「大食いから話は聞いている、てめぇが記憶喪失のガキか」
「は、はい」
リゼさんに指定された場所に向かい待つこと十分、不意に背後から声をかけられた
2mはあるであろう巨体
筋骨隆々のスキンヘッドに身体全体にびっしりと蜘蛛のタトゥーが入った如何にもカタギじゃなさそうな喰種が天内を出迎えた
集合場所も建設作業中のビル群の中であり見渡すとこちらを警戒するように複数の喰種がこちらを視ている
明らかに普通ではない雰囲気、だが人食いである以上、なんとなくそんな気はしていた
「あいつから大体話を聞いているが喰種の癖に喰種を知らないとはな?おいお前のタイプはなんだ?」
「タイプですか?……控えめです」
「赫子のタイプはなんだって聞いたんだよ!!テメェの性格(タイプ)は聞いてねぇ!まさかてめぇ赫子のことも知らねぇのか!?」
「たく、使えねぇ、あの野郎も赫子の説明くらいしとけや!!」
ボスと言われる男は声を荒らげるが説明されていないことは説明されていないので仕方がない
「おい!!」
「はい、ボス」
ボスに呼ばれ先程までこちらを監視していた奥の喰種の三人が前に出てきた
月明かりに照らされその容姿がわかるが全員がいかにも、という雰囲気をかもちだしている
「一度だけ教えてやるガキ」
「これが赫子だ、俺のタイプは甲赫だ、【ガード】なんて呼ばれてもいる、攻撃、防御力に優れてはいるがその性質上接近戦にしか向かない、」
「勿論例外はあるがな」
ボスの右肩から路地裏での喰種と同じように赤い塊が現れ肩から腕に纏わりつきながら形を形成する
例えるなら鋼鉄の巨腕という所か、一見すると甲赫が腕の形を変えたようにみえるが、波打つように蠢くボスの甲赫は流動性に優れており硬く軟かいという性質を持っていた
そう言いボスは含むようににやりと笑う
「こいつの赫子は鱗赫、基本的には再生力、手数に優れた持久型」
部下の男性の背後からタコの触手の良いウナものが現れる
ボスがその一本を引き千切るが、モゾモゾとその断面がもりあがり数秒もたたず元に戻る
「こいつは尾赫、目立った特徴こそないが他のやつより燃費がよくおおよそステータスがいいバランス型」
臀部の部分から尻尾のような赫子が出る、数は三本、そのどれもが細く頼もしさに欠けるが、コンクリートブロックを容易く両断する程度の能力はあるようだ
「そしてこれが羽赫、まぁ見ての通り、遠距離支援に長けた支援型だ、ラビットクラスなら問題ないが実力のない連中じゃ単独なら狩られるのが落ちだ」
翼のようなものが形成されその羽から赫子の塊が射出される
羽は最も喰種によって性能が変わるようで中には治癒の能力を持つタイプもあるらしい
「さぁ、みせてみろてめぇの赫子を」
「いや、見せろと言われても出せないんですが」
「ちょ!?は!?いきなり何するんですか!?」
不意にボスの前蹴りが飛ぶ、腕を交差させ直撃を防ぐが身体が大きく吹き飛ばされ壁に叩きつけられる
「いいか、喰種てのは実力社会だ、弱い奴は死ぬそれだけだ、俺らも雑魚なんてほしかねぇ、死にたくねぇならてめぇの価値を証明してみせろ」
そういい終わりボスは再度甲赫を腕に纏い、まるで爆発したかのような踏み込みで瞬時に距離を潰される
「そんな唐突に!?」
だが呆気にとられている暇はない
(なんて威力だよ!?)
振り上げられた拳を寸でのところで避ける
凄まじい衝撃とともに先程まで自身がいた場所に小さなクレーターができている
まともに食らえば怪我だけでは済まないだろう
「どうした?逃げてばっかじゃいづれ死ぬだけだぞ?かかってこいやぁ!!!」
再度ボスが拳を構えボクシングのようなファイティングポーズをとる
「ごちゃごちゃウルセェ!!」
「だから俺は戦う気なん、、、て」
ボスは天内の静止を無視し、構え、引かれた拳を解放し直前の右ストレートを撃つ
(当たったら死ぬ…)
だが天内は避けない、死への直感、本能、
拳がゆっくりと視える、死の目前、弾丸がゆっくり視える、そんな現象
天内にとっての体感、それは10分の1ほどの速度でゆっくりと拳を捉えていた
ギリギリ、拳が当たる寸前まで引き寄せる
「ぬぅっ!?」
そんな刹那の時、ボスの目からはまるで拳が天内すり抜けるように視えただろう
空を切る拳、伸ばされた肘、前のめりになった体幹
そんな隙だらけのボスの懐に入りこむ、流れるように手首を掴み、肩に己の肘をかけ、拳撃の勢いを殺さないまま流れるように、投げる
「だから、落ち着けって、、、ば!!」
ボスは頭部から身体を大地へと叩きつけられる
ドゴンッというとてつもない衝撃音と土煙が上がる
普通なら、通常の人間であれば死、もしくは昏睡もの
喰種であっても無傷では済まないだろう
「どうした?それで終わりか」
投げたされたボスはゆっくりと目を開き、身体を起こす
脳震盪のような症状はもちろん、その動作はダメージすら一切感じさせない
「はは、あれで立つとかゴリラかよ、、、」
自身にとって常識が通用しない怪物、思わず笑いが漏れる
「記憶喪失てのも哀れなものだな、俺等の特性まで忘れるあては」
ガキンと首を鳴らしながらボスはニヤリと笑う
言葉とは裏腹にどこか楽しそうな、そんな雰囲気を感じた
「人間なら死ぬだろうが、俺等は喰種だ、そして鴉の党首である俺に効くか!!」
ボスが甲赫を展開し、拳を象った赫子が突き刺さる
先程のストレートよりも数段早い一撃に天内はそれをもろに食らい吹き飛び再度壁に叩きつけられた
(やばい、死ぬ)
たった一撃、ボスにとって大した力を込めたわけでもない速度のみを追求したジャブのような一撃
そんなたった一撃で意識が飛びかける
「おい、ちょっと小突いただけだぞ、寝るな」
「がッ、、」
ボスの蹴りが腹部を薙ぎ、身体が飛ぶ、
「起きろ」
再度、三度、蹴りとばされる、、
「………」
地面に伏して動かない天内をボスは無言で頭を掴み強引に立たせる
その顔に先程までの笑みはなくつまらない玩具をみるような表情をしていた
「なら、死ぬか」
ボスは三度赫子を展開する
次は殺す、という意思表示、天内は掠れる視界の中、赫子をジッと視ていた