そのアニメの原作者、僕です。   作:ぷに凝

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村崎彩芽は友達が欲しい

私は友達が少ない。

 

「すごいよね、村崎さん。ずーっと学年一位なんて」

 

「え? テニ部のエース? すごっ……」

 

「村崎さんめっちゃスタイルいいよねー。すごいなぁ……」

 

“すごい”。

 

でもそんなすごいらしい人間と、友達になりたがる人はいなかった。

だから高校に上がると同時に、私はすごくない人間になった。

 

「ウチ、村崎彩芽でーす! あやっちって呼んでね!」

 

バカっぽい喋り方、バカみたいな髪の色。

 

「え!? あやっち赤点じゃん!? ヤッバ!!」

 

成績も悪ければ本物のバカだ。

 

……だけど。

 

結局、私に友達はできなかった。

 

「彩芽、今度遊びいかね? 新宿とか」

 

頭の悪そうな女を狙う、頭の悪い男は釣れたけど。

 

仮面を被らないと維持できない友達は、長続きしなかった。

 

……かと言って今更キャラを変えるのも変だから、私は結局成績上位だけは維持し続ける、中途半端なバカになった。

 

「……ねぇ見て」

「やばっ、めちゃくちゃ寝てんじゃん」

 

だけど、私以上に目立つ存在がクラスにいたから私の変化は目立たなかった。

 

「……ごぉ〜」

 

天華寺美穂。

 

彼女は私とは別の理由で友達が少ない。

 

恵まれた家柄。恵まれた容姿。そのくせマイペースで、不思議な雰囲気を持つ彼女は人というより人間社会に紛れ込んでしまった妖精のようだった。

 

人生に悩みがなさそうでいいな、と思う。

 

ちなみに私は性格が悪い方だと思う。昔はそうでもなかったけど、“優等生”のレッテルを貼られたせいで色々と窮屈な思いをしたからちょっと性格が歪んじゃったのかも。

 

……ともかく、そんな性格が悪い私の目には天華寺美穂は何の悩みもないお気楽な女子生徒に見えていた。

 

……あの日までは。

 

 

バリバリバリ。

 

バリボリバリバリバリ。

 

「「「……」」」

 

バリボリバリバリバリ。

 

ピュイーンズドドドドド。

 

「あの……天華寺さん?」

「? はい」

「何を……してるんですか?」

 

私は勘違いをしていた。

 

天華寺美穂はマイペースだったんじゃない。

 

「ゲームしながらポテチ食べてます」

 

頭がおかしかったんだ。

 

「……どうして、ですか?」

 

国語の担当教師、峰田先生が困ったように言う。

 

「……数学の田村先生が、“サボるなら堂々とサボれ”と」

 

言ってたけど。

 

堂々としすぎ。

 

「……天華寺さん」

「はい」

「あとで生徒指導室に来なさい」

「えっ」

 

どうしてそんな“身に覚えがない”みたいな顔ができるんだろう。

 

授業が終わった後、とぼとぼと先生に連れ出される天華寺美穂を見ながら、私はそう思った。

 

……それからも天華寺美穂は、奇行を続けた。

 

「消しカスでお城を……」

 

「机に人生ゲームを……」

 

驚くべきことに、彼女には悪意がなかった。

 

それが悪いことだとは微塵も思っておらず、また、なぜ怒られるのかもわからない。

 

それが天華寺美穂だった。

 

高校1年の1学期という、高校生活の大事なスタートダッシュ。

 

天華寺美穂はすっかり学年1の問題児として先生達にマークされていた。

最初は天華寺美穂に話しかけていた子たちも、彼女が普通ではないと気づくと次第に去っていく。

 

常識外れが許されるのは中学生まで。

 

高校生にもなって周囲の状況や空気を読めないのは恥ずかしいこと。そんな空気が醸成される高校生活において、彼女の存在は“異物”だった。

 

出る杭は打たれる。特異な才能は伸ばすべきなんて所詮綺麗事。

 

すっかり周囲から浮いてしまった天華寺美穂は……。

 

「……」

 

まるで青春ドラマのお手本のように、屋上で一人お弁当を食べていた。

 

「天華寺さん。ここ、立ち入り禁止だけど」

 

疲れた顔をした担任の先生に言われ、私は彼女を注意する役を押し付けられた。

 

初めて会話らしい会話をしたのがこの時だ。

 

「……ん、そっか。ごめん」

 

天華寺美穂は特に不満を言うことも、あるいは私を無視することもなく。

 

お弁当を畳んで、その場を去ろうとした。

 

「……あのさ」

 

そんな彼女に私は声をかけた。

 

「なんで、先生に怒られることばっかすんの……?」

 

私がそう聞いたのは単純な疑問からだった。

 

「ん〜」

 

天華寺美穂は空を見て、悩んで。

 

「なんでだろうね」

 

そう言って、困ったように笑ったのだった。

 

私はその笑顔を見て……なんとなく。

 

「……良かったらでいいんだけど」

 

私と似てるな、と感じた。

 

「お昼、一緒に食べる?」

 

 

「……」

 

あれから2年。

 

まさか3年生になるまで関係が続くなんて思ってなかったなぁ。

 

『彩芽、七家のこと好きなの?』

 

「……う゛ー」

 

……美穂に変なこと言われたせいで、七っちと顔を合わせづらくなっちゃったよ。

 

……でも、今日こそは! “天地”の4話も最高だったし! 話せるはず!!

