お酒を飲んだら、ホシノの唇を奪っていたらしい   作:新月

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ムシャクシャして書いた3
反省はとことんしていない。

※セリカのセリフを修正しました。


先生にお酒を飲ませたら、ホシノ先輩の頭と背中を撫で始めたんだけど!

 “──あれ、お仕事どうなったんだっけ……”

 

 確か、セリカが元気の出るジュースだって言って差し入れしてくれたから、それを飲んで……

 やっぱり、そこからの記憶が曖昧だ。

 あれ、ちょっとヤバイかも。三徹しているにも関わらず、まだお仕事終わってないのに……

 

 “……わあ。おっきなネコちゃんだ”

 

 座っている自分の膝の上に、“大きなピンク色のネコちゃん”がいつの間にか乗っかっていた。

 綺麗な毛並みをしていて、うづくまって背中をこちらに見せている。

 何でシャーレにいるんだろう? けど、可愛いな。

 そう思って、ネコちゃんの頭を軽く撫でてみた。

 

「……!!」

 

 わあ、毛がサラサラしていてさわり心地が凄く良い。触っていてとても癒される……

 もっと感触を味わいたくて、頭を撫で撫でし続ける。

 

 ……むう、けどこんな大きいネコちゃん、普通いるだろうか……? 

 ふと、そんなことを思い始めていると……

 

「──にゃ、ニャア……」

 

 すると、ネコちゃんがオズオズと鳴き声を上げ始めていた。

 何だ、やっぱりネコちゃんだったんじゃないか。

 それなら問題ないや、思う存分癒されるとしよう。

 

 そう思って、ネコちゃんの頭だけでなく、背中側も伝うように撫でて見た。

 あれ、よく見たらこのネコちゃん“服着てる”ね。珍しい、飼い猫かな? 

 

「ニャア、ニャア……♪」

 

 頭と背中を撫で続けていると、ネコちゃんがだんだん嬉しそうな声を上げ始めていた。

 うんうん、嬉しそうでなにより。聞いてるこっちも癒されるよ。

 

 “……あれ? このネコちゃん、尻尾が無い……

 

 撫でているときに何か違和感があると思ったら、このネコちゃん、“尻尾が無さそう”だった。

 服の内側に隠れているのかな、と思ったけど、触っていてもそんな物が隠れているような感触は感じられなかった。

 

 尻尾が無いネコちゃんなんておかしい。という事は……

 

 

 “──可哀想に。大怪我して無くなっちゃったんだね”

 

 

 そんな予想が思いついた。きっと何かしらの事故に巻き込まれて、尻尾を失ってしまったんだろう。なんて可哀想なネコちゃんなんだ……

 勝手な予想なのに、それが真実だと本気で思い込んで目の前のネコちゃんを思いっきり可愛がって上げようと決意する。

 

 尻尾があるはずだった場所を、慰めるように重点的に。

 ナデナデ、ナデナデ。

 

「──ッ! ニャア♡」

 

 すると、一瞬ネコちゃんが凄くびっくりしたような鳴き声を上げていた。

 

 あ、ごめんね! びっくりさせちゃったかな? 

 

 ……けれど、ネコちゃんは逃げるようなそぶりもせずに、膝の上でうずくまったままだった。

 

 ふむ? そういえば、ネコちゃんって確か尻尾の付け根の上あたりをトントンするのが気持ちいいって聞いた事があるような? 

 そこをいきなり触られて、気持ち良すぎて声を上げちゃっただけなのかな? 

 

 ようし、それじゃあそこを重点的に可愛がって上げよう! 

 

 そう思って、尻尾があったはずの場所から、ちょっと上のあたりをトンットンッと押し始める。

 ちょっと体制を整えて、ネコちゃんが乗っている自分の膝もしっかり固定するようにして、ネコちゃんを可愛がり始めた。

 

 トンッ……トンッ……

 

「ニャアっ♡ ニャアっ♡」

 

 うんうん、ネコちゃんもとっても気持ち良さそうで何より。

 調子に乗って、トントントンッ、トーン、トーン、とリズムを変えたり、時折頭を撫でてあげたりして、思う存分可愛がり続けていた。

 

「ニャアあああっ♡ ニャアあああっ♡♡♡」

 

 うん、良い鳴き声。とても耳心地が良い。

 ……けど、ちょっと声が大きすぎて来たな。

 

 “……いけない、近所迷惑になっちゃう!”

 

 そんなことにふと気付いてしまって、咄嗟にネコちゃんの口元を片手で塞いでしまった。

 ご、ごめんね急に塞いじゃって。近所に音が響いちゃうから。

 ……シャーレの近所って何だろうか? そう思い直そうとすると……

 

「……ペロ♡」

 

 ネコちゃんが、口を塞いだ手をペロペロと舐め始めていた。

 わあ、可愛い♪ 

 

 そんなネコちゃんがとても愛おしくなって、もっともっと可愛がってあげたくなっちゃって。

 

 仕事の事なんか忘れて、目の前のネコちゃんをうんと可愛がって──

 

 

 ☆★☆ 

 

 ──時は少し遡り。 

 

<シャーレ>

 

「ホシノ先輩ごめんなさい! 急に呼び出しちゃって!」

「いやー、別に良いよ。たまたま近くにいたし。それで、どうしたのセリカちゃん?」

 

 おじさんは、また私物で買いたいものがあったからD.U.をうろついていると、急にセリカちゃんからヘルプの連絡があった。

 今日はセリカちゃんが当番の日だった筈だけど、何かあったらしい。

 その知らせを聞いて、急いでシャーレに到着した所だった。

 

「実は、シャーレの仕事が全然終わらなくて、私一人じゃ手が回らないの! だから、すぐ近くにいたホシノ先輩に手伝って欲しくて……」

「んー? それは別に構わないけど、先生はどうしたの? 緊急のヘルプを頼むにしても、こういうのは先生から直接連絡してくるものだと思うけど……」

 

 おじさんはセリカちゃんの頼み事を聞いて、違和感があった。

 仕事が忙しいからと言っても、あの先生が直接自分で頼まず、セリカちゃん経由で頼んでくるかなって? 

