お酒を飲んだら、ホシノの唇を奪っていたらしい   作:新月

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ムシャクシャして書いた。
反省はしていない。


うへー、先生にお酒を飲ませちゃった話だよー
先生にお酒を飲ませたら、私の唇が奪われていたよー


 

 

 “──あれ、俺何してたんだっけ?”

 

 確か、アビドスのみんなと賞金首捕まえた打ち上げに誘われて、対策委員会の部屋で盛り上がっていたような……

 それからどうしたっけ? 頭がボーッとする。

 確か、ご飯を食べていたような……

 

 そんなことを考えていたら、目の前に“大きな桃”が見えてきた。

 

 “……あ、桃だ。ーー頂きます”

 

 そうして、目の前の”桃”に口を付ける。

 上手く噛めなかったけど、””が開いていたのか、中の果汁の味は感じられた。

 

 美味し……もっと食べたい。

 

 

 “んー……ちゅぅーっ……”

 

「──っ。────っ!」

 

 

 “穴”から果汁を吸い尽くすように、口を窄めて啜っていく。

 齧りついて果肉味わうのとは違うけど、これでも十分“桃”の味を感じられた。

 

 

 ……美味しいけど、なんか桃とは違う味がするな?

 

 

 以前食べた果物の桃の記憶と、目の前の“大きな桃”は味が違う感じがした。

 甘い味がするのは確かだけど……

 

 

 ……でも、こっちの方が美味しいや。

 

 

 今のボーッとした頭だと、こっちの“大きな桃”の方が凄く好きな味に感じた。

 

 

「──っ! ──っ!!」

 

 

 すると、目の前の“大きな桃”が暴れ始める。暴れ始める?

 桃が動き出すなんて、不思議だなあ。

 右手で桃の裏側を持って、左手で桃の下の“”を抑える。

 

 そうして、果汁をもっと味わおうと吸い続けるが、……果汁が段々少なくなってきた。

 

 

 ……もっと味わいたい。

 

 “んー……ペロ……ペロ”

 

「──っ!? ────っ!!」

 

 穴の中をくまなく味わうように、舌でペロペロ舐めていく。

 隙間に残った果汁を隈なく取るように。

 アイスキャンディー舐めるような感覚だけど、時々凄く固かったり、逆に凄く柔らかい果肉があったりと、思ったより感触がいろいろで楽しかった。

 

 そうしているうちに、暴れていた桃が大人しくなったのを感じた。

 うん、桃は動かないもの。そうでなきゃ。

 

 果汁が殆ど尽きたから、一旦“穴”から口を離した。

 改めて、目の前の“大きな桃”を見つめる。

 

 ──うん、凄く綺麗だ。これ好きだ。

 

 いつの間にか目の前に現れた桃だったが、既にお気に入りの物として自分の中で感じ取っていた。

 

 見ると、桃の“穴”から“赤い果肉”が飛び出している。

 赤い色の果肉の桃なんて珍しいな、そう思っていた。

 

 ああ、こぼれちゃったのかな。落ちちゃいそう。

 

 地面に落ちたら勿体ないと、そう思って“赤い果肉”を吸い上げて口に含む。

 

「っ!? ────っ!?」

 

 すると、また“大きな桃”が動き始めたが、さっきよりは動きは激しく無かったから、簡単に抑え込めた。

 今の内に、“赤い果肉”に噛り付く。けど何か違和感?

 グニュグニュした感覚で果肉の筈なのに、何故か“噛み切ってはいけない”感触に感じた。

 しょうがないので、ただただ甘噛みして、果肉を軽く押しつぶすだけにして味わっていく。

 

「────っ♡」

 

 うーん、もうちょっと味わえそう。

 そう思って、“赤い果肉”を窄めた口で思いっきり吸い込んで、果汁を吸い尽くすような勢いでバキュームのように吸ってみた。

 うん、まだ味が残ってた。

 

「──っ♡ ──っ♡♡」

 

 ……そうして、果汁を十分吸い尽くせたと思ったら、また口を離した。

 気付いたら、桃の下の“柱”が自分の体に巻きついていた事に気づいた。

 これはいい、安定して桃が食べやすい。

 

 果汁はしぼり尽くしたが、もっと味わえないだろうか?

