「聖園ミカを許すな!」   作:haguruma03

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『結』

『結』

 

『お待たせしましたミカ様』

 

「いや、ほんっと待ったじゃんね?」

 

イヤホン越しから聞こえる疲れ切った正義実現委員会の子の声を聞きながら返答する。

 

正義実現委員会とナギちゃん部の戦闘が終わるのを、一人お茶会をして待っていたら、ティーポッドの紅茶を全て飲み終えてしまっていた。

 

この部屋に時計がないので一体何分待ったかわからないが、最低でも10分は経っているはず。

声を聞く限り今来ている正義実現委員会に私が知る限りのネームドはいないけど、一般委員会員でもかなりの練度だったはず。それがここまで制圧に時間がかかるとは、腐っても『ナギちゃん部』はナギちゃんの秘蔵っ子なのだろう。

まぁ色々…いや、かなり問題があるけど。

 

『申し訳ありません。思っていた以上にしぶとくて…』

 

『我らNAGISASAMA部!戦闘は不得意だが、できないとは言っていない!』

 

『こら!おとなしくしろ!!』

 

ガタガタと慌ただしい音が聞こえる。

鎮圧されたけどまだまだナギちゃん部のみんなは元気らしい。

その元気を別のことにつかってほしいんだけどなぁ

なぁーんて考えながら、今日何回目かも忘れたため息をする。

 

『えーと…救援が遅れて申し訳ありません』

 

どうやら端末越しに聞こえてしまったらしい。

いけない、いけない


「気にしないでね。あなた達にため息をついたわけじゃないから」

 

『そうですか…よかった』

 

『そうだぞ!気にしすぎは体に毒だぞ』

 

「ナギちゃん部はだまってようね★」

 

『ひぃっ』

 

適度にナギちゃん部を叱りながら頭を悩ませる。


あ、そうだ

 

「そういえば、きてくれたのは嬉しいけど、いったいなんでそんな物々しい感じになってるの?」

 

さっきの騒動を聞いた感じ、きている正義実現委員会はひとり二人どころか十数人ぐらいだろう。

そんな大人数が、警告もなしに発砲拘束だなんて、よっぽどの事をしなければこんなことには…

 

『なんでもなにも、ティーパーティーのミカ様が誘拐されたんですよ?』

 

「え?でも私は…」

 

『でもじゃありません。それに一度考えてみてください』

 

「ん?」

 

『ティーパーティーの一人が秘密裏に作り上げた部隊が、制御不能になり指導者を病院送りにして謀反。その後、同じティーパーティーの一員を誘拐し自らが作成した機密拠点に連行。どう思います?』

 

「あ〜…新しいクーデターかな?」

 

『それに加えて、誘拐された人物から一言「ごめん」というモモトークが送られ連絡が取れなくなった。どう思います?』

 

「あ…」

 

そういえば、そうだった。忘れてた。

あの時、色々勘違いしてナギちゃん達にモモトーク送ってたの忘れた。

 

そりゃ、ナギちゃんたち飛び起きてすぐに指令を飛ばすよねぇ…

って事は…?

 

「ねぇ、もしかしてだけどさぁ」

 

『はい』

 

「騒動に…なってる?」

 

『騒動ではないですね』

 

「あ〜よかっ」

 

『大騒動です』

 

「だよねぇ!」


『正義実現委員会、シスターフッド、救護騎士団などの大きな組織だけではなく、トリニティ全域に声明が出されており、今多くの生徒達がNAGISASAMA部及びミカ様を探している状態です』

 

「うわ…わぁ…」

 

…って、あれ?


「え、待って?原因はわかったけど、なんでそんなに大人数が必要になってるの?必要な人数集めてこの部屋に来るだけでよかったんじゃ…?」

 

『見つけれませんでした』

 

「へ?」


『ミカ様が寮から連行されているのを監視カメラが確認したのを最後にNAGISASAMA部及びミカ様の足取りが一切途絶えていたんです。監視カメラどころか目撃情報を含めて』

 

「は?」

 

『その後、校舎内や周辺を調べたところ、巧妙に隠された数えきれぬほどの隠し通路が発見されました』

 

「??」

 

『事件を重くみたナギサ様は、捜査人数の増加と捜査範囲を拡大、結果トリニティ全域の構造物に隠し通路及び隠し部屋を発見。また野外にも隠匿されている隠し通路、地下トンネルを発見』

 

「???」

 

『正義実現委員会の人員だけでは足りないことをハスミ副委員長が提言して、多くの生徒が捜索に動員、その人員のもと人海戦術が行われ、今やっと私たち第47班が見つけたと言うわけです』

 

 

「……え?」

 

『……ちなみにティーパーティーにてエデン条約機構の名の下に、条約締結後初の、ゲヘナへ事件解決のための協力要請を行う事が考えられていると…』

 

「え、ま、ちょっ!」


声が、声が無意識にこぼれる。

え、わぁ、これ、もしかしなくても、この前のクーデターレベルに騒動になっている?
というか、あれだけ色々あってなんとか締結したエデン条約の最初の事例がこのおバカな事件だなんて、トリニティの歴史に悪い意味で残っちゃう!

