拾ったコーディネーターと生きる転生C.E.   作:yatagesi

12 / 42
7.2

シルヴィ SIDE

 

フランス プレティニー・シェル・オルジュ旧空軍基地

早い夕食を終え、シルヴィはアランの腕にくっつきながら部屋への帰路についていた。

 

「マスター、おいしかったです」

「そうだな、立派な福利厚生だ」

 

余程おいしかったのか、シルヴィは何度もおいしかったという、最も外に出れないという状況もあるのだから、仕方ない部分もある。

 

「シルヴィ、俺はこの後基地のお偉方と話してくるから」

「マスター…了解しました」

 

シルヴィはこの後も主であるアランと一緒にいたかったのだが、仕事では仕方がない。

腕から離れ、シルヴィは与えられていた自室へと入っていった。

 

「…」

 

シルヴィに与えられた部屋には彼女らしさはない、だがおかしなことはなかったりする、ここは一時的に借りてるホテルの一室も同じだからだ。

 

「シルヴィが、もっと強かったら」

 

ベッドに座り、シルヴィは考える、自分がもっと役に立つ存在ならと。

彼女は元は愛玩用として作られた、幼少期からの教育で主の役に立つことが一番であり、幸福であると刷り込まれていた。

アランと出会った後修正が行われたが、やはり主であるアランの役に立ちたいという気持ちは強かった。

 

「わかってます、シルヴィがいるべきでないというのは」

 

お偉方との会話というのは、1パイロットが知らなくていいというのもある。

アランは正規の軍人ではないが、指揮官として必要な教育をマイスター社から受けている、船を持ち込んでマイスター社に入ったことからこの待遇を受けていた。

まず指揮官がしって、そのあとパイロットに降りてくる、それでいい。

わかってはいるが、シルヴィは若くそれを飲み込み切れなかった。

 

「…」

 

ベッドにあおむけになり、天井を見つめる。

その姿は悩みを持つ、年相応の少女であった。

そんな時、基地全体を震わせるサイレンが鳴り響く、シルヴィはベッドから飛び起き外に出る。

外にはマイスター社の同僚たちが走り回っていて、その一人に声を掛ける。

 

「何が起こりました?」

「シャルル・ドゴール空港とパリ=オルリー空港がテロの標的になった、自動車爆弾にテロリストと銃撃戦だそうだ、ここもすぐに狙われるぞ!」

「!」

 

シャルル・ドゴール空港もパリ=オルリー空港もパリを代表する空港であるが、この戦争が始まってから連合軍が駐屯しており、兵站拠点として使われていた。

これを狙ったのなら単なるテロではなく、プラントの思惑があるということになる。

 

「マスターが危ない」

「おい、ヘルメットとボディーアーマーを」

「シルヴィはパイロットです!」

 

シルヴィは格納庫へと急ぐ、この基地にはMSが配備されている、それを使えばマスターを守れる。

彼女はそれがわかっている、格納庫への時間がいつもよりも長く感じられた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ドゴール空港とオルリー空港の連合軍区域がイスラム過激派により攻撃された!」

「こっちも来るぞ!」

「テルエルの報復かなにかか?」

 

いきなりの攻撃だが、プラントとしてもここらでマイスター社に釘を刺しに来たか?

とにかくこっちも迎撃しないとな、格納庫が近くて助かった。

 

「アラン・スミシーだ!戦闘ヘリで出る!」

「ご武運を!」

 

いつもはクナに操縦してもらってたが、これは一人でも飛ばせるからな、相手は自動車爆弾が最大火力のはず、あれはMSを破壊できるからな、そりゃ連合も量産機のつま先に12.7㎜搭載するよな。

とりあえず飛び上がって、いろいろ確認を取らないとな。

 

「こちらイエローポニー1、管制官、IFFのないトラックは破壊していいか?」

『こちら管制官、破壊を許可する』

「イエローポニー1了解」

 

マイスター社のトラックは全部IFF積んでるんだよな、こういう時は同士討ちしなくて済むからいいんだが。

他のヘリも上がってるが、連携取れてるからこの基地が拠点の連中だな。

 

『こちらストーム隊、北側の哨戒にあたる』

『こちらゼファー隊、南側の哨戒にあたる』

『こちら管制、イエローポニー1は基地上空を旋回し警戒せよ』

「イエローポニー1了解、まぁ1機だけだからな」

 

おなじモルゲンレーテ製戦闘ヘリでもこの基地所属の小隊と飛び込みの1機じゃ重要度が違う。

基地にはザウートがいるしドローンもあるから、俺の出番はあまりなしってことか。

 

『こちらイエローポニー2、防御に参加します』

「なっ…ワークスジンで出たのかシルヴィ!」

『迎撃の支援はできます、マスター』

「ザウートでも対処できるかなのに」

 

シルヴィがワークスジンで出撃してくるとは、両方5本指のトリコロールカラーで塗られているが。

出てきてしまったのじゃしゃあない、あまり離れられないが。

 

『こちら管制室、西から不審なトラックが接近、ゼファー隊は迎撃に当たれ!』

『こちらストーム隊、北西からも来てる、迎撃にあたる!』

 

一機に無線があわただしくなる、西日を利用して基地への自爆を狙っているのか、それとも違うのかはわからないが、不審なトラックに対処する、連合軍は…自分たちの事で手一杯だろうな。

 