 そんな考えが湧き出でて、いつもの自分なら行儀悪いからやらないような、寝転がって桃を食べようとして背中から地面に桃ごと倒れた。

 これなら重力で、果汁がまた出てくるかもしれない。我ながらナイスアイデアだった。

 

 そうして俺は、更に桃を味わおうとして──

 

 ……しばらくして、完全に自分の意識が落ちていったのを感じた。

 

 

 

 ☆★☆

 

 

 ──時は少し遡り。

 

<アビドス、対策委員会の部室>

 

「いやあ、お疲れー。今日は大収穫だったねー」

 

 アビドスのみんなに向かって、おじさんはそう声を掛ける。

 珍しく大物の賞金首が見つかってそれを無事倒すことが出来たから、懸賞金でいつもより多めの収穫が入った。

 その事におじさんはいつもより少しだけ浮かれていたんだ。

 

「ん、お疲れ様。ホシノ先輩」

「そうですね〜。今回は思った以上の大物でした☆」

「そうね! おかげで先月の収穫分を大幅に超えているわ!」

「ちょっとヒヤヒヤしたけど、上手くいって良かったです」

 

 シロコちゃん、ノノミちゃん、セリカちゃん、アヤネちゃん。

 対策委員会のみんなも、今回の成果に大喜びだね。

 

 あ、そうだ。

 

「先生、ありがとねー。先生がいたからこそ、今回の討伐が上手く行ったよ〜」

「けど申し訳ありません、先生。今回はただ近くに来てくれていただけなのに、私たちの指揮をお願いしてしまって……」

「“気にしないで。丁度久々、みんなに会いに来ようと思って来てただけだったから。力になれて良かったよ”」

「うへ〜、嬉しい事言ってくれるねー」

 

 先生にお礼の言葉を言うと、そんな返事が返ってくる。

 予想していた言葉だけど、やっぱり嬉しいことは嬉しい。

 

 ──先生には、カイザーから助けてくれたあの日から、すっごく感謝してる。

 こうしてまた、みんなと笑い合えているのも先生のおかげだよ。

 だから、今日のことだけじゃなく……いつもありがとね。

 

 ……さて、と。気持ちを切り替えたところで。

 

「先生せっかくなんだしー、この後ちょっとした打ち上げして行かない? 先生も今回の成果の立役者なんだしさー」

「“いいのかい?”」

「ん、賛成。先生も一緒に打ち上げしよう」

「そうですねー、先生も頑張ってくれましたし☆」

「あ! じゃあいつもの紫関ラーメンで……って、あー。そういえば大将、今日はちょっと用事があって屋台早めに閉めるって言ってたっけ」

「そうなんですか? どうしましょう、この時間だと開いているのは……」

 

 そーなの? 紫関ラーメンがもう今日は閉じている事をセリカちゃんが言ってくれたけど、予定が狂っちゃった。

 てっきり、また紫関ラーメンでみんなで横に並んで食べようと思っていたから。

 

 柴関ラーメン以外のお店でどこかに食べに行くのもいいけど、うーん……

 

「あ、はーい。なら、折角ですしこの部室で打ち上げしませんか? スーパーかコンビニで、ご飯やお菓子を持ち寄って」

「良いね。それじゃあ、買い出しどうしよっか? 担当誰にする?」

「んー……あ! そうだ、敢えてみんなでそれぞれ買いに行かない? 各自、好きな食べ物を選んで買って来て、それを交換したり分けあったりするの!」

「良いですねー☆ それなら自分の好きなものだけじゃ無く、普段は食べない珍しいものとか買ってみるのも、面白そうですねー」

「そうですね。では、ある程度各自で使える予算を設定して、その範囲で好きなものを買ってくる、と言うのはどうでしょうか? 予算の金額は……」

 

 いつの間にか、あれよあれよと決まっていく。うへー、みんな頼りになるな〜。

 おじさんはどうしようかなー、何買ってこよう? ラーメン以外だと、うーん……

 おにぎりとかもいいけど、おかずとして唐揚げなんか買っておくのもいいかもね。みんなに分け与えられるし。

 

