蓮ノ空×イナズマイレブン 〜英雄たちのヴィクトリーロード〜 作:松兄
晴也と花帆先輩がさやか先輩を部屋に連れて行ってベットに寝かせている頃、リビングでは、
姫芽「晴也くん、なんか顔色が真っ青でしたね……」
梢「そうね。あんな焦った晴也くん、初めて見た気がするわ」
ホントに、あんな晴也は見たことがない。
姫芽「さやか先輩もたいしたこと、ないといいんですけど」
慈「これは私のせいだな………。雨の中頑張らせちゃったから」
少し落ち込む慈先輩。すると、
梢「誰のせいということもないでしょう。そう思うなら、あとで出来ることをしてあげて」
慈「そーする」
梢「ただ」
兵太「ただ?」
梢「まずいことはもうひとつね。屋内だからスケジュールは大丈夫だと思っていたけれど、あとのシーンはさやかさん出ずっぱりよ」
慈・兵太「「!!」」
さやかが熱を出して倒れて、もうすぐ3時間が経過しようとしていた……。
部屋では、小鈴がさやかの手を握って涙を流しながら眠るさやかを見つめていた。
さやか「んっ……」
さやかの手の指ピクリと動き、少しずつ瞼が開いていく。
さやか「ここは」
小鈴「ぐすっ、うう………………あ、さやか先輩」
小鈴の顔にひとまずの安堵が映る。
さやか「小鈴さん……。あ、あれ? わたしは…………」
小鈴「食事のあと、倒れて」
小鈴がさやかに事情を説明すると、さやかはハァと息を吐く。
さやか「……………そう、でしたか。これは……熱が出てるんですかね。かなりぼーっとして…………。申し訳ありません、自己管理をないがしろにしてしまい」
小鈴「そんなことないです、さやか先輩のおかげで、撮影は……」
小鈴はさやか先輩のせいでは無いと言うが、さやかは首を横に振る。
さやか「いや、夕食の準備を誰かに任せて、とっととお風呂にでも入れば良かったんです。すみませんでした」
小鈴「謝らないでください! もとはと言えば、徒町がもっとうまくやれてたら、雨の降る前に終わってて」
さやか「そんなの、チャレンジを成功させるためなら、当たり前です。今、何時ですか」
小鈴「夜の10時を回ったところです。その……スケジュール的にはもう」
さやか「………ごめんなさい」
この状況を招いたのは自分だと思ってしまっているさやか先輩。謝罪の言葉を口にする。
小鈴「だから先輩の謝ることじゃ。そもそも、こんな無茶なスケジュールで徒町のわがままに付き合ってもらうだけで、徒町は………、だったら、最初から…………」
やらなきゃ良かった。そう言おうとした小鈴を、さやか先輩が止める。
さやか「やらなきゃよかったなんてことはありません! この映画は、みんなの想いを……乗せられる………本当に――うっ……く!」
さやか先輩は無理に起き上がろうとする。だが、すごく苦しそうだ。
小鈴「先輩! 寝ててください、凄い熱なんですよ!」
さやか「く、うう……!」
小鈴は、苦しそうなさやかの身体を支えてベッドに横にする。
小鈴「さやか先輩…………うう。な、なんとかします! 絶対、なんとかしますから!」
小鈴「徒町は諦めないことだけが取り柄なんです、だから、絶対……絶対!」
そして、小鈴はさやかの部屋を飛び出した。
すると―――、
綴理&晴也「「あ」」
小鈴「あっ」
部屋を出たところで、晴也と綴理の二人と鉢合わせた。
晴也「小鈴……先輩は………」
綴理「……さやは、どう?」
小鈴「……目は、覚めました。でもやっぱり熱は……」
小鈴の言葉に、晴也は悔しそうに……手から血が出るのではと言うほど握りしめる。
晴也「……なんでさやか先輩なんだよ! クソッ!」
小鈴「ビクッ は、晴也くん……?」
晴也の剣幕に恐怖を覚えたのか、小鈴の体が震える。
晴也「あ、悪い……。今すぐにでも、さやか先輩と代わってやりたくて。でも、できなくて……自分がもどかしくて仕方ねぇ。こんな気持ち初めてだ……」
さっき熱を測ったら、39℃近くあったし……。
綴理(はる、もしかして……)
俺の言葉に、綴理先輩の眉がピクリと動く。
綴理「そっか」
小鈴「えっと……看病とか……行きます?」
綴理「ボクじゃ何もできないから。寝てるさやの、邪魔もしたくない」
晴也「今日はもう時間的に病院も開いてないから、 明日になったら連れて行くって監督が」
小鈴「…………ごめんなさい」
小鈴が謝る。
綴理「……なんですずが謝るの?」
小鈴「こんなことに、なっちゃって」
綴理「……こんなことに、なっちゃったね」
小鈴「はい………。でも」
晴也「でも?」
小鈴「………どうにか、したくて」
綴理「映画を?」
小鈴「……どうにかする方法は、わかんなくて。みんなが思いつかないものを、徒町が思いつくわけもなくて」
晴也「…………」
小鈴「先輩……晴也くん……」
小鈴「どうにか、できませんか? これでダメだったら、きっと、さやか先輩も……!」
綴理「ん……そうだね。さやはきっと、自分のせいだって」
