長女転生〜ルーデウスみたいに本気出す! 作:モモンガ様を見守り隊
Side:ロキシー
〜一週間前〜
…遅い、街に出掛けたにしては、随分と遅いですね…聞いた話では、昼頃に街に出ていったとの事でしたが…
いつまでも帰ってこないレイラたちに少し不安を覚える。
ロキシーは今日、冒険者協会から呼ばれてとある魔獣の捜索及び討伐に向かっていた。
そのため、ロキシーは今日のレイラやパックスが何をしていたのかを知らず、掴めぬ行方に余計に不安が募っていく。
レイラがよく触りたがっていた自身の碧い髪をロキシーは不安から手を止めることができず弄り倒す。
髪が段々と巻かれていくなか、最悪な知らせをジンジャーが持って来た。
「…その、ロキシー殿…落ち着いて聞いてください、レイラ殿と、パックス殿下が行方不明になりました。」
その言葉を聞いた瞬間、私は弾かれたように報告に来てくれたジンジャーさんに詰め寄る。
「…どういうことですか?」
ジンジャーを見つめるその目には一切の光のない虚空が広がっているように感じる。
「き、今日の昼頃、パックス殿下が供もつけず、レイラ殿だけを連れて街に出掛けられ、そこから消息不明にとのこと…」
「目撃情報によると、どうやらパックス殿下が裏路地に入って行くのを見たのが最後だったそうです…」
「…ッ!」
そこまでの話を聞き、ロキシーは走り出そうとするが、ジンジャーは慌てて止めた。
「お、お待ちください、ロキシー殿!ロキシー殿が今、捜索をしようともこのような暗がりのなか、闇雲に探しても、貴女の身に危険が及ぶだけです!」
「…では!私にここで、弟子の安否も分からぬまま、ただ指をくわえて待っていろというのですかッ!」と見たこともない形相で怒鳴る。
「…ッ!そうではありません!今、ロキシー殿が出ていってもできることはないと言っているのです!」とロキシーの怒声に圧倒されつつも食い下がる。
「…ッ!わ…かりました。少し、一人にさせてください…」と先程までの荒れ具合とは一転、静かにそう言い残し、自室に戻っていった。
ロキシーは、ローブと杖をベットに投げ、部屋を横切る。
「…お願いします、レイラ、どうか…どうか無事でいてください…」
バルコニーから城下町を見下ろしながらそう神に祈る。
それから国王による捜索隊が結成され、私も志願して一緒に捜索をしました。これだけいれば流石に見つかるだろう…そう思いました。
しかし、我々はそんな期待とは裏腹に痕跡の一つすら見つけられなかった。
捜索が難航し始め、焦り始めた頃、捜索隊の1人がこんなことを言い出したのです。
「…なぁ、この事件さ、おれ犯人分かっちまったかもしれねぇよ…」
「…お?なんだって、ほんとか?」
「あぁ、これってさ、あのレイラって家庭教師が来てからこうなったわけだろ?」
「あぁ、そうだな」
「…ってことはよ?そのレイラが奴隷商人と結託して殿下を捕まえたんじゃね…むぐッ!」
「おま、バカッ!レイラっていったらあの王宮魔術師ロキシーさんの弟子だろ!聞かれてたらどうすんだよ!」
そんな声を私は偶然、聞いてしまいました。
…このままだと、犯人がレイラになってしまう…そう思った私は段々と1人で捜索するようになりました。
しかし、一人というのはなかなかに難しいもので捜索隊でなくなった私は、王宮魔術師という肩書きだけで情報収集を行っていました。
一人での調査に疲れを覚え始めた頃、冒険者協会で、情報収集をしていると、不意にある情報が私の元へ流れてきました。
その情報によると、奴隷市場のショーに出ていたライトブラウンの髪の女の子が、放たれていた魔獣を壊滅させたとのこと。
それを聞いた私はすぐにそれがレイラだと確信しました。
その情報を受け、私はすぐさま行動に移りました。
疲れていた身体を鞭打って私は奴隷市場に行き、商人に問いました。
「…奴隷の中にライトブラウンの髪の女の子がいると聞きました。見せてくれませんか?」
…あぁ、きっとこれがいけなかったのだろうと今なら分かる。自分が焦りに焦ったせいで必死な顔をしてしまった。
こういうところでは、すました顔で、できる限り興味なさげにと、よく馬面の旧友に教えてもらっていたというのに…
「…すみません、その奴隷は4日後の競りにてお披露目の予定でして…」と必死そうな私の足元を見る感じで相手にもされなかった。
「か、顔を見るだけでいいんです!お願いします!」と必死に頭を下げた。
「…すみませんねぇ、あの奴隷、結構な人気でしてねぇ…貴女みたいに一目見ようと必死になる方が大勢いましてねぇ…」
「…」
沈黙していると、私の競争心を煽らせるかのように奴隷商人が顔を近付けて小さな声で、
「…実はここだけの話、隣の国の大貴族さまも狙っているとか…なんでも、ショーの最後に拘束しようとした巨漢達を殺して逃げようとするほどに凶暴な奴でして、それが貴族さまにはどうやら刺さったらしくてね…」
「…そういう方は大抵、アッチの方で調教のしがいがあるとか…おっと!お嬢ちゃんには少し早かったかな!」とおどけてみせる。
「…」
左手で必死に右手を抑える。
…ダメだ、まだ確定もしていない…それに、その情報の子の場所さえ私は知らないんだ…そんな状況で暴れて、逃げられたら本当にお終いだ。
…だから落ち着くんだ!あの子の立派な先生であるためにも!
