元々不定期とは明示していますがしばらく投稿間隔が遅くなると思います。
スピカ視点
「ゔぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙あ゙!!?」
暗い部屋の中に女のしゃがれた叫び声が響く。女は血だらけの手で空洞となった自身の左目を抑える。
「ふむ…ここまでか。これだけしても全然情報を渡さんとは..腐ってもWISEと言ったところか。ピッツバーグ准尉、こいつを治癒牢にぶち込んでおいてくれ。…ピッツバーグ准尉?おい、聞いているのか?…アイビー・ ピッツバーグ!!」
「……ハッ!!申し訳ありません、中佐!中佐の美しい手腕に見惚れちゃって..♡」
「…ったく。ちゃんと記録は書いているんだろうな?」
「もちろんです!あたしの名にかけて中佐の一挙手一投足、一文字の発言も取りこぼしはありません!!」
「…ならいい。はぁ..とっととこいつを治癒牢に連れてけ。」
「...了解です、中佐!!」
何が嬉しいのかニコニコしながら赤毛のツインテールをドリル巻きにした少女は尋問していた女を地下へ引きずっていく。
「お疲れ様です、中佐。」
「あぁ…ユーリ君か。すまないな、本当なら君の尋問の監督に着く予定だったんだが..ちょうどこちらの尋問の時間と被ってしまってな..。」
「いえ、お気になさらないでください。ボクの方は少尉がご指導くださったので。..お疲れのようですが大丈夫ですか?」
「いや..平気だ。心配かけてすまない。久々にアイビーと尋問に入ったものだからな..隣で騒がれて敵わん..。」
「あぁ...。それはまた..なんというかお疲れ様です..。」
「なになに!あたしの話ですか、中佐!あたしのいないところであたしの話をするなんて..中佐はツンデレですね〜♡今日もあたしの腕の中..空いてますよ、中佐♡」
噂話をしているとなんとやら..。もう奴を運び終わったのか気づけばシュッとアイビーが腕に絡んでいる。
「…違う!腕を離せ、鬱陶しい..。..あと、次にウチに忍び込んで添い寝でもしてみろ、お前を尋問にかけてやるからな!!」
「きゃ〜ん!!...乱暴な中佐も悪くない!中佐ってば照れ屋さんなんだから♡」
「…そこまでだ、ピッツバーグ准尉。中佐が困っているだろう、離れろ。」
腕に擦り寄るアイビーをユーリ君が制する。するとアイビーはガルルルル!と唸り声を上げてより一層私にくっつく。
「出たわね…ユーリ・ブライア!!今はあたしと中佐のイチャイチャタイムなのよ!空気を読んでどっか行きなさい、この泥棒猫!!」
「ボクの方が先に中佐と話していたんだが?それに中佐が困っていると言っただろう!どこをどう見たらイチャイチャなんだ..この小娘!」
「はぁ〜?どの口が言ってんのよ..最近入ったばかりの小童が!!あたしはあんたより数年長く働いてんのよ!先輩として敬いなさい?...中佐ぁ..なんでこんなやつの教官なんですかぁ?こいつの教官なんて辞めてあたしと一緒に仕事しましょうよ!..あ、もちろんあたしに永久就職も大歓迎ですよ♡」
「ハッ..数年いてまだ准尉のやつにとやかく言われる筋合いはないな!ボクは中佐や少尉のような敬いたいと思える人じゃないと敬えないんだ。敬われたかったら..それらしい言動をするんだな、せ・ん・ぱ・い?」
「ぐぬぬぬぬ...!!!」
「...お前達、喧嘩はやめないか。アイビー、お前はまだ仕事があるだろう?休憩が終わったならこんなとこで油を売ってないで早く行け。ユーリ君ももう上がりだろ?..気持ちは嬉しいが君の貴重な休息を浪費するんじゃない。早く上がりなさい。」
「...すみません、中佐。」
「.....。中佐は..中佐はどうしてこいつの肩を持つんですか!?なんであたしじゃダメなんですか!?どうしてこんな...ぽっと出の若僧なんか..。....ふ、ふん!覚えておきなさい、ユーリ・ブライア!エリートなんて肩書きだけで准尉まで成り上がったあんたなんてすぐに追い抜いてやるから!せいぜい首を洗って待っていることね!それでは中佐、失礼します!また夜に〜♡」
素直にシュンと項垂れるユーリとは違ってアイビーは叫びながらまた一際強く私の腕を抱きしめる..と思えばバッと顔を上げて高らかに昇級宣言をして駆け出していった。
「...なんというか..嵐のような奴でしたね..。」
「成り上がりと言ったら私もユーリ君と同じ立場なんだが...。…はぁ。すまんな、あいつも悪いやつじゃないんだがな..。どうも私を信仰しすぎるきらいがある..。..というかあいつ、夜にって言ってたよな?...懲りない奴め。今日は家に帰るのやめておくか..。」
