まだ本調子じゃないので、いつも以上に乱文注意かもです
太陽が西に沈み、すっかり辺りは暗くなってしまった。
この季節、日中は太陽の暖かさを感じるけど陽が沈むと気温もだいぶ下がるのだ。
長袖を突き抜ける秋の冷気に身を震わせながら、ミニ八卦炉を使って温度調節の魔法を準備する。
「すごい! マリシャさんの周りが暖かくなりました!」
「あんまり広い範囲では出来ないから、ちょっとこっち側に寄ってくれ」
サラシが千切れていて、だんだんお腹の方に落ちていくのを感じる。
むず痒い感触に集中力を乱されながら、早苗に近づき魔法の効果範囲をなるべく広げて招いた。
「うう、落ち着かないぜ……」
「どうかしました?」
「ああ、えっと……」
シャツの中で布が擦れてほどけていく感触が、くすぐったいし違和感があって落ち着かないのだ。
すとーんとお腹まで落ちていく程度の、起伏がない身体だけど。服の繊維に引っかかって辛うじてまだ緩く巻き付いているそれは、動くたびにむず痒い。
「あの、さっき実はサラシが千切れて……」
「さらし? ああ、さらし……」
うん? と頭に疑問符を浮かべながら、早苗が首を傾げる。
そういえば、早苗は胸に何か巻いているんだろうか。
主張の激しいでっぱりをちらりと伺い、慌てて視線を逸らす。
「さらしって、あのサラシですか?」
「うん、多分」
「ええっと、下着的な……?」
「う、うん。その、早苗ほどじゃないけど私も少しだけあるし、着けないと擦れて痛いし」
なんでこんなことを言っているんだろう。なんか恥ずかしくなってきた。
言いながら下げていた視線をあげて早苗を見ると、無遠慮にじっと私の胸元を見ていることに気が付く。
「さ、早苗?」
「え? あ、ごめんなさい!」
分厚いシャツに、上からベストを着けているので元からそうだけど、私はあんまり起伏もない身体だ。
揶揄っている気配とか変な雰囲気はなかったけど、そんなにじっと見られるのは困る。
手を前にぶんぶんと振り、早苗が顔を赤くして視線を逸らした。
「そっか……えっと。家に着いたら、代わりのモノを渡しましょうか? 小学生くらいの時に着けていたのが、多分家にあると思うんですけど……」
「あ、それは助かるぜ。けど良いのか? 下着だと嫌じゃない?」
「いえ、全然! もう使わないものですし、あげますあげます!」
布とか包帯がもしあれば、それでよかったんだけど。
もう使わないものを貰えるのならありがたく頂いていこう。
ようやく近くまで見えて来た大鳥居にほっと息を吐いて、急ぎ足になってしまっていた箒の速度を少し緩めて確認する。
「あれが早苗の神社か?」
「はい。もうすっかり暗くなってしまいましたね」
山林が急に開き、石段と大きな鳥居が見えている。その両脇に狛犬や、今は火が付いていないが篝火台なんかも。
ここが守矢神社か。博麗神社よりも大きくて敷地も広いけど、暗くてその全貌は見えない。
鳥居の奥には拝殿と石の棒のようなものが地面に突き刺さっているのがうっすら見える。
「神奈子様はまだお帰りになっていないようですね。夕方ごろには戻ると仰っていたのですが」
道中、特に天狗達に止められることはなかった。
千里眼の白狼天狗にはどうせ見つかっていると思うのだけど、早苗のおかげか、引き止められたり見かけたりもせず普通に神社に着いた。
「穣子のお土産はどこに置いたらいいの?」
「ありがとうございます。では住居が向こうにありますので、そちらまでお願いできますか?」
「もちろん! 箒で物を運ぶのは得意なんだ」
言われるがまま、誘われるように早苗のあとを付いて大鳥居を抜けて飛んでいく。
博麗神社のように本殿の後ろに住居があるのではなく、ここは社務所の場所に住居を作っているみたいだ。
「……なんでしょう?」
「どうかした?」
鳥居を抜けた後、途中で早苗が止まり周囲をきょろきょろと見回す。
私もつられて同じように見回すが、薄暗闇の神社の境内があるだけ。
明かりのない境内は少し不気味だ。温度調節の魔法の事もあるので、若干近づいておく。
「いま、鳥居を抜けたのが3人分の気配だったのですけど……」
うーん、と首を捻りながら早苗があたりを見回す。
け、気配……?
