元コンサル系トレーナーのウマ娘お悩み相談室 作:daidains
アグネスデジタル:超変わり者(オブラート)ウマ娘。最近イラスト・漫画の制作のみならず、二次創作小説の執筆に手を出し始めた。会話時は「デジ」と表記。
どこに需要があるのかわからないけど投稿します。ウマ娘ファンかつ就活生なら見るかもしれない。
トレーナーは自身のトレーナー室でコーヒーを飲んでいた。眠気覚ましとしての役割も兼ねたそれは通常のものよりも苦く、飲み込んだ後も舌に苦みが張り付いてくる。既に何杯目になるか分からないそれを飲み干しながら彼は机に置かれた資料をめくっていく。前職と変わらないくらい、もしかするとそれ以上に激務な日々を送る彼であったがその表情はどこか嬉しそうであった。その理由は彼の手元にあった一枚の紙にある。そこには彼が待ち望んでいた内容が書かれていた。
その紙に書かれているのはあるウマ娘と専属契約を結ぶための条件である。その内容を見たとき、彼の脳裏に浮かんだのは一人の少女の姿だった。
(ようやく……ようやくここまで来た)
彼は感慨深げに心の中で呟く。この契約には彼自身にも大きな意味があった。なぜならこれは彼にとって最後のチャンスでもあったからだ。
現在、彼には多くのチームから誘いの声がかかっていた。その中には重賞レースで一着を多く取っていることで有名なチームやG1で好走したことのある優秀なウマ娘たちがいる名門チームもあった。それらのチームはいずれも彼を自分のチームに迎え入れたいと考えていたのだ。しかし、そんなチームの申し出に対して彼は断り続けていた。理由はただ一つ、彼女と専属契約を結ぶためである。
これまでの人生ではロジカルさをもっぱら重視し、前職でも理屈を積み上げる力を鍛え上げてきた彼であったが、こと彼女を目の前にするとそういった理屈など吹っ飛んでしまい、ただ彼女と共に歩んでいきたいという思いだけが胸中を占めていた。
その時部屋のドアがノックされた。はて、彼女は先ほど帰ったはず。今日はもう来客の予定などないはずだった。不思議に思いながらも「どうぞ」と返事をする。そして「失礼します」と言って入ってきたのは彼女ではなく、ピンク髪の少女――ヤバい方のアグネスとして有名なアイツ――であった。
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デジ:失礼します。
トレ:デジタルじゃないか、いらっしゃい。どうしたの?
デジ:すみません、突然お伺いしてしまって。実はちょっとご相談がありまして。
トレ:相談?レースの相談なら君の直属のトレーナーにアドバイスをもらった方がいいんじゃないかい?
デジ:いえ、レースのことじゃないんです。実は創作活動の方でアドバイスが頂きたくて。
トレ:ふむ?
デジ:はい。私が同人漫画を描いていることはご存じだと思うんですが、実は最近二次創作小説の執筆にも手を出し始めまして。ただあんまり反響がないんです。それをどうにかしたいんです。
トレ:反響を増やしたいの?
デジ:はい、今もコアな方には読んでいただけているんですが……。どうせ書くなら、少しでも多くの人に作品を広げたいんです。そのためにもっと多くの方にアプローチしたいと思うんですが、自分はただ好きなものを描いてきただけなので、広げるための戦略みたいなものに全く詳しくありません。
トレ:それで僕に相談って訳か。
デジ:はい、元コンサルタントだと聞いたもので。そういう分析とかマーケティング戦略は学園の中で多分一番詳しいですよね?
トレ:まあ、そうだね。自分で言うのも恥ずかしいけど。よし、じゃあ少し考えてみようか。幸い時間が空いているからね。
【前提確認】
トレ:まず目標を明らかにしてしまおうか。話を聞く限り「より多くの人に自分の同人小説を広めること」が目標って感じでいい?
