蓮ノ空×イナズマイレブン 〜英雄たちのヴィクトリーロード〜   作:松兄

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第153話:真犯人

 

 

 あの後、月影は雷門サッカー部監督。乙女仙次郎の居る監督室に向かった。

 

乙女「……………」

 

 乙女は、いつものニコニコとした顔をして椅子に座っていた。

 

 ガチャ

 

月影「失礼します」

 

星村「…………」

 

暖冬屋「…………」

 

 扉を開けて、3人が中に入る。

 

乙女「おや、3人ともどうしたのかな? そんな怖い顔をして…」

 

 監督はニコニコといつもの不気味な笑いを浮かべて聞き返してくる。悪いが、今の俺たちは怒りでいっぱいだ。

 

月影「あなただったんですね。ハルがケガした事故を仕組んだ犯人は」

 

乙女「サッカーで選手がケガするのは、よくあることだよ?」

 

月影「あの日、ハルは誕生日だった。そしてロッカールームには、お父さんからのプレゼントだというスパイクが置いてあった。たとえ試合前でも、ハルは喜んで履き替えたでしょう。しかし、そのスパイクには、"筋肉抑制剤"の針が出てくるという仕掛けがあった」

 

暖冬屋「そしてプレー中、針が足に刺さったハルは急に足の力を失って転倒。怪我をした」

 

星村「そしてあなたは、自分の息の掛かった医者に、ハルくんは再起不能だとデマを流させたんですね…!」

 

 

 乙女監督は少し眉を寄せたが、訳が分からないという顔をしていた。白々しい…。

 

 

乙女「そんな憶測で言われてもねぇ?」

 

月影「証拠ならありますよ。このスパイクが!」

 

 月影は、あの日ハルが履いていたスパイクを眼の前に突き出した。

 

乙女「なっ!?」

 

 目を見開き、驚愕の顔をする乙女。間違いない!

 

 

月影「あの事故の時、あなたは係員にこのスパイクを廃棄するように指示した。けど、ハルが言ったらしいんですよ」

 

 

ハル『このスパイク捨てないでください! 初めて父さんがくれた大事なスパイクなんです。必ず取りに行きますから!』

 

 

月影「そして係員は、監督であるあなたよりも、選手であるハルに従った。当然です。スパイクはサッカー選手の命ですから」

 

乙女「っ!」

 

 すると、乙女は悪意に染まった本性を現し、スパイクに手を伸ばした。

 

月影「おっと! スパイクの仕掛けは既に検証済みですよ!」

 

乙女「それを渡せ!」

 

 乙女は、月影の襟首を掴み、力付くでスパイクを取り上げようとする。

 

月影「ぐっ!」

 

星村「監督! やめてください!」

 

乙女「何が雷門だ! 雷門など所詮、平和な環境でぬくぬくサッカーに興じるガキどもの集まりだ! 俺はな、雷門も、円堂ハルも、死ぬほど嫌いなんだよ!!」

 

月影「ぐっ!」

 

 乙女が手の力を強める。月影も少し苦しくなってくる。

 

 

 ―――そこへ、

 

鬼瓦(以下:楓)「動かないで! 警察です!」

 

 頼んでいた警察が入って来た。

 

乙女「な、何故警察が……!?」

 

夏美「あら? 罪を犯した者を警察に突き出すのは、当然ではなくて?」

 

 更に、ハルの母親にして、雷門の理事長。円堂夏美さんが入って来た。

 

乙女「理事長!?」

 

 夏美さんの額には青筋が浮かんでいる。当然だ。息子をあんな目に遭わされたのだ。相当怒り心頭なのだろう。

 

乙女「くっ…」

 

月影「乙女監督…あなたの息子、園崎アイルくんは、かつてハルと同等の実力を持つ、この国のサッカーの未来を期待されるほどの選手だったんですね」

 

暖冬屋「その話なら聞いたことあるで? たしか、そのアイルっちゅーやつ、試合でケガしてサッカーできなくなったんやろ?」

 

乙女「……そうだ。息子は、円堂ハルになれるかもしれない…。いや、越えられるかもしれない選手だったんだ! なのに!」

 

月影「そう。アイルくんがケガをしたのは、子供時代のハルとの試合の接触プレー。そのケガで、アイルくんはサッカーをできなくなった」

 

乙女「それだけならまだ良い…。試合中の怪我はよくあることだからな。だが…!」

 

