だぜ娘奮闘記!   作:元掃除道具

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妖々夢編の閑話2みたいな話
※レイマリ


幼馴染と秋の空

 どういう風に伝えるべきだろうか。

 嬉しい事と寂しいこと、ひとつずつ脳内に並べながら私は頭を悩ませていた。

 

 魔理沙との時間が以前よりもすこしだけ減った。それは多分、あいつは気にしていないくらいの僅かなものだけれど、私にとっては大事なこと。

 毎日顔を合わせていることは変わらない。昼か夕のごはんを一緒に食べ、毎日なにがあったかなんて話も他愛なくしている。それでも感じる寂寥感。

 

 私の中の小さな不満。

 

 最近なにをしているのかは、たくさん話をしているのでもちろん知っている。

 それの結果で普段のおかずが一品増えた。人間の里で妖怪の被害も減り、退治依頼が減った。

 だけどそのせいで以前よりもずっと忙しそうに、楽しそうにこの幼馴染は幻想郷中を駆け回っている。

 

「すっかり寂しん坊ねぇ」

「うっさい。あんたに話してない」

「あらぁ。怖いわ~」

 

 なんだかんだ人間の里の様子を気にしている事はずっと知っていた。だから人間の里の利益になることを積極的にしているのはよくわかる。私だって人間側の調停者だから、同じように喜ばしいと思っている。

 しかし今回の異変から関りを持った永遠亭の獣人たちを気に入っているのか、やけにそこに掛ける時間が増えているのだ。

 

 特にあの鈴仙は少し複雑だ。ただの勘だが、あの中で特にやっかいな匂いがする。最初はどういう勘違いか、魔理沙を貴人として扱おうとしていた。それが勘違いであると知れば、どう扱えば良いのかわからず戸惑っていた様子。そういう微妙な距離感が、回数を重ねるごとにどんどん距離が近づいている気がする。

 最初に薬を売るときには付いていったけど、この様子なら私はいない方が良さそうね、なんて気を回さなければよかった。

 ごはんの時にも「うどんげが~」「そうしたらうどんげの奴が~」「うどんげったらこの前~」なんて、聞かない日がないくらいだ。

 

 あの主人である輝夜は、鈴仙の魔理沙への態度を面白がって永琳と一緒にからかっている。けど、あいつらもなんだかんだと理由をつけて魔理沙を頻繁に呼び出している。あとは永遠亭に住んでいる訳ではないが、迷いの竹林の案内人も怪しい感じがする。趣味友達だと聞いているが、竹炭だとか竹の子だとかをよく持ってくるようになった。人間の里で会う機会が多いのだろうけど、話を聞かない日はないくらいだ。

 

「つまり、魔理沙が構ってくれなくて寂しいってことよね?」

「……」

 

 煩悶としながら墨を磨り、出来上がったばかりの魔除けの札を覗き魔の隙間に入れて閉じた。

 言葉にならない悲鳴がそこから漏れるが、気にせず筆を片付けて悩み続けることにする。

 

「はぁ。……まったく」

 

 人間として、妖怪にはあまり関わらない方が良いと言ってみる?

 どの口が、なんて思う。

 元々平凡なあの子が、どうしてあんな努力を続けているのか。

 あの子が空を飛べるようになったと、箒を片手に伝えに来た事を鮮明に覚えている。

 照れながら頬を染め、そこら中に細かな傷を作り大きな魔女帽子を押さえながら飛んできた日の事。

 

 私にとっての大切な思い出の日。

 そしてその心根が今でも変わっていないとわかる行動の数々。

 

 どういう風に伝えたらいいのだろう。

 嬉しい事はごはんが増えたとか、妖怪が大人しいとか、人間の里の医療が発展したとか、そういうこと。

 寂しいことが、すこしだけ減った一緒にいる時間。

 

 いつも私の周囲の世界は、あの金髪の幼馴染が作り変えてしまう。

 ため息を吐き、そろそろ来るだろう幼馴染を出迎えようと立ち上がることにした。

 

 *

 

「おーい霊夢~!」

 

 箒に跨り飛んで来た魔理沙が、ふわーっと境内に降り立つ。

 その手には風呂敷包みを下げており、また食材を買い込んできたのだろうと予測する。

 

「いやぁ~、すっかり秋だなぁ。秋の日はつるべ落としって言って、すぐに陽が落ちるそうだぜ。暗くなる前にご飯つくろうな」

「それはなに? また慧音から聞いてきたの?」

「ああ、お買い物しているときに偶然会ってさ! 霊夢にもよろしくって言っていた。あと、先生の家にある柿を貰ったぜ! それと妹紅から竹炭を分けてもらったから、お米炊くとき一緒に入れてみよう!」

 

 嬉しそうに宝物を見せる子供みたい。

 魔理沙が持つ風呂敷を預かって、持ってみるとずっしりとした重みがあった。

 変わり映えがないいつもの日常なのに、嬉しそうに話をする魔理沙を見ていると不満がとけていく。

 拝殿を通り過ぎ、玄関戸を開けて中に入る。入口に魔理沙が箒を立てかけて置いて、土間の中で木の台に風呂敷包みを置く。

 

「今日はなにをつくるの?」

 

 風呂敷包みを解くと、岩魚やネギ、白菜、大根などがのぞいている。

 

「もう夜は寒くなってきたからな、お鍋にしようと思うんだけど」

「いいわねぇ。それじゃあ、せっかくあったまるんだし、お風呂にも入っていく?」

「ああ、いい考えだぜ霊夢!」

「せっかくだし泊まっていく?」

「あー、どうしようかなぁ」

「お鍋だし、お酒もすこし呑まない?」

「いいね。じゃあ泊まって行こうかな!」

 