「先生も買って来て貰うので良い? 私達も買ってくるから、いくつか交換で」

「“良いよ。楽しそうだ”」

「ん。決まり」

「“それじゃあ、今から大体30分間位の間で各自買ってくる形でいいかな?”」

「「「「「はーい♪」」」」」

 

 こうして、おじさんたちは先生を含めて各自打ち上げ用の食事を買いに行った。

 

 ──今思うと、ここで別れて買って来たのがいけなかったのかもしれない。

 

 まさか、あれを買ってくるなんて……

 

 

 ──そうして、30分後。

 

 おじさん達は全員部室に戻って来ていた。

 

「“みんな、買ってこれた?”」

「おじさん、バッチリー」

「ん、大丈夫」

「沢山買って来ましたー☆」

「ちょっとノノミ先輩、予算オーバーしてないですよね!?」

「あはは……私もしっかり買って来ました」

 

 みんな無事買ってこれたようだねー。

 ノノミちゃんは予算オーバーしてないか心配だったけど、一応ちゃんと予算内に収まってるみたいだね。良かった良かった。

 あのカード使うのもそうだけど、こういうのは決められた範囲内で、あれこれやりくりして交換するのが楽しいからねー。

 まあ今回は、元々大収穫だったから多めに予算とっておいたのもあるけど。

 

「“ちなみにみんな、何買って来たの? 私はオニギリをいくつか”」

「あちゃー、ちょっと被っちゃったか。おじさんもオニギリと、後は唐揚げー」

「ん、私はカロリーメイトとかお菓子、ジュース類も買って来た」

「菓子パンですー。メロンパンとかクリームパンとかありますよー」

「私はカップラーメン! たまにはこういうのもいいでしょ、柴関ラーメンとは違うのも」

「私は惣菜、サラダ類ですね。栄養バランスをしっかり考えて買って来ました」

 

 おー、結構いい感じにバラけてたんだね。おじさんと先生のオニギリだけか被ったの。

 中々バラエティーでいい感じだねー、この雑多感が逆に盛り上がってくるよー。

 

「“それじゃあ、みんなで分けようか。配分はどうしようか?”」

「んーと、みんな好きなものを取って食べる形でいいんじゃないかなー」

「そうですね。とりあえず机を真ん中に寄せて、中心に食べ物をまとめておく形でいいでしょうか?」

 

「あ、そうだ。それなら、これだけ先生に先に渡しておくね」

「“ん?”」

 

 そう言って、シロコちゃんは先生にだけ先に缶ジュースをいくつか渡していた。

 あれって、まさか……

 

「“シロコ、これって……”」

 

「ん。お酒

 

「“お酒!? 買って来ちゃったの!?”」

 

 やっぱり。シロコちゃん、アルコールジュースを買って来ちゃってた。

 うへー、確かにそれは先生に渡さないとダメだね。おじさん達は未成年だよ〜。

 

「ちょ!? シロコ先輩、何買って来ちゃってんですか!?」

「あわわ、あの、成人確認はされなかったんですか……?」

「大丈夫。覆面被ってたから」

「あはは。なら大丈夫ですねー」

「いやー、だいじょばないよノノミちゃん」

 

 全くシロコちゃんったらー。

 先生も困ったように渡された缶ジュースを見つめていた。

 

「“いやー、これどうしようか……”」

「ん? 普通に先生が飲んだらいい。そのために買って来たし。先生がお酒を飲んだところ、見た事ないから」

「“いや、そりゃあ勤務中にお酒飲んだらダメでしょ”」

「でも、今はただの打ち上げ。先生も勤務時間って訳じゃない、そうでしょ?」

「“いやでも、だからって生徒の前で飲むのは……”」

「別に飲んでもいいんじゃない? みんなもそう思うでしょ?」

 

「まあ、おじさんは気にしないけどさー」

「別にいいですよー」

「まあ、別にいいんじゃない」

「あはは……まあ、先生にもそんな時があってもよろしいかと」

 

 おじさんも含め、先生がお酒を飲む事を反対する人はこの中にはいなかった。

 それでも、先生は難しい顔をし続けたまま。

 