デジ:はい。でもただ広めるだけじゃないといいますか、原作の良さを損なうことはないようにしたいです。ただ広めるだけならあちこちで宣伝すればいいだけだと思うんですが、宣伝の度が過ぎるとウザがられてむしろ悪評が立ちかねませんし。
トレ:OK。創作において必要な資質はおおざっぱに①skill(技術)と②mind(やる気、情熱)くらいに分けることができると思うけど、デジタルに関しては②mindの方は問題ないね。この他の構成要素としては「才能」とかもあるかもしれないけど、それは後天的にどうにかできる物じゃないから今回は考えない。だから今回は①skillに注目して、かつskillを「作品を悪評を伴わず広めるために必要な諸技術」と定義して、この内容について考えていくよ。これを改善することが最終目標ね。認識のずれはない?
デジ:大丈夫だと思います。
【問題分析】
トレ:本来マーケティング戦略を考えるときは以下の手順で考えることが多い。
(トレーナーは手元の紙にすらすらと以下の内容を書いた)
1. マーケティング環境分析と市場機会の発見
2. セグメンテーション(市場細分化)
3. ターゲティング(市場の絞り込み)
4. ポジショニング
5. マーケティング・ミックス(4P)
6. マーケティング戦略の実行と評価
トレ:1~3は「おいしい市場」、この場合「同人小説を書いた場合に反響が得られやすい原作・ジャンル」や「同人小説の読者の中でも狙うべき人物像」、みたいなものを明らかにしていく作業だ。そしてその情報を元に4で自分の立ち位置を明らかにし、反響を得るために書くべき小説の内容などを定める。ただこの場合はこの1~4の作業はする必要がないし、むしろするべきじゃない。
デジ:どうしてですか?
トレ:だって仮に僕が1~4の分析をして、それを元に「こういうジャンルでこういう内容をかいたら反響がもらえますよ」って言ったら、書きたいものを我慢して僕が言った通りの内容をデジタルは書いてくれるのかい?
デジ:……いや、反響的にはいいのかもしれないですが、自分の書きたいものと違うものを書くのは嫌ですね。
トレ:でしょ?同人活動は「書きたいものを書く」ことが前提で、仮に最も売れる作品の在り方が別にあったとしても、書きたいものを書けないなら同人活動の意味がない。だから市場、つまりデジタルの書くジャンルや分野を変えるのではなく、デジタルが今いる市場で最大の反響を得られる方法を考えるべきだ。今回はいきなり5の作業、つまり4P分析から始めてしまって、それをもとに打つべき施策を考えて行こう。
デジ:なるほど、わかりました。
トレ:よし、そもそも4PというのはPrice(価格), Place(流通), Product(製品), Promotion(プロモーション)の頭文字を集めたもので、マーケティングにおいてコントロール可能な要素の集合体だ。これらを調整して最大の反響を得ることを狙う。さっきskillの内容を「作品を悪評を伴わず広めるために必要な諸技術」と定義したけど、よりskillの内容を具体化すると、「4Pを操作して最大のマーケティング効果を得る技術」が必要ということになる。
デジ:マーケティング技術だけじゃなくて、作品自体の改善も必要だと思います。
トレ:作品の要素はProductの項に含めて、そこからさらに作品を構成する要素を分解する形にすればいいんじゃないかな。その中で「作品を広める」際に気を付けるべき構成要素をピックアップするという形で作品自体の改善方法を考える。これでおそらくデジタルの不安も漏らすことなく考慮に入れることができると思う。
デジ:なるほど?理解できたような、そうでもないような。
トレ:後で図にしてわかりやすくするよ。一旦具体的な分析に入っていこうか。
デジ:そうですね……例えばPriceに関してはネットで無料公開でもすればよさそうかな、と思います。お金稼ぎが目的じゃありませんし。
トレ:そうだね。あえて高価な製品を作ってブランディングする手法と言うのもあるけど、同人作品において有料の紙の本の購入数がネット上で無料公開された場合の閲覧数を超えることは考えにくい。お金のことを一切考えず「作品を広める」という当初の目的に沿うのなら、そちらの方がいいと思う。
デジ:経験上そもそも紙の本を買う人というのはネットで私の作品を見てファンになってくれた方がほとんどですしね。製本されたものを売っても、元からファンの人にアプローチできるだけで、「より広い層」にアプローチできるわけではないという訳ですか。
トレ:そう!「より広めたい」という今回の目的は、既存読者の深掘りではなく新規読者の開拓が主眼にある。既存/新規のフレームは重要だけど、今回もこのターゲティングだけは意識した方がよさそうかもね。この調子で4Pにおけるその他の要素も分解・具体化してみようか。
(トレーナーは少しの間考えこみ、試行錯誤をした後以下の内容を紙に書いた)
トレ:ここまでの議論をまとめつつ、要素を分解してみた。
デジ:すっきりわかりやすくなりましたね。「作品の要素はProductの項に含める」の意味もよくわかりました。
トレ:こっちの方で「同人小説を構成する要素」を大きい枠から順に①ストーリー②構成③文章・表現④単語、という具合に勝手に決めてしまったけど、書き手として実感と異なるところはない?
