だぜ娘奮闘記!   作:元掃除道具

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閑話1 少し過去の事

Side 森近霖之助

 

魔理沙は、僕がまだ霧雨道具店で見習いだった頃に出会った親父さんの娘だ。

僕にとっては妹みたいな存在で、香霖、香霖、と愛想のない僕によく懐いてくれた。

いつもにこにこと笑っている女の子で、霧雨道具店での看板娘。どんな相手にも優しい良い子だった。

よく奥方と博麗神社に通っていて、危ないと言われても止めない頑固な子で、小さいころから人前で涙を見せない強い子でもあった。

それが、僕の知っている霧雨魔理沙。

 

奥方が亡くなったのは、魔理沙がまだ今より幼いころだった。

もともと体が強くない方だ。博麗神社へ行く道中で倒れたのだという。

その頃僕は霧雨道具店から一人立ちし、新しく店を構えたばかりだった。

 

奥方が亡くなってから、魔理沙はしばらく塞ぎこんだ。

霧雨の親父さんは葬儀で忙しく、そんな魔理沙にあまり構ってやることができなかったらしい。

僕も時期的に忙しいことも相まって、いや、そんな言い訳はどうでもいい。

孤独がどんなにつらい事か、わかっている筈なのに。

僕たちは、一人の大事な子どもを深く傷つけた。

 

それから、気づけば魔理沙は変な格好でいる事が多くなった。

白黒の、いかにも魔女といったエプロンドレスに、大きな黒い帽子。

どう見ても、おとぎ話の魔女の恰好。

女の子らしかった口調も、語尾に「だぜ」を付けるなど、意図してガサツに振る舞っている。

そして……魔法を勉強し始めた。僕が集めていた蒐集品のなかに、グリモワールがあるのを知っていたのか、せがまれてそれを与え、気づけば彼女は箒で空を飛べるまでに成長していた。

 

 

魔理沙本人から、家出をしたと聞いた。

霧雨道具店は魔法の品を扱わない。親父さんが魔法嫌いのためだ。

なので、何か言われる前に出てきた、とのこと。

確かに口論になるだろうが、あの人は魔理沙に家を出ていけとは言わない筈だ。

でも、親子そろって頑固な二人だ。どちらも妥協せず、結局魔理沙は家を出ただろう。

僕は魔理沙に、なぜ魔法を勉強し始めたのか、その時になって初めて問いただした。

 

「私のせいで変わっちゃうのが、怖いだけだぜ」

 

奥方が亡くなった事によって、人の死を身近に感じた彼女は、守りたかったんだろう。

人間は弱い。半妖の僕も戦闘能力はない。奥方が亡くなった時、亡くす事の大きさを知った彼女は、亡くすことを恐れた。

幻想郷では、不幸な事故によって命を落とす人が多くいる。理不尽な死が身近にある。

日常が簡単に無くなってしまうものだと知ってしまったから、それを守りたかったんだろう。

だけど、魔理沙はまだ子どもだ。幻想郷は一人で生きていけるほど優しい世界ではない。何かと困ることがあるだろう。

僕は彼女の力になろうと決めた。たった一人の妹のような子だ。この子のために僕がやれることをすべてやるんだ。

 

まずは、霧雨道具店に行って魔理沙が無事だと報告しようと思う。

 

 






霖之助が魔理沙のお父さんをなんて呼んでたか教えてくれた方々に感謝!
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