「“しかもこれ、アルコール度数結構高いやつばっかだし。んー……”」

「……ひょっとして、先生お酒ダメだった? それならごめんなさい。飲めないなら仕方ない」

「“いや、そう言う訳じゃないけど……お酒あんまり飲まないのもそうなんだけど、記憶があんまり残らないんだよね私”」

「うへー、先生記憶飛んじゃうタイプだったかー」

「“だから、記憶を失っている間何やらかしたか分からないし、あんまり飲まないようにしてるんだけど……”」

 

 あちゃー、それは確かに怖い。

 自分がいつの間にか何かやらかしてる、なんて恐怖は、確かに恐ろしいよ。

 先生がお酒を積極的に飲まないのも納得だね。

 

 

「ひょっとして、暴れちゃったり愚痴言っちゃったりするんですかー?」

「“いや、一緒に飲んだ人に聞いたところによると、なんかボーッとしてるって。基本上の空らしい”」

「ふーん……ちょっと見てみたいわね、それ」

「ええ!? セリカちゃん!?」

「だっていつもしっかりしてる先生の、とぼけた顔よ! 興味ない?」

「それは……確かに」

「“見世物じゃないんだけどなあ”」

 

 セリカちゃんのその言葉に、他のみんなも興味津々だ。

 まあ、おじさんも見たくないかって言われたら、見てみたいけど……

 

「“んー……じゃあ、ご飯食べ終わって、暫くしてから少しだけね”」

「ん、分かった。それでいい」

「“流石に、打ち上げで先にお酒飲んで殆ど覚えていないって寂しいからね”」

「そうですねー、飲むタイミングは先生にお任せしますー」

「それじゃ、早速はじめましょっか!」

 

 おーっ! っと、おじさん達の打ち上げが始まった。

 先生も楽しそうに話題に入って、大いに盛り上がっていた。

 

 ……そして時間が経って、等々先生がお酒を飲み始めたんだ。

 

 アルコール度数が高いから、ちびちびと。

 その様子を、みんなはドキドキしながら見つめていた。

 

 そして……

 

「“……………………”」

 

 先生は、出来上がっていた。

 事前の申告通り、上の空の状態でボーッとしていた。

 

「ん、珍しい表情」

「そうですねー。ちょっと幼い感じがしますー☆」

「へー……先生、こんな感じになるんだ」

「はー……新鮮な気分です」

 

 そうだねー。いっつも生徒のみんなを遠くから見つめている先生が、逆にどこか遠くを見続けているような感じだよー。

 いつものしっかりものの先生とは思えない感じ。

 

「先生、私の事分かる?」

「“…………んー…………?”」

「ん。ダメっぽい」

「そんなに? 先生そんなにお酒飲んでたっけ?」

「ええと、缶ビールの半分くらいですね……」

「なるほど、お酒にすごーく弱いんですね、先生」

 

 シロコちゃんの問いかけにも、全然分かったような感じがしない先生。

 うへー、これ思った以上に先生お酒弱いね。

 これはちょっと無理に飲ませるの失敗だったかも……

 

「“あー…………?”」

「ん、この状態の先生。……今なら持ち帰ってもバレなさそう」

「ですねー☆」

「いや!? ダメですよ先輩達!」

「そ、そうです! 持ち帰っちゃダメです!」

 

 やっぱり。シロコちゃんがとんでもない事を言い始めた。

 確かにこの先生、簡単について来ちゃいそー。警戒心がゼロっていうか……

 こんな所他の生徒に見られたら、本当に先生食われちゃいそうだよー

 

「もう、シロコちゃん、ノノミちゃんダメだよー。先生、水のむ? それともちょっと横になろうか?」

 

 そうしておじさんは、水の入ったペットボトルを持って先生の近くに行った。

 先生に水を飲ませるか、もしくは体勢を楽にさせてあげようという親切心で。

 

 ──ここが後戻り出来る最終分岐だったのかもしれない。

 

 おじさんは無警戒に、先生に近づいて……

 

 

「“…………あ。桃だ”」

 

「……へ?」

 

 

 そんな事を呟いた先生。その直後に……

 

 

「“──頂きます”」

 

 

 ────私の唇が奪われていた。

 

 

「……っ!?」

 

「っえ?」

「はい?」

「……なっ!?」

「……ええっ!?」

 

 シロコちゃん、ノノミちゃんは呆けて。

 セリカちゃん、アヤネちゃんは後から驚いて。

 

 私は……衝撃で何も考えられなくて。

 

 

「“んー……ちゅぅーっ……”」

 

「──っ。────っ!」

 

 先生に、口の中を吸われていく。

 口内の水分を、先生に味わうように飲まれていく!

