 

 ユニ子ちゃんは、女神様像をひとしきりながめたあとは自分の木像も作ってほしいと言ってきました。

 

 うーん、しかし。

 

「作ろうと思えば作れますけど、基本的には胸像になりますよ」

 

「なぜ? こっちの木像は全身立ち姿で、服のヒラヒラまで再現しているというのに」

 

「いえだって。僕、ユニ子ちゃんのことをよく知らないですし。今のところは可愛いお顔しかちゃんと見ていないので、そこしか彫り出せないんですよ」

 

 それか、キュッと締まった足首ならいけますけど。

 さすがに、足首だけの木像を作るのは求められていないと思いますし。

 

「えー! ユニちんの像作れるん!? ならウチのもよろぴこ〜。ついでにロビっちのもオナシャース!」

 

 とか思ってると、ヘリーちゃんから無茶振りが。

 

「つーかなんなら、ウチら勇猛楽団の三人が歌って踊って演奏してる姿を像にするってどうよ! かっぴょイイってテンション上がるって〜! フー!!」

 

「それいいね。ぼくも楽しみでドキドキしてきた」

 

「もう、ヘリーもユニスもいい加減にしてよ。ナナシさんが困ってるでしょ」

 

 見るに見かねた様子でロビンちゃんが間に入ってきます。「ごめんねナナシさん、騒がしくて」と困ったように頭を下げられました。

 

 ふむ。いえいえそんな。

 それに、そうですね。

 

「僕もたまには新しいインスピレーションが必要なのかもしれません。この後のお昼休憩の時に三人をじっと観察してもいいのなら、今日の夜休憩のときに三人並んだ木像を彫りますよ」

 

「まっじで! さっすがナナぽーん!」

 

「やるね。必要とあらばポーズもとるよ。いっぱい観察するといい」

 

 僕の言葉に、ロビンちゃんが申し訳なさそうにします。

 

「あの、ナナシさん。この二人のワガママはいつものことなので、そんなに真剣に引き受けなくても大丈夫ですからね。たぶん明日の今頃にはコロっと忘れて別の話をしてるだろうし」

 

「あー、ロビっちひどー!」

 

「暴論だ。断固抗議する」

 

 まぁまぁ、大丈夫ですよ。

 

 僕も可愛い女の子をじっと見たり、それで感じたことを描画したり作像するのは好きなので。

 

 と、そこに。

 

「おおーい、ナナシー」

 

 先頭の馬車のホロの上で昼寝をしていたはずのメラミちゃんが、こちらに向かって駆けてきます。どうしたのでしょう。

 

「なんか、キャラバンの進路先にデケー山ができてる」

 

 ……はい?

 

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