私には魔法みたいな気配も感じなかったけど、この神社もそういう結界みたいなものがあるのか。
いや、そりゃあ妖怪たちしかいない山の中なんだから当たり前か。
「うーん、このあたり?」
「ひゅい!」
早苗が袖から木札を取り出すと無造作に放り投げ、それが空中で不自然になにかにぶつかり地面に落ちる。
同時に、聞き覚えのある声が聞こえて私はその正体に気が付いた。
「にとり?」
「いったー……。ヘヘヘ、やあ魔理沙」
じわじわっと周囲の景色から滲むように姿を現すのは水色の上着にロングスカート、緑色の帽子に同じ色の大きなリュックサック。
服にはたくさんポケットがついていて何かが詰め込まれている。大きなリュックサックからは機械チックな棒と、その先端についた円の先端が割れている“のびーるアーム”。
水色の髪を両脇に結び、赤くて丸い飾りが可愛らしい。
河城にとりが姿を現してそこにいた。
「いやあ。こっそりついてきたのに、流石に深入りしすぎたか」
「なんで透明になっていたんだ? 全然気が付かなかったぜ」
「マリシャさんのお知り合いですか?」
投げた木札を拾い上げお祓い棒をにとりに向けながら早苗がこちらに振り返って聞いてくる。
なんで河じゃないこんな山の中にいるんだろう。
どうして透明になってついてきたんだ?
「わたしは河城にとり。この妖怪の山の河童のひとりだよ」
笑いながら額を掻き、堂々と腰に手を当ててにとりは自ら名乗った。
「うん、妖怪の山の友達だよ。にとり、こちらは早苗」
「あ、私は東風谷早苗です。この神社の風祝で……。あの、いま透明でしたよね?」
「ああ、私の光学迷彩スーツでね!」
「こ、光学迷彩……⁉ 超科学ですね」
「お、これが科学だと見抜くのはすごいな。大抵能力によるものだと思うもんだが……さすが外の人間」
にやりと笑いながら、にとりは少しずつ距離をとって離れつつ、早苗を中心に円を描くような動きで私の傍まで飛んで来る。
「どうしたんだよ、にとり。山の上の方に来るなんて珍しい」
「天狗たちが大騒ぎしていた神社のことは気になっていたんだ。それにノコノコついて行く魔理沙を見かけてね、悪いが尾けさせてもらったよ。こんなに早く見つかるとは、思わなかったけど」
そのまま私の後ろに回り、私を盾にするよう早苗と話を続け、後ろから箒ごとずいずいと早苗の方に押してくる。
「それで道中で話し声が聞こえて……。盗聴じゃないぞ、お前らの声が大きいから勝手に聞こえたんだ。とにかく、攫われてたり巻き込まれたりとかじゃなさそうなのは察しがついてる」
「ああ、心配してくれたのか。……なあ、おい。押すなって」
「いや心配というか好奇心さ。危険がないなら、外の世界から来た家のことも調べてみたくなって」
「うーん。神奈子様からは、話し合いが終わるまではあまり妖怪は招くなと言われているんですが……」
「おい、だから押すなってば! もう! 人を盾にして話すのやめろよ!」
「し、仕方ないだろ! そこの人間は、は、初めて見たんだから!」
私ごと早苗に近づいていくにとりの上着を掴み、前に押し出そうとすると抵抗してくる。
この! と力を入れるけれども全然、びくともしない。
「……警戒されているんでしょうか」
「ちがうよ、こいつ人間相手だと慣れるまで時間が掛かるんだ!」
「あー! お前も
「なるほど」
言い合いをする私たちを横目に、早苗は口元に手を当てて笑った。
「うん? 魔理沙、服の中に何か入れてる?」
「え? いや、別になにも……。あ」
にとりがお腹の部分にあてていた手をつまみ、むにむにと確かめるように触ってくるから服の中のサラシがくすぐったい。
しまった、にとりに気が付かれてしまった!