 せっかくなのでと提案したが、内心ではぐっと拳を掲げていた。

 不満を解消するために、すこしゆっくり話をしたいと思っていたのだ。

 いつも邪魔をしてくる隙間妖怪やお節介鬼たちも今日はいない。

 春の異変からお泊りもしていなかったので、随分久しぶりにふたりきりで夜を過ごすことになる。

 

 いつもよりも心臓が高鳴っていることに気が付いていたが、意図的に無視してお風呂の準備をすることにした。

 

 *

 

 魚の骨を取る魔法を作らないといけない。

 私は真剣にそれを検討しながら、今は保冷の魔法で手を冷やしながら骨を取り除いていく。

 包丁と素手だときっと滅入ってしまうのだけど、ピンセットが活躍中だ。

 

「先人の知恵は偉大だぜ」

 

 つみれ用の身と切り身から、小骨を神経使って取り除く。腹骨を取ったらほぼ小骨はないんだけど、少しだけ残るのでそれをとる。

 ひとりだったら全然気にしない。けど前に霊夢は小骨が苦手だと零していたので、ひと手間かけて美味しく食べるのだ。

 切り身を霜降りにして臭みを取るのと、つみれには生姜を混ぜよう。臭み抜きをした牡丹肉も、悪くなる前に使っちゃおう。

 冷たくした手を調理の火で温め直しながら、鍋の準備を進めていく。

 

 そよそよと入りこむ風は日中の暑さを流し、涼しさを運んでいる。外は気が付けばもう暗い。

 明るいうちに準備ができて良かった。

 ぴーぴー音を立てる炊飯器がお米の炊き上がりを報せ、ぱかっと蓋を開けると蒸気が立ち上った。竹炭を入れたからか、いつもよりツヤツヤしている。

 

「よーし、できたぞー!」

 

 思えば久しぶりだ。春の異変からお泊まりはしていなかったから、こうしてゆっくりするのも良いものだ。

 居間を振り返って見ると、こちらを見ていた霊夢と目があった。

 

「あれ、どうかした? お腹減った?」

「ううん、なんでもない。良い匂いね」

 

 こほんとひとつ咳払いして、ちゃぶ台を片付け始めている。

 お腹が減ったんだろうか。待たせてしまったかもしれない。こちらも手早く準備する。

 

「妹紅が作っている竹炭、慧音先生も炊飯に使っているって言ってたんだ。水を綺麗にするとかヌカがなんとか、洗って何回も使えるらしいから美味しかったらまた使ってみようぜ」

 

 言いながらおひつを持って居間に行くと、霊夢がお茶を淹れて待っていてくれた。

 霊夢の座る場所の、心なしか近くに座布団が置いてある。

 

「竹炭とか竹の子とか、最近の人間の里では竹が増えたわね」

「妹紅がいるから採りに行きやすいんだろうなぁ」

 

 座布団のことはとりあえず置いておいて、鍋を取りにまた土間へ戻る。

 

「薬もそうだけど、今年は冬が長かったからなぁ。色々なもので恵みを得られるのはありがたいぜ」

「そうね。特に異変の影響がなくて良かったわ」

 

 お鍋をちゃぶ台に載せてご飯を並べる。霊夢は良く食べるのですこしだけ大目に。いつもお茶を淹れてくれる霊夢から湯飲みを貰い、こちらもお箸を渡す。いただきます、と手を合わせながらお鍋をつついて、いつものやりとりをしながら食事を続ける。

 

「おいしい!」

「よかったぜ」

 

 お肉もあるから、心なしかいつもより嬉しそうだ。私は霊夢のご飯が好きで、霊夢は私のご飯が好きだってお互いに言う。最近はその言葉を貰うのが嬉しく、食事当番も楽しくなってきた。作ったものを褒められるのは素直に嬉しいし、おいしそうに食べてくれる顔が可愛いと思う。

 

「なあ霊夢?」

「なに魔理沙」

 

 膝をくっつけながらごはんを食べている最中。気になっていた座布団の近さとか、普段よりもくっ付いてくる霊夢に聞いてみる。

 

「ちょっと近くない?」

「そうかしら、普通よ」

 

 つーんとした態度で気のせいだと切り捨てられる。そうか、気のせいか。一瞬はて、と首を傾げると霊夢の赤くなった耳が目に入った。

 

「……今日は甘えん坊の気分なの?」

「……」

 

 心がきゅーんと締め付けられる感じを覚える。まったく可愛い幼馴染だ。努めて無表情だが、頬をすこし赤くしている霊夢を見つめているとその照れている内心がよくわかる。

 年に数回、霊夢は甘えん坊になる気がする。年々回数が増えているのかもしれない。花火の日以来の素直な甘えん坊に内心嬉しく思い「よぅし。寂しい思いをさせてしまったみたいだから、今日は構い倒そう!」と温かくなった心で決める。

 

「よしよし、お酒を呑む前に今日はお耳の掃除をしてあげよう」

「……うん」

「お風呂も一緒に入る?」

「はいる」

 

 霊夢は幼馴染で、私にとっては可愛い妹や頼りになる姉、時折小さな子供のようにも感じる。

 母性はこういうものなのだろうと思いながら、今日は目一杯幼馴染を甘やかしてあげようと思うのだった。





今の時間軸で、普段人がいるときに内面を出さないふたりがどういう関係でどのくらい深いのかを整理するための単短編ガス抜き回
中途半端に感じるかもしれませんが本編は全年齢やけん堪忍してやぁ
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