デジ:いや、特に。妥当だと思います。
トレ:よし!現状の分析が可視化できたから、これを元にボトルネックを特定していく作業に移るよ!
【ボトルネック特定】
トレ:まず「弄ることができない」か「弄っても効果が薄い」と思われる要素を棄却しよう。Priceに関して「有料公開」するという部分は、新規読者をターゲティングした今回のケースに合わないから考えない。これはさっきも言ったね。そして「Place-リアル」のところにある「コミケ」で流通させるというアイデアもダメ。
デジ:製本する時点でお金がかかっちゃいますからね。学生の私には無料頒布するのは無理ですし、「無料公開」に絞った趣旨とズレちゃいます。
トレ:そうだね。ただこの他の要素は操作することができそうで、打てる施策の幅が案外大きいかもしれない。
デジ:すいません。今気づいたんですが、Promotionの「作品の広まりやすさ」って何ですか?反響が得られやすい原作やジャンルを選ぶことはしない、という前提じゃありませんでしたっけ?
トレ:ああ~ゴメン、これはわかりにくかった。例えばそうだな……同じ原作、同じジャンル、同じレベルの画力のファンイラストでも、バズりやすさは全部同じじゃないだろう?書きたい原作やジャンルを変えない範囲で、こういう「広まりやすさ」を操作できる余地があると思ったんだ。それが何なのか、具体的にはちょっと僕はわからない。小説書いたことないし……。これはデジタルにぜひ生の声を聞かせてほしいな。そういう「広まりやすさ」的な要素に心当たりはない?
デジ:(しばらくの間考えこむ)……いや、考えてみましたけどわかりません。すみません。
トレ:いや、これは僕の質問が抽象的すぎるのが悪い。もっと具体的な例に落とし込んで考えないと不味いよね。今は「作り手」側として「どうすれば作品を広められるか」を考えてしまっているけど、視点を変えて「読み手」側として「読んでみて思わず広めたくなる作品は何か?」という観点で考えてみるのはどうかな。マーケティングの基本は顧客目線になることだし。
デジ:うーん、まだちょっと難しいです。
トレ:よし、ならもっともっと具体化が必要だ。例えばデジタルが二次創作を書くのは、原作を読んでみて、創作したり作品を広めたくなったりするほどの情熱に駆られるからだよね?
デジ:そうですね。もう「たまらん!」って感じのパッションで書いてます。
トレ:そういう二次創作を書きたくなるのはどういう作品かな?
デジ:(しばらく考え込む)……作品に「空白」があることですかね。
トレ:「空白」?