もうすでに私の名はクーデター犯としてトリニティの歴史に載っちゃっているだろうけど、こんなおバカな載り方は本当に嫌!


「すぐにナギちゃんに電話して!こんなおバカな事で歴史に名前を残したくない!エデン条約締結後に行われた最初の協力が、こんなおバカな事なのは嫌!」

 

『わ、わかりました!ですが安心してください、すでに電話は他のものが行っています』

 

その言葉にホッと一息つく。

私が妨害したとはいえ、あんな苦しいことや悲しいことを乗り越えて締結されたエデン条約最初の事例にこんな事件を残したとなると、あまりの羞恥で先生を連れて逃避行してしまうだろう。

 

だけどその未来は無くなった。

本当によか

 

『ん?どうした?すぐに連絡しろと伝えたはず…ん?』

 

ん?

 

『待ってろ、私のを使って…あれ?』

 

あれ?

 

『…みんなのは?』

 

 

『…そっかぁ』

 

そっかぁ…じゃない!!

 

「まって!何があったの!?」

 

『そ、それが、さっきまで繋がってたはずなのに一切外部に連絡が通じず…』

 

「そこにいるみんな全員!?」

 

『は、はい。さっきまで、この部屋を見つけるまでは連絡が取れてたはずなのですが、一体な…ぜ……』

 

通話越しに聞こえていた、困惑している声が不意に途切れる。

静寂が広がるが、私には扉の向こうで委員会の子が何を、いや誰をみているのかがわかった。

私もなんとなしに、目の前の扉を見る。

私は宇宙怪獣じゃないけれど、なぜかそこには周りを囲んだ正義実現委員会の面々に見つめられる正座したリーダーちゃんが見えた気がした。

 

 

『……』

 

「……」

 

『…え〜と』

 

『……』

 

「……」

 

『…わ、わぁ〜はっはっ!見たかNAGISASAMA部が作ったこの隠密性の高い部屋の凄さを!』

 

『……』

 

「……」

 

『ぜ、前回は浦和ハナコにセーフハウスの個数とローテーションを把握されたが故に発見されたが、今回はそうはいかない!』

 

『……』

 

「……」

 

『な、なんたって、各学園やアリウスのカタコンベから学びトリニティ自治区内に無尽蔵に作成した隠し通路、さらにミレニアムで学んだ監視カメラの映像を改竄するプログラミングによってセーフハウスの場所を完全隠匿!』

 

『……』

 

「……」

 

『また、定期的にダミーの部屋の作成及び削除をすることによって個数を絞らせなくさせ、他学園から教えてもらった占いや忍法、ギャンブルから得た勘、最新鋭の乱数精算機によって生み出されるローテーション!』

 

『……』

 

「……」

 

『最後に、すべての部屋を、今回聖園ミカを入れた部屋と同じ内装にすることによって、どの部屋も心穏やかにリラックスができるため、変則的な運用もしなくて良くなるというわけだ!まぁ、部屋の内装が完成してるのはこの部屋だけなんだけどな!は〜はっはっはっ!』

 

『……』

 

「……」

 

『は〜はっはっはっ!……な、なーん…て』

 

『……』

 

「……」


『……緊急時に周囲一帯10kmにジャミングが発生するようにしてます』

 

その神秘()は音を置き去りにし、独特な破裂音と共に目標に着弾した

 

パパパァンッ!!

ガァァアアアン!!!!


『わ、わぁ!!!急に殴るな!扉が凹んだら開かなくなるだろ!』

 

「もう鍵ないから開かないんだよ!!!!」

 

馬鹿なの!?馬鹿じゃないの!??

 

最悪の事態に頭が混乱する。

通話越しに委員会の子がジャミング範囲外に出て通話するように命令する声が聞こえる

 

確かにさ、連行された時は周りを見てる余裕なんてなくて連れられるままに歩いたけど、今思い返せば来たこともない見たこともない通路だなぁ〜
なんて思ってたよ??

 

それが校舎内に、巧妙に隠された数えきれぬほどの隠し通路?

トリニティ全域の構造物にも隠し通路及び隠し部屋?

外にも隠匿されている隠し通路、地下トンネル??

 

「一体いくつ作ったのかな!?」

 

『覚えてない…』


「いくらお金かけたのかな!?」

 

『ちゃ、ちゃんと旅行先でギャンブルで稼いだ分と自分たちのお小遣いの中で費用抑えてるから…その部屋のように部費使ってしてないから』

 

「いくらかけたのって聞いてるの!?」


『……怒らない?』


「…おこらない」

 

『……部費1かげ』

 

その神秘()は音を置き去りにし、独特な破裂音と共に目標に着弾しまくった。

 

パパパパパパァンッ!!

ドガッガッガッガッガガガガァアン!!

 

『怒らないっていったのにぃ!』


 

「怒ってない!!あと部費は単位じゃない!!」

 

私の叫びが部屋に反響する

頭の中が混乱する。まずいまずいと言うアラームが脳に鳴り響く。

だけど混乱している場合じゃない、今はこの状況をどうにかしないと…!!

