だぜ娘奮闘記!   作:元掃除道具

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その6 ep無名の丘

「お願い?」

 

 白魔理沙が腕を組みながら、えへんと胸を張って師匠に提案を投げかけた。

 師匠が一応話を聞く体勢を取りながら、聴診器を取りながら白魔理沙に向き直る。

 

「ああ、少し前に聞いた毒草のことでさ。解毒薬は作ったんだけど持ってくることが出来なかったから、少し分けてもらいたいんだ」

「解毒薬なんて何に使うの? あんまり危ない場所には行っちゃだめよ、あんた弱いんだから」

 

 白魔理沙の服装を整えながら注意する。

 竹林でてゐが引き連れていた人間と妖怪の集団の中には知り合いがいた。常と違う様子だったので、今は楽団が準備をしている合間に師匠へお願いして診察を受けてもらっているところだ。

 

 私はこの知り合いに対して、やけに世話を焼いてしまうことを自覚している。

 異変の前後で地上の人間に対する印象も大きく変わってしまったので、そういうところを揶揄われていると解っているのに。

 

 私にとって未知の生き物だった。

 穢れたモノ、野蛮なモノ、恐るべきモノ。

 しかし実際に見た地上の人間はイメージとは違うのだ。

 いや、恐るべきものではあるのか。霊夢を思い浮かべながら一部訂正。

 

 かつて月に旗を立て我が物だと主張した人間たち。

 目の前の人間がそれと同じようには、私には思えなかった。

 

 温度の変化に弱くてすぐに体調を崩す。少し波長を乱すとあっという間に倒れる。箒がないと飛ぶこともできず、知らない人間には声を掛けることすら躊躇する。

 

 そのくせ自分の苦労を厭わずに気を遣う。何を根拠にしているのか自信家だし、そのくせ臆病で怖がりだ。妖怪相手にまっすぐ信頼を向けて、悪意すら理解しようと歩み寄る様は見ていてハラハラする。

 

 生まれたての月の兎の方が、上手く生きられるのではないかと思う程。とにかく人間はか弱かった。

 100年も生きられないのだから当然か、とも思う。

 

 そんな魔理沙が変な妖怪なのか神様なのかに分割されてしまって、少しだけ明るい魔理沙と気の弱い魔理沙になってしまった。

 それ自体は別にどうでも良い筈なのに、少しだけ心配が勝って師匠にお願いして人間の構造上の問題はないのかを確かめてもらっている。

 

「幻想郷に危なくない場所なんて、そんなにないと思うんだけど……」

 

 黒魔理沙がこちらを伺いながら脱いだワンピースを籠に入れて手に持ち、白魔理沙の後ろに並んでいる。

 白魔理沙は被せた真っ白のワンピースの中で、手をモソモソと動かして袖から手を出した。

 

「だったら永遠亭に来なさいってば。姫様ならペットにしてくれると思うのよね」

「ぺ、ペットなんだぁ……」

 

 なにを不満そうに。

 黒魔理沙が師匠の前に置いている椅子に腰かけ、白魔理沙と入れ替わる。師匠が再び聴診器を耳に着けて上着を捲る様に言い、黒魔理沙は少しだけ恥ずかしそうに黒いキャミソールを捲ってお腹を見せていた。

 

「そうねえ。うちはペットが増える分には、今更構わないと思うけど」

 

 ペタペタと聴診器を当てながら何かさらさらと書き留め、聴診器を離しながら師匠があーっと口を開いて見せると黒魔理沙もそれに従ってあーっと口を開く。

 

「ここにいたら師匠もいるから病気もないし、私も多少なら守ってあげられると思うけど?」

「うーん、魅力的な提案だぜ」

 

 言いながら白いベストを身に着けエプロンを腰に回している。いつもの格好だけど、いつもよりも真っ白なその衣装を身にまとって、三つ編みを結いながら白魔理沙が言う。

 

「だけど私は魔法使いだからな。幻想郷の普通の魔法使いでいるうちは、永遠亭のペットにはならないぜ」

 