デジ:いい作品って想像力を掻き立てられる作品だと思うんです。書いてない範囲とか、行間をついつい読んでしまって「こういうことかな?」って考えてしまう感じです。そういう想像があると掲示板でついつい語り合ったりしちゃいますね。逆に何から何まで説明されていると、こちらの想像する余地がないといいますか、作品自体で完結していて、新しく語り合ったり考えたりすることがない気がします。
トレ:面白い!確かにデジタルが二次創作を書くのはそういう想像を表現するためだよね。作品で表現するところまでいくことはなくても、掲示板で想像を共有したり感想を語り合ってしまう例のように、空白があるとついつい作品を広めてしまうのかもしれない。
デジ:はい。そもそも二次創作という行為が「原作の空白を利用した想像を元に創作すること」という言い方にできそうですし、私がついつい二次創作を書いて原作を広めることに加担してしまうメカニズムを、私自身の作品に仕掛けることができるかもしれないな、と思いました。
トレ:おお~!これはすごい発見だよ!やっぱり生の声は重要だね。つまりまとめると、Promotionの「作品の広まりやすさ」を構成する重要な要素として「作品を読んだ人の想像力を誘起する『空白』」というものがある、という仮説が立ったわけだ。他にも「広まりやすさ」を構成する要素があるかもしれないけど、さすがにキリがなくなりそうだし一旦これで終わりにしようか。実際に作品を広めるための施策を打ってみて、この仮説を検証し、十分な効果が得られなかったらもう一度考え直してみよう。
デジ:PDCAサイクルってやつですね。
トレ:仮説検証思考で大事なことだからね。
【施策立案】
トレ:4Pの図で、目的達成のためにアプローチ・操作できる要素が明らかにできたから、それぞれの要素を改善するために取ることのできる施策を考える。上の要素から順に考えてみようか。
デジ:「Price」に関しては(A)無料公開(アルファベットは後のために便宜上つけた番号。以下同様)の施策を打つんでしたよね。
トレ:そう。そして「Place-リアル」に関しては、コミケで流通させる案をコスト面から棄却したので(B)知人に教える、の案が残る。
デジ:「Place-バーチャル」については……Pixiv、ハーメルンとかの二次創作小説投稿サイト、その他ウマスタなどのSNS、で公開する案があるわけですね。全部で公開しちゃえばいいですよね。
トレ:お金がかかるものでもないし、ウザがられない程度にいろんなところで投稿すればいい。これを(C)案とするよ。そして「Promotion-作品の広まりやすさ」、の要素については、想像を促す「空白」というのが作品の広まりやすさを左右する要素だという仮説を立てたわけだから、デジタルの作品にそういう「空白」を施せばいい。こっちは(D)案とする。
デジ:意図してやるのは難しいかもしれないですが頑張ってみたいです。その下のPullやPushっていうのは何ですか?
トレ:売り込み方の種類だね。Pushは(E)営業やビラ配りとかで直接営業をかけること。Pullは(F)ネットとか雑誌とか人目につくところに広告を打つこと。いわゆるマス広告。(E)に関してはネットで仲のいい作家に推薦をしてもらうとかの案があって、(F)は……お金的に広告を打つのは無理だし、SNSの自分のアカウントで宣伝するくらいしかないかな。
デジ:わかりました。次のProductの項では、作品自体の質を高めるための方法について考えていくんでしたよね?
トレ:そう。①ストーリー②構成③文章・表現④単語の要素をそれぞれ高める方法を考えてみよう。
デジ:ぱっと思いつくのは(G)本をたくさん読むこと、でしょうか。人の作品を読んで学ぶのは作家の基本ですし。①~④の全部の要素に効果がある方法だと思います。
トレ:そうだね。ただそれぞれの要素に対応した「特化型」の勉強もできるとより良いことも間違いない。例えば「①ストーリー②構成」を鍛えるために(H)脚本術を勉強する、という方法もあるよね。「③文章・表現④単語」を鍛えるために(I)日本語検定の勉強をしてみる、(J)普段からたくさん辞書を引くようにする、(K)レトリックの勉強をする、とかの案もある。
デジ:そういう「特化型」の勉強ではないんですが、(L)自分の作品にフィードバックを作家仲間からもらう、っていうのもありなんじゃないでしょうか。
トレ:いいね!結構案も出てきたし、そろそろこの中で打つべき施策の優先順位をつけていく作業に入っていこう。
【施策評価】
トレ:ここまで考えてきた全ての施策をまとめるよ。こんな感じになる。わかりやすくなるよう、宣伝的な側面を持つ施策と作品自体の質を改善させる施策で分けてみた。どうかな?
