『起』
それは突然のことだった。
ナギちゃんとセイアちゃん二人が突然の入院。
その原因は完全に秘匿とする。
それを聞いた時、目の前が真っ暗になるかと思った。
セイアちゃんの体調不良による入院はまだしも、ナギちゃんの入院は予想外。
そうなった理由は不明だが、意識はあり命の別状はないとは先生から聞いたけど、それでも心配だった。
なぜ?何があったの?何かに巻き込まれたの?
確認しようにも、また私が原因でこんなことが起こってしまったのではないかと考えてしまい、ナギちゃん達にモモトークを送る勇気が出ず、部屋でウジウジしていると部屋の鍵を突如開けて彼女達はやってきた。
「おい、聖園ミカ!!貴様を牢獄に連行する!!」
どこか土臭いトリニティの制服を着た彼女達は私に一方的にそう主張した。
彼女達が何者なのか、なぜそんな主張をするのかはわからない。
だけどわかることは一つ。それは彼女達が正しいということ。
彼女達の表情を見るだけでわかる。
彼女達は私に憎しみの目をむけていた。
その瞳の奥に激情の炎が燃えていたのだ。
あれは、私に正当な怒りを持った人の持つ目だ。
『
彼女達がなぜそうなったのか、詳しい理由はわからない。
だが、その思いを持ったのは私の引き起こした事のせいなのだとわかる。
だから、私は大人しく彼女達に従うことにした。
全部、私が悪いのだから。
だけれど、一つだけ。ナギちゃんとセイアちゃんにモモトークを送った。
「ごめんね」
なぜ、この一言だけを送ったのかは私自身にもわからない。
だけど、私は、この正当な怒りの炎を灯した彼女達に焼かれるなら、いいかもしれないと思ったから。
それが、二人が入院したことよる精神不安定からきた、気の迷いかもしれないが、それでも今の私にはそれが正しいように思えた。
だから私はメッセージが送信されたのを見届けると、端末と銃を部屋に置いて大人しく彼女たちに連れられて部屋を出たのがつい先ほど。
そして今私は、両脇に複数人の生徒に囲まれ、先導する一人に付き従うように歩いている。
五分いや十分。
今までのことを思い出し、後悔し直しているせいで、時間感覚もおぼつかない感覚の中、ふと先導していたリーダーらしき子が俯いていた私に声をかけてきた。
「なぁ、聖園ミカ。私たちには大切な『子』がいたんだ」
その声は、どこか懐かしそうで、悲しそうな声。
声をかけられたにもかかわらず、私は無言を貫いた。
なぜなら、この問いかけは私に返答を求める物ではなく、私に罪を告発する物だと自然と理解できたから。
「『あの子』をナギサ様から任された時は、こりゃ無理だって思ったんだ。なぁみんなもそうだったよな」
リーダーの声に、周りの子達も「そうそう」「そうだった」と楽しそうに相槌を打つ。
「いざ『あの子』に会ってみたら本当にひどくてなぁ、見栄えもダメ、力強さもない、半端者にも劣る未熟者。こりゃだめだとみんな諦めて笑っていたんだよ」
ポツリポツリと、静かな廊下に声が響く
「だけどな、『あの子』はなぜか人を引きつけるところがあってな。誰からともなく我らサークルメンバーが一人、また一人と関わり始めたんだよ」
そんな思い出に周りからクスクスと笑い声が漏れる。
「最初はリーダーだったでしょ」
「そこはぼかさずに良いんですよ。放っておけないってリーダーが一人頭を悩ませてたじゃないですか」
「うるさい!...まぁそんなこんなで、いつの間にか『あの子』をサークルみんなで面倒を見ていた。」
その声は楽しそうに、嬉しそうに、思い出を紡いでいく
「そして気がつくと、最終的には『あの子』は変わった。その姿は美しく…その性能は力強く…半端者でも未熟者でもない、立派な姿を見せてくれたんだ」
まるで友人に語りかけるような声。
だけど、周りから少しずつ嗚咽が聞こえる。
「その姿に感動して、喜びすぎてみんなでパーティーしたのさ。『この子』の門出を祝うってね」
まるで、子供の独り立ちを祝うような母親の声。
だけど、周りから怒りを噛み締める音が聞こえる。
「私たちは確信したよ、『この子』はトリニティの未来を作る子だって」
心温まる、ゆったりとした声色。
だけどその声色は
「まぁ、お前が脱獄したときに『あの子』をぶっ壊したんだがな」
一瞬のうちに氷点下まで落ちる。
声と共に振り返った彼女の瞳に私は、冷たいがその奥に強い感情を見て取れた。
ああ、その感情は怒りだろうか、憎しみだろうか。
どちらにしろ、結論は一緒だ。
私はやはり『魔女』だったのだ。
私は彼女達から、彼女達の大切な『子』をひどく痛めつけてしまっていたのだ。
それも無意識に。
私が脱獄した際の人的被害はないとナギちゃんや先生は言っていた。
だが、本当はあったのだ。
私を苦しませまいと、どちらかが、もしくは二人が私に黙っていたのだろう。
だが隠されていても、いつか真実は明るみに出る。
罪には必ず罰が降る。
それが今なのだ。
「着いたぞ。聖園ミカ」
リーダーが立ち止まる。
顔を上げると、そこにあったのは普通の子だったら開けるのに苦労しそうな、鉄の扉。鍵がいくつもついており、容易に開けるのが難しいことが一目でわかる。
そんな扉を私は、懐かしく思った。
この扉は、見覚えがある。
あのクーデターを起こして捕まった時に入れられた部屋の扉だ。
『魔女』がいるべき部屋が目の前にある。
すると周りにいる子達が、複数人で鍵を開け始める。
カチャカチャガコンッガリガリガリギゴゴゴカチャガチャガチャカチャバタンッガコンペロロガチャガチャガチャコンコンコンゴンガッコンカチャガチャリゴガッゴゴッゴゴゴゴゴゴガチャン!