 にっと歯を見せるいつも通りの笑み。ああ、やっぱりこいつは魔理沙なんだなぁなんて、関わった時間の短い私でも確信に近い思いを抱くには十分なものだ。

 

「そ。好きにしたら?」

 

 くすぐったがる黒魔理沙の手を持ち上げ、師匠がメジャーで胴や胸囲を測るのを手伝う。

 別に危ない場所に行くのを止める必要はないのだ。好きに生きるこいつを止める権利は私にはないわけだし。

 ただ、少しだけ心配するのも私の勝手だ。

 

「ほーら、暴れない。我慢、我慢。できるでしょう?」

「ふぐぅ……! が、がんばってます……!」

「ふぅん。体重身長腹囲胸囲、ぜんぶ一緒で面白いわねぇ」

「く、くすぐったいですえーりん先生……ひぃ」

 

 顔を赤くしながらヒンヒン泣くこいつも、普段の様子とは全然違うのに。

 その見た目以上に、仕草や視線などひとつひとつが魔理沙らしいと思う。

 

「ところで師匠、前に一目見たらだいたい全部わかるって言ってませんでした?」

「あら。鈴仙向けのサービスだったんだけど、気に入らなかったかしら?」

「……私になにをサービスする必要が?」

 

 くすぐったがるこいつらを抑えているのに、奇妙な高揚を覚えていたのを悟られているのだろうか。

 ふと冷静になって、そういえばと師匠に問いかけるとなんでもないことのように言われる。

 姫様も師匠も、私を揶揄うときに魔理沙を引き合いに出すのを何故か気に入っているのだ。

 呆れに似た感情を抱きながら、しかし怒る気にはならず肩を落とした。

 

 

 

 そんなことを思い出しながら、私は頭に大きなこぶを作って風見幽香を見上げていた。

 

「ふぅん。毒草の群生地ねえ」

 

 顎に手を当てながら、うんうんと2回頷く風見幽香。

 

 周囲は異変の時よりも荒れた様相。

 門は破壊され、瓦礫に雑に頭から突っ込んでいるてゐが足だけ出している。

 

 中庭の蓮が浮かぶ池には鴉天狗の文が白目をむいて浮かんでいる。妖精のチルノも、傍で大岩に埋められて片手だけ助けを求めるようにもがいている。

 

 この妖怪、弾幕ごっこだって言っているのにフィジカルで圧倒してくるのだ。

 屋敷からは心配そうに妖怪兎たちが顔を覗かせているが、その奥では姫様がお腹を抱えて笑っていた。

 

「うう、ひどい……」

 

 脅しには屈しないぞと気合を入れていた私に、師匠が横から差し込むようにあっさりと魔理沙の移動先を伝えてしまった。

 あんまり庭先を荒らさないでね、なんて平時と変わらない様子で玄関から出て来た師匠は、援軍に来てくれたのかと思ったのに。

 よく見るとその手には弓も持っていないし、掃除用の箒を片手に出てきている様子は日常の延長のようだ。

 

「ええ。だからこれ以上うちで暴れないでもらえる?」

「暴れるなんてそんな。私は挑んできた火の粉を払っただけですわ」

 

 嘘だ。笑顔でてゐの足を掴んで門を破壊した妖怪が、心外だと頬を膨らませている。

 風見幽香。その危険性を少しだけ身に染みてわかった気がする。

 遊んでいた。この妖怪にとっては戦いですらなかった。

 

「しかし毒草。なんでまたそんなところに?」

「さあ。あの娘に聞いてみないとわからないわ」

「それはそうね」

 

 言いながらどこからか取り出した日傘を差し、風見幽香が肩についた埃を払って優雅に飛び立つ。

 

「それではごきげんよう。また機会があればお会いしましょう」

「あ、ちょっと待って!」

 

 言いながら、玄関先に置いてあった下駄を突っかけて片足立ちでこちらに寄ってくる姫様。

 慌てて飛び出す様子に何事かと私も思わず身構える。

 

「あなたの戦い方、すごく面白かったわ!」

 