 私はそれがすごく恥ずかしくなって……

 

「──っ!。──っ!!」

 

 口が塞がれているから、声が出せない。

 なんとか逃れようと体を動かし始めるが、下手に力を入れすぎると、キヴォトス人でない先生に大怪我させてしまうかもしれない。

 そう思って、あんまり派手な抵抗が出来なかった。

 

 そうしていると、頭の後ろと腰に力強く手を添えられた。

 ……あ、逃げられない。

 

 

「“んー……ペロ……ペロ”」

 

「──っ!? ────っ!!」

 

 

 次の瞬間、口内に先生の舌が入って来た。いわゆる大人のチューという奴だ。

 先に唇を舐め取られ、歯茎の前後、そして私の舌と、口の中の隅々まで文字通り味わいつくされる。

 口内の上顎側を舐められた瞬間、くすぐったさとゾワっとした感覚が、逆に自分の体全身に痺れのような感覚をもたらした。

 

 まるで、私自身の口の中が先生に蹂躙されているかのようだった。

 

 ……気がつくと、私は全身の痺れに身を委ねて力を抜いていた。

 自身の両腕がだらんとぶら下がっているのを感じる。

 

「…………」

 

 そうしていると、先生が口を離して行った事に気がついた。

 そのまま、先生はボーッとした眼差しを、私自身に向けていた。

 先程までの遠くを見るような形でなく、目の前の私だけ、を見つめていて。

 

「……っあ…………せん、せい……?」

 

 絞り出すように出した私の声は、ほんのささやかで。

 先生に聞こえていたのかは分からない。

 

 私は口を開いたまま、舌を出した状態ではーっはーっと息をする。

 

 ──そんな私の舌を、あろうことか先生は直接吸い付いた。

 

 

「っ!? ────っ!?」

 

 びっくりして身悶えたが、さっきまでより力が入らない。

 ……私の舌が直接甘噛みされる、感触を確かめるように。

 カジッ……カジッ……と、優しく噛んで痛みつけて、そしてそれを舐めとって癒すように。

 飴と鞭を私の舌に対して行われていた。

 

「────っ♡」

 

 もう私は、何がなんだか分からなかった。

 ただここまでの行為が。先生に私の口を好き勝手にされるのが気持ち良くて。

 

 そう感じていると、今度は舌そのものが強い勢いで先生に吸い尽くされていく。

 私という存在が、舌からどんどん先生に吸われていく。

 

「──っ♡ ──っ♡♡」

 

 ……あ、ダメだ。堕ち、る。先生に、堕ちる……

 そんなことは頭で分かっても、体はもうどうしようもなくて。

 自分でも気づかないうちに、先生の背中に腕を回していて、全身で抱きついていて。

 

 ダメだよ、離して。先生と生徒だよ。このままじゃ先生の“物”になっちゃうよ。離れないと。

 

 そう理性が訴えかけている言葉も、私の体は聞いてくれなくて、言うこと聞かなくて。

 そのまま痺れる全身のまま、その状態で入る力だけでギューっと先生にしがみ付いていた。

 

 ……このままじゃ、本当に先生の物に……キスだけで、先生の物になっちゃうよ。それでいいの?

 

 そう思っていると、先生は体勢を整えて背中からゆっくり倒れる。

 私もしがみついたまま、先生の上に重なるように倒れた。

 

 目の前には、先生の顔。そして、先生の口。

 

 やっと離れる機会が来た。早く先生から離れないと。

 その理性の訴えに、体は──

 

 

「────♡♡♡」

 

 

 ──気がつくと、自分から先生にキスをしていた。

 もうとっくに、理性からの言葉も変わっていた。

 

 

 ──別にいいよね、先生の物になっても……♡

 

 そう考えたら、全てが楽になっていた。

 目の前の快楽に貪り付きたいと。この痺れに身を委ねたいと。

 