星村「アイルくんは、たしか交通事故で亡くなった。原因は、自分から車道に身を投げ出したと」

 

乙女「そうだ! 絶望した息子は、自ら命を絶つほどに追い詰められた! アイツが、円堂ハルが居なければ…こんなことにはならなかったんだ! アイルだって、円堂ハルを恨んでいたに決まってる!」

 

 

 それが理由か……。だが、

 

月影「いえ、それはありえません」

 

乙女「なに!?」

 

月影「あなたは知らなかったんですね。ハルとアイルくんの関係を」

 

乙女「ハルと…アイルの? 何故お前がそんな事を分かるっていうんだ……」

 

 呆然とする乙女。月影は落ち着いてスマホを開いてメッセージアプリを開く。

 

月影「これは、当時のハルとアイルくんが使っていた、お互いの練習メニューや近況報告などに使っていたトークルームです。ハルにパスワードを聞いてログインしました」

 

乙女「ハルと、アイルの……?」

 

 月影は言葉を続ける。

 

月影「この会話をみる限り、2人は試合の内容やプレーをお互いに指摘し合ったり反省したりして、2人で切磋琢磨して、実力を伸ばし合った。チームは違っても、敵ではなく…間違いなく仲間だったんです」

 

乙女「つ!」

 

月影「そして、アイルくんが怪我をした直後の日付の会話に、こうあります」

 

 

アイル『ハル…、俺はサッカーできなくなっちゃった。本当は、もっとお前と一緒にやりたかったけど…。悔しいよ。俺のやるはずだったサッカーを、お前に託す。必ず、最強の選手になってくれよ? 約束だ』

 

 

乙女「…………」ツー

 

 

 乙女の目から、涙が零れ落ち、膝から崩れ落ちた。

 

乙女「アイル…、そんなにサッカーが好きか…。なら何故、自分から命を絶とうなどと…」

 

楓「いや、息子さんは自殺じゃない。車の整備不良によるスリップだったんだ!」

 

乙女「つ!?」

 

 乙女の目が、驚愕に見開かれる。

 

楓「ドライバーが隠蔽しようとして、判明に時間がかかってしまったけど、ドライバーの過失。完全な事故だったって、分かったんだ!」

 

 

 こうなって乙女はやっと、自分がとんでもないことをしてしまった事が分かったらしい。

 

乙女「じゃあ…私は一体何のために…。ハルに、ただの逆恨みで…」

 

月影「つ!」

 

 

 がッ!!

 

 

 今度は、月影が乙女の服の襟首を掴んだ。

 

月影「どんな理由があろうと、俺はあなたを許さない!! ハルは、日本サッカーの未来だ!! それをあなたは!!」

 

乙女「つ! すまなかった……」

 

月影「っ、このっ!!」

 

 イラっと来た月影は、逆の拳を握り…振り上げた。

 

 

楓「待ちなさい少年! サッカー少年が暴力はいけないよ!」

 

 鬼瓦さんが月影を制止する。

 

月影「くっ!」

 

 月影は、拳を下ろした。

 

楓「連れてって」

 

警察官『はい!』

 

 そして、乙女は警察に連行されていった。

 

夏美「ありがとうございました」

 

楓「いいって。サッカーで悪いことするやつ、アタシのおじいちゃんが絶対に許さない人だったからさ。さて、これからもバンバン逮捕して、サッカーを綺麗にしていくよ!」

 

 

 そして、鬼瓦刑事も帰っていった。

 

月影「終わったか。問題は……」

 

星村「ハルくんが、戻ってこれるかですね」

 

暖冬屋「ああ……」

 

 すると、

 

夏美「3人とも。今回はありがとう」

 

星村「理事長、いえ」

 

 暗い顔になる俺たち3人。

 

夏美「そんな顔しないで? ハルは今、必死にリハビリをがんばってるわ。もしかしたら、決勝には間に合うかもって」

 

月影「つ、本当ですか!?」

 

夏美「ただ、期待はしすぎないでくれとも言ってたわね」ニコ

 

月影「…はい!」

 

 

夏美「じゃあ、試合を楽しみにしてるわね」

 

そして、理事長も戻って行った。

 

月影「よし、では決勝戦に向けて練習だ!」

 

星村「はい!」

 

暖冬屋「やったるで!」

 

 

― つづく ―




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