「海が見えてきたよ!海!」
クラスメイトの誰かがそう叫ぶと皆も海を見る。今日は臨海学校初日。と言っても初日は海を満喫した後で企業から頼まれた武器を試したり代表候補生は本国から送られた武装を試すなどをする。正し、一夏に改造されたISに関しては当てはまらないが。
皆が騒いでいる中一夏は夢を見ていた。
*五年前
「大分上達したな、一夏。」
「ありがとうございます、ガルムさん。」
ハンターステーションの射撃訓練場でガルムに褒められた一夏は礼を言った。
「しっかしお前さんがこっちに来てもう四年か。早いもんだな。」
「ええ。最初の頃は雑用程度しか使えない男でしたけどね。」
「ははは、しゃーねーよ。」
そんな二人にジェントが声を掛けてくる。
「お二人とも、ちょっとよろしいですか?」
「ん!ジェント。」
「どうかしたんですか?」
ジェントが人に話すのは珍しい。余程のことがある場合が多い。
「ご心配なく。今日は一夏君に紹介しておきたい人がいます。来てください、ジャック。」
「はい。」
ジェントに呼ばれて来たのは金髪で細マッチョの男性であった。一夏と同じ地球人のように見える。
「ほんとに俺と同じ地球人のハンターがいたんだ。驚いた。」
「えっと・・・・・・俺と同じ・・・・・」
「ああ。地球人だ。いやー、よかったー。この宇宙に一人でいるのって寂しいんだよねー。ん?どしたの?」
「い、いえ・・・・・いきなり俺と同じ地球人が現れて驚いてんですよ。えっと・・・・」
「ジャックだ。」
「ジャックさんですね。俺は一夏です。」
「一夏か。俺のことは気軽にジャックって呼んでくれ。この際年の差は気にしないで置こうぜ。」
ジャックはそう言うと歯を見せるように笑った。一夏は自然と笑った。
それがジャックと一夏が始めて出会った日だった。
「ん・・・・・」
一夏は目を覚ますと丁度旅館に着いた頃であった。
「ふあ~、よく寝た。」
「よく寝てたね、一夏。」
「まあな。」
起きた一夏にシャルロットが話し掛ける。
「なーんか懐かしい夢見てた。」
「どんな夢?」
「まあ・・・・・・ちょっとな。」
一夏の表情が暗くなったことに気付いたシャルロットはそれ以上聞こうとはしなかった。
「それでは、ここがこれから三日間世話になる花月荘だ。全員、業務員の仕事を増やさないように注意しろ。」
「「「よろしくお願いしまーす。」」」
「はい、こちらこそ。今年の一年生も元気があってよろしいですね。」
お上さんはニコニコしながら言う。
「あら!そちらの子は噂の・・・・」
「どうも。織斑一夏です。」
「ご丁寧にどうも。清洲景子です。ニュースで見るよりかっこいいわねー。」
「いやいや、俺モテないですよ。」
「そうなの?結構いい顔しているのにねー。」
清洲さんに千冬が小声で話し掛ける。
「本人は全く異性からのアピールに気付いていないんです。」
「大変ね、その子達。」
「ええ。」
清須さんは同情した。
「それじゃあ皆さん、お部屋の方にどうぞ。海に行かれる方は別館の方で着替えられるようになってますから、そちらをご利用場って下さいな。場所がわからなければいつでも業務員に訊いて下さいまし。」
生徒一同返事をして移動をする。
「織斑、お前の部屋はこっちだ。ついて来い。」
「はい。」
一夏は千冬について行く。
「ここだ。」
「やっぱし。」
ドアには『教員用』と大きく書かれた紙が張られていた。
「野次馬対策か。」
「まあそうだな。この後私達は少し仕事があってそれから海を満喫する。」
「手伝おうか?」
「大したものじゃないから大丈夫だ。何度も手伝ってもらうわけにはいか無いからな。」
一夏がある日職員室に行くと溜まっている書類の山があったため一夏が自然と手伝うことが多くなった。
「織斑先生、失礼します。」
そう言って山田先生が入ってきた。
「わっ!織斑君!」
「そんなに驚かなくても・・・・・」
「ご、ごめんなさい。織斑君は織斑先生のお部屋でしたね。」
「山田先生、これはあなたが提案したことでしょう。」
抜けているところがある山田先生であった。
「それじゃ俺は遊びに行ってきます。」
一夏はそう言うと部屋を出て行った。
旅館の別館に向かう途中一夏は箒と出くわした。箒は旅館の庭に「抜いてください」と書かれた立て札とその側に刺さっている機械のウサ耳を見ていた。
「箒。」
「ああ。前回助けられたからな。こればかりは答えておこう。」
箒はそう言うとウサギの耳下まで近づき、機械のウサ耳を引っこ抜いた。力をこめて抜いたため尻餅をついた。
「大丈夫か。」
「ああ。だが耳だけのようだぞ。」
「・・・・・上だな。」
「え?」
一夏の言葉に箒は間抜けな声を上げた。一夏が言った通り上から奇妙な音を立てながら何かが接近してくる。
キィ―――――――ン・・・・・ズド―――――ン
空からニンジンが降ってきた。それもデカイ。
「相変わらずのぶっ飛びよう。変わんねー。」
一夏がそう呟くと同時にニンジンが二つに割れ、束が姿を表す。
「あはは!引っかかったね、ほーきちゃん。」
「姉さん・・・・・もっとましな登場方法はないのですか?」
「束さん、インパクト強いと一周回ってて忘れられるから。」
「あっ!いっくんも久しぶり!」
「相変わらずマイペースだな。」
一夏はもう呆れていた。
「ホント久しぶり。三年・・・・いや九年か。いっくんは向こうでいろんな経験したんだもんね。」
「まあ・・・色々と。」
「それよりほーきちゃん、おっきくなったねー。特におっぱいが。」
ゴツン!