 こうして、私はまた先生の舌を、自分から受け入れて行き──

 

 

 ☆★☆

 

 

「ん、え? せん、せい? ホシノせん、パイ?」

「ふ……ふわあ……☆」

「え、え? あれ、え?」

「はわ……はわわ…………」

 

 気付いたら、ホシノ先輩と先生がキスをしていた。

 何が何だか分からない。

 確か、さっき先生の方からホシノ先輩に顔を近づけて……

 

「あ……あれ、吸ってません?」

「吸う!? 吸うって何! え、だ、唾液?」

「ホシノ先輩の唾を、先生が飲んでいってます……?」

 

 吸う。言葉の意味が一瞬分からなかったけど、確かに先生はホシノ先輩の口から、何か啜っているようだった。

 それを美味しそうにコクコクと先生は飲み込んでいる。

 

「ほ、ホシノ先輩抵抗してください! そ、そうです、あとちょっとです☆!」

「あ、ダメ! 先生に頭の後ろ固定されちゃったわ! 腰にも手が! あー!」

「え、あれ? まさか、舌? 先生、舌入れちゃってます?」

 

 ホシノ先輩が先生から離れようともがいていたが、失敗していた。

 キヴォトス人だから、先生から離れようと思ったら離れられる筈なのに。

 多分、怪我させてしまうかもという心配から全力を出せなかったんだと思う。

 

 だから、私が。私たちが助けに向かわなきゃいけなかった筈なのに、誰も行動に移せなくて。

 

「あ、ホシノ先輩! 力抜いちゃだめですー!」

「ダメ! 完全に先生に委ねちゃってる!!」

「はわわ……あ! 大丈夫です、やっと先生離れました!」

 

 そうこうしている内に、先生がやっと口を離した。

 ホシノ先輩をじっと見つめているけど……次の瞬間には、ホシノ先輩の舌に吸い付いていた。

 

「え、あれ!? 舌、ホシノ先輩の舌を直接吸ってます!?」

「あ、噛んでる!? 噛んでる!? 噛んでるって何!?」

「ど、どうなんでしょう……!? 痛く、痛くないんでしょうか……!?」

 

 もう私たちは全員混乱していた。

 ホシノ先輩と先生を止めなきゃいけないのに。私たちは行動もせずに、先生とホシノ先輩の行為を見続けることしか出来なくて。何もしなくて。

 

「あー!? ホシノ先輩、先生に抱きついちゃってますー!」

「ホシノ先輩ダメ! ダメですって!」

「あっ!? 先生が倒れ始めて……!」

 

 気がつくと、椅子の上に座っていた先生が椅子ごと後ろに倒れようとしていた。

 私は危ないと思い、咄嗟に近くにあったホシノ先輩の巨大クジラのぬいぐるみを、先生の頭の位置に投げ飛ばした。

 椅子がガタンッ! と倒れ切った。

 幸い上手く間に合って、先生は頭を強打せずに済んだ。良かった……

 

 そして倒れた先生の上に、ホシノ先輩が乗っかっている状態。

 

 あとは、ホシノ先輩が先生から離れれば……

 

「っあー!? ホシノ先輩、自分から先生にキスしちゃってますー!?」

「ちょっとホシノ先輩!? それはダメ、ダメですって!? 正気に戻ってくださいっ!!」

「あわ、あわわ……」

 

 ダメだった。今度はホシノ先輩から先生にキスをし始めていた。

 ん。ホシノ先輩完全に堕ちてる。

 私は何故かそう、冷静に頭の中で考えられた。

 

 ズルイ、とか私も、とかもいろいろ浮かんでいたが、それより二人の行為に目が離せなくて……

 

 

 ……気がつくと、二人がいつの間にか寝落ちするまで私たちは目を離せないでいた。

 

 

 ☆★☆

 

 

「“……えっと、その……結局昨日の事覚えていないんだけど、お酒飲んだあと私何かやらかさなかった?”」

 

「「「「な、何も?」」」」

 

 私たちは、全員何も無かった事にした。

 あのあと、全員部室で一晩夜を明かした形だった。

 