歯を食いしばりながら、地面を睨む。
…必ず、助けに来ますからね、レイラ…
その後、何を話して帰ったのかあまり覚えていない。
しかし、その後、私は夜になるとすぐに行動を開始した。
捜索隊にもここらを巡回するよう声を掛け、私は奴隷市場に向かいました。幸運なことに私が出る頃には雨が降っていて、コソコソと侵入にはもってこいのタイミングでした。
目的地に着くと、辺りは火の海でした。火災の理由は憶測でしかありませんが、きっと落雷によるものでしょう。
燃えている市場を見て私は急ぎました。
…レイラが危ない!
仮にレイラがこの市場にいるなら、檻に入れられているのでしょう。その場合、逃げ出せず焼死してしまう可能性や地下なら息が吸えず死んでしまう可能性もあります。
私はとりあえず目についた市場の手前にある建物から調べました。一軒、また一軒と探しますが見つかりません。
焦り始めた私の元に一人の男がきました。それは今朝私と話した奴隷商人でした。
「…レイラは、今日話した女の子はどこにいるのですか!?」
「し、知らねぇよ!こ、こんな状況で奴隷を助ける暇なんてある訳ねぇだろ!」と私に負けぬ大きな声でそう吠えました。
…ですが、そんなことどうだって良かった。私にとっては…
「…もう一度、問います…レイラは何処ですか?」
そう男の胸に杖を当て問う。
私の目を見てか、表情からかは分かりませんが、こちらが本気である事を理解した男は、怯えながらも奥の方を指さす。
「…こ、この市場の中心にあるデケェ建物の地下だ…」そう男が答えると同時に私は走り出しました。
…どうか、どうか無事で!
男の言っていた建物は大きなテントのサーカスのような所で、テントの入り口付近では魔獣と男達が戦っているのが見えました。
入り口付近は危険だ…なら、何処から入るべきか…そう考えていると、視界の端に地面から誰かが這い上がってくるのが見えました。
その二人はどちらも見覚えのある後ろ姿で、堪らず私はその二人目掛けて走り出しました。
「レイラ!」と後ろから抱き着くと流石に驚かれてしまいましたが、私としては貴女が幻影じゃないかの確認だったんですからね。
「…先生!?」
小さく細いながらもしっかりと鍛え抜かれたその身体を腕の中で感じる。
…ああ、本物のレイラだ。
「無事で良かった。ここは危険です、早く逃げましょう!」
そうして私は、二人とパックス殿下が助けたという奴隷達を連れて王城に戻りました。
後ろを振り向くたび、視界の端に映るレイラの左手に付いた赤い血が私の理性を揺さぶってきました。
…ちがう、平気じゃないですか…レイラは怪我していませんよ…
そう思いながらも私は、レイラにその袖はどうしたのか聞くことができませんでした。
途中何度か休憩を挟みつつ、街を巡回していた捜索隊に合流することができたおかげで、そこからはスムーズに王城まで戻ることができました。
王城に戻ると、ひと息つく間もなく王の御前に出されました。
私としてはレイラ達から、明らかに疲労の色が見てとれるので、出来れば謁見は明日にして欲しかったというのが本音ですが、国王としても行方不明だった息子の安否をいち早く確認したいのでしょうから私としても何も言えません。
「面をあげよ…」
その声とともに私達は顔を上げました。
「…息子よ、よく無事だったな…」
「ち、父上…」とパックス殿下の声は少し震えていた。
「…そして、レイラよ…お主は我が息子を守ることもできず、あまつさえ王族を奴隷にまで貶めた。よってお前を処け「お待ちを父上!」」とパックス殿下は、国王の処罰に異を唱えた。
パックス殿下が国王の意向に背いた事には正直驚きました。…それよりも今、王は処刑と言おうとしてたのでしょうか?レイラを?
…仮にレイラを処刑すると言うなら、私だって考えがありますからね…
杖にそっと魔力を込めつつそんな物騒な事を考える。
「…こいつは、レイラは余を充分に守っていました!その結果、余はこうして五体満足で生きております。それに…それに奴隷商に襲わせたのは余なのです!」
…は?