 むしろ申し訳なさそうに謝りながら、直接電話を掛けてくる方が先生らしいだろうと思っていた。

 

「そ、それは……」

 

 そう言いづらそうにセリカちゃんは目を背け、そっと指をソファーのほうを指し示す。

 すると、そこに先生が座っていた。その目は遠くを見ているようで……って、

 

「“…………あー……?”」

 

「先生、またお酒飲んじゃってるじゃん!?」

「やっぱりそうよね!?」

 

 物凄いデジャブな光景が広がっていた。

 いや本当にまた酔ってるじゃん!! シロコちゃんの時と全く一緒だよ!? 

 

「せ、セリカちゃん……セリカちゃんも、先生を酔わせて手を出してもらおうと……?」

「ち、違うの!! 先生にこれを飲ませたらこうなっちゃったの!」

 

 そう言って、セリカちゃんはコトンッと何かビンのようなものを見せてくる。

 これは、えっと……

 

【これを飲めば、7徹も余裕!! 元気がもりもり湧いてくるウルトラドリンク!!】

 

「これ、前にネットで大セール販売されてお得だったの! 定期購入を頼むと、もっと安くて“オマケ”も付いてくるって書いてて! しかも、他に定期購入者を紹介すると、私にも売り上げの一部がやってくるってすっごいお得で!」

「それ、詐欺だよセリカちゃん」

「ええっ!?」

 

 それ、典型的なネズミ講じゃん……

 こーいうのに引っかかっちゃうなんて、やっぱりセリカちゃんらしいけど心配になっちゃうよ……

 しかも見た感じ、これドリンクも粗悪品って事じゃない? 

 

「どれどれ……うわっ、アルコールの匂いがする。これやっぱり、ただお酒が入ってるだけの栄養ドリンクもどきじゃないの? 元気になるっていうか、お酒を飲んでただ気分が高揚するのを元気って言い張ってるだけだと思うよ!」

「そんなー!? せっかく先生にも元気になってもらおうと、わざわざ買ったのに!」

「すぐに解約しようね、その商品。……それはそれとして、これじゃあ先生仕事出来ないね」

「そうなの、先生動けなくなっちゃったから責任持って私が何とかしないといけないんだけど、一人じゃキツくて……それで申し訳ないけど、ホシノ先輩に手伝って欲しくて連絡を」

「あちゃー……分かったよ、おじさんも出来る限り力になるよー」

 

 まあ、これはしょーがないかなー。

 セリカちゃんも、親切心で差し入れしただけだったんだろうし。

 詐欺に引っかかっちゃったのは問題だけど、これは不幸な事故だよ、うん。

 

「それじゃあ、早速仕事をー」

「あ、ホシノ先輩は仕事をやらなくていいわ」

「って、へ? 一人じゃ仕事が回らないんじゃなかったの?」

「そうなんだけど……こうなった状況は私のせいだから、仕事自体は私で片付けるつもり!」

「……え? じゃあ何でおじさん呼んだの?」

 

「ホシノ先輩には、先生の様子を見ていて欲しいの!」

「……うへえ!?」

 

 セリカちゃんのそのセリフに、おじさんは凄く驚いた。

 何で? 何でよりによって?! 

 

「だって先生、あの様子じゃない! それも、あのドリンクを飲んだせいで! 中身がお酒なのかもしれないっていうのは分かったけど、他に副作用があるかもしれないじゃない? それで、今の先生から目を離すのはちょっと不安で……」

「あ、あちゃー……要は仕事に集中したいのに、先生から目を離せないから誰か代わりに見ていて欲しいって事だったのかー……」

 

 理由は確かに、納得出来る。

 元気が出るという謳い文句で、あの得体の知れないドリンクを飲んで、結局先生は酔っ払っちゃったんだ。じゃあ他の症状が出る可能性は、否定出来ない。

 そのために、様子を見続ける人がいて欲しいっていうのは分かる。分かるんだけど……

 

「う、うへえ。それならおじさんが仕事を担当して、セリカちゃんが先生の様子を見る方でもいいんじゃないかな〜」

「い、いやよ!! だって今の先生に近づいたら、キ、キスされちゃうじゃない! それもホシノ先輩の目の前で! 絶対近づきたく無いわ!」

「それおじさんにも当てはまっちゃうんだけど!? 何で頼んできたのじゃあ!?」

「だって、ホシノ先輩前回一回しちゃってるし、すごく嬉しそうだったし……じゃあもう一回やっても変わらないかなって」

「人を生贄にしないでくれる!?」

 

 セリカちゃん何気にひどい事言ってるよ、もう! 

 心配しなくても、先生はおじさん以外に手は出さない事はシロコちゃんが証明してくれてたし! 

