“──ああ、やっぱり。この感覚だ”
俺はいつも通り、フワフワした感覚の中にいた。
もうなぜこの感覚になったのかは覚えていない。
ただただ、目の前の“桃”を────いや、“少女”を貪っていた。
「──っ♡」
もうここまで、何度も経験すると目の前のものが“人”だなんてことは、“脳”がわからなくても“体”が分かっていた。
だから、俺は“体”の衝動に任せるように、何度も、何度も、何度も、少女の口を“貪った”。
理性からの警告なんて、砂を棒で叩くようになんの衝撃も伝わらなかった。
その少女の唇を、なぞるように。
その少女の舌を、味わうように。
その少女の頬を、内側から舐めとるように。
その少女の全てを、口から吸い尽くすように。
愛しい少女の、全てを独占するように。
「──ッッッ♡♡♡♡♡」
ほら、また少女が達した。
自身の“頭”では分からなくても、“体”は目の前の少女に対してこれ以上なく興奮していた。
理性の警告なんて、もはや知ったこっちゃ無い。
俺の男の象徴が、とうとう熱を持ち始めて──
☆★☆
<アビドス>
──時は少し遡り。
「“──あの、さ。ちょっとみんなに聞きたいことがあるんだけど、いいかな?”」
「……うへー。どうしたの先生?」
それは、アビドスの学校に久々に先生が来た日だった。
先生の指揮で不良グループを一掃する仕事が終わってひと段落して、廃校対策委員会の部室でダラダラしている時に、先生がふと言いづらそうにそう切り出してきた。
って、これまさか……
「“まさか……まさかとは思うんだけど。……みんな、私にお酒を飲ませたりしてないよね?”」
「……んっ」
「あはー☆」
「うえっ!?」
「え、ええっと……っ」
う、うへー……やっぱり、バレちゃってるー……
いや、そりゃあそうだよねえ!? あれだけみんな毎回のように飲ませちゃったら、そりゃ疑うよねえ!?
このみんなの反応からか、先生もそれだけで察したようで困惑の表情を浮かべていた。
「“おかしいと思ってたんだ……アビドスのみんなが当番の時に限って、何故かいつも途中から記憶が飛んじゃってるなって……”」
「ん。むしろよく逆に気づかなかったね」
「ちょっとシロコ先輩!?」
「“な、なんで……? 私、お酒弱いって言ったよね……? それなのに、なんでこっそり飲ませたりしてたの……? やっぱり私、酔ってる時何かしちゃってる!?”」
「ち、違うんです!! 私は飲ませたわけじゃなくて、たまたま出したお菓子のチョコがお酒入ってただけで、わざとじゃないんです!!」
「私はわざと飲ませましたー☆」
「ノノミ先輩っ?!」
先生の動揺したような問いに、アヤネちゃんは必死に言い訳をしようとしたけど、ノノミちゃんが思いっきりぶっちゃけてしまっていた。
そうだね、ノノミちゃんとシロコちゃんは完全にわざとだよね……
「“ノ、ノノミ。なんで……?”」
「それはですねー。先生、最近徹夜が多いんじゃないですか?」
「“て、徹夜?”」
「ノノミちゃん?」
急に何言ってるんだろう?
お酒を飲ませた言い訳なんだろうけど、なんでそれが先生の徹夜に関係するの?
「私が当番の時にシャーレに向かった時も、既に二徹か三徹していたようですし。他のみんなの時も大体そうですよね〜?」
「“うっ。それは、その……”」
「だから〜。そのためのお酒なんですー☆ お酒を飲ませてボーッとさせちゃえば、先生しばらくすると寝ちゃうって事は、以前の打ち上げの時でわかりました。なので、無理矢理にでも睡眠を取らせるために、私たちの当番の時は先生にこっそり飲ませて、寝かせてあげましょうって話してたんです〜」
す、すごい。ノノミちゃん口から出まかせ言ってる。
全くそんなこと話してないし、飲ませたのは各々の別の理由だったよね。
ほら、他のみんなもびっくりしちゃってるよ……?