「殴りますよ。」
「殴ってから言った!今殴ってから言った!いっく~ん。」
「俺に助けを求めない!てか今の自業自得でしょ。」
「うえ~ん。いっくんとほーきちゃんがいじめる~。」
束は泣真似をする。
「一夏、行くぞ。」
「成長したな、箒。」
一夏と箒はその場から離れた。
一夏は別館に向かうの廊下で途中見えた海に黄昏ていた。
「ん?どうした一夏?」
「ああ、先に行っててくれ。」
「まあ・・・・・構わないが早くしろよ。」
箒はそう言うと先に行った。
「海・・・・・・・か。」
*五年前
ある惑星でのハンティングでゴルザをU字谷にまで引き寄せたマグナはジャックに通信を入れた。
「ジャック!頼んだぜ!」
「おうさ!」
U字谷の上で待機していたジャックはインパクトナックルを右手に展開すると地面に向け一気に振り下ろした。ジャックはぶつけた拳から地面にヒビが入りU字谷の一部が瓦礫となってゴルザを襲う。それによりゴルザのプラズマソウルが砕かれてゆく。
「一夏!外すなよ!」
「わかってるよ。」
遠くからうつ伏せ状態の一夏は倒れたゴルザをスコープで覗いていた。
「頭に残ったプラズマソウル、貰うぜ!」
一夏はレーザーライフルのトリガーを引くと一夏が放ったレーザーはゴルザの頭部に残ったプラズマソウルを撃ち砕いた。
「ヨッシャ!ミッション終了だ!」
マグナは歓喜の声を上げ、一夏とジャックは微笑んでいた。
ジャックと一夏が一緒に食事を取っているとジャックが唐突に窓の方を見て呟いた。
「あー、海いきてー。」
「ん?ジャック、今度は海のプラズマハンティングがしたいのか?」
「ちげーよ。地球の海で泳ぎてーんだよ。ほら、ハンティングいくとこっつったらどこかしこも廃墟になっちまってんだろ?海があっても女がいねーと意味ねーんだよ。」
「女?彼女でも欲しいのか?」
「欲しいに決まってんだろ!特にボインな女!アレがタマンネーんだよ。」
「相当の巨乳好きだな。」
「んーだよ一夏、お前はボイン好きじゃねーんかよ?」
「う~ん、千冬姉と一緒に暮らしてたから、あんまそーいうのは考えたことねーなー。」
「千冬?もしかしてお前あの織村千冬の弟!」
ジャックは驚く。
「なんだ知ってたんか。」
「知ってるも何もあのモンド・グロッソで優勝したブリュンヒルデだぜ!」
「あの人そーいう肩書きとかどーでもいいほうの人だぜ。」
「マジ!そらスゲー。私生活とかってどーなんだ?」
「一般と変わんねーと思うぞ。ただフツーに家にいてフツーに食事手いる何処にでもいる女性だと俺は思うけど。」
「いや、ISで、しかも一本の刀で世界一位になる時点でフツーじゃないだろ。」
「あ、そっか。」
一夏はそのことを忘れていた。
「そういや今更思ったんだけどさ。」
「はい。」
「お前彼女いるの?」
「いねーよ。大体、俺モテねーし。」
「かー。いるわー。こういう存在たまにいるわー。トーヘンボク(?)つーの?羨ましいわお前。」
「んだよ。そういうお前はどうなんだよ。」
「何度もナンパしてっけどいねーんだわこれが。」
「そらナンパしたら軽く見られる。」
「いやいや、俺マジ惚れた人間以外ナンパしない主義だから。」
「それて惚れたら誰でもいいって話か?ヒクワー。」
「ンだよ一夏。俺だって彼女ほしーんだよ!」
「それより就職してからのほうがいいんじゃね?そしたら女性の方から近づいてくると思うし。」
「そっか。そうだな。」
この時は知らなかった。これから先に起こったハンティングであんなことになるとは。
別館で着替えていると隣の方から女子の声が聞こえてくる。
「ねぇ、ティアナのおっぱいおっきくない?」
「えー?そうかなー?」
「こっちの国だと普通だよ。」
壁越しに聞こえてくる女子の会話は卑猥だったので一夏は顔を紅くしながら更衣室を出ると女子と出会った。
「あっ!織斑君だ!」
「ホント!」
「ねえねえ織斑君、私の水着変じゃないかな?」
一夏は女子に何とか対応しながら海に行った。一夏が海に行くと後ろから誰かが接近してくるのを感じ取りその場にしゃがんだ。それと同時に鈴が砂浜にダイビングした。砂まみれになった鈴が一夏に文句を言う。