 

 ……いや、でも、万が一があるかもしれないのは否定出来ないし……

 

「あ! で、でもホシノ先輩! 絶対先生とき、キスしたりいちゃついたりしないでよね! 私が近くで仕事してるんだから!」

「しないよ!? 後輩の前で、前みたいな事はもうしたくないよ!?」

「で、でもホシノ先輩、前回途中で自分から先生にキスして……」

「わー! わー!? 勘違いだから! あれは、その、場の空気に当てられただけだから!」

「当てられちゃったら問題なんだけど!」

 

 セリカちゃんからの念押しに、おじさんは分かった、分かったから! と言いながら頷いた。

 

「それじゃあ、頼んだわよ。あ、そうだ。ホシノ先輩、お礼と言っては何だけど、これ先輩にあげる」

「ん、お礼?」

 

 何だろうなー、と思ってセリカちゃんば鞄から出したものを見ると……

 

「ジャーン! “猫耳”よ!!」

「何で!?」

 

 セリカちゃん達の獣耳のような、頭の上から生えている耳の形をしたカチューシャだった。

 いや、本当に何で? 

 

「さっきのドリンクの定期購入の“オマケ”って言ったじゃない、これがその一つよ! 確かミレニアムでも双子がつけているとかいう奴の最新モデルで、他にも肩こりのマッサージ機とか、なんかよくわからない振動する奴とかあったわ!」

「セリカちゃん、本当にその定期購入のやつ解約した方がいいよ絶対」

 

 ていうか、最新モデルって言ってもただのカチューシャだし、これも詐欺商品じゃない? 

 しかも、肩こりのマッサージ機とか、よく分からない振動するやつってこれ、もしかしなくても……ねえ。

 おじさんは多分、R-18的な意味でやばそうな匂いがしてきたから、セリカちゃんに絶対解約するように勧める。

 ……この猫耳カチューシャも、つまりは“そういう事”のためなんだろう。

 

「とりあえず、試しにつけてくれない先輩? 同じピンク色だし、多分似合うって!」

「えー? しょーがないなー……」

 

 セリカちゃんに勧められて、その猫耳カチューシャを頭に装着してみる。

 あ、結構しっかりついてるね。これなら簡単に外れなさそう。

 

「うわー! ホシノ先輩私みたいなネコの獣耳になっちゃった! すごく似合うー!」

「そ、そう?」

「ええ! 写真撮ってみんなに送っていい?」

「それはちょっと! そ、それより仕事早く進めた方がいいんじゃない?」

「あ!? そうだった! それじゃあ急いでやってくるわね!」

 

 それじゃあ、そっちは頼んだわよ。とセリカちゃんが言って仕事机に向かって行ったから、おじさんは先生の座っているソファーに近づいていった。

 

 ☆★☆ 

 

「さ、てと。……どーしよ〜」

「“…………んー……?”」

 

 ソファーの上で、先生がいつものボーッとしたような表情で座っていた。

 うん、見事に酔っ払っちゃってる。何度も見たから、もう判別が簡単に付くよ。

 

「様子を見るとは言ったけど、近づいちゃったら二の舞になっちゃいそうだしなー」

 

 最初の時みたいに、キスされちゃうのは論外として。

 シロコちゃんの時みたいに、先生の膝に座っちゃうのも最初はセーフかと思いきや、お、お腹を押されて予想外な状況に陥っちゃったし。

 だから先生に近づかない方がいいんだろうけど……先生の体に触れるのは凄く気持ちが良いのも事実な訳で。

 

「…………ごくっ」

「“…………あー、ん……?”」

「ふにゃあ♡!?」

 

 ──気づいたら、また先生に腕を引っ張られていた。

 

 しまったあ!? またあの時の事を思い返してる間に!? 

 や、ヤバイ!? また膝の上に乗せられちゃったら、今度はセリカちゃんにもお腹だけで達しちゃう所見られちゃう! それだけは、それだけは何とかしないと……

 

「そ、そうだ!!」

 

 咄嗟に思いついて、先生の膝の上に座るんじゃなくて、先生の膝を抱えるようにその上で蹲った。

 つまり、先生に対しては背中だけを見せている状態だ。

 

「よ、良し! 完璧!」

 

 これならキスされる事もないし、シロコちゃんの時みたいにお腹を撫でられる事も無い! 

 我ながら完璧、完璧だよ!! ふふん、どうセリカちゃん! これなら問題ないよ! 

 

 

 ──お尻を叩かれちゃったらどうしよう。

 

 

 おじさんはふと、そう心配が浮かび上がってきた。

 この体制、よく考えると子供が親にお尻たたきされる体制と同じだなと、ふと気付いてしまった。

 

 だ、大丈夫だよね? 先生、流石にそんな事はしないよね? 

 

 先生は、直接女の子のアソコや胸を触った事は、酔っ払った状態でも無い。

 けど、お尻がその対象なのかどうか、まだ分からなかった。

 

 セリカちゃんの前で、お尻を撫でられたり、叩かれる所を見られるだけでも十分恥ずかしいよ! 

 ど、どうしよう……そうなったら、先生から本気で逃げるしかないだろうけど、怪我させちゃったら嫌だし……

 

 何か手はないか、そう思っていると……

 

 

 “……わあ。おっきなネコちゃんだ”

 

 

「……!!」

 

 その先生の呟きに、これだ、と感じた。

 先生がおじさんの頭を撫でてくる。その行為がとてもうれしく感じながらも、おじさんは考えた。

 多分ネコ耳カチューシャを付けていたから、先生はおじさんの事をネコだと思い込んでるんだ! 

