イシュタルと光輝によって行われた交渉は全て滞りなく反映された。しかし、一度全生徒が戦闘訓練を行い、大迷宮と呼ばれるダンジョンに赴いての模擬戦闘を行ない、その後に戦争参加を決断する機会を与えるというものが追加された。
自分が強いということを認識してもらい、気持ちよく戦争参加してもらった上で戦力を増やしたいという思惑が透けて見えて光輝は思わず笑いそうになった。まぁ提案した時に憧れを伝えたのは他でもない光輝だが。
しかもこの決定はイシュタルの一存で決まった。イシュタルがこの旨を神山と呼ばれる光輝達が召喚されたところから降りて王宮に向かった後に国王に伝えたが、これは簡単に了承された。宗教に支配された国なのだなと光輝は理解した。
レインが上将軍を務めるサンクワールが愛と美と調和の女神メナム神を祀る教会を作る願いを跳ね除けていたことからもこの国の異常さがこの国に来たばかりの光輝にもよく分かってしまう。
「(この国なら簡単にあの神官も教会建てれそうだな、信心深い人多そうだし)」
神官なのにそこそこ強く、本気で教会を建てようと頑張っていた少年のような神官と話したことがある光輝はそう思わずにはいられなかった。
王と謁見した後に光輝達を待っていたのは立食式の歓迎パーティーだった。戦争中なのにここまで豪華なパーティーをする余裕があるのかと思いつつも光輝は出された料理に舌鼓を打っていた。
「この鳥料理美味いな…前世のアヴェルーンで食べた肉料理に負けず劣らずだ…」
ククルー鳥という日本どころか地球には存在しない鶏を用いたチキンステーキは特に光輝の舌にあったようで、2枚、3枚と次々に平らげていた。
まぁアヴェルーンを思い出していたら怪盗ブラック仮面を名乗る通りすがりのドラゴンスレイヤーと戦ってまたフルボッコにされたことを思い出してしまい、顔を青ざめて吐きそうになっていたが。
そんな顔を青くした光輝の元に金髪緑眼の綺麗な女の子がやってきた。身長がかなり低く、レインが守っていた女王と同じくらいの身長だなと考えつつも、すぐに姿勢を正して彼女に応対した。
「先程の謁見以来ですね。改めて、私の名前はリリアーナ・SB・ハイリヒ。この国の第一王女です……顔が青いですがどうなさいましたか?」
「ははっ、お気になさらず。麗しき王女殿下、私に何用でしょうか」
「言葉が上手ですね。私は教皇様と交渉をし、自分達に優位な交渉結果を引き出させた貴方とお話がしたかったのです」
緑の目を光らせ、光輝を測るように見るリリアーナ。そんな彼女を一筋縄では行かなそうな王女様だと思いながらどういなそうか考え始める。
「私が上手く話した訳ではありませんよ。ただあちらが自爆しただけ。私たちと話すなら部下を連れてくる必要がなかった。単身でこちらに乗り込んで話し合いをすればよかったのですよ」
「そうですか……」
何か考え込む仕草をしながらじっと光輝を見つめるリリアーナ。考えるのはいいのだが、さっきからジト目でこちらを見てくる恵里が怖くてさっさとどこかに行かないかと思ってしまう光輝。
「だとしても教皇様は交渉というより話術においてかなりのものなのです。あれを学ぶことが出来れば王族としても更なる高みへと行ける気がします。なので教皇様を言論で打ち負かした貴方に習いたいのですが」
「打ち負かしてないです。マジで帰ってください。貴族と恵里と何故か雫の目が怖いんです……近づかないでください…!!」
早口で迫ってくる王女を離すために手で離れるようにジェスチャーしながら離れるべき理由を述べるも全然離れてくれず、結局リリアーナの弟の王子が彼女を光輝から引き剥がして帰っていった。
恵里というヤンデレに好かれている光輝には厄介な女を惹き付ける才でもあるのかもしれない。
★★★★★★★
立食式のパーティーを終え、これから自分達が住むことになる部屋へと案内されると何故か恵里がいた。今日から光輝くんの世話は僕の担当だから♡と言ってベッドをテキパキと準備して自然と一緒に寝ていたが、正直疲れ果てていた光輝はそれを指摘せずに一緒に寝た。
恵里はどうやら光輝くんとの相部屋は僕だからと案内していたメイドを詰め、その剣幕に押されたメイドは仕方なく光輝と同じ部屋をセッティングしてしまったのだ。
その事実を後日知ってしまった愛子は口から魂が出そうになっていた。不純異性交友どころの話では無いから当然である。
翌日、光輝達は朝食を食べた後に訓練場へと呼び出された。どうやらステータスの確認をするらしく、騎士団長のメルド・ロギンスがステータスプレートについて説明していた。
「プレートの一面に魔法陣が刻まれているだろう。そこに、一緒に渡した針で指に傷を作って魔法陣に血を一滴垂らしてくれ。それで所持者が登録される。 ステータスオープンと言えば表に自分のステータスが表示されるはずだ。ああ、原理とか聞くなよ? そんなもん知らないからな。神代のアーティファクトの類だ」
「(便利なもんだな。これさえあれば自分の実力が簡単に把握できるわけだ)」
誰かがメルドの言葉に出てきていたアーティファクトについて質問していたがそんなことは気にもとめず、光輝はこの画期的なアイテムを見て目を輝かせていた。
そして一目散に血を魔法陣に垂らし、ステータスオープンと言う。すると光輝のステータスがステータスプレートに顕れた。
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天之河 光輝 17歳 男 レベル1+99
天職:勇者・魔法剣士 称号:ドラゴンスレイヤー
筋力:100+9500
体力:100+9500
耐性:100+12000
敏捷:100+9500
魔力:100+10000
魔耐:100+12000
技能:アンチ・マジック・フィールド[+攻撃反応][+多重展開]・全魔法適性・全属性耐性・物理耐性・状態異常完全耐性・複合魔法・剣術[+無念無想][+無拍子][+双剣術]・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+身体魔力強化]・身体強化・縮地・高速詠唱・高速魔力回復・先読[+可能性予測]・気配感知[+広域感知]・魔力感知[+広域感知]・限界突破
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「……これ見せなきゃダメなんだよな」
光輝は頭を抱えた。どう見ても可笑しい。前世の経験が生きているからか、ステータスが高すぎる。
光輝は横にいる恵里のステータスをチラ見する。だがどう見ても光輝のと比べて普通だ。高いんだろうが、こんな馬鹿げた数値になっていない。
このステータスをメルドに見せると顔を引き攣らせて光輝の顔を二度見、三度見していた。そして出た言葉がこれである。
「頼もしい限りだな……うん、うん……………………裏切らないでくださいお願いします」
このまま土下座しそうな勢いだったのでさっさと次の生徒の元に送り出して再び光輝は頭を抱えた。
別の意味で頭を抱えている生徒が1人いたが、光輝はそんな生徒には一切気にもとめず、恐れを向けてくる騎士をどうしようか悩ましく思った。