「ちょっと一夏!避けることないじゃない!」
「仕方ないだろ。職業病が染み付いちまってんだから。」
一夏は少し呆れる。
「そういやアイツにも出しておくか。」
一夏は腕輪からハンターボールを出す。
「お前も色々データ見てこいよ。」
ハンターボールは頷き当たりを散策した。
「一夏さん、ちょっとよろしいですか?」
一夏に話しかけてきたのはパラソルにビニールシート、そしてサンオイルを手にしているセシリアの姿があった。
「・・・・・背中だけだからな。」
「よく分かりましたわね」
「その装備を見てたらな。」
二人のやり取りを聞いていた女子が行動に移した。
「私パラソル持ってくる!」
「私はビニールシート!」
「私はサンオイル!」
「私は落としてくる!」
「落とすな!メンドクサイ!」
最後の人に一夏はツッコミを入れる。
ビニールシートを敷き、パラソルを立てうつ伏せになるセシリア。一夏はサンオイルを手に注ぎ、少し太陽で温めセシリアの背中に塗る。
「一夏さんお上手ですわね。」
「手に取った瞬間冷たかったからな。温めた方がいいと思ってな。」
「ふふふ、気配りが出来るお方ですわね。」
「そらどうも。」
しばらくしてセシリアの背中にサンオイルを塗り終えた一夏は他の女子に交代してもらいその場を後にした。
「いーちかー。」
鈴が一夏に近づきながら声をかける。
「どうした鈴?」
「あんたなんか元気なくない?」
「そうか?」
「そうよ。なんかあったの?」
「ちょっとアイツを思い出してな。」
「アイツ?」
「ああ。」
鈴が言及しようとしたときにシャルロットがタオルミイラと一緒に現れた。
「シャル・・・・・隣にいるのはもしかしてラウラか?」
「うん・・・・・・・・本人が恥ずかしくて出てこないんだよ。」
「そうか。おーい、ラウラー。姿くらい見せたらどうだー。」
「ほらラウラ、折角買った水着なんだから一夏に見せなよ。」
「し、しかしだな・・・・・その・・・・・笑われてしまうのではないかと思うと・・・・・それに私にも心の準備というものが必用なのだ。」
シャルロットが説得するも一向にラウラは姿を見せようとはしない。
「ふーん。じゃあ僕たち一夏と先に遊んでおくよ。」
「ま、待て!」
「じゃあ早く姿を見せなよ。」
「え、ええい!見せればいいのだろ見せれば!」
ラウラはそう言うと身に纏っていたタオルを全てはぎ姿を見せる。
「わ、笑いたくば笑え!」
「全然変じゃないよいよね。一夏、鈴。」
「ああ。似合ってるぞ。」
「そうね。学校指定の水着かと思ったけどそっちの方がいいわ。」
「しゃ、社交事例ならいらんぞ。」
「全然そんなんじゃ無いって。」
「そ、そうか?」
「おう。」
一夏は迷うことなく言ったためラウラは少し顔が紅くなる。
そんな二人に女子の一人が話し掛ける。
「おーい。織斑君も一緒にビーチバレーしよー。」
「おりむーの水着姿バキュンバキュン!」
「よーし。俺は分身して相手は誰がする?」
一夏は分身してフィールドに入る。
「おー!」
「こうなったら理不尽な形で攻めますか!」
対戦相手側にシャルロット、ラウラ、鈴と代表候補生達も入る。
「ISで負けてもこっちじゃ負けないよ!」
「今度はこっちで勝ってやるんだから!」
「覚悟しろ、一夏!」
「おうおう、やるねー。」
「そんじゃ俺たちもやりますか!」
代表候補生と一夏のビーチバーレー対決。数で勝てるかと思ったが一夏の連携で上手く対応され、逆に押されていた。
「ビーチバレーですか。織斑先生もどうですか?」
「ああ。丁度ISでも借りを返したいと思ってたところだしな。」
そこに水着姿の山田先生と千冬が来た。千冬も加わりビーチバレーは激しさを増したが一夏には勝てないままであった。
臨海学校旅館付近の海域の深海。そこはわずかな光しか届かない海底。しかしそこに薄っすらと見えるものがあった。
白である。その姿はまさしく刀である。
その刀からは鼓動が放たれていた。何かに共鳴するかのように。