 

「……あっ」

 

と、気合を入れ直して顔を上げると同時に教室に入ってきた七っちと目が合う。

 

目元が隠れるほど長い前髪。その奥に僅かに見える気弱なタレ目と、猫背で小さく見える身長。

 

……正直言って。

 

めっっっっちゃタイプ……!!

 

ウチ、ああいうちょっと闇抱えてるタイプが “癖” なんだよね〜……。

 

思わず目を逸らしてしまう。

 

……って逸らしちゃダメじゃん!

 

私は慌てて視線を戻した。

 

……あっ。

 

でも、そこにもう七っちはいなくて。

 

自分の席に戻ってしまっていた。

 

……七っち、4話見たら感想会するって約束忘れちゃったのかなぁ……。

 

そうだとしたら、ウチから話振るの迷惑かもしれないし……どうしよう……。

 

「七家」

「あっ……」

 

そんなウチの葛藤を知っているのかいないのか、美穂は七っちと楽しそうに話している。

 

……七っちも、美穂も。

 

「ウチが先に仲良くなったのに……」

 

でも……七っちと美穂はいい相性だと思う。

 

ウチは美穂が時代劇好きだなんて、全然知らなかったし。知ってたとしても話せることなんてほとんどなかったと思う。

 

だけど、七っちは美穂に応えてあげられる。

 

ウチじゃ出来ないことを七っちならやってあげられる。二人は……お似合いだと思う。

 

「……」

「おい、彩芽」

 

そんなことを考えていたら、今一番聞きたくない声が聞こえて、思わずため息が漏れた。

 

「……なに、飯田」

「暇なんだろ? ちょっと付き合えよ」

「普通に嫌なんだけど」

 

飯田純一郎。

 

女子の間じゃ噂は広まってる。こいつは女癖が最悪だって。

 

そのくせに1年の頃からずっとウチに声かけてくる。ぶっちゃけキモいし、関わりたくない。

 

だから適当に振り払おうとした。

 

「じゃあ天華寺の方誘うかな」

「……!」

 

見上げると、飯田は悪魔みたいな顔で私を見下ろしていた。

 

……最悪だ、こいつ。

 

「で? どうする」

「……」

 

……美穂は警戒心がなさすぎる。

 

こいつに連れてかれたら、何されるかわからない。

 

「……わかった」

 

だけど私なら、こいつのタチの悪さはわかってる。

 

何も起こらない。

 

……。

 

移動している最中、飯田の目線が胸や足に注がれ続けるのが不快だった。

 

こいつの場合、ちらっと見るとかじゃなくて堂々と見てくるのがキモい。

 

「……ここでいい?」

「あぁ、いいよ」

 

私と飯田は、“図書室”の中に入ることにした。

 

ここならよく来てるから、いざという時逃げ出すこともできる。

 

「で、なんの用?」

「……」

「……?」

 

飯田は何も言わずに立ち尽くしている。

 

何がしたいの、と言おうとした矢先。

 

ドンッ

 

「なぁ、マジで俺の女になれよ」

「……」

 

本棚を背に、すぐ間近に飯田の顔があった。

 

香水と、汗臭い匂いが混ざり合って鼻の奥に絡みつく。

 

思わず、顔を逸らす。

 

「こっち向けって」

 

そして、飯田の腕が顔に伸びてきて──。

 

「むみゅっ」

 

ほっぺをむんずと掴まれた。

 

……だけどそれは飯田の手じゃなくて。

 

「んぶっ!?」

「んーっ」

 

唇に柔らかいものが触れた。

 

その柔らかさ。

 

いや、目の前にあるこの顔は……。

 

「みぼ〜〜ッッ!!」

 

「んっ、よくわかったね」

「わかるに決まってんでしょ!?」

 

美穂が私の頬を掴んで、そのままキスしてきていた。

 

「……」

 

飯田がポカンと口を開けて、美穂を見ている。

 

「行くよ」

「えっ、ちょ……えぇっ!!?」

 

そのまま美穂は私の手首を掴み、ずんずんと歩いていく。

 

「──ちゃんと説明しろやぁ〜!!」

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