晴也「言うだろうな。さやか先輩、自分で背負い込むタイプだし……」
俺だって、さやか先輩にそんな思いなんかさせたくない。
小鈴「さやか先輩は、徒町の思いつきに、もうみんなの想いが乗ってるって言ってくれたんです。徒町も、この合宿でそれを痛いほど感じました。映画を作る中で見た、みんなの楽しそうな顔を……憶えてるんです……! なのに、終わっちゃう…………!」
泣きじゃくる小鈴。小鈴に、綴理先輩が落ち着いて声を掛ける。
綴理「すず、ボクにはどうすればいいのかは、分からない」
小鈴「うう」
綴理「夢が終わるって、つらいね」
小鈴「あ」
小鈴は、今回のきっかけになった雪佳ちゃんとのやりとりを思いだす。
小鈴「そっか。雪佳ちゃんも、同じ気持ちだったのかな……。こんな風に、どうしようもなくなって、それで……もう、終わりだって」
小鈴は、すこし考え込む。
小鈴「なら。だったら」
綴理「すず?」
晴也「小鈴?」
小鈴「だったらなおさら、諦めちゃだめだ! 終わらせちゃだめだ! だって、諦めたくないからあの映画を撮ったんだもん! たとえ何度失敗したって認めない、そういう気持ちで頑張ったんです。だから、だから……!」
綴理「………ああ、そっか」
小鈴「…………綴理先輩?」
綴理「あの映画がすずなんだとしたら。あの映画にすずの気持ちが込められているんだとしたら。すず。これはきみにしか思いつけない」
綴理先輩……?
小鈴「先輩、なにを」
綴理「今、ボクたちは失敗したんだ。「次」、どうすればいい?」
小鈴「あ、考えろ、考えろ! 失敗したんだ、すぐに次に行けるのが徒町の唯一の……これは終わってない、失敗しただけ。これまでやってきたことは、終わってない……!!」
小鈴、何か閃いたか?
晴也「閃いたか?」
小鈴「………先輩」
綴理「何か、思いついた?」
小鈴「はい。これは、サッカー選手の映画なんです」
綴理&晴也「「うん」」
小鈴「たとえどんなに無様に負けたって、……諦めないで、何度だって立ち上がるのがサッカー選手だと思うんです!」
小鈴「まだ、まだ終わってません! お願いします。協力してください!」
綴理&晴也「「分かった!」」
そして、小鈴はリビングに向かった。
晴也「綴理先輩、俺たちも行きましょう」
綴理「うん」
そして俺と綴理先輩は、さやか先輩以外のメンバーを全員リビングに集めた。
吟子「でも小鈴。まだって言ったって」
吟子がまだと言ってもどうするのかと聞く。
小鈴「これを、見てください。今まで出来た………みんなで作った映画です」
小鈴は、これまで撮影した映画のシーンを再生する。
小鈴「伝えたい想いは、全部込めました。それは……諦めないってこと。どんなことがあっても、諦めないってことです!」
丈二「それは……でもよ」
小鈴「もう終わりだって、思いました。でも、きっと雪佳ちゃん……徒町の友だちも、 同じ気持ちになったと思うんです。それを励ましたくて作って……その気持ちも分かった」
小鈴「だからこそ、出来ませんでしたで終わっちゃいけないんです! 大事なのは、終わらないこと。いつか成功するって信じること!」
花帆「……………うん、なんとなく、言いたいことは分かったよ!」
瑠璃乃「えっ? …………ど、どうするの?」
小鈴の出した答えとは……、
小鈴「はい、だから……作りたいんです。“終わらないエンディング”を!」
吟子「終わらないエンディング……?」
小鈴「このままでは終わらない。まだまだ続く……徒町たちのサッカーみたいに!」
来夏「一度その映画のエンディングは作る。でも、まだまだ続く。そういうこと?」
小鈴「はい! ………どう、でしょうか!」
梢「……………待っていて、考えるから。そうね。これは、インターハイに挑戦するサッカー部員たちの映画」
晴也「続きは……本当のインターハイで」
梢「は、少し大げさだけれど……でも、そうね。私たちの挑戦はこれから。いえ、チャレンジ、かしらね」
瑠璃乃「ルリは小鈴ちゃんの気持ちがその友だちに届くならなんでもいいよ。まだ終わりじゃないよって、伝えてあげたいんだね?」
小鈴「ぁ………はい!」
一縷の希望の光が差し込む。
綴理「任せて、すず。頑張るから」
小鈴「はい! さやか先輩のためにも……徒町も、できることを全力でやります! それが、みんなの夢を乗せたチャレンジだから!」
― つづく ―
感想&お気に入り&評価、募集中です。
この中でお気に入りの章は?
-
出会い〜練習試合(石川光晴館)
-
スプリング杯編(全3試合)
-
コラボ回(キャプテン翼サンシャイン)
-
オリジナル回(イタリア戦)
-
コラボ回(二つの世界のサッカー)
-
日常回(原作ひめるり回〜proof回)
-
インターハイ編(予選〜全国大会決勝)
-
クロニクル編
-
プロ編(花帆vs瑠璃乃)
-
プロ編(慈vs小鈴)