だぜ娘奮闘記!   作:元掃除道具

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その6 vs西行寺幽々子

 ――桜の下には死体が埋まっているの。

 

 幽玄なる冥界の主、西行寺幽々子曰く。

 これは化け桜。その花が咲かないのは、名も知らぬ何者かがその身命を賭して封印した為である。

 いったいいつからそこに在り、誰が封印を施したのかも定かではないような古いもの。

 それは単純な興味から。

 いつか主はそれを見てみたいと、ただ興味の赴くままにそれを見てみたいと零すようになった。

 西行妖の花を咲かせれば、封印を施した者も復活するのではないか。

 

 最初は興味だったように思う。

 そう、多分そこに深い意味はなかった。

 

 祖父から西行妖について、あの祖父ですら斬ることが()()()()ので封じられていると伝え聞いた。

 事情を知るだろう主の友人である妖怪は、のらりくらりとはぐらかし、決してそれに答えることがない。

 自分の未熟を知る身だが、それでもあの祖父でさえ()()()()と評したものを見たくもあった。

 雨を切り、空間を裂き、時を斬る祖父でも。そういう妖怪を想像もできなかった。

 

 以前にあった紅霧の異変の際に、血の流れない解決を知った。

 不変の時を過ごす幽霊だからこそ退屈を嫌い、主は今の幻想郷の在り方に強く興味を持っていた。

 少し怒られるかもしれないが、簡単に騒動を起こして巫女の力を測りたい。

 そんな思惑があった。妖夢はそう考えていたら。

 

 そうして春を集めはじめ、今に至る。

 

「くらえー!『マスタースパーク』!」

「……うわー!」

 

 見た目に喧しい光るだけの攻撃をその身に受け、わずかなダメージを受けながら妖夢は顔が赤くなる思いを感じていた。

 いまは渾身の、やられたふりである。

 

 妖夢自身が迷ったのは、手を抜くことはこの真剣に向き合っている相手を馬鹿にしているように感じられたためだ。

 それと、傍にいる巫女の視線がありその演技を見破られているように感じていたためだ。

 この相手の弾幕を児戯に等しいとまでは言わない。

 その魔法の研鑽は見て取れる。弾速は早く、撃ち込まれる星の弾幕は見た目にも見事なものだった。

 ただどうにも決め手に欠ける。そしてその結果出てくるスペルカードの威力たるや、まさに弾幕ごっこというに正しい表現だ。

 

 ここまで威力を抑える必要があるのか、純粋な人間相手の弾幕ごっこ……!

 

 妖夢は自身の未熟を恥じるのと、今は真剣に向き合うことが出来ないこの戦いに申し訳なさを感じていた。

 すべてが終わり、もし叶うなら再び弾幕ごっこをしたい。

 そう思う程度にはこの結果に悔しさも感じていた。

 

「よっし! 私の勝ちだな!」

 

 邪気なく勝利を喜ぶ相手に後ろ暗さを感じるとともに、内心のイラつきも抑えながら。

 いつか叩きのめしてやろうと密かに誓いをたてながら。

 それでも今は、敗北を認めるのだった。

 

 ――いつかぜったいわからせてやろう。

 

 その感情の向く先にいる少女は、それに気が付いた様子もなく純粋に喜んでいるのだが。

 

 *

 

「さあ、きりきり案内してもらうぜ!」

「くぅ、今は言う事を聞きましょう……!」

 

 弾幕ごっこで妖夢を下し、私たちは白玉楼の門扉まで来ていた。

 妖夢は強敵だったが、弾幕ごっこに慣れていないのかあっけなく被弾してしまい私は勝利した。

 気が付けば霊夢も私に任せていたので、実質ひとりで勝利を収めたことになる。

 普段から霊夢相手に弾幕ごっこをしているからか、自分がどの程度の強さなのかわからなかったけど意外とやるもんだ。

 腕の中の蓬莱人形がパチパチと手を叩き、ばんざーいしながら褒め称えてくれる。

 

「へへへっ、意外とやるもんだろ!」

「お疲れ様ね」

 

 言いながら霊夢が傍まで寄ってきて、また箒の後ろに乗る。

 また蓬莱人形にちょっかい掛けているので、手を叩いてやめさせる。

 そんなことをしていたら、いつのまにか取られていたマフラーを巻き直されていた。

 気が付かなかったぜ。首元に暖かさを感じる。

 