(A)作品を無料公開する
(B)作品を知人に教える
(C)できるだけいろいろなところで投稿する
(D)作品に想像を掻き立てるような「空白」を施す
(E)ネットで仲のいい作家仲間に推薦をしてもらう
(F)自分のSNSアカウントでの継続的な宣伝を行う
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(G)本をたくさん読む
(H)脚本術を勉強する
(I)日本語検定の勉強をする
(J)普段からたくさん辞書を引くようにする
(K)レトリックの勉強をする
(L)自分の作品にフィードバックを作家仲間からもらう
デジ:うひょ、こんなにいっぱい!全部やるのは正直……。
トレ:「やったほうがいいこと」は無限にあるけど、「やらなきゃならないこと」を考えることが大事なんだ。だからもっとも効果が見込める順に優先順位をつける。上位の施策からやっていけばいい。
デジ:それならなんとか。
トレ:OK。まず短期間で効果が見込めるのは(A)~(F)の宣伝的な施策だと思う。(G)~(L)も大事だけど、効果が出るまでにどれだけの時間がかかるかわからないし、良い作品だからたくさんの人目につくってわけでもない。
デジ:「俺だけが知っていいる」みたいな名作って結構ありますもんね。
トレ:だから優先順位としては(A)~(F)の方が上とするよ。この中で順位をつけるとこんな感じになると思う。
1. (A)作品を無料公開する
2. (C)できるだけいろいろなところで投稿する
3. (F)自分のSNSアカウントでの継続的な宣伝を行う
4. (E)ネットで仲のいい作家仲間に推薦をしてもらう
5. (B)作品を知人に教える
6. (D)作品に想像を掻き立てるような「空白」を施す
まず「(A)作品を無料公開する」は超大事。有料公開した時と無料公開した時じゃ閲覧数が天と地ほども違う。その次に「(C)できるだけいろいろなところで投稿する」も大事。ほとんど追加の手間をかけることなく人目につく機会を増やせるわけだから。人目につける機会を増やす意味では「(F)自分のSNSアカウントでの継続的な宣伝を行う」も大事だけど、あんまりやりすぎるとウザがられてマイナスイメージだし、そもそもそういう投稿を見る人の多くはフォロワーだったりするから、新規読者を開拓したい今回のケースでは優先度が下がる。(E)は推薦してくれる人がめちゃくちゃ有名なら新規読者を沢山見込めるかもしれない。ただ畑違いの作家に推薦してもらっても、趣味が合わない読者が流入してくるだけであまり効果がないどころか、「解釈違い」を起こしてデジタルの作品の評判に悪影響すら及ぶかもしれない。
デジ:それなら似た感じの作品を書いている人に頼めばいいんじゃないですか?
トレ:それだとたぶん読者層が元からかぶっているから、新規読者がどれだけ見込めるかは疑問かな。とはいえたぶん知人の数よりは多くの人にアプローチできるから「(B)作品を知人に教える」よりは優先順位を上にした。最後に「(D)作品に想像を掻き立てるような「空白」を施す」だけど、これはどれだけの効果が見込めるか全くの未知数なんだよね。オリジナリティあふれる案で魅力的だしうまくいったら儲けものだけど、作品自体を変える負荷のことも考えるとコスパが滅茶苦茶悪い恐れがある。一旦やってみて効果があるかどうか試してみる、くらいの感じでやるべきかな。
デジ:わかりました。
トレ:で、次に作品自体の質を向上させるための施策である(G)~(L)の優先順位をつける。僕が思うにこんな感じ。
7. (L)自分の作品にフィードバックを作家仲間からもらう
8. (H)脚本術を勉強する
9. (G)本をたくさん読む
10. (K)レトリックの勉強をする
11. (I)日本語検定の勉強をする
12. (J)普段からたくさん辞書を引くようにする
デジタルの作品があまりもひどいなら(A)~(F)よりも優先順位を上げないといけなかったのかもしれないけど、前提としてデジタルの作品はちゃんと形になっているものだと思うし、作品の改善って一朝一夕でできるものじゃないから、即効性の面を考慮しても(A)~(F)案より優先順位を下げさせてもらったよ。
デジ:うへへ、私なんかの作品を褒めてもらっちゃってありがたい限りです。お世辞でも嬉しいです。
トレ:本心だよ。話を進めるけど、同人作品に美麗な文章を求める人はほとんどいないと思うし、一定水準の文章が書ければ、あえてさらなる文章力の向上を図るメリットってそこまでないと思う。だから(K)、(I)、(J)の案は優先順位としては一番下にさせてもらった。で、(L)、(H)、(G)についてはタイムパフォーマンスが高いと思われる順に順位をつけさせてもらったよ。「(G)本をたくさん読む」も間違いなく大事なんだけど、どれくらい読んだらどれくらい作品の改善に役立つのか未知数だから、この3つの案の中では優先順位を一番下にさせてもらった。
デジ:全部まとめるとこんな感じですね。7位くらいまではそこまで負担を増やさず実行できそうな気がします。
1. (A)作品を無料公開する
2. (C)できるだけいろいろなところで投稿する
3. (F)自分のSNSアカウントでの継続的な宣伝を行う
4. (E)ネットで仲のいい作家仲間に推薦をしてもらう
5. (B)作品を知人に教える
6. (D)作品に想像を掻き立てるような「空白」を施す
7. (L)自分の作品にフィードバックを作家仲間からもらう
8. (H)脚本術を勉強する
9. (G)本をたくさん読む
10. (K)レトリックの勉強をする
11. (I)日本語検定の勉強をする
12. (J)普段からたくさん辞書を引くようにする
トレ:じゃあとりあえずそこまでやってみるといいよ。時間に余裕がある時に8位以下の施策もやってみるといい。
デジ:わかりました、ありがとうございます!