その手が服の中の違和感を確かめるように、すーっと上に登っていくのを慌てて阻止する。
「へ、へんなところ触るな!」
「ひゅい! ごめん!」
にとりが慌てて離れるけれど、さっきよりもより更に解けて布がほとんどお腹の方に落ちてしまった。
シャツの上にベストを着けてきておいて良かった。だけど、むず痒さは如何ともしがたい。
「せ、セクハラですよ!」
「ごめん! そんなつもりはなかった!」
「あ、うん」
早苗が慌ててにとりと私の間に割って入り、背に庇われながら身じろぎするけど、この違和感はどうにもならなさそうだ。
「いま見ました! む、胸を触ろうとしていましたね!」
「ち、違うんだ! 服の中に何かあって!」
「だ、大丈夫だよ早苗」
多少身じろいでも全然落ち着かない。
気にするとずっと気になる感じだ。もうさっさと取り払ってしまいたい。
「嫌がるマリシャさんに無理やり!」
「蛇とか虫だったら大変だから、確かめようとしただけで!」
「ふたりとも落ち着いて!」
にとりの言葉に早苗が留まり、こちらを見て困った顔。
「河童たちは好奇心旺盛だから、気になったら後先考えないで行動するんだ。指の感覚も鋭いから、違和感を感じたら確かめてくるし」
「そう、そうなんだよ! 決して! 下心はなかった!」
にとりが大げさに手を払い、距離をとって大きな声で弁明してくる。
頭を下げながら両手で拝んでくるので、本当に申し訳なさそうにしている。
ちらっと片目だけ上げて、反省しながらもやはり気になるのか。
「それで、服の中に何か入ってたけど。それはなんだ?」
「ああ、これは」
「待ってください。先ほど、透明になっている時に私たちの会話が聞こえていた、と。そう言っていましたよね?」
声と同時にひゅーっと風が吹いて、思わず目を瞑ってしまう。
一瞬だったのに、にとりが早苗から大きく距離をあけ、対峙するように早苗もお祓い棒を振るっていた。
にとりの方を見ると、リュックから自分を守る様に前の方にアームをたくさん出している。
「怖いって! ずっと聞いていたわけじゃないし、さっきまで引き返そうかと距離を離してたんだよ!」
「……本当でしょうか?」
「ほ、本当さ! きゅうりを賭けたっていい! そ、そうだこの迷彩スーツも賭けたって良い!」
「……本当みたいですね」
早苗の方から吹いていた風が止み、にとりもリュックの中にアームを仕舞いながらゆっくり戻ってきた。
「すみません。マリシャさんがいい様に騙されてセクハラを受けていたのかと疑ってしまって」
「ひゅい、そんなことしてたら天狗に捕まっちまうよ。私も無遠慮だったし、本当に悪かったね、魔理沙」
「あ、うん」
一瞬、早苗が霊夢みたいに見えたぜ。
強く風が吹いた時に少しずれた帽子を被り直す。
「それで、結局それはなんなの?」
「あ、えっと。サラシが千切れて服の中でゴワゴワになっちゃってるんだ」
「へー、そうなのか。……え、じゃあさっき少し触ったあの柔らかいのって」
「そ、それは知らない! 布の塊の部分だろ!」
「へ、へぇ。そうだよな、そうそう。うん、そうなのか? え、じゃあ今何も着けてないの?」
「……いや、全部解けている訳じゃないし」
にとりは目を丸くしながら、自分を自分で叩いた。
えぇ!? と驚き声をあげると、少し顔を赤くしたにとりと目が合う。
「せ、責任は取るよ……?」
「なんのだよ!」
早苗がひとつ咳払いし、私たちはそろって早苗を見上げる。
「その、下着の問題もありますし、早く家に行きましょう」
「下着っていうとなんか……」
「さ、サラシの問題!」
*
「助かりました。こんなにたくさん、私一人だと運べませんでしたよ」
「ヘヘ、これくらいの魔法は朝飯前だぜ」
籠を下ろし、一息つくと早苗がねぎらいの言葉を投げてくる。
なんだか普通に魔法の腕を褒められているのは久しぶりに感じ、土で汚れた手を払いながら笑う。