「“そ、そうだったの!?”」
「う、うへ〜。そんなことも、話してたような……」
「ん。全くその通り」
「え、ええ! そうよ! 先生の睡眠のためなんだから!」
「は、はい! 先生の健康のため、妥協してやむなく……」
でも、とりあえずそのノノミちゃんの意見に全員合わせることにしておいた。
真実を先生に言うのはさすがに憚れるから……
「“そ、そうだったのか……それならごめんね、みんな。心配かけさせちゃったんだね”」
「う、うへ〜。気にしなくていいよ〜」
いや、本当に。
なんだろう、心の奥の良心がズキズキしてきたよ……
「それでは、先生〜。今日もお疲れでしょうし、お酒飲んでぐっすり寝ましょう〜。先生のために、美味しいお酒ご用意したんですよ〜☆」
「“ノノミ……ありがとう! そんなに私のこと思ってくれたんだね!”」
そしてノノミちゃん凄いよ。この流れで追加で先生にお酒を飲ませようとしているよ。
ノノミちゃん、なんでそんな堂々と嘘つけるの……?
「“分かった、飲むよ!! でも、さすがに今までみたいに急に飲まされて意識失うのは怖いから、今後は事前に言ってくれると嬉しいかな!!”」
「はい〜、了解です☆ 黙って飲ませちゃってすみませんでした〜」
「“みんなも、ありがとう! これからは、堂々と準備して飲むよ!”」
「う、うへー。飲み過ぎには、注意してね……」
そんなわけで、先生はアビドスのシャワールームで体を洗って、パジャマに着替えて部室に戻ってきた。
寝袋も用意して、準備万端といった形だ。今日はアビドスに泊まっていってくれるらしい。
「“よっし! それじゃあノノミ、せっかくだから注いでくれるかい?”」
「はいー、どうぞ☆」
「“ありがとう! いただきます! みんな、おやすみ!”」
「「「「お、おやすみー……」」」」
そう言って、先生はお酒を堂々と飲んで──
☆★☆
「“──あー……ペロっ……クチュッ……”」
「んっ……あっ♡ ……はあっ、ペロ♡」
“私”は、先生の膝の上に乗って、先生に抱きつく形でベロチューをしていた。
……結局、私はいつものように酔った先生に手を出させていたのだ。
だって、こんなコト知ったら、もう辞められない……♡
「“……んー、ちゅるるるっ……”」
「んへえ♡ うふぁあぁ──っ♡♡♡」
私は、以前のように先生に舌をチューっと吸われていた。
唾液を根こそぎ奪っていくような、存在ごと持っていかれるようなあのキスを♡
もうこれだけで、私の全身から力が抜けて先生に持っていかれるような感覚がするよ……♡
「ん♡ ホシノ先輩ずるい、罰としてお腹を押してあげる♡」
「んああ♡ し、シロコちゃんダメえぇ──ッ♡♡♡」
でも、今日は私だけじゃなかった。アビドスのみんなが目の前にいる日……♡
案の定、嫉妬したシロコちゃんが先生に抱きついている私の体のお腹に手を差し込んで、グイッグイッて押してきた♡
だめ、それダメえええ♡ すぐ、きちゃうからあああ♡
「イッ、────────ッッッ♡♡♡」
「ん♡ ホシノ先輩、すぐ到達しちゃった♡」
「まだよ、シロコ先輩♡ 私も手伝うから♡」
「せ、セリカちゃん♡!?」
「ほーら、背中トントン♡ 頭も撫で、撫でっ♡」
「ん♡ そのままお腹もグイッグイ♡」
「イッ、ア────────ッッッ♡♡♡♡」
だ、だめえ♡
お腹も、背中も、頭も♡ キスしながらで、幸せすぎるよぅ……♡♡♡
「まだですよー☆ ……ほら、ホシノ先輩集中して。目の前に、先生の顔がある♡ 今ホシノ先輩が抱きついているのは、先生の体♡ ホシノ先輩のちっちゃな体がすっぽり収まっちゃってる♡ まるで先生という大きな存在で包まれちゃってる感覚がしませんか♡」
「ホシノ先輩、手も撫でてあげますね♡ うわあ、ホシノ先輩の腕サラッサラ……♡ ホラー、スーッと腕に指をつたっちゃいますね♡」
「イッ、っっっ────────ッッッ♡♡♡♡♡」
や、やらあ♡ 耳も、手も幸せえ♡♡
おかしくなる♡ おかしくなっちゃううう♡♡♡
私が、壊れちゃう♡♡ もう2度と、おじさんなんて言えなくなっちゃうううゥゥ♡♡♡
「“っちゅう……ちゅぱ…………レロッ……ちゅう”」
「んんっ♡♡!? んはあっ♡♡ はあぁっ♡♡♡!!」
ああ、先生からのキス♡♡
だんだん激しくなって、顔両手で持たれちゃって♡♡
絶対逃さないぞって力を込められてずっとキスされちゃってるううう♡♡♡♡
先生に口をめちゃくちゃにされて♡♡
アビドスのみんなに体中をぐちゃぐちゃにされて♡♡♡
もう、無理♡♡ こんなの、耐えられるわけないよぉぉぉッ♡♡♡
あっ♡♡ ああっ♡♡ 来るっ♡♡ 来るぅッ♡♡!?