 だったら、このままネコだと思わせ続ければ、ネコちゃんのお尻を叩くなんて行為は思いつかないだろう、そうおじさんは思った。

 

 だったら……! 

 

「──にゃ、ニャア……」

 

 おじさんはオズオズと、ネコちゃんの鳴き声を真似るようにそう声を出してみた。

 恥ずかしさで顔が真っ赤になるけど、後輩の前でお尻を叩かれるよりは万倍も良い。

 ……後輩の前で、先生に対してネコちゃんプレイはどうなの? と思うけど、この際そっちはもう仕方無いとして割り切る! 

 

 こうして、ネコちゃんの鳴き声を上げ続ける事で、先生にネコだと思わせ続ける……! 

 

 おじさんはその計画を思いつき、実行し続ける事を決意した。

 それが上手くいってるのか、先生はもう片方の手で私の背中を撫で始めている。

 うんうん、上手く行ってそうだね。

 

「ニャア、ニャア……♪」

 

 私はそうして、先生のナデナデに合わせながら鳴き声を上げる。

 だんだん声を出すのが楽しくなってきていた。身も心も先生のネコちゃんになってるみたいで。

 

 “……あれ? このネコちゃん、尻尾が無い……

 

 その言葉に、私はドキッとしてしまった。

 しまった、頭のネコ耳はともかく、尻尾なんて用意していない! 

 先生に、ネコちゃんじゃないとバレた!? そう心配していると……

 

 “──可哀想に。大怪我して無くなっちゃったんだね”

 

 良かった、セーフだった。

 そういえば、先生は酔っ払いだった。多少の違和感はあっても勝手に納得してくれるんだろう。

 

「ニャ、ニャア、ニャア♪」

 

 おじさんは誤魔化すように、そう声を上げ続ける。

 私はネコだよ、とアピールするように。

 

 それが伝わったのか、先生は背中の尾骨の部分を重点的に撫で始めた。

 ナデナデ、ナデナデ。

 

「──ッ! ニャア♡」

 

 “”はその感触に、ちょっとびっくりして変な声をあげちゃったけど、何とかネコの鳴き声を維持し続けた。

 

 今の場所、ちょっと良かったかも……

 

 そう思っていると、先生はそのちょっと上の部分をトンットンッと押してきた。

 あ、これ知ってる。ネコちゃんが気持ちよさそうにしている奴だ。

 

「ニャアっ、ニャアっ」

 

 私はその感触を、自分の体で味わっていた。

 ネコちゃん達がよく嬉しそうな表情をしてるけど、私もそれを真似るように。

 うん、今の私はネコっぽい。

 

 この調子なら、今回は無事に終われそう。

 私はそう、一安心していた。

 

 

 ────やっぱり、ここで油断したのがよく無かったんじゃないかなあと、後で後悔しながら。

 

 

 ☆★☆ 

 

 トンットンッ

 

「ニャア、ニャア」

 

 トンットンッ

 

「ニャアっ、ニャアっ」

 

 トンットンッ

 

「ニャアっ♡ ニャアっ♡」

 

 ──あれからしばらく時間が経ち、私はいまだに先生に背中をトントン押されていた。

 その度に、ネコちゃんの鳴き声を真似て声を上げ続けて。

 自分が本当にネコちゃんのようになったと錯覚しながらも、何か違和感がだんだん湧いてきていた。

 

「(まって、これ……だんだん、ジンジンしてきた……!?)」

 

 この感覚は、覚えている。

 シロコちゃんの時のように、お腹をグイグイ触られていた時の感触だ。

 でも待って、まさか背中側からでも? そんなバカな……と思っていた。

 

 確かに振動は、背中側から“女の子の大事な所”に伝わってはいるが、そこまで対した刺激じゃない。

 だから、感じるなんてありえない話……

 

「(──あ、しまった。先生の“”、私のお腹の下にある)」

 

 私はその事実に、今更ながら気づいた。

 この体制だと、先生の膝が私のお腹の位置に当たる。そして、その上から先生がトントン指で押すと、その振動が先生の膝側に挟まれて、お腹も押されていたんだ。

 だから衝撃が逃げずに、私の体の中心で止まる。

 

 だから背中の、特に腰あたりへの衝撃は、そのままお腹への衝撃へと変わる。

 

「(つまり、シロコちゃんの時に散々触られちゃったお腹が、結局振動でいじめられちゃってる……♡)」

 

 ヤバイ、と思った。

 結局セリカちゃんの目の前で、また達しちゃう危機に陥っている。

 でもまだ、振動はそこまでじゃない。これくらいなら、我慢できる……

 

 トーンッ トーンッ

 

「っ!? ふニャアっ♡ ニャアっ♡♡」

 

 あ、ダメだ。リズム変わっちゃった。

 私は慣れていた筈の振動のリズムが、急に変わっちゃったことに気づいた。

 その変化に対応しきれなくて、ジンジンとした痺れが一気に広がっていった。

 

 幸い、何とかネコちゃんの鳴き声は維持できた。

 何とか最後まで保ち続けないと……

 ……あれ、何でネコちゃんの鳴き声を維持しないといけないんだっけ? 確か何かヤバいことになるからだったような……

 

 トントントントンッ トントントントンッ

 

「ニャアあああっ♡ ニャアあああっ♡♡♡」

 

 思い出そうとする前に、連続した衝撃で考えが飛んだ。

 お腹の奥のジンジンが、一気に溜まっていっちゃう……! 

