そのアニメの原作者、僕です。   作:ぷに凝

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その美少女のメシマズ属性

「……ふぅ」

 

二人は幸せなキスをして終了、と……。

 

……いやマジでキスするとは思ってなかったけど。

 

けど美少女同士のキスシーンなんてなんぼあっても困りませんからね。補充できるうちに買い溜めておかなくちゃ。

 

しかし、こうなると僕は飯田と同じくらいのお邪魔虫だ。さっさと退散するとしよう。

 

村崎、天華寺と。本来なら人生で関わり合いになるはずのない二人と関わり合う機会がほんの一時であろうと得られた。

 

僕にとってその経験は、これからの執筆活動における大きな原動力となることだろう。具体的にはガールズラブのシーンに於いて。

 

作家は経験したことしか書けないなんて言われるが、少なくとも僕は“学年一の美少女のアレコレ”の描写にかけては、右に出る者の居ない書き手となったわけだ。

 

これを活かして“天地”がひと段落ついたら、次はラブコメものでも書くとしよう。

 

さて……また作家と高校生の二足のわらじの生活だ。

 

しかし僕にはそれが合っている。誇りに思っていると言ってもいい。

 

もう二度と二人と関わることはないのだろうが……。

 

そんな自分を誇りに思う。

 

……

 

………。

 

「はい、七っち、あ〜ん」

「七家、私のも早く食べて」

 

……。

 

「あの」

「ん? どしたの、七っち」

「お腹痛い?」

「いや……」

 

お腹は痛くない。

 

痛いのはどちらかと言うと、足と足の間にある、なんらかの棒だ。それが“こんにちは”と自己主張してはばからない。

 

だって、それも仕方ないことだろう。

 

「んじゃあ……口移しで食べさせてあげよっか?……なんちゃって」

「? いいじゃん、別に。さっき私たちがやったのと変わらない」

「それは言うなや!!」

 

何故か体育座りをしている僕の左右には、二人の女子がゼロ距離でひっついている。

 

村崎と天華寺だ。

 

昼休み。

 

彼女たちはしきりに僕にご飯を食べさせようとしたり、僕越しに言い合いを始めたりしている。

 

しかしおかしいのだ。だって僕はここにいるはずじゃない。居てはいけない存在なんだ。ノイズでしかないから。

 

まさか僕が、僕自身が……。

 

百合に挟まる男になってしまうなんて……!!

 

 

『美穂に聞いた。七っちが美穂を呼んでくれたって』

 

『ごめん、なんか距離作って、勝手に遠ざかって……ウチ、馬鹿みたいだね』

 

『本当に、ありがとね』

 

『あ、昼飯一緒に食べない?』

 

「あーん……」

「あむっ」

「なんで美穂が食べんの……」

 

で、これだ。

 

学年でも1、2を争う。というより完全に僕は2トップという認識の女子二人に囲まれて、屋上で昼飯を食べている。

 

この学校ってそもそも屋上入れたのかよという驚きもそこそこに。

 

こんな状況、クラスの男子どもに見つかったら何を言われるか。

 

『おい、あいつ殺そうぜ』

『どう始末つけます? 山に埋めます? 薬品でドロドロにします?』

『“ケジメ”、つけねぇとなあ』

 

終わりだ。

 

女が絡んだ時の男なんて、ヤクザとなんら変わりない。その相手が村崎と天華寺ともなれば尚更。

 

その内、僕は河川敷に呼び出され翌日無惨な死体で見つかることだろう。

 

「? どしたの、七っち」

「お腹空いてない……?」

 

そんな僕の葛藤も知らず、3-2のカースト最上位の二人はきょとんとした顔で僕を見ている。

 

彼女らは知る由もないのだろう。カースト底辺のナメクジが生き残るために、どれほどの策略を積み重ねなければならないかなんて。

 

二人にとっては、僕はただの友達……いや、パシリに近い存在なのだろうが、そのパシリのポストですら欲しがる者は山ほどいる。

 

村崎彩芽と天華寺美穂とは、それほどの存在なのだ。

 

僕は飯田のことは嫌いだが、二人に釣り合うような男は飯田くらいだろうなという考えも持っている。

 

あれで成績もいいらしいし。

 

人付き合いは、自分と釣り合う者とだけ取るべきだというのが僕の持論だ。望みが高すぎたり、あるいは低すぎては悲劇を呼ぶ。

 