「幽々子様、申し訳ありません……」

「へへへ、お前も強かったけど私の方がうまかったな! 勝った私は霧雨魔理沙だ、こっちは霊夢。お前の名前は?」

 

 今更自己紹介をして、名前を訊ねるとキョトンとした顔で返される。

 

「え……? ……妖夢。魂魄妖夢」

「よろしくな、妖夢! それじゃあ異変の主に会わせてくれ!」

「……なぜ私が異変を起こしていると思わなかったんだ?」

 

 んん? あれ、不自然だっただろうか。

 原作知ってるからとは言えないよな……。

 不思議そうに聞く妖夢に、言葉を返せず困って霊夢を見る。

 

「勘よ」

 

 博麗の巫女の勘、すごい便利。

 妖夢は納得したようなしていないような、微妙な顔していたがとりあえず従ってくれる気になったみたいだ。

 刀を仕舞い、元々向けていたのかもわからないが敵意がない事をアピールしてくれる。

 

「そういうこと……。まあ、いいか。……案内するから、付いてこい」

 

 言いながら門を開けて中に招いてくれるのに付いて行き、ようやく白玉楼に入っていく。

 

 *

 

 私が知る限り、一番大きな家は阿求の家だ。それが西洋建築になれば紅魔館があげられるが、とにかくでかい家というと阿求の家が思い浮かぶ。

 しかしその家よりも、ものすごい広くて立派な日本庭園がまず出て来た。

 そしてそれを囲むように見事な造りの縁側が見える。

 空から見ればその全貌と大きさが見えるのかもしれない。とにかく立派なお屋敷なんだろうということしか理解できない家だ。

 玄関はどこなんだ。縁側からそのまま上がるんだろうか。

 妖夢の後に続くように飛び、そのあとを追う。

 周囲に目をやると何もいない。ずいぶん静かな場所に思える。

 

「ここは冥界の主、西行寺幽々子様の邸宅。白玉楼の、庭園の一部だ」

「白玉楼かー。大きなところだな」

「そうね。それに死霊ばかりで辛気臭いところだわ」

 

 死霊って、なんで急に。

 周囲をきょろきょろと見回すが、それらしい姿は見えない。

 霊夢と妖夢は、逆に私がなにも見えていないことに気が付いていなかったようで、ああと納得したように手をポンと叩きながら話す。

 

「ああ、よっぽど鈍い人間には見えないから大丈夫」

「あと暗い気持ちとか、気持ちに同調しない限りは普通見えないから。気にしなくて良いわ」

 

 もう一度周囲を見回す。

 時刻は夜中だ。冥界の空には太陽ではなく月が昇っており、ここが雲の上にあるということを忘れてしまうような景色が広がっている。

 やっぱり周囲には何もいない気がする。

 私だって地上では幽霊の1人や2人、見たことあるんだが。

 言いながら、腰に回された霊夢の手と蓬莱人形を握る。

 いや、別に怖いとかじゃない。

 幻想郷にお化けとか普通にいるし。

 怖いとかじゃ本当にないけど、とにかく私は見えないし触れないものに対抗する手段がないので、霊夢に頼るしかないんだぜ。

 なるべくばれないようにやったが、妖夢がちらりとこちらに視線をやって、片手で頭を抱えている。

 バレたかも。いや、大丈夫そうだ。もしばれたら恥ずかしいから、霊夢の手は放して蓬莱に胸の部分に抱き着いていてもらうようにする。

 あとは箒の周囲の防壁の魔法にすこし力を込めて、万が一にも不覚をとらないように警戒しながらそのまま進んだ。

 

「ここが西行妖のある庭園の中心部。そして幽々子様の居室に近い応接間がある」

 

 言いながら妖夢がこちらを振り向く。

 その先には桜の木。いや、私の知っている桜の木と比べると随分と大きな古木がそびえたっている。

 なるほど確かに化け桜。

 その節は屋根のように周囲へ伸びて、宙に浮く私達にすら偉容を感じさせる巨大さだ。

 所々に桜の蕾がまだ咲いておらず、これが満開になったらそれはもう見事なものなんだろうという興味も湧く。

 

 だけどそれは絶対にしてはいけないことだって、私は知っている。

 

「でっかいな~」

 

 思わず感想というか、思ったまま口にする。

 霊夢が箒から降りてその周囲に護符を撒きながら、不愉快そうに声を出す。

 