 

 ナデナデ、ナデナデ。

 

「──あ。ニャア♡」

 

 先生のもう片方の手で、私の頭が撫でられる。

 ああ、気持ちいい。お腹の奥のジンジンとした気持ち良さじゃなく、心が満たされるような心地よさを感じていた。

 

 ああ、そっか。鳴き声を上げた方が違和感が無いからだっけ。

 だって私は“”だから。ネコちゃんじゃないといけないから。

 だから、先生にこうして撫でられるのが気持ちいい。トントンと触られるのが気持ちいい。

 

 けど、それが正しいから。そう感じるのは間違っていない。

 

 だって私は、先生の猫だから。

 

 

 ナデナデ、ナデナデ。

 

 トントントントンッ トントントントンッ

 

 

「ふニャアあああっ♡♡ ニャアあああっ♡♡♡」

 

 

 あ、来る♡ 例のが来ちゃう♡! 

 お腹の奥からジワジワとした快楽が小さく破裂して、徐々に徐々に広がっていく♡

 以前のような大きな爆発した感じじゃ無いけど、トントンとしたリズムに合わせて1cmずつ広がっていく♡♡

 ああ、先生♡ 頭も撫でて♡♡ そこの撫でてる感触から、フワフワした優しい気持ちが伝わってきて、お腹のジワジワとフワフワが重なってくる♡♡ 重なっちゃう♡♡♡

 

 あっ♡ 来る♡♡ 来る♡♡♡

 

「イッ──、にゃあ────────────ッッッ♡♡♡♡♡」

 

 ──私は、真っ白になる視界の中で、そう鳴き声を上げた。

 黙っているより、ネコちゃんになり切って声を上げた方が、とても気持ち良くて。

 私が、“人間”じゃなくて、先生の“ネコちゃん”のように思えて。

 

「にゃー……っ♡ ニャアー……っ♡♡」

 

 ああ、息が荒いけど、ちゃんとネコちゃんの鳴き声にしなきゃ。

 だってそうじゃ無いと、先生のネコちゃんじゃ無いし、なれないし♡

 

 ……あ、そっかあ♡ ネコちゃんだから、気持ちいいのは仕方ないよね♡♡

 だって猫ちゃんだから、人間と違って快楽に素直でもおかしく無いよね♡♡

 

「ニャアー……っ♡♡ ニャアー……っ♡♡ ニャアああーっ♡♡♡」

 

 私はそう、アピールをし続ける。

 もっと撫でて、気持ちよくしてって♡

 私はネコちゃんだよってアピールをし続けて……

 

 

 “……いけない、近所迷惑になっちゃう!”

 

 ……へ? 

 

 そんな先生の言葉と共に、私の口が塞がれる。

 なんで、なんで先生? これじゃあ鳴き声あげられないよ。

 

 私は凄く困った。このままじゃ鳴き声を出せなくて、私がネコちゃんじゃなくなってしまう。

 そうしたら、この気持ちいいのが終わってしまう。

 

 どうしたら……そうだ♡

 

「……ペロ♡」

 

 私は、口を塞いだ先生の手をペロッと舐めた。

 ネコちゃんが、よく何かを舐めているような動作を真似て。

 

 ──あ、先生の手ってこんな味なんだあ♡

 

 ネコになり切るための動作の筈が、思わぬ副産物を知れてうれしく感じていて。

 そのままペロッペロッと舐め続けていると、また背中がわを先生は撫で始めてくれて♡

 

「──っ♡♡♡ ……ペロ♡ ペロ♡」

 

 私は嬉しさを表すように、先生の手を更に舐めていく。

 そうして、それに応えるように先生はまた私の背中をトントンと押し始めて──

 

 

 ☆★☆

 

 

「──って、仕事に集中できるかああああああっ!!!!」 

 

 私はそう大声を上げるしか無かった。

 何やってるの? ねえホシノ先輩何やってるの!? 

 

 何で先生の様子を見てってお願いしただけなのに、あんな、め、雌猫のような声を上げてるの? ねえ!? 

 

「ちょっと、ホシノ先輩!?」

 

 トンットンッ

 

「ニャアっ♡ ニャアっ♡」

 

「ダメだ! 先輩本当にネコになりきっちゃってる!?」

 

 何やってるんですかホシノ先輩!? 

 あんな先生の膝の上で丸くなって、背中の腰をトンットンッ押されて鳴き声を上げちゃって!? 

 あれ、ネコちゃんが気持ちよさそうにする押される奴だけど、人がやられて本当に気持ちいの? 気持ちいいの!? 

 

「う、うう〜! こっちまで、なんか変な気持ちになってきちゃうじゃ無いのおー……!」

 

 私はもじもじと足を合わせて、そう呟く。

 わ、私だって、う、うらやま……いや、羨ましくなんて無いんだからね!! 

 

 トーンッ トーンッ

 

「っ!? ふニャアっ♡ ニャアっ♡♡」

 

 っ!? 

 せ、先生の叩くリズムが変わって、ホシノ先輩の鳴き声が変わっていった! 

 うわあ、ホシノ先輩とろけた表情に変わっちゃってる! 

 

「ホ、ホシノ先輩しっかりして!! あなたは人間、人間でしょ!?

 

 トントントントンッ トントントントンッ

 

「ニャアあああっ♡ ニャアあああっ♡♡♡」

 

 あ、ダメだ私の声届いていない。

 それどころか、押すリズムが激しくなってホシノ先輩ものすっごい喜んじゃってる! 

