拾ったコーディネーターと生きる転生C.E. 作:yatagesi
世界大戦になれば、貨物船の需要は増大する。
昔なら海を越えて大量の物資を運べることから、戦略目標として狙われていた。
今次大戦では地球上だけでなく、宇宙も戦場になったが、地球上ほど宇宙での需要はない。
理由は単純、L4コロニー群が壊滅したので、貨物船の全体需要も減ったから。
結ぶ港の数が減れば、襲われる船も減る、なので、地球よりはない。
とはいっても、あるにはあるわけで。
「アルカナ級、不思議な形です、マスター」
「あまり見ない形です」
「上下逆だからな」
ラウンドテーブルのコロニー群まで戻ってきたが、休む暇もなくプラントに引き渡す貨物船の護衛の仕事が回ってきた。
最前線での仕事に比べたら楽で安全だから、半分休暇みたいなもんだ。
「アルカナ級自体は、以前から作っていたんですよ」
「そうなのですか?」
「マルセイユⅢ世級にセールスで負けてしまいましたが」
ソキウスの言う通りなんだよな、うん。
今護衛してるのはオリジンで出てきたアルカナ級貨物船とそっくりな奴なんだが、大量生産されたマルセイユⅢ世級の方が速力以外すべて勝ってて、ぼろ負けしたんだよな。
船は詰める量が大事だから、速力あってもあまり多くないアルカナ級は、そこまで需要がなかったってこと。
戦時でなければ、プラントが買うこともなかったろうな。
「マスター、プラントは貨物船を作らないのですか?」
「ドックが限られてるんだ、余裕がないんだろ」
今のプラントは軍艦建造にその修理で手一杯だろう、輸送船にドックを割り当てる余裕がないくらいに。
記憶の中でもザフト軍はシャトルと地球に物資を下ろすための潜水艦くらいしか、輸送目的の艦船の類がないし。
「ドックの数には限りがありますからね」
「整備と修理でも使うです」
「ドックが足りないから、船を買った」
「そう言うことだな」
アルカナ級は売れ残りがストックボートだったようだしな、ラウンドテーブル社としてはちょうどいい在庫処分なんだろうな。
「8番船、到着しました」
「では、出発だな」
貨物船とはいえ8隻も率いるのは、なんというか気分がいい。
「ところで、どこまで護衛するのですか?」
「トロヤ群の端だな」
あそこらへんは有名なのはD.S.S.Dのステーションくらいしかない、ど辺境の中立地帯だからな。
この手の受け渡しには、ちょうどいいんだろう。
「行って、帰るだけ?」
「そうだな」
「そのあとは?」
「長期休暇はもらえるだろうな」
「そうなのですか?」
「確定はしていませんが」
「地球行の話もあるがな」
まぁ、ブランリヴァルを地球に下ろして、宇宙に戻るの一連の流れをどこかでしないといけないが、今すぐってわけじゃないし。
その前に休暇は取らないとだしな、ニア・ルールで船の整備も必要だし。
「どうなるかはわからんが、近いうちに長期の休暇を」
「休暇、楽しみです」
シルヴィの中だと、休暇は確定みたいだな。
こりゃ、取らないわけにはいかないな。
ーーーーーーーーーー
トロヤ群、宇宙開発の最前線にして、辺境である。
戦略的価値のなさと、D.S.S.Dのステーションを始めとする技術開発拠点による価値の高さで、戦争とは無縁の地域だ。
今回は船の引き渡しのために、ここまで来たんだが。
「ステーションアヴァロン、ステーションアヴァロン応答してください」
「クナ、返答は?」
「ないです」
船の引き渡し先なんだが、応答なしとは。
「見た感じ、外部に異常はないようだが」
「気密が破れて全滅の可能性がありますが」
よくある話だけど、外からじゃわからん。
「マスター、見に行きましょうか?」
「危険すぎるからダメだ」
内部調査には、MSから降りないといけないしな。
気密が破れてるだけならいいが、それ以外だとまずい。
「…船団は待機、ブランリヴァルで接近する」
「マスター、MSは?」
「出れるように待機」
「了解です、マスター」
「危険では?」
「ランチやMS単独よりはましだろ」
「それもそうですが」
ソキウスの懸念もわかるけど、他に手はないしな。
「主要区画以外はすべて真空にする、クナ、武装はいつでも撃てるようにしてくれ」
「了解です」
ソキウスの考える最悪に備えるには、必要なこと。外れていてほしいのだが。
「レーダーに反応はないか、ステーションの裏はわからん」
「僕もMSに」
「頼みたいが、クナ、万が一の時は対応できるか?」
「対空機銃群は自動化してるですから」
「なら」
「ステーションの影から船です!」
行ってもらう前にお出ましか、どこのどいつだいったい。
「照合…ローラシア級が複数です!」
「シルヴィ、出撃して」
「さらにMS!」
相手の待ち伏せか、でもこの距離なら出撃する余裕はっ!?
