だぜ娘奮闘記!   作:元掃除道具

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息抜きです。
1話も読んでいなくても、話の雰囲気だけで本作がなんとなくわかる話。
ただし本編には関係がない(!?)

 もしもだぜ娘が魔理沙じゃなく別キャラだったら?


もしもだぜ娘がだぜ娘じゃなかったら短編

 巫女娘徒然草

 

 

 

 

「……ついにきたわね」

 

 博麗神社を真っ赤な霧が覆っていく。

 幻想郷の空を染めながら、その紅霧は尚も広がり続けている。

 ただでさえ人気の少ない神社は紅霧のせいで余計に不気味な雰囲気を醸し出し、これでは人里での『妖怪神社』なんて噂がもっと広がってしまう。

 これが『紅霧異変』の始まりで、私『博麗霊夢』と『霧雨魔理沙』が主人公の『東方紅魔郷』の幕開けだ。

 

 わたしは『本物の博麗霊夢』ではない。

 これは妄言なんかではなく、私はこの世界が『東方Project』というゲームの世界だと知っている。

 元々は別の人間だった、はずだ。

 どんな人間だったかは覚えていないが、最初に博麗霊夢だと自分が自覚した時には「最強系主人公に転生とか人生楽勝すぎわろた」なんて思っていた。のだが、どうにもそういう様子ではない。

 

 妖怪、強すぎ。

 私弱すぎ。

 

 なんだ『空を飛ぶ程度の能力』って!

 ホントに飛ぶだけしか能がなく、幼馴染の魔理沙にはあっという間に抜かされてしまった。

 わたしよりも後から飛べるようになったくせに! 悔しすぎてその日はこっそり泣いた。

 

 どうにも私には『原作の霊夢』のような才能はないみたいだ。

 『霊夢』は修行をサボりながらでも、色々な妖怪に物怖じせず関わっていくし、なにより強い。

 

 紫も華扇も、ちゃんと人をみて選んでほしい。

 今代の博麗は早々にクビかな……なんて思って、じゃあ別の人生を謳歌しよう!なんて考えていたら、レミリアじゃない吸血鬼が妖怪を束ね始めた。

 

 あまり原作を覚えていない私だが、これには首を傾げて冷や汗を掻いた。

 なにせ、私の知っている『ゲームとしての東方Project』が知らない話になってしまったのだ。

 まだ幼かった私は、その原因を必死に考えてある結論に至った。

 

 私が『霊夢』じゃないからだ。

 

 これ以外に考えられない。

 それが多くの人妖に影響して、こうして変な異変が始まってしまったのだ。

 思えばスペルカードルールも全然浸透していない。

 人里から来る嘆願も無視するわけにはいかないから必死にこなしているのに、世界はずっと血生臭いままだ。

 色々な人妖に、たくさんの影響を、与えてしまっている。

 

 気が付いてからの私の行動は早かった。

 まず形から入ろうと思って、博麗の巫女衣装をきちんと着ることにした。

 今でも脇丸出しの格好は恥ずかしいが、誰も指摘しなくなったので多少は慣れた、と思う。

 修行もかなり真面目に取り組むようになり、お札をはじめ色々な道具をとにかくたくさん作る事にした。

 でも博麗の秘宝である陰陽玉は、どうしても本物が使えなかった。

 いや、使えるんだけどあまりに燃費が悪くてすぐに疲れ切ってしまうのだ。

 困っていたら陰陽玉を作ったという妖怪が、私用のものを新しく作ってくれて、なんとか形だけは整った。

 こんなに効率が悪いなんて、私が本物じゃないからだなんて落ち込んでいたら、その妖怪をはじめ色んな妖怪たちが協力してくれたのだ。

 

 原作では主人公として並び立つ魔理沙は、気が付けば仲良くなっていて「霊夢は巫女の責務なんか背負わなくていいんだぜー」なんて笑って言いながら首を突っ込んで手伝ってくれる。

 気が付けば魔法の森に住むようになっていたし、人間とは思えないほど強くてとても頼りになる。

 ……正直人里から来る妖怪退治の依頼も、魔理沙がいないと大変な目に遭うことが多くてとても助かっている。

 本人にも感謝の気持ちで、ごはんを作ったりしてなんとか恩返しをしている。

 

 吸血鬼が幻想郷の妖怪を束ね始めた時にも、私はなにもできなかった。

 気が付けば周りが事を収めてしまって、私はただ担ぎ上げられた神輿のようにぼーっと浮いているだけだった。

 

 どうにか取り繕った中身のない私では、この先に起こる『東方Project』の様々な異変に何もできない。

 この美しい幻想郷を護るために、次代の巫女が見つかるまでは私がどうにか幻想郷を守り抜かなければいけないんだ。

 必死に紫や幻想郷の賢者たちに次代の必要性を訴える中で、私は私なりにこの立場を守ろうと死ぬ気で努力して、なんとかこの紅霧の異変を迎えたのだ。

 

 よし! っと自分の顔を叩き、気合を入れ直して私は紅霧の広がる空へ飛びあがった。

 

 *

 

「次代の巫女の必要性? いや、それは……」

 

 八雲藍は言葉を濁し、自身の主人をちらりと盗み見る。

 表面上はにこにこと穏やかに笑みを浮かべて聞いているが、その内心を量り、藍は額に汗を浮かべた。

 

「……紫様は、どう思うのですか?」

「あらぁ。私はね、藍。あなたに聞いているのよ?」

 

 にこやかに尋ねる紫に、藍は「さて、どう答えたものか」と明晰な頭脳を悩ませる。

 