 う、うわあ、うわあっ♡

 

 ナデナデ、ナデナデ。

 

「──あ。ニャア♡」

 

 ──あ。あれ、いいな。凄く羨ましい。

 私は素直に、そう思ってしまっていた。

 さっきまでの激しい感触の中、優しく頭を撫でられる感触、あれしたら女の子は……ううん、雌猫はみんな堕ちちゃう。

 

「……って、しっかりしなさい私!! 私は人間、良し!」

 

 パンッパンッと自分の頬を叩く! 

 あ、危なかった……! 思考が向こうに持ってかれる所だったわ! 

 

 ナデナデ、ナデナデ。

 

 トントントントンッ トントントントンッ

 

 

「ふニャアあああっ♡♡ ニャアあああっ♡♡♡」

 

 あ、ああ! ダメ、それダメ♡

 だってホシノ先輩、凄く気持ち良さそう! 幸せの真っ只中って感じがしてる♡

 ホシノ先輩人間なのに、ネコちゃんの幸せ……ううん、雌猫の幸せって表情しちゃってる♡

 ダメ、ダメ! 先生、ホシノ先輩を持って行かないで! ホシノ先輩、人間のままでいさせて……!! 

 

 私のその願いも届かず、ホシノ先輩は……

 

「イッ──、にゃあ────────────ッッッ♡♡♡♡♡」

 

 ──あ。終わっちゃった。ホシノ先輩、先生のネコちゃんになっちゃった。

 私は分かった。ホシノ先輩、女の子の幸せを、ネコちゃんになっちゃったまま味わっちゃったんだって。

 

「ニャアー……っ♡♡ ニャアー……っ♡♡ ニャアああーっ♡♡♡」

 

 だって見て、ホシノ先輩先生にアピールしちゃってる。

 ここにあなたの雌猫がいますよって、精一杯自己主張してる。

 もっと気持ちよくしてって、訴えるように。

 

 すると、先生がそんなホシノ先輩の口を塞いでいた。

 

 そ、そう! そうよ先生! ホシノ先輩を人間に戻すの!! 

 私はそう、先生に対してナイスっと思っていたら……

 

「──っ♡♡♡ ……ペロ♡ ペロ♡」

 

 

 あー、ダメだ。ホシノ先輩、先生の手を舐め出しちゃった……

 私はもう、諦めるしか無かった。

 ホシノ先輩、完全に先生のネコちゃんになっちゃってるって。

 

「……どうしよう、これ」

 

 私は目の前の光景を見て、そう立ち尽くすしか無かった。

 結局、まだ仕事は終わっていない。

 まだまだやらなきゃいけない事は残っているのに、先生と雌猫がいちゃついているのをバッググラウンドに作業するなんて事は、私には出来なかった。いろんな意味で。

 

 そうして、考え出した結論は──

 

「……よし、私も可愛がろうっと」

 

 目の前のホシノ先輩……いや、ニャンコを可愛がるという事だった。

 いや、だって私も目の前でイチャイチャされてストレスたまってるし、少しは癒されたいし。

 か、勘違いしないでよね! ただホシノ先輩が先生に撫でられてるのが羨ましいって訳じゃ無いんだから!! 

 

「よ、よーしよーし……」

 

 私は恐る恐るホシノ先輩の頭を、軽く撫でてみた。

 ホシノ先輩はいまだに先生の手をペロペロ舐めている。

 

「ふにゃあ♡ ふにゃあ♡」

 

 頭を撫でられたのが気持ちいいのか、塞がれた口がちょっと解放された瞬間に、そんな甘えたような声が響いてきた。

 か、可愛い……

 

「ほ、ほーら。ホシにゃん、よしよーし♪」

 

 いやなんだホシにゃんって。私は何を言っているの? 

 ……いや、それでいいのよセリカ。だって、目の前にいるのはホシノ先輩じゃなくて、ホシにゃん。先輩という人間じゃなくて、一匹の雌猫何だから。

 

 だから目の前で、どんなに甘ったるいだらしない格好をしてたとしても、それは猫だから仕方ないことなの! 

 そう、何があっても、ネコだから関係無いの!! 

 

 私はそう、強く自分に言い締めた。

 

「にゃあ……♡ にゃあ……♡」

 

 優しく頭を撫でていたら、こっちに頭を寄せてきていた。

 もっと撫でて、という事なのだろうか? 

 

「よしよーし。ゴロゴロゴロ〜」

 

「ふみゃああー♡」

 

 私はホシにゃんの頭を撫でながら、ホシにゃんの顎の下あたりもコショコショとなでてあげた。

 するとホシにゃんは気持ちよさそうに声を上げる。

 うんうん、そうよね。ネコはこういうの好きだもんね。

 

 ……ゴクリっ

 

 っは!? しっかりするのよセリカ! 目の前の先輩を羨んじゃダメ! いや違う、これはホシにゃんだから、余計に考えちゃダメ! 

 

 私はその思考をどかすために、ホシにゃんの背中も撫でてあげた。

 先生も、ホシにゃんの腰あたりをまたトンットンッと触っている。

 

「ふにゃあ……♡ ふにゃあ……♡」

「……ごくりっ」

 

 ホシにゃんは、先生が軽く叩くたびに、微かな甘え声を上げて言ってる。

 それが羨んじゃダメだと分かっていても、私の耳に入るたびに媚びるような声が頭に響いてきちゃう。

 

 ──ホシノ先輩が羨ましいんでしょ。こんな先生に可愛がってもらえて。

 

「っ!! ち、違うわよ! これはネコ、ネコなんだから!」

 

 やばい!? 頭の中で変な声が聞こえて来たんだけど!?