最底辺の僕は、並び立てる人間がクラス内に居なかったから一人だっただけだ。

 

僕が村崎と天華寺と関わっても、どちらにとっても不幸な結末にしかならない。

 

だから……。

 

「ごめん」

 

僕は立ち上がった。

 

「一人で食べ」

「あっ、待って今日のだし巻きめっちゃ美味いわ! 七っち、ほら冷める前に食べて!」

「もう冷めてない……?」

「あの、一人で」

「冷めてないよ! ウチが人肌で温めてたんだから」

「衛生観念やばくない?」

「……」

 

まずい。僕の話を聞いていない。

 

レベルが低すぎて発言権がないやつだこれ。

 

「ってか、七っち全然食ってないじゃん。はいからあげ」

 

そしてからあげを無限に食わそうとしてくる。

 

正直、これを食ったらいよいよ言い逃れできない状況になって、殺人に正当性を与えてしまう気がしてたのだが。

 

「……食べたくない?」

 

……不安そうに揺れる村崎の目。

 

……。

 

ええい、ままよ!!

 

「んむっ」

「あはぁ」

 

からあげにかぶりついた僕を、村崎がにんまりとした笑顔で見てくる。

 

「美味しい?」

 

村崎はもっきゅもっきゅと唐揚げを食べる僕を、本当に目が奪われそうなほどに優しい笑顔で見つめてきて……。

 

「しょっぱい」

「うえぇ!?」

 

塩の味しかしない僕は冷めた答えを返した。

 

「えっ、嘘!? こんなに美味しいのに! ねぇ美穂!?」

「ちょっと辛いけど美味しかったよ」

「え、辛い? 甘く作ったんだけど……」

 

……まさか村崎。

 

香辛料と塩と砂糖を見分けつかずに入れたのか??

 

それで七色の味がするご機嫌なからあげが出来上がったと。

 

「七家、私のも」

 

そして次に差し出されるのは天華寺のおにぎり……。

 

「食べかけだけど」

「うん」

 

“うん” じゃなくて。

 

「いいな〜」

 

ちょっと待て。村崎は突っ込まないのかこれ。

 

「……」

 

いや、そんなじっと見つめられても……。

 

……。

 

ぱくっ

 

「どう?」

 

……。

 

なんだ、この……何??

 

「お米、水分多くない?」

「私噛む力弱いから」

 

マジかよ。

 

口の中でもち米が錬成されてるんだけど。

 

しかもこれ……。

 

「具、何が入ってるの……?」

「ポテチ」

 

バカがよ。

 

「美味しいよね、それ」

 

バカしかいないのか??

 

まずいことになった。

 

この二人、メシマズ属性持ちだ。

 

しかも不運なことに、二人とも味覚がズレてるからそれを指摘する人間が今までいなかったんだ。

からあげがセルフロシアンルーレットになっても、ポテチをもち米で包んでも誰も違和感を抱けなかった。

 

結果生み出された化け物達は、今にも娑婆へ飛び出し往来を闊歩しようとしている。

 

僕がここで止めなきゃいけない。

 

例えここで、力尽きたとしても──。

 

「二人とも、話があるんだけど」

「うん? なに? 七っち」

「シェフは私たちだよ」

 

残念ながらシェフを呼んで料理を褒めたいわけじゃないんだ。

 

「──このお弁当、まずいよ」

 

 

「うぇっ、う、ふぐぅっ、ゔぇ……!!」

「すん、すんっ……!」

 

数分後。

 

二人に懇切丁寧に、いかにこの弁当がダメかを説いた所、二人は座り込んで泣いてしまった。

 

説明の中で“まずい”という単語を連呼したのが悪かったのだろうか。仮にも頑張って作った弁当を貶される事となった二人の胸中は察するに余りある。

 

僕もそうだ。自分ではウケると思って投稿したエピソードが読者にガン叩きされた時はあまりのショックで飯が喉を通らなくなり、一文字も文章を書けなくなってしまったのだから。

 

しかし、痛みがなければ人は成長しない。

 

料理の腕が悪いなら、まずは自分の料理が“まずい”ということを自覚する所から始めなければならないのだ。

 

というか、それ以前に米にポテチは入れるなという話だ。

 

「……七っち、そんだけ言うならさぁ」

 

鼻を啜りながら村崎が言う。

 

「七っちは、ちゃんと料理できんの?」

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