 質問の真意がわからない。

 八雲紫という妖怪は、どう見ても今代の巫女を猫可愛がりしているし、それは他の幻想の賢者たちも一緒のように見える。

 出来の悪い子ほど可愛いというのか、なんだかんだ言いながらも、泣きべそ掻きながら努力をするあの子を藍自身も好ましく思う。

 そしてそれが能力という点、特にこの幻想郷を維持するための博麗の巫女という機能の話であれば。

 

「……次代は、まだ必要ないと考えます」

 

 強い意志を瞳に宿し、自身の考えを口にした。

 

「あの子はとても未熟で、臆病で、雷にも怖がるようなそんな小さな子供ですが」

 

 しかし、ある一点において。

 

「それでも、博麗大結界を維持する機能は満たしています」

「そうね」

 

 結局はそう。その能力はしっかりと博麗の巫女として、重要な役割を十分に満たすものなのだ。

 

「妖怪を恐れすぎているのが、調停者としての役割には不向きですが。それに戦いに不向きな性格だと言えます。彼女は優しすぎる」

「そうなのよねぇ……」

 

 ようやくその笑みを崩し、心から残念そうに八雲紫は口元を扇で隠しながらため息をついた。

 

「あの子から、自分は巫女に向いていないって話が上がってきたわ」

「またですか」

 

 昔ほど頻繁ではないが、その話が起こるたびに紫は暗い顔をしている。

 藍は対面に腰を落ち着けている紫に、急須からお茶を注ぎ、目の前に置く。

 

 あの子は歴代の巫女の事を重く考えすぎているのだ。

 歴代全てが【妖怪退治も博麗大結界の維持も完璧にこなした】なんて、誰が言っているんだか。

 一番大事な大結界の維持さえ危うい時代もあったのだ。

 それに比べれば、今の博麗霊夢は十分以上にその役割を全うしている。

 

「そうよ。あの魔法使いの魔理沙なんかを、摩多羅隠岐奈あたりが童子だか何だかにして、荒事はそいつらに任せたらいいのよ!」

 

 ぷんすことわかりやすく憤りながら、紫は声を大きくして「うちの霊夢に妖怪退治なんかさせないでよね!」なんて可笑しなことを言い始める。

 

「紫様、紫様。博麗の役割ですから……」

「だいたい、言わせてもらったらあの魔理沙なんかも私は許せないのよ! 幼馴染がなによ! 私はあの子の親同然なんだから! もし結婚したいなんて連れてきたら本当に許さないわ! 霊夢は小さいころから、わたしとずっと一緒にいるって言っているんだから! 邪魔ものなのよ!」

「紫様、紫様。漏れてますよ、色々漏れてます」

 

 ごほんと咳払いし、振り上げていた拳を収めて紫は体裁を取り繕った。

 目の前に置いたお茶をずずっとすすり、ふう、と落ち着いた息を吐き出す。

 

「誰があの子にそんな役割を吹き込んだんだか。どうも、あの子の中には『博麗の巫女』の理想があって、その理想が高すぎると思うのよね」

「……はあ」

 

 多分、紫様が言ったんじゃないかな。

 藍の明晰な頭脳は、その言葉を口にしないことを選び、沈黙と曖昧な回答を選択した。

 

「最近、あの子の周りにやっかいな人妖が多すぎるとおもうのよ」

 

 やっかいな妖怪筆頭が、そう言いながら腕を組んで頭を悩ませる。

 

「気が付けば神社の狛犬が人型になって霊夢を手伝っているし、神社の裏の池で隠居してた亀が神社周辺を護っていたり。隠岐奈も華扇も、なにかと理由をつけて会いに行くし。それになにより魔理沙よ魔理沙!」

 

 あいつ、なんであんなに強いのよ!

 

 スペルカードルールを制定してから。

 いや、その前からか。

 

 多方面で力を示し、ついには幻想郷の賢者さえも下した「自称普通の魔法使い」が藍の脳裏に浮かぶ。

 霊夢と同年代の人間。そのはずの、この幻想郷の特異点。

 

「ああ、たしかに彼女は頼もしいですよね」

 

 とっくに千年以上を生きる自身を超えていった人間に、眩しさを覚えながら藍はそれを思い浮かべる。

 弱々しいが、結界の維持を行う霊夢。力強く霊夢を支え、幻想郷の調和を保つ魔理沙。

 

「け、結婚なんてまだゆるさないわぁぁぁ!!」

 

 どういう発想に至ったのか、大きな声で叫びながら隙間の奥に消えていった主人を見送って、藍は深くため息を吐いた。

 

 まあ、霊夢がどう思っていようが幻想郷の平和は保たれているのだ。

 あの子もあまり気負わずに済むといいんだが。

 

 そう思いながら、ごそごそと棚に入れていたアルバムを取り出して開く。

 中には小さいころから修行に励む霊夢と、いつの間にか一緒に遊ぶようになった魔理沙の写真が時系列できっちりと並べられており、寝顔など明らかに盗撮も多くある。

 ふふ。と口から息を漏らし、霊夢と魔理沙が一緒に眠る写真を見て、藍は笑みを零す。

 

「ふたりが結婚したら、その子供はかわいいだろうなぁ。その時は私もおばあちゃんと呼んでもらおう。ふふ、はやく生まれないかなぁ」

 

 大真面目に、霊夢によく似た金髪の子供を抱きしめる自分を幻視しながら。

 その脳内を「まりれい」に染めた九尾は思いを馳せるのだった




あれ、そういえば本編で藍様書いてないやんけ。

続きません。
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