龍滅の剣士、ありふれた世界で   作:排他的

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龍滅の剣士、ハブられる

 光輝がえげつないステータスを持っていることが分かった数日後、彼は物の見事にハブられていた。メルド曰く、他の奴らのやる気が無くなるからもう来るなと。

 

 光輝がやらかした所業は多岐に渡る。例えば前世の剣術と今世の師より学んだ剣術を組みあわせた我流剣術を用いて王国の騎士団メンバーをメルド含めて全滅したり。

 

 例えば魔法の威力確認で的の鎧どころか後ろにあった倉庫も吹き飛ばしそうになって宮廷魔法使いの心を折りまくったり。

 

 まぁ他にもいろいろやらかしまくったおかげで光輝は無事に生徒達の訓練の場から追い出され、1人で素振りをしたり、レインやシルヴィアといった強者の影を用いたイメージトレーニングや、この世界の本を読み続ける毎日を送るようになってしまった。

 

「……俺悪くない。全部怪盗ブラック仮面とサンクワールが悪い。あとザーマイン」

 

 自分の努力は全てレインやシルヴィア、ザーマインに潜んでいた魔族達といった強者と戦うために積み上げたもの。故に自分の強さは自分のせいでは無いし、そもそもこんなに弱いこの世界の人間が悪いと勝手な結論をつけてしまった。

 

 そもそも古龍を殺さなければこんな物語は始まっていないのだが。元々の原因は光輝のせいである。レイン達は悪くない。

 

「……どうしよう、暇だ」

 

 近いうちに戦闘訓練のために大迷宮に向かうとは言われていた。しかし本はだいたい読んでしまったし、イメージトレーニングは情報の更新がないから味気ない。今にもちぎれそうな使い古した雑巾を使っている感覚だ。

 

「大迷宮とやらに行ってみようかな」

 

 そう思って大迷宮がどこにあるか聞こうと立ち上がると、少し離れたところに挙動不審な動きをする男がいることに気づいた。あまりに小さい反応に思わず意識から外していたその男の名前は南雲ハジメ

 

「(確か……香織の想い人だったな、ちょうどいい)」

 

 ハジメ本人が聞けば首を思いっきり振り回して否定するワードを光輝は心の中で告げてしまった。

 

 

 ★★★★★★★

 

 

「手応えがないな」

 

 バッサバッサとなぎ払われていく魔物。光輝の腕前なら1本幾らもしない剣であろうとも斬鉄剣のような切れ味に早変わりする。大迷宮に入ってから苦戦という苦戦はせずに無双ゲームかと言わんばかりに突き進んで行く。

 

 魔物は魔石だけ残して消えていき、光輝の通る道にはボトボトと魔石だけが落ちていて、それをせっせと拾うものが1人いた。南雲ハジメである。

 

 彼はステータスが元々低いため訓練にならず、サンドバッグになるのが嫌だった為に図書館に引きこもっていたのだが、光輝に目ざとく見つけられ、こうして大迷宮に連れてこられたのだ。

 

「な、なんで僕が……」

 

「荷物持ちだ。どうせ暇なら俺と一緒に来た方が効率よく強くなれるぞ」

 

「いや、僕は……」

 

「……まぁ強くなれなくてもどうせ訓練に来る場所だ、慣れとけ」

 

 オロオロするハジメを諭しながら、光輝は魔物を斬り続ける。彼に渡された聖剣は敵を照らしてその力を弱くするというデバフ効果を持っている為に光輝から論外と言われ、現在はただの訓練用の刃引きされた剣を使っている。

 

 刃引きされたと言っても光輝の実力があれば魔物を引き裂くことなど容易い。刃引きされた剣で魔物を斬る訓練と称して光輝はステータスの差から逃げていく魔物を追いかけて殺し回る。そしてハジメは魔石を拾う。

 

 無限ループが構築されていた。

 

 

 ★★★★★★★

 

 

 大体18階層ほど進んだ頃、光輝とハジメは迷宮内でキャンプしていた。魔物は光輝の圧倒的なまでのステータスによって除けられており、貧弱極まりないハジメのステータスでも安全に生活できるようになっている。

 

 光輝は慣れた手つきでサンドイッチを作るとハジメにそれを手渡す。材料は大迷宮を擁する冒険者の街ホルアドで買ってきた新鮮な野菜だ。

 

「美味いか?」

 

「うん、というか手際いいね」

 

「妹によく作ってた。母さんは料理があまり得意じゃなくてな」

 

 元ヤンの母は料理も食えれば問題ないという主義で、料理が毛程もできない。光輝は剣道部だったりで色々と忙しいが、暇さえあれば台所に立っていた。

 

「南雲、お前に聞きたいことがある」

 

「……なに?」

 

「香織のことをどう思ってる?」

 

「は?」

 