「うおっ!なんだ?」
「左舷格納庫ハッチに被弾、狙撃です!」
「貫通したのか?」
「弾いてますです!」
狙撃って、まずいな。
発艦中を狙われたら、いやMS用の狙撃銃って威力があれだったよな?いや古い記憶は当てにできん!
「敵MSの接近速度、データ予測よりも早いです!」
「機種は?」
「ジンです!」
「スラスター強化されてんのか?相手はたぶん傭兵だろ」
ザフトがプラントの拠点を襲うわけないし、俺たちはプラントとの取引で来てるわけだし。
なら傭兵なんだろうが、にしてはやけに装備がいい、というか貨物船を狙いに行かないあたり、俺達狙いってわけか。
「ミサイルとゴッドフリートで迎撃!」
「はいです!」
「敵は12機、傭兵にしては多い、全機向かってくる」
「恨みを買いまくってるし、オーブが金出してんのか?」
「アランさん、根拠なく言わないでください」
「なくはない、俺達が一番を恨みを買ってる相手だし、あの足の速いジンもオーブでならできる」
「…発泡金属装甲」
「アスハ家の親族も相手してるしな」
ザフトの策ならステーションに貨物船と失う物が多い、連合や海賊なら俺達よりも貨物船を積極的に狙う。
そうなるとこれだけの傭兵を集められるのはオーブ位だ、アスハ家親族の件もあるし、あれが連合かザフトどちらかとの関係改善につながる行為だったのなら、国益にだって影響を出してる。
モルゲンレーテはジンを作れたし、発泡金属で軽量化したなら同じスラスターでも素早くなる。
まったく、厄介な相手の恨みを買っちまったな!
『マスター、出撃許可を』
「今出ればハチの巣だぞ!」
狙撃されてる状況で出せるか、相手の数を減らさないとなぶられるしな。
「左舷よりジン接近です!」
「弾幕展開、こっちでも抵抗はする」
と言っても蛇行したりローリングしたりとかだがな、やんないよりましだ!
「ソキウスも、MSへ」
「策は?」
「あるにはある、この艦の出入り口は?」
「了解した、シルヴィさんにも伝えます」
「頼む」
やることはシンプルだが、時間がかかるからな。
「ビーム接近!」
「バルルス改持ちか!」
流石にビーム兵器は避けれんぞ!
「被害は!?」
「ラミネート装甲により、無傷です!」
「そうか、便利だな」
メンテナンスコストの関係で連合もザフトも主力艦艇には採用してない代物だが、積んでたのかブランリヴァル、バルルス改程度なら無傷か。
「当たらんでもいい、ゴッドフリートてぇ!」
「はいです!」
命中しなくても、散らせればいい。
何よりこっちは動きながらだからな、対空機銃に絡め捕られてる間抜けはいるが、基本当てられるわけがねぇ。
「右舷側艦橋基部に被弾!」
「狙撃の方が痛いな畜生!」
「貫通しましたが損害は軽微です!」
「ワイルドキャットカートリッジでも使ってんのか?」
銃が同じなら、弄れる部分は限られてる、弾と銃身だ。
人間なら市販の銃弾を改造して、目的に合わせたワイルドキャットカートリッジがあるが、まさかMSでやるやつがいるとはな。
『マスター用意ができました』
『いつでも行けます』
二人の準備が終わったか、よし、反撃開始だ!