さっきまで何回も来ちゃってたのに♡♡♡ それが全部重なってきちゃって、大きな波に合体するように♡♡♡♡
今までで最高なのが♡♡ 来るッ♡♡ 来るッッ♡♡♡ 来るッッッ♡♡♡♡
「う、ぁああああアァあああああああっぁああああああああああああッッッ♡♡♡♡♡♡♡ 」
──、
────、
──────、
────────あ、れ? わたし、どうな、った……?
「ふ、わあ……はれ……♡?」
「ん、ホシノ先輩?」
「だ、大丈夫ですかー……?」
「ちょ、ちょーっとやりすぎちゃったかしら……?」
「しょ、正気を保ててますか……?」
「う、……ああ……♡ なん、とか……♡」
私は、なんとか声をそれだけ出せていた。
けれど、既に体は息絶え絶えの状態だった。
先生のキスをしながらみんなからの責めを耐え切るには、この小さな体では不釣り合いのように錯覚してしまうほどの快楽だった。
もう……ダメだよ♡ 幸せが、溢れすぎるよう……♡♡
今は、まだ私の体は先生を抱きしめたままだった。
先生の体は、全体的に熱を持っていてあったかかった。
抱きしめている、先生のお腹も、腕を回している背中も。
こうして先生に座っている膝も。その真ん中も。
──膝の、真ん中、も──?
「──ッッッ♡❤︎♡?!!」
……その事実に気づいた途端、ボーッとしていた頭がハンマーで殴られたかのようにはっきり叩き起こされた。
座っていて分かった。先生のズボンの……真ん中が、“こんもり大きく”なっていた事を。
「──はあっ♡!? えっと❤︎!? ええ……ッ♡!?」
私は、すごく混乱した。
到底冷静になることなんて出来なかった。
だって先生が……あの先生が、生徒に……“私”に対して、興奮してくれてる……?
「っは…………っ♡?! っは…………っ❤︎♡?!」
……私は、少しだけ体を膝の上から下がり、よりはっきり見えた先生の“大きくなっている箇所”を、片手で恐る恐るパジャマのズボン越しに触ってみた。
──あっ♡ 大きい……熱い……❤︎♡
「ん! ホシノ先輩……っ!?」
「そ、それは……☆!?」
「ホ、ホシノ先輩、それ以上はダメ、本当にダメ……ッ!?」
「だ、ダメです……!! ホシノ先輩、“そのライン”は、本当に、本当に超えちゃったら、お終いです……!!」
後輩達が、何か言ってるのが聞こえてくる。
けど、私の耳には入っても、頭が理解を示さない。
何を言ってるのか、さっぱり分からないくらい興奮していた。
その目の前の熱に。
その目の前の塊に。
その目の前の男の象徴に。
私の中の少女……ううん、“女”がものすごく反応しちゃって……❤︎
このズボンを、布を二枚下げれば、その発生源にすぐ出会えて。
この“ライン”を、踏み越えた時点で私は定められた線を超えてしまって。
この“境界”を、超えてしまった時点で私は少女ではいられなくなって。
その麻薬のような誘惑が、とても魅力的に感じられて……❤︎
「……っはあッ❤︎ ……っはあッ❤︎ ……っはあッ❤︎」
心臓がバクバクする。
もう、自分の心音以外何も聞こえていない。
これだけ興奮して、何も考えらないのは初めてかもしれない。
──いや、この心臓のバクバク自体は経験あるかもしれない。
──それもつい最近だ。
──確かそれは、私がアビドスを救うために、自分の身を──
「──────ッッッ?!!」
──私は、頭に一気に冷や水を掛けられたように感じた。
いや、心臓はバクバクしたまま。ほんの一部だけだ。
しかし、そのほんの一部が、わずかな冷静な思考を取り戻せていた。
──ここは、“分岐点”だ。
──あの時のように、私が“選択”を間違えるかどうかの“分岐点”だ。
私の理性が、勘が、ガンガン警報を鳴らしている。
ここで間違えるな。あの時のように“致命的”な間違いを犯そうとしていると。
「──ッふ❤︎! ──ッふ❤︎! ──ッふッ❤︎!」
自分の身を差し出せば、アビドスが救われると本気で思い込んで、大失敗してしまった事を。
あの時は、先生がいたからこそ、私はアビドスに帰ることが出来た……
でも今、まさにあの時レベルの選択肢が目の前に出ているように感じられる。
茹だった頭でも、それだけは感じとる。
私は、再び大きな間違いを犯そうとしている……?