【振り返り】
トレ:どうだった?役に立てたかな?
デジ:もちろんです!ただ正直に言うと、優先順位が本当にこれでいいのかな、って思うところもあったり……。
トレ:いや~それは僕も自信がない。本気で優先順位をつけるならある程度定量的な分析は必須だけど、僕たちは詳しいデータを持っていないからね。作品の出来に関しては点数にできる物じゃないし、感覚的な議論に頼らざるを得ないところが沢山あったよね。クリックの追跡とかもできる立場じゃないから、どういう経路でデジタルの作品を見に来るに至ったのか、想像してみるしかないところもあった。実行に移してみて、妥当な施策になっていたのか実際に確かめてみるしかなさそう。……これ、やっぱりあんまり力になれていないんじゃ……。
デジ:そんなことないですよ!自分じゃ気づけない発見もいっぱいありましたし!「空白」のこととか。
トレ:そう言ってもらえるとありがたいかな。
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アグネスデジタルは、その後、上記のアドバイスを元に、同人小説の制作に取り掛かったのだった。そして、その作品が予想以上の反響を呼び起こすことになるのだが……その話はまたの機会にしたいと思う。
少なくともこの一件が評判になり、トレーナーの元へ様々な相談が舞い込むようになったのは確かなことである。彼は今日も新たな悩みを抱えたウマ娘たちの助けになるために奔走しているのである――。
【おまけ(筆者談)】
実はここで考えた施策のいくつかは、拙作「ウマ娘の寿命が現実の馬と同じ世界線の恋愛事情」において実際にやってみたものが含まれています。通常こういう仮想のケース問題で施策を実行した後の効果を検証することはできないのですが、ここに記した内容は半分本当のことでもあるので、参考までに「ウマ娘の寿命が現実の馬と同じ世界線の恋愛事情」がどういう反響を得たのか記しておきます。
・ハーメルンでのランキング
詳しく記録はしていないのですが、ハーメルン内で5~10回くらい全体の日刊ランキングに入ることができました。最高順位は27位とかだった気がします。
・二次創作や想像を誘発する「空白」
30年の人生を5000~6000字程度に圧縮し、しかもストーリーの主要人物以外の目線から文章を書くことで、ストーリーに直接関係する情報量を減らした作品を書いたことあります。その作品を投稿した後
①その直前に投稿していた話よりも感想が多く得られた
②私の作品の三次創作のような形で作品を書いてくれる方が現れた
という事実があるので、もしかしたら「空白を施す」というのは案外効果がある施策なのかもしれません。ただ②に関しては、その方の才能に惚れ込んで私の方から「自分で小説を書くべきだ」と訴えかけていた背景もあるのであまり参考にならないかもしれません。
ここのトレーナーが以前戦略コンサルとしてトレセンの運営改善に取り組み、そこでの出会いを通じて一念発起してトレーナーに転職するまでのストーリーって需要ある?
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ある、見たい
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ない、見たくない
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はっきり言えない、見るかもしれない