 ハジメはサンドイッチを食べる手が止まった。先程まで黙々と自分に魔石を拾わせていた光輝が今度は自分を悩ませる香織について聞いてきた。ハジメはよく吹き出さなかったと自分を褒めてやりたくなった。

 

「白崎さんに手を出すなってヤツ?」

 

「違う。香織のことをどう思っているか、それを知りたい」

 

「……なんで?」

 

 白崎 香織と天之河 光輝が幼馴染だというのは学園内で広く出回っていた情報である。クラスメイトと交流がないハジメもよく知っており、いつか香織に気をかけられている自分に光輝から横槍が入るのではと考えていたのだが……

 

「ランデル王子が香織に懸想しているとリリアーナに教えられたんだ」

 

「いいことじゃないの?」

 

「良くない。そもそも香織には2つ問題点が存在していてな……」

 

「?」

 

 ハジメは首を傾げた。光輝は首を傾けるハジメを見ながら喋り続ける。

 

「香織は一途な人間でな。一般的にイケメンでハイスペックな俺に全く興味を向けなかった」

 

「唐突な自画自賛だね」

 

「まぁ友達という意識の方が強いんだろうな。俺も香織のことはエキセントリックな女の子だと認識している。友情はあっても恋心は無い」

 

「エキセントリック?」

 

「そこは気にするな、まぁそんな一途な香織に出来た想い人がお前というわけだ。気にかけていることからも分かるだろう」

 

「……それはまぁ」

 

 日常的に面倒を見られていたハジメはその言葉には納得する。

 

「俺もそんな香織を応援したいと思っている。友の恋を成就させたいからな。馬鹿どもがお前から香織を引き剥がして欲しいと言ってきた時もそれを無視してきた」

 

「あ、そういうのあったんだ」

 

 香織と綿密な交流があったのに、光輝が一切自分に対して何もしなかった理由を聞いてふーんというふうになるハジメ。睨みつけやら似合わないやらぐらいしかほかの干渉が無かった理由を知ったが、別にどうでも良さそうだ。

 

「まぁそんなところにランデル王子だ。神の使徒と王家の結びつきはとても王国にとっても教会にとっても良いことでな、水面下で2人をくっつけようという動きが出てるらしい」

 

「……で?」

 

「香織の了承なんて取ってないからな、香織はもちろん拒否するだろ?で、俺がいるからもしかしたら婚姻関係を結ぶためだけで王国が崩壊するかもしれない」

 

「あ、なるほど」

 

 ステータスがバグみたいに強い光輝が香織×ハジメを応援しており、そんなところに無理やり婚姻関係を結ばせようとしたら光輝が王国をぶっ殺す可能性がある。

 

 目先の欲に目がくらんでいる香織×ランデル王子の関係を推し進める貴族はそのことに気づいてないが、リリアーナはそれにまっさきに気づいて光輝に何とかするように頼んできたのだ。

 

「何となく理解したんだけど、もう1つの問題点って?」

 

「香織の両親というか父親。香織Loveなあの人がかなりネックだ。ランデル王子じゃまず無理だと思うな」

 

 香織の父を思い出しながらそうつぶやく光輝。香織と遊ぶだけでもネチネチ言ってきたあの男なら政略結婚を推し進めようとしてるランデル王子を気に食わないという可能性もありうる。まぁそれはハジメもなのだが。

 

「まぁ恋愛結婚となれば話は別だ。という訳で香織と恋人になれ」

 

「……話聞いてて思うんだけど僕じゃダメじゃない?」

 

 ため息を吐きながら香織と恋人になるよう言ってくる光輝にハジメは自分では釣り合わないというふうに返す。だが光輝はそれに対して人差し指を振って答える。

 

「大事なのは香織の意志を尊重していることだな。まぁ無理やり結婚させる気はないが、香織はお前に対してチョロいことくらいは覚えとけ。ハロウィンのセクシー猫又を覚えてんだろ」

 

「ブフッ!……なんで知ってんの!?」

 

「あれの発案者俺だもん。面白かったぜ、顔を赤くしながらにじり寄ってくる香織から逃げ回ってるお前」

 

 去年の諸悪の根源がここにいたことが分かった為、ハジメは光輝に対して掴みかかる。本当に自分の一物が大きくならないようにするのが大変だったのだ。当然だろう。

 

 まぁすぐに無理やり座らされたが。

 

「というかあの懸想ぶりだとお前ら2人がベッドの上で○○○○○○○しながら愛を囁きあってる姿とか熱心に○○○○○してる姿とかお前ら2人がランデル王子の目の前で○○○○○○○○して見せつけるくらいしないと諦めないと思うのは俺だけかね」

 

「……迷宮内でなんてこと言うのさ」

 

「誰もいないから言えるんだよ」

 

 光輝は水を飲むとそのまま寝袋に入って寝た。ハジメは香織と光輝が言っていたことをしてる想像して眠れなかったとさ。

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