 これ私じゃない! 私じゃないのに、なんで……!!

 ……っ!? もしかしてお酒!? 先生のアルコールの匂いだけで、私も少し酔っ払っちゃったの!?

 

 ──そうごまかさないと、私自身と同一視しちゃうからなんでしょ。今のホシノ先輩の立ち位置に。

 

「そ、そんな事は……」

 

 ──羨ましいわよね。背中トンットンッて叩かれて、あれだけよがけているんだものね。人間じゃなくて、猫としての幸せがすっごく伝わってくるんだものね

 

「そ、そうよ! ネコ、猫の幸せよ! 私は人間だから、そんなの必要ない……」

 

 ──人間(獣耳)なのに? 立派な耳があるのに? 

 

「あ……っ」

 

 ──おかしいわよね。偽物の耳をつけているホシノ先輩が可愛がられて。本物の耳が付いてる私があそこに居ないなんて。ずるいと思わない? 

 

「そ、それは……」

 

 ──ほら、ホシノ先輩すっごい媚びちゃってるよ。先生に、私は雌猫です、可愛がってくださいってにゃあにゃあ鳴いちゃってる。

 

「……ご、ごくり」

 

 ──羨ましいよね。変わって欲しいわよね。

 

「……う、ん」

 

 ──でもダーメ。あの位置はホシノ先輩の位置。そう決まっちゃってるんだから。

 

「そ、そんな……っ」

 

 ──でも、ホシノ先輩からどいてもらうって事は出来るんじゃない? 例えば……ホシノ先輩じゃ受け止めきれないくらい、幸せに溺れさせちゃうとか。

 

「……そ、っか」

 

 ──じゃあ、可愛がっちゃいましょう♡

 

「……そうね♡」

 

「ふみゃあ……♡ ふみゃあ……♡」

 

 私は、いまだに甘えた声を上げているホシノ先輩に対して、頭と……そして、先生と同じ腰あたりに手を添える。

 そして、頭を撫でてあげながら……私もホシノ先輩の背中をトンットンッと叩き始めた。

 

「ふみゃあ♡!? みゃあ♡♡」

 

 あ、ホシノ先輩すっごい反応する。羨ましい……♡

 そんなに気持ちいいの? こんな背中の一部をちょっと叩くだけで。本当に、ネコみたい。発情期の、雌猫……♡

 

 すると、先生もトンットンッと同じ場所を叩いていた。

 それに合わせて、ホシノ先輩も声を上げている。

 

 ……そうだ♡

 

 私は思いついたことを試そうと、先生の手の動きを見てリズムを調整する。

 最初は、先生と一緒に同時に叩いてみる。

 

 トンッ トンッ トンッ トンッ

 トンッ トンッ トンッ トンッ

 

「みゃああ♡ みゃああ♡」

 

 次は、先生が押した後、私が交互に押してみる。

 

 トンッ   トンッ   トンッ   トンッ

    トンッ   トンッ   トンッ   トンッ

 

「みゃ♡ みゃ♡ みゃ♡ みゃ♡ みゃ♡ みゃあああっ♡」

 

 あは♡ ホシノ先輩可愛い♡♡

 もう完全に雌猫♡ 気持ちいい声しか上げられない、何も考えられないネコちゃん♡

 きっと、私がこうして触っているって事も気付いていないんでしょうね♡

 

「みゃ♡ みゃっ♡ わぷっ! ペロッペロッ♡♡」

 

 あ、先生にまた口塞がれちゃってる♡

 そうよね、雌の媚びている声が響きすぎていたものね♡

 ちょっとしつけないとダメわよね♡

 

 でもそれが羨ましい、先生の飼い猫になっているようで♡

 人権を捨てて、先生に体の権利全部を渡しているようで、すっごく興奮しちゃうんだものね♡

 

 いいわ。このまま熱中して、先生と一緒に私に撫でられながら、すっごい幸せになってよね♡

 

 ほら、トントントントントントンッ♡

 

「──っ♡♡ ぺろ、ペロペロぺろっ♡♡♡」

 

 あは、ホシノ先輩ものっすごい必死な表情でペロペロ舐めちゃってる♡

 終わっちゃうの? また先生に、人間完全に終わらされちゃって、雌猫の中の雌猫に落とされちゃうの♡? 

 いいよ、先輩堕ちちゃって♡ 私に、雌猫としての女の幸せの様子を見せて♡♡

 

「ぺろ、ペ──っ♡♡ ──っっっ♡♡♡」

 

 堕ちる♡ 堕ちちゃう♡ ホシノ先輩、堕ちる♡♡

 

「イッ──、にゃあ────────────ッッッ♡♡♡♡♡」

 

 っあー♡ 堕ちたあ♡ 先輩、また堕ちたあ♡

 もう完全に人間に戻れないくらい、雌猫ちゃんに堕ちちゃったあ♡♡

 そうよね、幸せよね♡ 先生のものに、ううん、ペットになってすっごい嬉しいんだものね♡

 

 ああ、私もして欲しい……♡ 何で私はしてくれないの♡ 先生、不公平よ♡♡

 

 私は、女のアソコを衣服の上から触りながら、そう先生に心の中で訴えかけていた。

 