 結局、寝落ちした先生とホシノ先輩をそこから運ぶ手段が無かったし。

 幸い、寝袋とかはヘルメット団に襲撃を掛けられた時に使っていたものが残っていたから、寝床の用意は出来ていた。

 

「“えーと……ホシノ、本当に私、何もやってなかった?”」

「いやー……それがさー、私も殆ど覚えてないんだよねー。あの後、私も寝落ちしちゃったっぽくて……」

「“そ、そっか……何事も無かったなら、いいんだけど”」

 

 そう、ホシノ先輩に朝起きた時確認したら、ホシノ先輩も覚えていないって言っていた。

 キスの衝撃が強くて、記憶が飛んじゃったのかもしれない。

 これもあって、私たち全員が昨日は何も無かった、という扱いにする事に決めたのだった。

 

「“とりあえず、アビドスで一晩明かしちゃったから、悪いけど急いでシャーレに戻るね”」

「うへー、分かったよ。先生ありがとねー」

「“うん。確かホシノは来週当番が入ってたよね。また会うのを楽しみにしているよ”」

「私もだよ。先生じゃーねー」

 

 そう言って、先生はアビドスを出て行ってシャーレに帰っていった。

 その後ろ姿を、ホシノ先輩は手を振って見送っている。

 

 こうして、昨日の出来事は全員何も無かった。そういう扱いで終わったのだった。

 

 

 ──でも、気付いてる? ホシノ先輩。

 

 今日のホシノ先輩、いつものおじさんが、“私”になっちゃってるよ……?

 

 

 ☆★☆

 

 

 ──数日後、シャーレにて

 

 

「先生、来たよー」

 

「“いらっしゃい、ホシノ”」

 

 おじさんは当番の予定通りに、先生のいるシャーレにやってきた。

 先生の目の前の机には、相変わらず書類が山盛りで今日も大変そうだ。

 

「うへえー。今日もお仕事大量だねえ」

「“そうなんだよ……ごめんねホシノ、夜まで掛かっちゃうかも”」

「別にいいよー。明日はおじさん何もない日だし、最悪次の日にまたがっちゃっても大丈夫だよー」

「“それはありがたいけど、申し訳ないね……そうならないように、頑張ろっか”」

「了解ー」

 

 そう言って、おじさんも先生の向かいの机に座って作業を開始する。

 時折先生の方を見て……

 

「“……? ホシノ、私の顔に何かついてる?”」

「んーん? 付いてないから大丈夫だよー?」

 

 おっと、しっかりしなきゃ。おじさんはしっかり仕事を進めていく。

 作業は大変で、時にはちょっとサボりながら、スムーズに進めていくけど……

 

 ……結局終わったのは、深夜になっちゃった。

 

「ふいー、疲れたねー先生」

「“本当にね。お疲れ様ホシノ、本当に助かったよ!”」

「どーいたしましてー」

 

 机に突っ伏したおじさんに対して、そう先生が労いの声を掛けてくる。

 うへー、頑張った甲斐があったよー

 

「“さて、ホシノ何か飲む? 深夜だから、コーヒーは出せないけど……”」

「ん? あ、そーだ。先生、差し入れでジュース買ってきてたんだ。冷蔵庫に入れてあるよ」

「“そうなの? あ、レジ袋ごと入ってたアレか”」

「うん。せっかくだし、おじさんが入れてくるよ。ちょっと待ってて」

「“え? でもホシノ疲れているだろうし、私が入れてきた方が……”」

「いいからいいから。疲れてるのは、先生も一緒でしょー? ここはおじさんに任せときなって」

「“……そっか。じゃあお言葉に甘えて”」

 

 そう言って、おじさんは冷蔵庫の方に向かって行って、あらかじめ買っていた”ジュース”を取り出した。

 そしておじさんは……私は、それをコップに移し替えていく。トプトプと……

 

 

「…………うへぇ♡」

 

 コップに注ぐのを完了したら、私はそれを先生のところに持っていく。

 一滴も溢さないように、慎重に。

 

「お待たせー。炭酸ジュースだったんだけど、先生大丈夫?」

「“大丈夫だよ。ちなみになんのジュース?”」

「うへー、レモン系だよー」

 

 そう言って、はい、と先生にコップを手渡す。

 

 そして、それを先生は飲んでいき────

 

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