 がくりと私に残っていた最後の力が抜ける感覚。

 姫様が楽しそうに風見幽香にひとつ提案をして、風見幽香はそれに微笑を返すだけで返答しなかった。

 

 そうして台風のような花の妖怪は、どこかへ飛び立っていくのだった。

 なんだ『人の殴り方を教えて』って。姫様は最近、藤原妹紅と喧嘩するのが楽しくて仕方ないらしい。

 

 *

 

 人間と死神。

 魔理沙と小町、というらしい。

 奇妙な能力でひとりの人間がふたりに別たれているので、人間は元々ひとりの人間らしい。変なの。

 腕を組んで考える人間のフリ。

 

「確かに人形のような道具は人の霊が宿りやすい。でも、そんなに自在に体を動かす人形となると見たこともないな」

「スーさんの毒のおかげなの、自在に物を考えるのも毒のお陰なの」

「毒ってすごいんだなー」

 

 白一色の服を着て帽子まで白い恰好の魔理沙、白魔理沙がへーっと感心したように息を吐き出した。

 自称、普通の魔法使い。その魔法で毒の霧の影響を軽減しているらしい。

 そういう割に、その顔色は時間が経つごとに青褪めている。

 

「ごほっ! ごほっ! うふふ。それで、なんでメディスンていう名前なの?」

 

 私の事を無遠慮に抱えながら白魔理沙と同じ格好、色だけ真っ黒の黒魔理沙。

 その顔は白魔理沙以上に白く、額に汗を滲ませて明らかに魔法を貫通して毒の影響を受けている。

 左手は白魔理沙と繋ぎ、右手で私のお腹の部分を抱えている。

 元々は一人の人間だったらしいので、白いのと黒いのは魔法を使うためにずっと手を繋いでいる。

 魔法で毒の霧を防いでいるけど、流石に直接抱えている黒魔理沙は強く影響を受け始めていた。

 

「私が私の名前を自覚するのに、なにか変なことがあるのかしら?」

 

 失礼な人間だわ。私の名前を馬鹿にしているのかしら。言葉の感じはそういう風ではないけど、さらに毒を体中から立ち昇らせる。

 

「ごほっ! そ、そんなことないよ。素敵で可愛い、いい名前……メディ」

「そうでしょう。……ねえ、ところでこっちは死んでもいいの? 苦しんでいるのに、なんで助けないの?」

 

 さらに顔を青ざめさせる黒い魔理沙、だけど笑顔なのは気味が悪い。別に心配している訳じゃないけど、同じ顔をしている白いのに声を掛ける。

 

「解毒剤は用意しているんだぜ」

 

 懐からいくつかの瓶を取り出し、万全だ! と心なしか胸を張る白いのと、困ったように眉を下げた小町が正反対な反応をしている。

 そうよね。薬があるから毒を浴びるって正常な判断じゃないわよね。

 

「黒魔理沙。そろそろ解毒しない?」

「だ、大丈夫……。事前に飲んでるし、もう少しだけ、耐えられるはず……」

 

 言いながら、私の事を抱える手にぎゅっと力を込めている。

 最初は感じていた体温が、だんだんと冷えた手から抜け落ちているのを感じる。

 

「ねえ、死んじゃうよ? 別に私、躊躇しないけど」

 

 滾る力をそのまま毒にして、周囲へ無作為に放つ私。別に止めても良いのだけど、止める理由も別にない。

 毒を受けて色々な症状を感じているのだろうに、顔を青褪めさせながら離さないそいつ。

 

「吐き気と頭痛、めまい、血圧低下……。いろんなことが起きていると思うんだけど」

「め、メディの毒で死ぬなら本望……」

「あ、もう意識飛びそうだな。緊急用のえーりんの薬飲むぜ」

「うーん。映姫様、流石にこの本性を暴くのは罪深い気がしますよ」

 

 

 

 黒いのが横になり、額に濡れた布を置かれてうんうんと唸っている小川の傍。

 丘に湧き出る水源の傍で、私たちは改めて腰を落ち着けていた。

 

「薬ってそんなに万能?」

 