「随分嫌な気配ね。これ以上近づきたくないわ」

 

 ぴかぴかひかるように見えるほどの濃密な霊力を振りまきながら、手に持ったお祓い棒をふるふると左右に振るう。

 周囲にあった霊夢の結界が強まる気配を感じるが、霊夢はその出来を確かめるように2,3度叩くと、結界を出て妖夢の方へ行った。

 

「これが幻想郷中の春を集めていた理由ね?」

「はい。まだこれで満開ではないので、それを満開にしたい、というのが……」

 

 話をする妖夢と霊夢につられるように、大きなこの桜の木を見上げる。

 原作の知識では、これは妖怪桜で、たくさんの死を受けたことで化けたのだとか。

 きっかけとかは覚えていないが、あまりに強く『死』の概念に結びついてしまい、現世にその居場所をなくしてしまったのだ。

 ただそこにあるだけで死を振り撒くもの。そんな凶悪な妖怪が、封印されて目の前に存在する。

 ざあっと風が吹き、私は帽子が飛ばされないように抑えながらその枝葉を見上げる。

 

 美しい。まだ蕾も多いが、桜の花がその枝葉には実り、まだ先の満開を待っているようだった。

 

 しかしそれが満開になることはないのだ。

 妖怪桜を身命を賭して封印した、死の概念が溢れ出ることを封じ込めた存在がいる。

 

 敵意がないので最初は気が付かなかったが、すぐに後ろに現れた存在を私は先に知覚した。

 そしてそれが遠くに逃げないように、そしていい加減乙女的に許せなかったお腹への接触を封じて言う。

 

「おい、いい加減にしろー!」

 

 そのお腹に這った指を掴み、ぐっと上に上げる。

 後ろの主は、おどろいたように息を飲んでそれをそのまま受け入れた。

 

「お腹ばっかり触りやがって! 私は標準体型だし、お腹に自信ないぜ!」

 

 頭に血が上っている自覚があるが、いい加減にしてほしいので大きな声を出しながら威嚇する。

 振り返って見た幽々子は驚いたように目を見開いていた。

 そのまま腕を掴んで、ぐっと引き寄せて話を続ける。

 

「おい、お前が異変の主か!」

「へ、っはい」

 

 まさか触れると思わなかったので、そのまま勢いで続ける。

 

「失礼なやつだな! 名前は?」

「ゆ、幽々子……」

「幽々子! おまえ許さないぞ!」

 

 とにかく大声で捲し立て、がーっと腕を振り上げながら真後ろの幽々子に乙女的な憤りをそのままぶつける。

 

「霊夢に代わって、私がとっちめてやる!」

 

 言いながら威圧感を放とうと、八卦炉に魔力を充填させる。だが腕をつかんでいたはずのそれは、するりと姿を消してしまった。

 同時に強く風が吹き、衣服が捲れ上がってしまうのを慌てて抑える。

 風がおさまってから周囲をぐるりと見回すと、吃驚し呆然とした顔の妖夢と顔を赤くした霊夢。

 この2人を出し抜いて接触してきた幽々子に改めて恐怖を覚えるが、もう拳は振り上げているんだぜ。

 すっかり幽々子の気配が消えた周囲に、八卦炉を通じてレーザーを放つ。

 あっ! という声は、だれのものだったのか。

 

 空を切ったレーザーは西行妖の枝に当たり、わずかに揺れた枝から、桜の花びらが周囲に撒き散らされた。

 妖夢がまず慌てたようにその大半を空中で切り落とす。

 霊夢がそれを結界で包み、周囲から桜の花が消滅する。

 花びらが周囲に舞った結果でどうしてこんなに慌てているんだ。

 2人の行動にこちらが驚いて固まると、突風が吹き何枚かの花びらが私に触れようとした。

 

 慌てる2人の様子に、ようやくこれが攻撃かと理解した。

 魔力を纏っていないそれが弾幕のようなものなんだろう。

 

 花びらに、弾幕にぶつかる。痛みを覚悟して目を瞑る。

 だから痛みが訪れなくて、思わず目を開けたその先で。

 まるで私を護る様にきらきらと光る銀の髪を見た時に感じたのは安心感だった。

 

「時符『パーフェクトスクウェア』」

 