「..本当にお疲れ様です。ところで何故あんなに懐かれているのですか?..あぁ...いえ、ボクももちろん中佐のことはお慕いしているのですが..」
「ははっ..そんな狼狽えずともわかっているさ。..ありがとう、ユーリ君。...あいつが異常なまでに私に執着するのは..おそらく私がとある任務であいつを救ったからだ。」
「救った..?」
「あぁ。本当に言葉の通りなんだ。ただとある組織に囚われていたあいつを助けて局内で保護し、バックアップした..それだけなんだがなぁ..。複数人の部隊で突入したのになんであんなにも私に絡んでくるのか...若い奴の考えることはわからん..。...すまないな、こんな話に付き合って貰って。私が早く上がれと言ったのに引き留めてしまった..。」
「いえ、大丈夫ですよ。それでは中佐、お先に失礼します。お疲れ様でした。」
「あぁ、また明日。よく休めよ。」
ピシッと敬礼をしてユーリが更衣室に向かうのを見届けて書類仕事に取り掛かる。仕分けをしているとふと開けた引き出しの中に赤毛のツインテールをドリル巻きにした青い瞳少女....アイビー・ピッツバーグの資料が見えた。....自分のものと同じく門外不出の資料だ。
アイビー・ピッツバーグ、年齢17。数年前に行われた近年で最も最悪の任務とも言われる新人部隊によるウェスタリス科学発明組織壊滅任務によって助け出された人体実験用捕虜のウェスタリスの少女。実験で得た能力を暴発させ、誰にも心を開かないその危険性から局内での観察保護対象に指定。監督役は任務部隊隊長で少女奪還の本人、ウェスタリス出身のスピカ ダグラス大尉(現在中佐)に任命。現在の所属は第2部署、階級は准尉で素行に多少の問題は見られるものの能力制御は行えるなどの改善が見られ、ウェスタリスに対する復讐心が強く、オスタニアへの反抗的態度は見られない。引き続き要観察対象。
「……。まったく、難儀なものだな。」
(人を助ければ人が死ぬ..。私は..この任務で思い知ったじゃないか..。もっと精進しなければいけないな..。..仕事するか。)
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夜も更けてほとんどの人が寝静まった真夜中に1人の女はベランダの窓を開けて月明かりを浴びながら晩酌をしていた。その手にはいくつもの錠剤が握られている。口を開いて放り込もうとした瞬間..シュルッと優しく植物の蔓が腕に巻き付いた。
「いくら平気でも..その飲み合わせはダメって..いつも言ってますよね、中佐?」
「.....またお前か、アイビー。..玄関にはトラップを設置しておいたはずだが?」
「やだ〜愛の為せる技ですよ♡そんなことはどうでもいいじゃないですか。...今日も眠れないんでしょう?今夜もあたしが配達抱き枕になりにきましたよ♡」
「..おちおち眠れないのはお前のせいだということも覚えておけ。...ったく。お前は本当に手がかかる..ウチに来たってことは眠れないのはお前の方だろ。今日は何があったんだ?」
「...あはっ。中佐ってばあたしのことわかりすぎ♡..別に何もないですよ..。ただちょっと..1人でいたくなかっただけです。....それより中佐、そんな格好で窓際にいたら風邪ひきますよ。..そろそろ閉めてください。」
「...わかったわかった。..ほら、こっちにこい。」
「ほんと..中佐は優しいですね。...大好き♡」
窓を閉めて部屋の中で唯一綺麗と言っても過言ではないベッドに横になる。腕を広げるとアイビーは一目散に駆けてきて私を抱きしめる。それに乗じて彼女から伸びる蔦もシュルルと巻き付いてきた。
「...苦しい。くっつきすぎだ..お前は加減もわからんのか。」
「えへへ..中佐のことが好きすぎてつい♡....ねぇ、中佐。中佐のことがわかるのは..理解してあげられるのはあたしだけですよ。やっぱりユーリ・ブライアはやめてあたしにしません?」
「またその話か...。教官の話は上からの命令だと言っただろ。私はそれに従うのみだ。あと人を理解できるなどと自惚れるんじゃない。もう寝るぞ...朝には大人しく出てけよ。」
「そういうことじゃないのに..。もちろん、起きたらすぐに出ていきますよ。...おやすみなさい♡」
そうして2人は身を寄せ合うようにくっつき..やがて2つの静かな寝息が聞こえる。...その背中に抱きついている少女は..女がジッと仄暗い青い目を開いて朝まで起きていたことに気づくことはなかった。
一体どこからこの少女は湧いてきたのでしょう..。
ここで新キャラは出すつもりはなかったんですけどね..。
作者の意思に反して勝手に暴れまくるのであんまり出す予定はないです。