 一口で明らかに効果を発揮しているそれに、すこしだけ悔しい気持ちになりながら白いのに声を掛ける。

 

「すごい効果だぜ。だけど、さっきまでの私はえーりんの薬とはいえ信用しすぎてたな。なるほど、これが客観視か」

「うーん、いや。合っている。だけど確信的にずれている気もする」

 

 喋らなくなった黒いのに目線を向け、つまらないなぁと思いながら白いのと妖怪の話を聞いてみる。

 

 胡坐をかいて座る死神に、寄り掛かる様にして背中を預けながら白いのが話をしている。

 血色が戻りつつあるけどまだ青白く、こいつも言葉の割には見た目が弱々しい。

 

「薬もこんなに即効性があるものだとはなぁ。だけどそれ以上に、今メディスンが毒の放出を止めているから少しだけ楽だぜ」

「おや。そうなのかい? 人間に影響する毒は私に効かないから気が付かなかったよ」

「別にいつでもやっつけられそうだから。まあ少し話をしてあげても良いかなって思っただけだわ」

 

 本当に理由なんてない。でもいつでもやっつけられそうは本当だ。

 人間のフリをして、口に手をあててくすくすと笑う。

 

「そりゃありがたい。メディスンは、私みたいな人間が嫌いだと思ってたぜ」

 

 嫌われているかもって思うのに、なんでこの人間は笑顔で嬉しそうなのかしら。

 金色の目と私の視線が合う。

 

 嫌い。それは間違いない。

 だけどどうも陳腐な表現に思える。

 私の心から沸き上がるのは、好悪の感情よりももっとドロドロとしたもの。

 間違いなく悪感情。

 だけど何だか、向けられた視線が。心から沸き上がる懐かしさに似たものが。

 なんだか癪に障るので、最後まで追い詰めるのは止めてあげる。

 

「嫌いよ」

 

 この目の前の能天気な奴には言っても解らなさそうだ。

 にっこりと、人間のふりをしながら少しでも傷をつけてやろうと悪意は言葉で放つ。

 

「あはは! やっぱりそうなんだなぁ」

 

 片割れだという黒いのがこんな状態になっているのに、へらへらと白いのが嬉しそうに笑う。

 

「やっぱり妖怪って怖いぜ」

 

 ずっと嬉しそうなのは、もしかしてそういう趣味の輩なのかしら。

 死神である小町も不思議そうに魔理沙に声を掛ける。

 

「不思議に思っていたんだけど、魔理沙。あんたはどうしてそんなに怖がりなのに……」

「好きだからだなー」

 

 浅い呼吸を繰り返す白魔理沙に途中遮られて、言葉を止める小町。

 鼻の下をこすりながら、ヘヘヘっと照れ臭そうに。しかし誇らしげに白いのが笑う。

 

「私、幻想郷が好きだからな。別にどう思われていても関係ないんだ。私が、好きだからだな」

 

 あはは! と照れを隠すように白いのが笑って言う。頬は赤く、血色が戻ってきたように見える。

 応じるように、横になったままでも私の服の裾を掴む黒いのが、微かに笑みを浮かべている。

 弱々しい力だ。

 

「……変な人間」

「ああ。私も今改めてそう思ったねぇ」

 

 小町が同意しながら快活に笑って、白魔理沙の頭を帽子ごとぐりぐりと撫でている。嬉しそうにそれを受けながら、きゃっきゃと笑う姿は人間の童女だ。

 私は黒魔理沙が掴む服の裾から、その手を解き、手を重ねる。

 小さい。

 改めてこんなに小さな手が、膨大な量の毒を受けたことを哀れに思う。

 私がしたことなのに、明確に今も悪意は存在するのに。

 

 私とスーさんが生きている限りは毒が影響する。人間はその近くに寄ることもできない。

 私はそれを、ほんの少しだけ残念に思う。

 こういう小さな手に抱えられていたことがあって、私はそれを懐かしく思っている?