 氷が割れるような音を聞き、周囲にあった数枚の花が粉々に砕けていく。

 私の周りにきらきらと広がる銀の糸と、それに括りつけられたナイフが周囲をくるりと廻る。

 ぐるりと視界を埋める銀のナイフに恐怖はない。むしろ綺麗だと思う。

 

「『完璧に守る』。私ほどの適任はいないわね」

 

 そして後ろから聞こえてきた、良く通る声。

 

 それは身だしなみをきっちりと整えた銀髪のメイドだった。

 私の傍に寄り添うように身を寄せながらその場にいた咲夜は、周囲を警戒するようにあたりに目をやっている。

 迸る魔力が周囲に満ちていて、一層その場を魔力が満たしていく。

 

「え、咲夜?」

「魔理沙、大丈夫?」

 

 無事だぜ。それよりどうしてここに。

 思いながら声を出そうとするけど、引きつって思うように声が出なかった。

 目元を瞬かせていると、それを覗き込んだ咲夜は悲しそうな表情をしながらハンカチで私の顔を拭う。

 いや、泣いてないって。そんな泣いてるみたいな扱いされても。

 困惑した顔でしばらくなすがままにされてから、頭に手を置かれる。帽子越しにその咲夜を見上げる。

 

 きりっとした、いつものお姉様然とした姿だった。

 いつも以上に目を鋭くさせて、前方を睨むように見ている。

 

「私は我慢弱い。思ったことをすぐに口にしてしまう」

 

 言いながら眉間に皺を寄せた難しそうな表情。

 それでも堪えているように、我慢がならないと怒りを滲ませた低い声が響く。

 

「守れないのなら連れてくるな」

 

 顔が熱くなる。

 発言かっこよ。王子様かよ。

 いや、ていうかそんなに守られるつもりはないよ!

 

「いつまでも子ども扱いして……!」

 

 それはそれとして、泣いていないし誤解です。咲夜のお腹の部分に拳を押し当て訂正と感謝を口にする。

 こちらを見るときに、にっこりと快活に笑って咲夜はそれを受け取った。

 

 *

 

「花びらには触れないでくださいね。死にます」

 

 え、死ぬの?

 一瞬理解できなかったんだが、みんなの慌てようで冗談を言っているようには聞こえなかったので、体を縮こまらせて改めて3人にお礼を言う。

 1人だったら間違いなく触れてたと思うし、気が付かないまま死んでたかも。

 

 すっかり身を縮ませている私に、くすくすと笑い声が聞こえてきた。

 

「臆病な魔法使いさん。さっきの勢いはどうしたのかしら」

 

 見上げると桜の木を背景に、霊夢と妖夢の向こう側でふわふわと浮き上がる幽々子がいた。

 薄い水色のゆったりとした着物に、所々白いフリルをあしらった和洋が合わさった幼げな見た目。

 頭にはステレオタイプなお化けがつけている三角の布、それを主張するナイトキャップのような帽子。

 先程私の後ろを取ってお腹を摘んできたイタズラ幽霊が、扇子で口元を隠しながら楽しげに笑っていた。

 それを見上げた咲夜が、これ見よがしにナイフを取り出して笑っているものだから私の意識はそちらに向いてしまう。

 

「あんたが異変の主?」

 

 先程から周囲を、より強固にお札や陰陽玉を浮かび上がらせながら結界を張り続けている霊夢が声をかける。

 それは静かな問いかけだったが、長い付き合いで霊夢が怒っている時の声だってことは察しがついた。

 

「ええ。こんばんは博麗神社の巫女さん。ここ白玉楼の主人、西行寺幽々子よ」

「幽々子様、こちらは巫女の霊夢と、魔法使いの霧雨魔理沙です。私は……その……負けてしまい、やむ無くここに……というか、ええと」

「妖夢。いいのよ、下がってなさい」

「はい……」

 

 空気がぴしりぴしりと音を立てていく。

 きっと結界の外ではものすごい霊力が渦巻いているんだろう。

 霊夢の張った結界が強固すぎて、出られなくなってしまった私にはわからないんだが。

 

「霊夢、ちょっとこの結界過剰すぎない?」

「いいから」

「……霊夢、なんか怒ってる?」

「……ふぅ。大丈夫よ、あんたについてきてもらって良かったわ」

 

 ひとつため息をついて、こちらに笑顔を向けてくれた霊夢はいつも通りの調子に見えた。

 