ながい工程の後、扉が開いた。
その先にあるのは闇。灯一つない闇であった。
すべての光を吸い込むような漆黒の空間。入ったら二度と光を見れないような暗黒。
まるで地獄の入り口のようなその先に私はどこか安心感を覚えた。
ああ、私が受けるべき罰なのだと。
「おい、聖園ミカ!!この牢獄に入れ!!」
「.....」
リーダーの声が響く。
言われるまでもない。
私は目の前の罰に自然と足を歩ませた。
厳重な扉を潜り漆黒の闇へと足を踏み入れた。
その一歩は全く重くなかった。
しっかりと中に入り、後ろを見る。
そこには廊下から漏れる光と、私を見つめる断罪者達の瞳。
「入ったな!」
「......」
確認と共に、扉がゆっくり閉まっていく。
光が消えていく。
私の未来が消えていく気がする。
このままこの扉が一生開かないかもしれない。
一生この暗闇の中から出れないかもしれない。
もし出れるとしても私は自発的にでない。
それが私の罪だから、私が外にいればまた悪いことが起きてしまうから。
私にはこの暗闇がお似合いだ。
だけど少し私はほっとしていた。
ああ、これで私の罪が裁かれるのだと。
そして、扉が閉まる瞬間。廊下から最後の声が聞こえた。
「よし... 聖園ミカ、出ろ!!」
....................................
..............................
............?
「...へ?」
ゴウン゙ゴゴゴゴゴコッ゙ゴコッ゙ガコリャヂカャチカンコッ゙カン゙コンコンコンコャヂカャヂカャヂカロロ゚ヘンゴカッンダハャチカャヂカャヂカャチガゴゴゴキリ゙カリ゙カリ゙カッンゴカャチカャチカ
扉が閉まった。
............
............えっと
聞き間違い...じゃないよね?
真っ暗闇の中、どこに何があるかわからない。
いやそれよりも、さっきの声の意味がわからない。
セイアちゃんの小難しい言葉以上に意味がわからない
え?出ろ? 出て良いの?私の罰は?
とりあえず、手探りでさっきの扉のとこまで行ってノブを握ってみる。
ガチャガチャ
開かない。
ガチャガチャ
開かない。
コンコンッ
ノックしても反応がない。
......イラッ
ガチャッガギギギギギ
カチャカチャガコンッガリガリガリギゴゴゴカチャガチャガチャカチャバタンッガコンペロロガチャガチャガチャコンコンコンゴンガッコンカチャガチャリゴガッゴゴッゴゴゴゴゴゴガチャン!
「お前何ドアノブ引きちぎろうとしてんの!?頭おかしいんちゃう!?」
「いや、それはこっちのセリフじゃないかな??」
ムカついてドアノブを引きちぎろうとしたら突如…いや、少々の時間がかかって扉が開いた。
そこには困惑しているさっきの彼女達がいる。
いや、困惑してるのは私だよ???
「おまえ、ドアノブ引きちぎったらどうなるのかわかってんの!?」
「扉が開かなくなるかな?」
「正解!」
ゴウン゙ゴゴゴゴゴコッ゙ゴコッ゙ガコリャヂカャチカンコッ゙カン゙コンコンコンコャヂカャヂカャヂカロロ゚ヘンゴカッンダハャチカャヂカャヂカャチガゴゴゴキリ゙カリ゙カリ゙カッンゴカャチカャチカ
扉がしまった。暗闇。
......イラッ
ガチャガチャガチャガギギギギギ
カチャカチャガコンッガリガリガリギゴゴゴカチャガチャガチャカチャバタンッガコンペロロガチャガチャガチャコンコンコンゴンガッコンカチャガチャリゴガッゴゴッゴゴゴゴゴゴガチャン!