「それじゃあお礼に、今日は腕を振るいますね!」
言いながら籠を持ち上げ、軽々と籠を持ち上げて家の中に入っていく。
あ、と声を掛ける前にひょいっと持ち上げてしまった。芋に栗、かぼちゃも入ってかなり重い筈なんだけど重量を感じさせない持ち方だ。
「……力持ちだな」
「? はい! これでも鍛えていますから!」
「もちろん私も手伝うぞ。きゅうりはある?」
もう片方の籠はにとりがひょいっとリュックから出ているアームで抱えている。
結局にとりのことも招待してくれることになったのだ。
にとりはあまり早苗の傍には近寄らず、ずっと私を間に挟んで距離をとって話をしている。
「カッパはきゅうりが好きなんですか?」
「そうさ、みんなキュウリが好きさ! 相撲もね!」
「河童と相撲をとったらだめだぞ早苗。負けたら死んじゃうんだから」
「死んだりしないって! 魔理沙は怖がりだからなぁ」
家の中は近代的な作りだった。
引き戸の玄関戸から先は土間というより広い玄関という感じで、靴をたくさん置けるようになっている。
早苗が靴を脱いで上がるのを見ながら、同じようにわたしもにとりもそれに倣って靴を脱ぎそろえる。
廊下はつるつるで、木目が綺麗に揃っていて立派な造り。
「これが外の世界の住居かぁ。普通の人間の家とあんまり大きな違いはないんだな。つまらん」
にとりが下駄箱をあけたり閉めたりして中を見て、つまらなそうにつぶやく。
「人の家に面白いもつまらないもないだろ。私からしたらにとり達妖怪の家の方がよっぽど変で面白いと思うぜ」
「へえ。にとりさんの家に行ったことがあるんですか?」
「うん。にとりの家は河の中にあるんだ」
「か、河の中? 傍じゃなくて、中ですか?」
「なあ、そんなことよりもっと見せておくれよ! 家の中はどうなっているんだ?」
にとりが騒ぎ、アームで持ち上げている籠をゆさゆさ揺するので仕方なく廊下を進んだ。
いくつかある扉の中で、贅沢に硝子で戸を張った部屋に早苗が入るので、私達もそれに着いて中に入る。
部屋には大きなテーブルが置いてあり、観音開きの戸棚には蜜柑や柿が置いてある。
「こちらに籠とか荷物を置いてください。洗面台がこの奥にあるので、先に手を洗いましょうね」
こっちですよ~、なんて先導している笑顔の早苗。
なんだか小さい子に言い聞かせるみたいな言い方だなぁ。
ちらりとにとりを見ると、私と同じくらいの高さの目線がぱちりと合う。
私達はそのまま早苗を見上げ、不満を口にする。
「なあ、なんだか小さい子に話しているみたいじゃないか?」
「わたしも思った。魔理沙はともかく、私はお前よりもずーっと年上だぞ」
「あ、あら。すみません、無意識に……」
確かににとりの見た目は幼いと思うけど、これでも妖怪はその見た目にそぐわない年月を生きているのだ。
見た目だけで判断していると早苗もきっと怖い目に遭ってしまう。
そもそも私だってそんなに年齢は変わらない筈なのに、子ども扱いされる謂れはない。
*
「へぇ~、なるほど配線は壁の中なのか。いやあ、それにしても明るい、眩しい……。電球はわかるが、外はこんなに薄く小さくても明るさを作れるんだなぁ。え、しかも温度も? 熱くない! どうなっているんだ、熱交換器が付いている? いや、この大きさで?」
早苗がつけたリビングの明かりに、にとりはすっかり夢中になっていた。
アームで自分を持ち上げながら天井付近でべたべた触ったりスイッチを借りて点けたり消したりして遊んでいる。
その様はエンジニアというより、おもちゃを与えられた子供みたい。
先ほど一緒に、子ども扱いしているんじゃないかと抗議したのに。まるっきり子供じゃないか。
手を洗った時にも「なんで水がぬるま湯なんだ?」と洗面台を解体しそうな勢い。蛇口は見たことあるんだろうけど、ハンドルレバーには興味津々だった。
