蓮ノ空×イナズマイレブン 〜英雄たちのヴィクトリーロード〜 作:松兄
インターハイでの熱戦を制し、ついに全国制覇を成し遂げた晴也たち蓮ノ空サッカー部。
―――しかし、息をつく暇もなく、次は間近に迫る「高校サッカー世界大会」に向けた過酷な練習が始まり、さやか先輩……さやかとの時間はお預けになっていた。
今日は、その練習の合間に訪れた束の間の2日間のオフ日。さやか先輩の実家に1泊するかたちで、金沢の街を2人でデートすることになった。
さやか「ほら、晴也くん。置いていきますよ?」
少し先を歩く彼女――、同じサッカー部の先輩であり、晴也の彼女であるさやか先輩(以後:さやか)が、振り向いてイタズラっぽく微笑む。
全国の頂点に共に立ったあの頼もしいプレースタイルとは一転、私服姿の彼女はどこか大人びていて、眩しい。
東京生まれ・東京育ちの晴也にとって、金沢の街は半年経っても尚、どこを切り取っても新鮮だ。
対して地元であるさやかは、慣れた足取りで晴也の右手をとると、少しだけ指を絡めて引っぱっていく。
最初に晴也とさやかが向かったのは、金沢のシンボルでもある兼六園。
新緑が鮮やかな庭園を歩きながら、静かな池のほとりで足を止める。
さやか「東京の賑やかな街並みは私も好きですけど、たまにはこういう落ち着いた場所もいいでしょう?」
晴也「うん、すごく綺麗な場所だな。緊張感が嘘みたいに抜けていくよ」
さやか「ふふ、よかったです。世界大会が始まったらまた怒涛の毎日になるんですから、今日くらいはしっかり羽を伸ばさなきゃですね♡」
彼女はそう言って笑うと、
さやか「ほら、並んでください!」
と、さやかは片腕を晴也の腕に絡める形で二人で写真を撮った。
世界を見据える日本の高校生トップアスリート同士だけど、こうして隣に並ぶと、普通の高校生カップルな気がして胸が温かくなる。
次は兼六園を抜けて、歴史を感じるたたずまいのひがし茶屋街へ。
石畳の風情ある街並みを二人で歩いていると、甘い香りに誘われて足が止まった。
金沢名物の、金澤烏鶏庵の金箔ソフトクリームをひとつ買い、ベンチに腰掛けて分け合うことにした。
さやか「一口食べます?」
晴也「ありがと。……前も食ったことはあるけど慣れないなやっぱり……」
さやか「金沢の誇りなんですから! でも、晴也くんのプレーもこの金箔くらい華やかでしたよ? 決勝のとき////」
晴也「……急にサッカーの話混ぜるのズルくない?」
不意打ちの褒め言葉に照れる晴也を見て、さやかは満足そうに、
さやか「事実ですから」
と、笑う。
激しい練習で鍛え上げた身体の疲れが、冷たくて甘いソフトクリームと彼女の言葉でじんわり溶けていくようだ。
最後に向かったのは、さやかが「どうしても夕方に見せたい」と言っていた金沢21世紀美術館。
ガラス張りの斬新な建物の中に入り、有名な『スイミング・プール』を上から見下ろす。
上からも下からも人が見え合う不思議な空間に、晴也とさやかは思わず童心に帰って顔を見合わせた。
館内を巡ったあと、芝生のある庭に出て、二人で夕暮れ空を見上げる。
オレンジ色と紫色が混ざり合う金沢の空は、言葉を失うほど美しかった。
晴也「……ありがとね、今日案内してくれて。もう知ってるつもりだったけど、改めて金沢、すごく良い街だな……」
さやか「良かったです♪ 晴也くんに、私の大好きな地元を好きになってもらえてよかったです」
さやかは晴也の方に向き直ると、繋いでいた手にキュッと力を込めた。
夕日に照らされたその瞳には、すでに未来を見据える強い光が宿っている。
さやか「日本一になれたのは、間違いなくみんなで走ってきたから。でも、世界の壁はもっと高くて厚い。……オフが終わったら、また容赦なく自分を追い込む練習ですね……」
晴也「ですね。さやか……、絶対世界を獲ろうな!」
さやか「当たり前です! 私たちなら、どこまでも行けます!」
美術館で綺麗な夕焼けを眺めたあと、晴也たちはそのままさやかの実家へと向かった。
― 村野家 ―
晴也「お邪魔します……!」
晴也が緊張しながら玄関をくぐると、さやかの家族があたたかく迎えてくれた。
つかさ「晴也くん、ようこそ村野家へ! この間も言ったけど改めて全国優勝おめでとう〜! あの時スタジアムで観てたけど、晴也くんもさやかも、みんなもすごかったね〜」