自分を売ってしまった時のように。
──ユメ先輩と、喧嘩してしまった時のように。
また、あの時のような大きな間違いを選択しようとしているのか──?
「──ッはあ❤︎! ──ッはあ❤︎! ──ッはあッ❤︎❤︎!」
理性が警報を鳴らす。本能が肉欲を呼び覚ます。
私の体は、頭も含めてぐちゃぐちゃだ。
関係無い、目の前の男に貪りつけ。そうしたら、私の“女”は満たせるぞ。
ダメだ、そのラインは超えてはいけない。また間違いを犯してしまうぞ。
相反する二つの意見、二つの警告、二つの絶叫。
それがぐるぐるグルグル回り込む。
答えを出せ、手遅れになるぞ、と……
「──、──!!」
「────、──!!」
「──、──っ!?」
「──!! ────ッ!?」
……もう耳はこの場では役立たない。
今この選択を出来るのは自分自身のみ。
私自身で、選び取らなければいけない。
私は、わたし、は────────
[先生にキスをする]←ピッ
[“ライン”を踏み越える]
☆★☆
「──んんっ♡ ちゅる……っ♡♡」
「“──ん、……ぺろっ……ちゅうっ”」
──私は、先生に抱きついてキスをする事を選択した。
私の中の“女”より、“少女”の理性を取ったんだ。
「──ん、ホシノ先輩……」
「よ、よかったです……☆」
「ひ、ヒヤヒヤしたわ……」
「じゅ、寿命が縮まるかと思いました……」
聞こえなかった耳が、やっと機能を取り戻してきた。
みんなのそんな声が、耳に入ってきたのだ。
言葉の意味も、よく分かってきた。
「んんっ♡ ぷはあっ! むうっ♡」
「“ぴちゃ……ぺろ……”」
私は、何かから逃れるように、先生をぎゅーっと抱きしめる。
間違いのルートから、外れるように。私は、まだ戻れるルートに戻ってこれたと証明するように。
「“っちゅ……ちゅう…………”」
「んっ♡ やあっ♡♡ はあぁっ♡♡♡」
あ、来る♡ 来る♡♡ 来る♡♡♡
「あッ、イッ────────ッッッ♡♡♡♡♡」
私は、先生の優しいキスで、達したのだ。
「“…………”」
「っはあ♡ っはあ♡ ……っはあ♡」
私は先生と口を離して、荒い呼吸をし始めた。
けれど、すぐには酸素が足りていない状態に感じていた。
そのまま、私は訪れる眠気に抗えず先生に寄りかかるように──
☆★☆
「“──おはようみんな!! いやあ、気持ちよく寝れたよ!!”」
「お、おはよう〜」
「ん、おはよう」
「おはようございます〜☆」
「お、おはようー!」
「お、おはようございます」
おじさん達は、全員朝を迎えていた。
目の前には、ぐっすり眠れたように元気になった先生がいた。
「“いやあ、今まで飲んでいなかったけど、こういうのだとお酒って悪いもんじゃ無いね! これからも時々飲んでみようかな!”」
「……先生」
「“ん? どうしたんだいホシノ?”」
「──やっぱり、お酒飲んで眠るのしばらく止めよっか」
「“ええ!?”」
おじさんの言葉に、先生はひどく驚いたような表情をしていた。
うへー、ごめんねー。
「いやー、たまにならいいと思うんだけど、やっぱりお酒で無理矢理眠るって体に良くないと思っちゃったんだよねー。先生の体が心配になって来ちゃって……」
「“うーん……まあ、そうだね。アルコールの飲み過ぎは、どの道悪いしね。やっぱり、普通に寝るのが一番だよね……”」
おじさんの言い分に、先生はすぐに納得したような表情に変わった。
元々お酒も飲んでいなかったって言ってたし、無いならないでそれほど気にならなかったんだろう。