「私はやることがないから、早苗の手伝いでもしようかな」
「出かける前に準備はほとんど終わっていますから、あとは頂いたお芋と栗を蒸かすくらいですよ。それより、先に着るものをどうにかしましょう」
「う、そうだな。その、ありがたく頂戴するぜ」
そのままにとりを居間に置いて、私たちは早苗の部屋へ向かうことにした。
廊下を進み、緩やかな階段を上って2階に上がると、木目の扉に『早苗のへや』と書いたプレートが掛けられている。蛙と蛇のマグネットだろうか、デフォルメされたそれらが可愛らしい造りだ。
「えー、かわいい! このプレート、早苗っぽくて凄い良いなー!」
「あ、ありがとうございます。私っぽいですか?」
「うん。文字も丸っこくて可愛いし。この蛙と蛇は、もうまさに早苗! って感じだな」
私が思ったままに興奮しながらそれを伝えていると、早苗は恥ずかしそうに笑ってくれた。
「早苗の事を知っている人から見たら、みんなそう言う意見になると思うんだけどなぁ」
「あはは。そういえば、部屋に人を招くのは親族以外では初めてです」
「え、私が初めて部屋に入る友達ってこと?」
「っ……はい! そういうことですね!」
それは光栄だ! 私も嬉しくなり、自然と笑顔になる。
幻想郷の中で好きな場所、行ってみたい場所がまたひとつ埋まっていく。
嬉しそうに扉を開け、招いてくれるままに扉の中に入る。
中はきちんと片付いた女の子の部屋という感じで、本棚には外の世界の漫画本を含むいくつもの書籍。
勉強机だろうか、棚付きで立派な机には手元灯が備え付けられていて機能的な作り。
青色を基調にしたベッドやカーテン、クリーム色のラウンドマットなど、家具は少ないけれどぬいぐるみが沢山あって賑やかな室内だ。
「わー、可愛い部屋だなー!」
「あんまり、見ないでくださいね」
はにかんで笑う早苗に勧められるまま、ベッドの上に座らせてもらう。
ベッドの上にはお気に入りなのだろうか、大きなデフォルメされたカエルのぬいぐるみ。
ご挨拶を兼ねて頭を撫でていると、ピロンっという音が早苗の方から聞こえた。
「なに、いまの電子っぽい音?」
「あ、すみません。その、電波はないけどカメラ機能だけ使えたので、思わず」
言いながら早苗が差し出してきた手のひらサイズの板には、カエルを撫でる私が映り込んでいる。
「す、すごい! 妖夢が持っていたカメラよりずっと小さいのに!」
「あはは……。すみません。消しますね?」
「え、いや別にいいよ。写真は魂が取られるわけじゃないし、好きにしていいよ」
「い、いいんですか?」
「うん、けど写真ばっかり撮って話してくれないのは嫌だぜ」
「ありがとうございます!」
「そんなにお礼を言う程か?」
あとでこれも借りよう、私も早苗の事を撮ってみたい。
妖夢のカメラはなんだか高そうで気後れするけど、あの板は単純そうだし平気な気がする。
早苗が嬉しそうに板を操作して机に置いてから、壁に備え付けられたクローゼット扉を開けた。
部屋みたいになっているその中に入って、衣装箱を手に出てくるとそれをマットの上に置く。
「小さい頃の服とか、捨てられずに取ってあるんです。役に立つなんて思いませんでしたけど」
「わかる。私も捨てられないで取ってあるなー」
衣装箱の蓋を開けると、微かに樟脳の匂い。
すーっと部屋に匂いが広がり、呉服屋にいるような気分だ。
箱の中には、今早苗が来ている巫女服をそのまま小さくしたようなものも収められている。
小さい頃の早苗も、そりゃあもう可愛らしかったんだろうなー。
「よかったら、これを使ってください」
言って取り出したのは、折りたたまれた白色の布。
受け取って広げてみると、一目でその用途がわかった。
「おさがりで申し訳ないんですけど、私が使っていたスポブラです」
下着の話ばっかりしてる!