「…どういうことだ、息子よ…」
国王の顔が険しくなった。
それと同時に私の顔も多分、見せられないような表情になっているだろう…
「余が奴隷商を呼び、そこに余とレイラの二人だけで…」
「もうよい!!」
「もうよい…パックス、お前には失望した…今までのは目を瞑ってきたが、今回ばかりは度が過ぎている…パックス、お前を…」と言い切る前に外が騒がしくなる。
「…お待ちください、殿下…現在、王は…お待ちを!」
「父上!!」
ドカンッ!という到底とびらから聞こえてくるはずのない音を出し、一人の男が入ってきた。
「ざ、ザノバ…」
国王も流石の事態に驚きを隠せていない…かくいう私も驚いて、先程までの怒りが吹き飛んでいってしまうほどに驚いている。
「ここに弟の家庭教師がいると聞いて…は!」と言いかけ、レイラと目が合ったザノバ殿下は、見たこともない気持ち悪い動きでレイラに近づいていった。
「おい、レイラよ…今から聞くことに正直に答えよ。この人形、一体どこで見つけたのだ?」と袖から両手でちょうど持てるくらいの大きさのロキシー人形を取り出した。
「あ、それお兄ちゃんの像…」とレイラがポロッとこぼす。
すると、ザノバ殿下はまたもや気持ち悪い動きを披露して発狂する。
…え、あれってルディが作ったんですか!?…だからあんなに精巧に…
「な、なんと!これをお主の兄君が!であれば、この人形も神がお作りになられたものか!ぬおおおおお!神よ!」とレイラのカバンから取り出した人形を見てそう言う。
「あ、あの殿下?それは私が作ったものですよ?」と引き気味のレイラが1、2歩下がった。
そのレイラの言葉に目を見開き、一国の王子とは思えないぐらいに綺麗な五体投地をしだした。
「なんとぉぉ!神の妹君よ!どうか私を弟子にしてください!」
「え〜っと…嫌です。」
「なんと!どうすれば貴方様の弟子にしてくださいますか!?」
「えっと、お兄様に頼んでください…」と言うレイラは、本気で嫌がって見えた。
「…ザノバよ!今、この場に何故来た!」とみかねた国王がそう聞く。
「…父上、余は神を見つけたのです!」
「…な、何を」
「余はこの国を出て、神の元へ行くのです!」と何を言い出すかと思えば、王子の唐突な国を出ていく宣言…この国、やばいなと今更ながらに思い始めるロキシーであった。
この混沌とした状況に、脆弱そうな国王の顔には疲労の色が透けて見えた。
王は倒れるように王座に座る。
「…はぁ、もうよい…余は疲れた…この話は無かったこととする。そしてザノバよ、国を出ていくことは許さん、以上だ…」
そう王が場を締めた事により今回の騒動は、パックス王子によるいつもの暴走の一つと数えられるだけに終わった。
…各々、部屋に戻され休むよう言われていたが、私にはやらねばならないことがあった。
自身の部屋を出て一直線に王子の部屋に向かう…手に杖を持って…
王子の部屋に辿り着き、ドアに手をかけようとしたその時、中から声がした。
「…は、すまなかった。」
「…気にしないでって言ってるじゃん。…に見て欲しかったんでしょ?」
「ああ、だが余は…」
「もう!いいってば、もう友達でしょ?友達ならこんなことの一つや二つ…いや、ないか…」
「…」
「…」
「「…ぶ、アハハハハ!」」とレイラとパックスの外にまで響く笑いが中から聞こえてくる。
「…」
私は、かけていた手を離し急いで部屋に帰った。
…レイラ、レイラ…レイラ!
「…レイラ、私はどうしたらッ!」
枕に顔を埋め、静まり返った部屋で枕を強く抱き締める。
「…ッ、ぐずっ…」
その日、部屋からは押し殺した泣き声と鼻水をすする音だけが闇夜に響き、その音は何処とも無く溶けて消えていった。
最近暑くて溶けそうな、どうも作者です。
なんだかんだ今の今まで投稿を継続して自分では少し驚いてます。
それもこれも、お気に入り、評価をしてくださってる方々のおかげですね。
話は変わりますが、そろそろifストーリーもあげていこうと思います。
投票の結果、先に老デウスルートを投稿させていただきます。ロキシールートにその他の方々にも楽しんでいただけるよう、この場で自分のハードルをあげておきますね。
…楽しみにしててね!(小声)
ifルートを作ろうと思ってるのですが…優先的に作って欲しいやつありますか?
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エリスルート(誘拐事件の辺りから)
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ロキシールート(卒業試験から)
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老デウスルート(長くなる気がする…)
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シルフィルート(一緒に転移するやつ)