 どうも記憶はあいまいだ。だけど人間に対する悪感情のもっと深くにそういう思いもある。

 悪意だけじゃない。二元論にはなり切らない思いが毒一色の私に存在している。

 

「……あー。ついに私の番が来たなぁ」

 

 言いながら小町がよっこらしょっと声をあげて立ち上がるのを、私と白魔理沙は不思議そうに見上げた。

 視線を受けた小町は笑みを浮かべながら、肩に大鎌を担いでやれやれと息を吐く。

 

「いいかい。夕方には無縁塚へ、だぞ。ここからなら難しくないだろうから、映姫様には私がきちんと役目を果たしたってアピールしておいておくれよ」

 

 残念そうに白魔理沙に言い、小町は私に向き直る。

 

「このクソボケ、ちゃんと理解しているのかわからないなぁ。メディスン、あんたにも頼むぞ。いいかい、ここをまっすぐだ。神社の方には行くなよ、私がいないと時間が足りないから」

 

 いまいち意味が解らず、私と白いのが不思議そうに小町を見上げながらきょとんとしている。小町は本当に嫌そうにため息を吐き出して、これから戦いに行くのだと小さく告げる。

 

「いやあ、流石に幼子を向かわせるわけにはいかないもんなぁ……。ああ嫌だ働き過ぎだ。サボって寝ているくらいが私にはちょうどいいのに」

 

 *

 

「あらぁ。ようやく追いついたわね死神」

「やあ。とうとう追いつかれたねえ風見幽香」

 

「こんな所にいたって、三途の川は遠いわよ?」

「様子を見に来ただけだ。幽霊と花の様子、あとは適当に幻想郷に生きる人間かね」

 

「様子を見ても仕事が進むわけではないでしょ?」

「仕事は慎重なほうが良いんだ。今回は上司の許可もあるのさ」

 

「そう。逃げていた割に、随分潔く腹を決めているわね」

「離す距離よりもあんたが速いからさ。誤解もそろそろ解いておこうかと。それに」

 

「それに?」

「実は私も追われるのが嫌いでさぁ。好き嫌いを素直に言う奴ら見ていると、羨ましくなっちまってね」

 

 *

 

 はーっと憂鬱の息を吐き出して人間のフリ。

 箒の上の人間をぎゅーっと支えていると、白魔理沙が申し訳なさそうに謝りながら声を掛けてくる。

 

「メディスン! ごめんな、私が迷惑をかけるぜ!」

「メディ~、ありがとうねぇ……」

 

 小さく弱々しい黒魔理沙が細い声で感謝を伝えてくる。前に回した私の腕に黒魔理沙の手が重なり、少しづつ体温を取り戻しているのを感じ取る。

 こいつらなんでお礼を言うのかしら。誰のせいで毒を貰ったと思っているのかしら。記憶力ないんじゃないのかしら。

 時間はまだまだ夕方じゃない。太陽はサンサンと輝いているし、私たちの移動は遅々としたもの。

 小町が向かった方からは大きな力のぶつかり合いを感じているけれど、スーさん達はそれを脅威に感じていない。

 

「ここからは彼岸花の毒もあるのよ、あなた達だけじゃあ途中で養分になっちゃうわ!」

 

 苛々。

 仕方なく、さっきとは逆の構図。私が黒いのを抱えて、箒の後ろで支えてあげる。ぎゅうぎゅうしながら苛立ちをぶつける。

 放っておいても良かった。だって私には関係ないもの。

 

 だけど黒いのが、毒を顧みないで私をぎゅってしてくれたのがほんの少し嬉しかった。

 本当は嫌だったけど、ひとかけらだけ嬉しく思ったから。

 

 だから少しだけ、困っているのなら助けてあげようと思った。それだけ。それもきっと人間のフリ。




花映塚はのこり2,3話で終わりです。

儚月抄は迷いましたがカット、次は風神録。
風神録→(緋想天)→地霊殿→星蓮船


10年以上前に掲載していた場所のPV数を気が付けば超えていました。
いつも感想、ここ好き、応援ありがとうございます。
おかげさまでこんなペースですが更新できています。
ひとえに皆様のおかげで趣味が続いております。
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