前も会ったが、相変わらずおおらかな性格のさやかのお姉さん―――つかささんが笑顔で出迎えてくれて、一気に場が和らむ。
リビングに通されると、お母さんも……。
さやか母「本当によく来てくれたわね。サッカー部ではさやかはどんな感じ? さやかのことだから心配はしてないけど……」
と笑いながら、つかささんとお母さんで作ったらしい豪華な加賀料理を、次々とテーブルに並べてくれた。
食事中は、つかささんとお母さんから晴也とさやかに矢継ぎ早に質問が飛んできた。
つかさ「ねえ、さやか? 決勝のあの晴也くんへのラストパス、あれ狙ってたの?」
さやか母「うちの娘、部活のときどんな感じなの? 昔からしっかりしてる子だったけど、変に負けず嫌いな所あるから」
さやか「ちょっと、お母さん余計なこと言わないでよ!」
さやかが照れくさそうに反論する声と、さやかの家族のの明るい笑い声がリビングに響く。
普段の過酷な練習やプレッシャーが嘘のように、心がじんわりと温かくなる時間だった。
さやか「じゃあ、私先にお風呂もらってきますね。お父さん、変なこと聞かないでよ?」
食事が一段落した頃、さやかが晴也と自分のお父さんを交互に牽制するような視線を向けながらお風呂場へ向かった。
残されたリビングには―――、晴也とさやかのお父さん。
一瞬、心地よい静寂が流れる。
お父さんは前回の全国大会での晴也のプレーや姿勢を見て、晴也とさやかの交際を(一応)認めてくれてはいるものの、やっぱり娘を想う父親としての威厳と静かな迫力があった。
お父さんは手元のお猪口にトクトクと日本酒を注ぐと、晴也の前に置かれた湯呑みをじっと見つめた。
さやか父「……飲むか」
晴也「あ、はい! いただきます」
晴也は慌てて湯呑みを両手で持ち上げる。
お父さんは静かな手つきで、急須から晴也の湯飲みに温かいお茶を注いでくれた。
高校生の晴也はお茶。
お父さんは日本酒。
酒器と湯呑みがカチャンと小さく音を立てて触れ合う。
男同士の盃を酌み交わす瞬間だった。
さやか父「……世界大会が控えてるそうだね」
お父さんが一口酒を口に含み、ぽつりと切り出した。
晴也「はい。まだ代表は確定してませんが、次は『高校サッカー世界大会』です。日本代表として、絶対に世界一を獲りに行きます」
まっすぐに目を見て答えると、お父さんは一瞬だけ驚いたように目を丸くし、それからフッと口元を緩めた。
さやか「そうか。……さやかはしっかりしてるが、実は人一倍負けん気が強くて、昔から自分の決めた道を突っ走るような子だ。だが、晴也くんと出会ってからのさやかの顔は、今までで一番生き生きしている」
お父さんは手元のお猪口を転がしながら、静かな、でも深い声で続ける。
さやか父「全国で優勝したときの晴也くんのプレー、見事だったよ。さやかを隣で支えてくれて、ありがとう」
晴也「……! いえ、俺の方こそ、さやか先輩に何度も助けられて……」
さやか父「わかっているさ……」
お父さんはそう言って、もう一度晴也の湯呑みにお茶を注ぎ足してくれた。
さやか父「男同士の約束だ。世界大会、しっかり戦ってきなさい。それと……これからもさやかのことを頼むよ」
晴也「はい……! 絶対に世界を獲って、さやか先輩と一緒に笑顔で帰ってきます!」
熱いお茶を飲み干すと、身体の芯から温かさが広がっていくのが分かった。
―――すると、お風呂から上がってきたさやかが、
さやか「ちょっと! お父さん変な圧かけてないですか!?」
と、慌ててリビングに戻ってきたさやか。
晴也とお父さんが穏やかに笑い合いながらお茶と酒を飲んでいる姿を見て、さやかは少し驚いたあと、ほっとしたように嬉しそうに微笑んだ。
金沢の夜は静かに更けていく―――。
世界へと挑もうという晴也の背中を押し、守るべき大切なものが、また一つ……増えた気がした―――。
― つづく ―
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もしも本家ヴィクトリーロードの世界大会編のゲームがあんまり遅くなるようだったら、ブルーロックのUー20ワールドカップ編を軸に書いても良い?
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