「“よし、分かった! これからは、十分ちゃんと自分から睡眠をとるようにするよ! 今回のことでよく分かったしね!”」
「うへー。……よく眠れるように、おじさんが添い寝してあげよっか?」
「“ホ、ホシノ!! 年頃の娘がそんな事言っちゃダメ!”」
「うへへー、冗談だよー」
「“全くもう。……ちょっとドキドキしちゃったよ”」
「……うへー」
おじさんは、自分で言った冗談に少し顔が赤くなってしまった。
あれだけ散々お酒に酔った先生にいろいろされちゃったのに。
それでも、やっぱり乙女としての恥ずかしさは残っていたらしい。
「“それじゃあ、私はシャーレで仕事だから。今日はこれで失礼するね”」
「うん。先生じゃあねー」
そう言って、おじさんは手を振って先生を見送った。
……無事に、先生は帰っていったのだ。
「……良かったんですか、ホシノ先輩〜?」
「ん〜? 何が?」
「ん。先生、これからも定期的にお酒飲んでくれそうだったのに、止めちゃって良かったの?」
「んー、まあ先生の健康に悪そうってのは事実だしねー。飲まないに越したことはないよー」
先生の姿がようやく見えなくなった頃、ノノミちゃんとシロコちゃんがそう聞いて来た。
うん、先生の体が心配っていうのは本音だしねー。
……それに、やっぱりこういうのはよくないって思っちゃったんだ。
今までのものが、夢のような時間だっただけで、こういうのは違うんだって。
あの選択で、はっきり分かっちゃった。
……だから、もうやらない。
私はそう、はっきり決めたんだ。
「そ、そう。ちょっと残念な気もするけど……」
「いえ、それがいいと思います。やっぱりこういうのは、ちゃんとした方がよろしいかと……」
「うへー、そうだよー」
「うんうん。そうですねー」
「──ところで、先生に飲ませる予定だったとてもいいお酒がまだ残ってるんですけどー」
「…………」
「…………本当に、いいんですか〜☆」
「や、やらないよ!? やらない……」
「……本当に〜?」
「や、やらない…………暫くは」ボソッ
「ん、ホシノ先輩……」
「ホシノ先輩〜☆」
「ホシノ先輩!?」
「ホ、ホシノ先輩……」
「…………う、うへへ〜…………」
……おじさんは、そう誤魔化すしかなかった。
……我ながら、やっぱり意志が弱いなと、そう思った。
☆★☆
──あれから、しばらく時が経った。
あれから、また色々な騒動があって、ここでは全部書けないような出来事が沢山あって。
──そんなこんなで、私は無事アビドスを卒業した。
後輩達に泣きながら見送られて、先生にお礼を言って。
「“──ホシノ”」
……そして卒業式から数日経って、目の前に先生がいる。
……私はこう思う。この世界には、選択肢が沢山あって。
私はこうして立っている場所も、選び続けた選択肢の内の一つの世界で。
本当は、様々な分岐を辿った世界が沢山あるんじゃないかって。
それは、バットエンドなのかもしれない。
それは、ハッピーエンドかもしれない。
……けど、少なくとも、私が今いるこの世界は……
「“──ホシノ、好きだ。結婚してください”」
「──うん、喜んで」
──こんな世界も、あってもいいよね?
【お酒を飲んだら、ホシノの唇を奪っていたらしい】【完】
これにて、この小説は終了です。
ここまで読んで下さって、ありがとうございました。
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