「一旦、この子をあんたに預けるわ。……それと、さっきは助かった」

「……驚いた。巫女もお礼は言えるのね」

「またしばき回されたいの?」

「いいえ。異変の主、私とお嬢様の分も殴っておいてくれると助かるわ」

 

 簡単に咲夜と話をしている霊夢には気負った様子はない。

 けど、相手は強力な能力であっけなく命も奪う相手だ。

 私も心配が先にくるんだが。

 私がもじもじしていると霊夢が結界の強度を何度か拳で確かめて、ようやく満足したのか頷いている。

 

「霊夢、その、さっきの花びら……」

「うん、怖かったわね。あいつしばき回して謝らせるから。ちょっと待っててね」

「いや、違うんだよ。さっきの花びらさ……」

「大丈夫、二度と逆らわないように徹底的に消し炭にするから」

「いや、そうじゃなくて! さっきの花びら、あの幽々子の攻撃じゃない気がするんだけど!」

「……?」

 

 首をかしげる霊夢と咲夜を見て思う。

 視界の奥では幽々子が浮かびながら、口元に扇子を当てているので表情まではわからない。

 

「さっきの桜、あれ自体に意思があるように見えたっていうか」

 

 いまいち言葉が纏まらない。

 しかし霊夢も咲夜も、ゆっくりとこちらが言いたいことを言うのを待ってくれている。

 

「幽々子は悪戯しかしてこなかった。なんていうか、怖い感じはないんだ。それに、あの桜の木は……」

 

 言いながら桜を見上げる。

 大きな古木だ。花をつけた枝と、まだ蕾のものもある。

 巨大なそれは地上ではお目にかかれないようなもので、神秘的に見える。

 

 それが化け桜だということは知っている。まだ封印されている、ということも。

 妖々夢のことをあんまり覚えていないから、実際に原作ではどうだったのか覚えてない部分も多くある。

 だけど。西行寺幽々子がこの異変の黒幕だけど。

 西行寺幽々子は、こういう人物だっただろうか。

 ものすごい能力を持ちながら、それを軽々に振りまわす存在だっただろうか。

 

 多分違う、どうにも違和感がある。

 

「あの桜の木、西行妖に私がレーザー当ててしまって、それに反撃してきたんじゃないかな」

 

 もしかして、もう意思があるんじゃないかな。

 封印が弱まっているんじゃないかな。

 

 じっと霊夢を見る。

 詳しいことはわからないし、多分霊夢も白玉楼とか幽々子の事情は知らないだろう。

 だけどすべてうまくいくんだ。

 そう、私はこの幼馴染の霊夢という少女を知っているんだ。

 

 幽々子だけじゃない。

 あの桜の木も絶対に攻撃をしてくる。

 

 もしかしたらもう気がついてるのかもしれないけど。

 今更そんなことに気が付いたが、もう言った後なんだから気にしないこととする。

 

「それだけ。あいつ、やっぱり絶対悪い奴じゃないと思うし。桜の木も、私が攻撃したことで悪意とかはないというか……」

 

 とにかく私が悪かったんだ。

 私が、またなにか間違えてしまったんだ。

 

 *

 

 浮かび上がって西行寺幽々子に対峙する。

 少し前の、死の概念が魔理沙に迫った瞬間を思い出す。

 心が泡立つ。背筋が冷える。呼吸が浅くなる。

 自分に怒りが湧く。

 連れて来た。守る自信があった。不意を突かれた。意思のない相手だった。

 そういう事がつらつらと頭に浮かんで、全部怒りで塗りつぶされる。

 この怒り、ぶつける相手が必要だ。

 そういう意味では幸運だ、すぐにそれは叶う。

 相手がなにか口を開き、言葉を投げてくるがすべて無視してお祓い棒を構える。

 

「冗談を口にする余裕がないの。幻想郷の春を返してもらおうかしら」

 

 その意思のまま霊力を解き放つ。

 あの吸血鬼を倒した時よりも、ずっと体は動きそうだ。

 

「花の下に還るが良いわ、春の亡霊!」

「花の下で眠るが良いわ、紅白の蝶!」





すこし暗い雰囲気が残ってしまいましたが、本筋は基本シリアスになりません。
曇らせ短編みたいなのはR15タグ付けて別で書き捨てますので、こっちは頭お花畑魔理沙ちゃんをお楽しみください。
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