「お前何ドアノブ引きちぎろうとしてんの!?パワーだけじゃなくて頭もゴリラ!?」
「は?殴るよ?」
「ひぃ!暴力反対!」
右腕を軽く上げて脅かしてみると、彼女達は身を寄せ合い小動物のように震え始めた。
....えーと。どうしよっか?
天を仰ぎ見て悩んでも答えは出ない
わからない。彼女達が何を求めているのかわかない。
助けて先生…訳がわからないよ。
そんな願いを祈っても、目の前にいるのはビクビクと怯えながら私をみる...ってその目怯えてないよね?珍獣を見る目だよね?
やめよ?その目で見られるの憎しみや怒りで見られるよりキツイから。
よく、セイアちゃんやナギちゃんがその目するんだよ?
そんな小さな精神ダメージを私は堪えて、とりあえず彼女達に質問することにした
「えっと、君たちのいう『あの子』の復讐をするために、この部屋に私を入れたんだよね?」
「違うぞ?」
「...違うの?」
「そうだぞ。『あの子』の耐久性が足りなかったのは私たちの失態だ。今思えばなんであの耐久性で満足してたんだか。だから今日はリベンジに来た」
「えっと、今のところ人かペットか分かんないんだけど、とりあえず生き物を耐久性が足りないとか言うのは悪いんじゃないかなぁって...」
「は?生き物じゃないぞ?無機物だぞ?」
「???」
「やっぱり知能までゴリ...」
「蹴るよ?」
「ひぃ!ひき肉になる!?」
半泣きになって頭を抱え出した。
...可愛い
ってそんなこと考えてる場合じゃなくて、さらに意味がわからなくなった。
彼女達は、『あの子』を傷つけた私に復讐するために私を連れ出してこの暗闇の中に放り込んだのじゃなかったの?
言われてみれば、さっきの廊下の会話、どこかおかしかった気が...
「えっと聖園ミカ...一つ良いか?」
私が、さっきの会話の内容を思い出そうとして混乱した頭を働かしていると、彼女達のリーダーが恐る恐る私に話しかけてきた。
怯えてても呼び捨てなんだ。なーんて思いながら私は返事をした。
「えっとなに?」
「なんで部屋の明かりをつけないんだ?真っ暗はあぶないぞ?」
「え?」
リーダーが指差した方を見るとそこには、うっすらと廊下の明かりで照らされたボタンがあった。
「部屋の明かりあったんだ...」
「そりゃあ、窓のない部屋なんだから当然あるにきまってるだろ」
「う、うん。うん?当然...だよね?」
「え、もしかして今の住んでいる部屋、明かりないのか?」
「いや、普通にあるよ?」
「そうか。よかった。またいじめられているのかと思ったよ」
「えっと、お気遣いありがと?」
「いえいえどういたしまして。よし... 聖園ミカ、出ろ!!」
ゴウン゙ゴゴゴゴゴコッ゙ゴコッ゙ガコリャヂカャチカンコッ゙カン゙コンコンコンコャヂカャヂカャヂカロロ゚ヘンゴカッンダハャチカャヂカャヂカャチガゴゴゴキリ゙カリ゙カリ゙カッンゴカャチカャチカ
扉がしまった。まっくら
...とりあえず、さっきボタンがあった位置に手探りで手を伸ばしてみる。
するとカチッという音共に部屋の明かりがついた。
「...わーお」
目の前に広がったのは豪奢な部屋であった。
一目見てわかる効果な絨毯と家具の数々。
それどころかテーブルの上にはお茶菓子も置いてあった。
あ、あのお茶菓子ティーパーティーの会議の時食べた美味しいやつだ。
テクテクとテーブルに近づきお茶菓子をひとつまみ
「う〜ん。おいしー!最近こんな高価なお菓子食べれないから余計に美味しく感じちゃうな」
久々に食べた高価なお菓子の味は、いろいろあって疲れていた私の脳に糖分を運んできてくれる。
そういえば、このお菓子いつもナギちゃんが持ってきてくれてたんだっけ?今度お店教えてもらおーと。
そしたら、コハルちゃんと一緒にいこって誘ってみよっかな!
先生は...デートみたいでまだ恥ずかしいから、また...今度で!
その為にはっと...
テクテク
ガチャン
ガチャガチャガチャガギギギギギ
カチャカチャガコンッガリガリガリギゴゴゴカチャガチャガチャカチャバタンッガコンペロロガチャガチャガチャコンコンコンゴンガッコンカチャガチャリゴガッゴゴッゴゴゴゴゴゴガチャン!
「情緒不安定か!?」
「君がね」
この子達と詳しくお話しなきゃね