『こちらゼファー1、車列から発砲、交戦状態に入った』

『こちらストーム1、同じく交戦開始!』

「始まったぞ!」

『マスター、東から車列』

「シルヴィは動くなよ、こちらイエローポニー1、東からの車列に対処する!」

 

チャンネルを切り替え管制官に伝えてから向かう、ザウートに誤射されたらたまったもんじゃない。

少し飛べば畑を突っ切るトラックとオフロードカーやピックアップトラックが数台、こっちに向けて歓迎の鉛玉を撃ってくれてる。

よしよし、心置きなく攻撃できる。

 

「撃ってきたんだ、覚悟はできてるんだよな!」

 

ヘリの機銃で爆薬を満載してるだろうトラックを攻撃すれば、派手に爆発する。

他の車も撃ってくるが、こちらにも鉛玉をプレゼントする、装甲化されてないオフロードカーは瞬く間にハチの巣になる。

市街地がある西側とちがって、こちらは開けてる、ならば。

 

「ザウート隊に座標を送る場所は」

『こっちには電子的に届いている、素人の口頭説明不要だ』

「ありがたい、派手に頼む!」

 

いろいろ機械化省力化してる恩恵だなこれは、座標を口頭で伝えなくていいのは、データリンクの映像で読み上げるのは向こうの人員だ。

基地から砲声が響くと、迫りくるトラック達を吹き飛ばす、これぞ砲兵、戦場の女神ってことか。

 

『こちらゼファー1、爆弾トラックを破壊!』

『こちらストーム1、警察組織の支援を得て撃退しつつあり!』

「どこも優勢だな」

 

これなら勝てるだろうな、しかしこうなると本命はどこだ?

 

「ん?」

 

市街地の方で何か立ち上がって…って!

 

「管制室!西の市街地にザウート!」

『何!?』

 

立ち上がったあのザウート、大砲はないけどバルルス改をもってやがる!

構えてるが、今から向かっても間に合わねぇ!

 

『こちら管制室、ザウートが1機やられた!』

「シルヴィ!援護に来てくれ!」

『マスター、了解!』

「管制室、イエローポニーが対処にあたる!」

『こちら管制室了解!』

 

クソッたれ!ザウートはタンクモードだと全高が下がるから潜んでいやがったか!

しかも市街地にはうかつに砲撃できない!どこの考えだくそったれ!

 

「敵ザウートはリス市街地にいると思われる!現地警察の支援は得れるか?」

『問題ない、リス市街地からソレイユ高速道路に侵入!』

「よし、時間稼ぎはできるか」

 

タンクモードのザウートが全力で走るのは舗装路の方がいいからな、橋の手前で人型に戻って飛び越してまたタンクって具合か。

 

「バルルス改は、そう何度も撃てないだろな!」

 

東に疾走するザウートの頭部狙いで機銃を叩き込む、イマイチ効いてないようだがこっちに向いた、2連副砲つきだが、甘い!

 

「ヘリはMSの天敵なんだよ!」

 

機体を降下させて建物すれすれで飛んで右側に回り込む、ロケット弾を撃ちこむなら今しかない。

引き金を引いて、これで!

 

「バルルス改は破壊したぞ!」

 

これでいい、この戦闘ヘリでザウートの破壊は難しい、それに、その必要はない。

人型になってこちらを空いた右腕でつかみに来たが、甘いね。

 

「狩る時が、一番危ないんだよ」

『マスター、ご無事ですか?』

 

後ろから来たシルヴィのワークスジンの重斬刀で一突き、爆発させないでの制圧、見事だぞ。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

シルヴィ SIDE

 

ザウートに背後から迫り、重斬刀で貫き無力化する。

引き抜くと、オイルを垂らしながらザウートは横たえた。

 

『シルヴィ、よくやった』

「マスター…」

 

シルヴィは主の無事が何よりだった、その目には涙も浮かんでいた。

 

『シルヴィ?」

「どうして、無茶を」

『どうしてって、俺以外他に向かえるのが』

「わかってます、ですが!」

 

シルヴィはアランがいなくなることは想像できない、それほどまでに恐ろしい。

戦闘ヘリでMSに勝つには、相当な技量と運が必要、勝てる見込みは薄い。

 

『落ち着け、お前が来るとわかってたんだ、ヘリの直線運動さえ控えれば』

「そういう問題じゃ」

『わかったよ、すまなかった』

「マスター」

 

今回は間に合った、しかし次はどうなるか、シルヴィとしてはアランには無茶をしてほしくない、そのための自分のはずなのに。

 

『お説教はあとで受ける、それより基地に戻るぞ、このザウートだけとは思えない』

「…了解」

 

シルヴィはアランのヘリに先導され、基地へと戻る。

信頼されているのはうれしい、謝ってくれたのはうれしい、それでも。

 

「マスターは、マスターなんですよ」

 

マスターだから、シルヴィはそう呟くしかなかった。

 

この日、プレティニー・シェル・オルジュ旧空軍基地を襲ったイスラム過激派のテロリストと3機のザウートはマイスター社により撃退された。

3方向に潜んでいたザウートはそれぞれ基地から出撃したマイスター社のヘリとMSの連携により撃破された。

被害はヘリ数機の破損とザウート2機の損失、とある組織がこのテロの首謀者だと声明を出したが、真相は不明であった。

一般公開しても

  • いいんじゃない?
  • チラシの裏がテメェの居場所だ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。