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傭兵SIDE
『敵艦、MSを出撃させません』
「ハッチを狙撃し続けてるからな、Bチームはその場で狙撃を継続せよ」
『イエッサー』
「これだけ当てても貫通はまだか」
狙撃ライフルを撃ちながら、狙撃隊の隊長はそう呟く。
バレルと銃弾を特注して臨んだ仕事だったが、さすがの新造艦、命中はすれど貫通はほとんどしてない。
『リンクスのじじぃ!ヒドラ隊のバルルス改が効いてねぇ、てかやられてる、アタシに突っ込ませろ!』
「はやるな暴牛、年ごろのレディーなら落ち着きを持ちたまえ」
『うるせぇジジィ!』
暴牛と呼ばれた女は文句を言うが、男は無視する。
元より傭兵の集まり、連携も関係も気迫である。
「今動いても蜂の巣、それでもいいなら」
『ちっ、わかったよ』
暴牛はしたがったが、ロールや蛇行を繰り返す敵艦に目立った損傷を与えられていないのは事実。
「機銃を潰せればよいのだが」
敵の弾幕は厚く、不用意に接近できない。
バズーカがあったとしても、被弾覚悟で接近せねば、撃ち落とされるだろう。
それを予見して、バルルス改が獲物の連中を連れてきたのだが、ラミネート装甲は想定外であった。
「しかし、成果無しでは終われぬ」
男は位置を変え、敵艦の右舷ゴットフリートに、弾丸を撃ち込む。
装甲の薄い場所を貫かれ、砲口から火線ではなく爆炎が吐き出される。
「言い訳はできるな」
主砲を一つ破壊しただけだが、何もなしよりはいい。
左舷のゴットフリートもつぶしに動こうとした時、敵艦が全身を煙幕で包み込む。
「目くらましか、だが動きは予想できる」
いくら煙幕で視線を切っても、あの図体では意味がない。
「Bチーム狙撃続行、MSを出させるな」
貫通できなくても、開けたらMSが撃たれたら最後の状況なら、出すことはない。
こちらも狙撃を続ければいい、そう思ったその時であった。
「アラート、ちぃ!」
鳴り響くアラートに反応し、機体を横滑りさせる。
直後、曳光弾が先ほどまでいた場所を通り抜ける。
「発進されたか」
煙幕で見えないが、艦の後方かあたりから発艦したであろう、シグーとジンが飛び出してくる。
男は部下と共に距離を取るが、バルルス改を持ったジンの1機が反応しきれず、撃墜される。
「ケインズ、アストン、ランダム回避で距離を」
「イエッサー!」
スナイパーが接近戦ができないわけではないが、避けるに越したことはない。
そういうのは、できる奴に任せるに限る。
「暴牛、出番だ!」
『待ちくたびれたぞ!』
男の合図に、頭部に牛のような角をつけ、胸部はアサルトシュラウドのアーマーを装備したジンが、重斬斧を持ってシグーに突撃する。
敵のジンが反応するが、それは男の部下たちが狙撃で足止めする。
『つぶれちまいな!』
暴牛は重斬斧を振り下ろすも、シグーのシールドに防がれる。
だがその振り下ろした勢いを生かし、彼女はシグーに左足の踵落としを繰り出す。
『何ぃ!』
迫る踵落としに、シグーはライフルを至近距離で発砲する。
至近距離での発砲の為、ライフルは暴発するも、暴牛の左足を膝から吹き飛ばす。
シグーはシールドからナイフを取り出すと、立て直せていない暴牛に切りかかる。
「下がれ暴牛!」
男はシグーのナイフを持つ右腕を狙撃する、狙いを十分に定めず放たれた弾丸はかすりはしたが、阻止はできなかったが。
放たれた一閃は、暴牛の追加装甲を切り裂くも、本体を傷つけるまでには至らなかった。
『足をやられただけだ!』
「撤退だ」
『ふざけんな!出番が遅かったのにやられっぱなしで!』
「ヒドラ隊は半壊し君も片足がない、後は損失だけだ」
ヒドラ隊は2機撃墜され、暴牛も片足、にもかかわらず相手の2機はピンピンしている。
いくらMSは提供品とはいえ、撃墜できても受ける被害で赤字になる。
「ザフトが来る可能性も高くなる、続け!」
『クソッ!』
八つ当たりの音が聞こえたが、それでも彼女は男に従った。
男も部下をまとめて、撤退した。
ーーーーーーーーーー
『敵MS、撤退』
「諦めてくれたか」
『シルヴィさんが吹き飛ばした敵機の脚、回収しておきます』
「証拠品だからな」
後部ハッチが寝かしたMSをだせるだけのサイズで助かった、メインは前足だから、出すのに時間が掛かったが。
「損害は?」
「右舷に貫通多数、両格納庫も気密維持不可能です」
「…報告ありがとう」
「真空でなければ被害は増えてたです」
敵の弾、徹甲榴弾の一種だったのか、熱と破片で被害を出すタイプだったからな。
空気あったら被弾箇所に加えて、気圧差での被害も追加だったな。
「ザフト艦接近中」
「ステーションの救援か」
向こうも連絡取れなくなってただろうし、見には来るよな。
「こちらの素性を伝えてくれ、それと船団に合流指示を」
「了解です」
ここで誤認されたらまずいからな、まぁプラントの仕事だから大丈夫だと思うが。
「返信、護衛ご苦労、後は引き継ぐ、です」
「そうか、ニア・ルールへ向かう」
損傷の全体像が分からんが、ドック入りさせないとな。
修理費用、いくらになるやら。