「にゃ……♡ はぁ……────っ」

 

 あ、ホシノ先輩のヘイローが消えちゃいそう。

 ホシノ先輩、息絶え絶え。このままだと気絶するわね。

 

 私はそんな事を思って、ゆっくりホシノ先輩を休ませてあげようと──

 

「────」

 

 トントントントントントンッ

 

「ふみゃあああああああ♡♡♡」

 

 気付いたら、ものっ凄くトントン叩いていた。

 そうよね、ホシノ先輩。分かってる、まだ足りないんだものね♡

 もっと猫の幸せを味わいたいんだものね♡ 分かるわよ、私ならそう考えるから♡♡

 

 ほら、先生も一緒に叩き始めてくれてる♡ 先生は私たちの願いに答えてくれてる♡♡

 

 だからいーっぱい、ネコちゃんの幸せを味わいましょ♡♡

 

 私はそう考え、先生と一緒にホシノ先輩を撫で続けて──

 

 

 ☆★☆

 

「“──セリカ。本っ等にごめん。仕事終わってないのに、途中で寝ちゃったらしくて”」

「そ、それでねセリカちゃん。そのぉ〜……」

 

「……殺してえっ」

 

 私はホシノ先輩達に顔向け出来ないでいた。

 何よ猫の幸せって!? 私何考えてんの!? さっきまでの私本気で何やっちゃってんの!? 

 何で先生と一緒に先輩をネコとして可愛がらなくちゃいけないの!? そして何でそれにノリノリだったの!? 

 

 あああああああああああああっ!!!??? 

 

 私は床の上で身悶えながらゴロゴロと転がるしか無かった。

 

「そ、それでねセリカちゃん。さっきのおじさんって……」

「知らない分からない見てない認識しない認知しない存在自体無かったことにしたい今日の時間全部何も無かったことにしてくださいっ!!」

「あ、うん……」

 

 ホシノ先輩が何か聞いてこようとしてきたけど、私はそれを一切受け付けない! 

 大体何を聞きたいのホシノ先輩!? 

 私も恥ずかしい思いしてたけど、本当に恥ずかしいのってあの格好で媚びていたホシノ先輩じゃ無いの!? 

 さっきまでの自分のやってる姿忘れちゃったの!? じゃないと何で今普通に話せているの!? どんな度胸よ!? これが先輩としての威厳!? 

 

「“と、とりあえずまだ仕事残ってるだろうから、急いで終わらせよっか。早くしないと日がまたがっちゃう”」

「うへー、すっかり夜だねえ」

「ううう〜」

 

 私はすっかり、何事もなかったかのように振る舞う二人に恨めしい声を出した。

 だって不公平じゃない! 何で私がこんなに悩まなくちゃいけないわけ!? 

 今度ビデオに撮って二人に見せてやろうかしら! いや、私のやってたところも見られたら困るからやらないけど!! 

 

 あー、叫んだら喉が乾いてきちゃった……

 

「“とりあえず、何か飲む? お茶しかないけど”」

「ええ、お願い」

「あ、先生。変な瓶のやつはもう飲んじゃダメだよ。セリカちゃんが持ってきた奴。また眠っちゃうから」

「“あはは。気をつけるよ”」

 

 あー、そういえばあれ、結構まだ残っちゃってたっけ。

 どうしよう。とりあえず解約はするけど、残った品物ってクーリングオフで送り返せるんだったかしら? 

 

 私はそう悩みながら、先生が持ってきてくれたお茶を飲み始める。

 ホシノ先輩にもコップが配られてたけど、ホシノ先輩はすぐには飲まずにじっと見つめていて……

 

「…………みゃあ」

「ブホアッ?!」

「“ホシノ!? セリカ?!! ”」

「ゲホッ!? ゴホッ!?」

 

 私はホシノ先輩のその鳴き声に、ついむせてしまって咳き込んだ。

 何考えてんのホシノ先輩!? いやなんであのタイミングで鳴くの!? 何考えてんの!? 

 みると、思ったよりびっくりしたのかホシノ先輩が驚きの表情でこっちを見ていた。驚いたのはこっちよバカー!? 

 

「ゲホッ ゲホッ!!」

「“せ、セリカ大丈夫!? よし、よーし。ぽん、ぽん”」

 

 そう咳き込んだ私に対して、先生は──“背中を軽く叩いてきた

 

「ふみゃあっ♡」

「“え?”」

「へ?」

 

 ……私は、無意識に求めていた感触が急にやってきて、咄嗟に媚びるような声が出てしまっていた。

 その事に自分の顔が、凄くカーッと赤くなる。

 

「な、何でも無い! 何でも無いから!!」

 

 私はとりあえずすぐに否定して、二人に手を向けて問題無いと言い放つ。

 そう、問題無い……────

 

「──ごめん、やっぱりもうちょっと叩いて貰っていい?」

「“え、うん。分かった……”」

 

 ポンっポンっ

 

「────っ♡」

「せ、セリカちゃん?」

 

 ホシノ先輩がそう問いかけるように聞いたきたけど、私は何でも無いと返事をする。

 ……うん、ホシノ先輩あんなに幸せそうだったもの。これくらい、私も良いわよね……♡

 

「──あー、すっきりした♪」

 

 私はそう、心の底からそう思えていた。

 

 

 




「先生の雌“犬”は私ですけどおっ!?」←どこぞの行政官
「「「…………」」」←その他メス猫のみなさん
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