拾ったコーディネーターと生きる転生C.E. 作:yatagesi
PMSC、いわゆる傭兵であるマイスター社の業務は、表に出せる物ばかりじゃない。
薄暗い闇の世界の仕事も、存在している。
「ヘリオポリスへスパイ?」
「その支援、上から直々でな」
「マスター、あそこはオーブの」
「中立コロニーです」
ソキウスも引いてるな、まぁ中立国オーブのコロニーだし、そうなるよな。
「中立だからこそ、知りたがる連中がいるんだろ」
「ですが僕たちは」
「オーブから恨まれていますが」
「危険すぎるです」
それはそうだが、気にしすぎてもな。
ヘリオポリスで襲ってくるほど、考え無しではないと思うが。
まぁ原作知ってると、リスクはあるよねこれ。
まさかフレームアストレイが闇討ちしてくることは、無いと思いたいが。
「まぁ、俺たちの仕事は、スパイをヘリオポリスに入れることだ」
「アランさん、言うは易くですが」
「上も俺達が素人なのは理解してるさ」
「マスター、策が?」
「まぁな」
あるはあるけど、やり方をこっちに投げるとはなんだかなぁ。
まぁ、俺が転生者ってことを知ってるご令嬢あたりが、確認のために回してきたのかもな。
「必要なものは、用意してもらえるからな」
「そこはありがたいですが」
「ソキウス、本社に中古の貨物艇、ブランリヴァルに詰めるサイズで1隻、それとワークローダーを」
「利用目的を伝えなくてよろしいですか?」
「向こうもこの内容でわかるだろ、伝えるのは聞かれてからだが」
ここまで言えばわかると思うが、わかるよね?
あとはこっちで用意できるものを。
「シャン主任」
『なにアルカ?今ジンの組み立てで忙しいアル』
「メビウス拾ってたよな?」
『たくさんアルヨ』
「2機分組み立ててくれ」
『急ぎカ?急ぎでなかったらスパナで』
「仕事で使うんだ」
『……まぁ、組み立てはするアル』
「頼む」
厳しいスケジュールになるからな、まぁ、またお願いされるだろうな。
「マスター、メビウスですか?」
「MS使うと脚つくかもしれないからな」
まぁやることがやることだからな、こっちの方が都合がいいんだよ。
ーーーーーーーーーー
シルヴィSIDE
いつものMSではなく、慣れないメビウスのコクピットにシルヴィは座っていた。
L3宙域にあるデブリ地帯、それに紛れて2機のメビウスが息をひそめている。
『シルヴィさん、慣れましたか?』
「ソキウス様、はい、どうにか」
『今回は簡単ですから、無理はしなくていいですよね』
「了解」
連合出身のソキウスはメビウスに慣れているが、軍歴無しでMSに乗っている彼女にとって、メビウスは関わりの薄い機体だった。
この日までにシミュレーターと実機での訓練はしたが、MSのように手足のようにとはいかなかった。
『二人とも、間も無く対象がくる、手筈通りにな』
「了解、マスター」
レーダーを確認し、目標を細くする。
トラックをそのまま宇宙船にしたような、そんな小さな船が目標だった。
『後ろに続いてくださいね』
「了解」
ソキウスに続き、彼女も目標へ向かう。
相手はこちらに気づき、加速して逃れようとする。
だが、旧式の貨物船が逃げられるほどに、このメビウスのエンジンは古くもなければ、おざなりな整備はされていなかった。
『目標捕捉、攻撃開始、わかっていますね?』
「わかっています」
2機のメビウスは、目標の上方、斜め後ろから襲い掛かる。
相手も閃光弾を撃ちあげて、相手の視界を奪うことで抵抗する。
ホワイトアウトしたモニターでは、引き金を引くことができない。
「攻撃失敗」
『旋回後、下から突き上げます』
貨物船の脇を通り抜け、離れてから旋回し後方へ、今度は下から仕掛ける。
狙いを定めリニアガンを撃つも、ソキウスの弾は跳弾し、シルヴィに至っては命中しなかった。
『効果なし、再攻撃を』
「レーダーに新たな反応」
『識別は?』
「オーブ」
『ようやくですか』
宇宙船の進行方向から、複数の機影が迫る。
それはヘリオポリス防衛所属の、ミストラルだった。
性能はメビウスの方が上だが、数では負けている。
『後ろに付かれたらバレルロールを』
「了解」
ミストラルに後ろを取られても、アンバックが使えるメビウスはロールして押し出すことができる。
ただ、数の差から押し出した相手に一撃を加える前に、別のミストラルが攻撃位置について妨害する。
『どうしようもありません、撤退します』
「了解」
多勢に無勢、撤退を決定すると、二人はすぐに離脱する。
ミストラル隊も、役目は果たしたのだから無理に追撃はしなかった。
ある程度離れたところで、シルヴィはヘルメットを外していたところで、通信が入る。
『二人とも、お疲れ様』
「沈めるふり、難しいです、マスター」
今回、ハナから宇宙船を沈めるつもりはなかった、なぜなら。
『スパイを送り込むためだから、間違えて沈めなくてよかった』
「必要でしたか?」
『騒ぎを起こした方が、審査もゆるくなるからな』
今回の宇宙船を用意したのも、メビウスの襲撃もこちら側、要は自作自演。
目的はスパイを送り込むため、騒ぎが起こればそちらに注意が行き、他がおろそかになるというのは珍しくない。
最初はヘリオポリスの宇宙港を直接攻撃することも考えられたが、無謀すぎたので今回の形になった。
オート操縦に任せて、ジュースを飲んでゆっくりしていると、ソキウスから通信が入る。
『シルヴィさんは、後で追加の操縦訓練を』
「この機体は処分しますし、MSに戻るのですから、不用では?」
『次の機会があるかもしれないので、必要ですよ』
シルヴィはこの後の事を思い、ため息をついた。