あーもうナギちゃんのバカ!自分の作った部隊の手綱ぐらい握っててよ!!

 

『ミカ様!落ち着いてください!今ジャミング範囲外に人員を向かわせました!ジャミング外に出さえすれば連絡が取れるはずです!』

 

『ここら辺入り組んでるから、壁ぶち抜いて直進しない限り一時間はかかるぞ?』

 

パパパァンッ!!

ガァァアアアン!!!!

 

『ごめんなさい!!』


 

イヤホンから悲鳴が聞こえるが、今の私はそんなことを気にしている余裕はなくなっていた。

目の前の扉は凹みすらせず全くの無傷。

やはりリーダーが言っていたように、この扉を素手で突破するのは難しい。

 

じゃあ外の子達が持ってる銃器で開けてもらう?
いや、それは無理。あの子達の銃器より私のパンチの方が威力がある。

なら、この扉を壊せそうな救援がくるのを待つ?例えば剣先ツルギとか蒼森ミネとか…

 

いや、それは良くない

そんなのんびり待ってたら、心配症で仕事が早いナギちゃんがゲヘナに連絡を終わらせて、救援の中にゲヘナの風紀委員長が紛れてる可能性が出てきちゃう!

 

ならどうする?ナギちゃんが事件の真相に気がついてくれる可能性に賭ける?

…可能性はゼロじゃない。だけど、ナギちゃん部に負い目を持ってるが故に、ナギちゃん部が私に恨みを持っていると勘違いする方が高い気がする。それゆえ、私を誘拐したのだと。

しかもその勘違いに拍車をかけるように私が不用意に送ったモモトークの存在もある。

 

ならセイアちゃんならどう?

未来予知はできなくなったけど、未来予知じみた勘が鋭くなったと言っていた

 

……いや、それはダメ

これが深刻な事態を引き起こすなら、最初に笑いすぎてナギちゃんと一緒に入院なんてバカな事をセイアちゃんはしないはず。

 

つまり、この事件がどうなるかある程度予想できていたからあの時点で笑っていたんだ。

笑って終わる結末があるからこそ、セイアちゃんは笑い倒れたのだ。

 

つまり、その結末は…

 

 

ブルリと体に悪寒が走った

 

 

 

「……え?」

 

 

 

『どうされました?ミカ様?』

 

正義委員会の子の声が聞こえる。

 

だけど、その声に意識を向ける余裕は私にはなかった。

 

そう、今、私は悪寒が走った。

 

そして私は、その悪寒に悪寒が走った。

 

もしこの独白を聞いている人がいたのならば、意味がわからないかもしれない

 

だけどそれは、私には背筋に氷を差し込んだような恐怖の感覚だ。

思い浮かぶのはさっきお腹がタプタプになるまで飲んだ紅茶。

 

ゆっくりと後ろを振り向き周りを見渡す。

 

そこには先ほどと変わらない部屋が広がっている。

 

内装が豪奢で

窓がなく

扉が一つしかない部屋。

 

 

そう扉が一つしかない。

 

この部屋には扉が出入り口の扉一つしかないのだ。

 

「……ねぇ」

 

『ど、どうされましたミカ様?』

 

「君じゃない…ねぇナギちゃん部のみんな?」

 

『お、おう…なんだ聖園ミカ?』

 

「……」

 

 

 

 

 

 

「……トイレどこ?」

 

『ないぞ?』

 

 

パパパパパパパパパァパパパァパパパパパパァッン!!

 

『うわぁああああああああ!!!』

 

 

殴る

殴る

目の前の壁を殴りまくる。
ボヨンボヨンと跳ね回る無傷の壁を殴りまくる

 

『しょ、衝撃吸収分散ともに測定不能!』

 

『おち、落ち着いてくださいミカ様!建物が揺れてます!!』

 

「それどころじゃなぃんだよ!!!」

 

まずい、まずい、まずい、まずい!!

新たなタイムリミットの出現に、頭の中でアラームが今日最大の音量で鳴り響く。

 

先ほどまでとは比べものにならない恐怖が私の心をむしばむ。

先ほどまでは私の名が不名誉な形式で歴史に残ることを恐怖していた。

だけど、すでにクーデター犯として名を連ねているので、まだ百歩譲って我慢できるものだった。

 

だけどこれはダメだ。

ここで、ここで『ソレ』が起こってしまうと、


それは、乙女の死を意味する。

いや『ソレ』が起きなくても今の状況が知られでもしたら

もし、今の状況が、先生の耳に入りでもしたら


 

私はお姫さまじゃなくて、別の呼び名になってしまう。

例えば……お漏らしバブちゃんとか

 

ブルリと体が震えた。

 

やめよう!体の震えが想像上の恐怖なのか、『ソレ』が原因なのかがわからなくなる!


 

『大丈夫だ!聖園ミカ!』

 

何が!?

 

『奥の引き出しにおむつが』

 

「折るね!!!!!」

 

『何を!??』

 

その頓珍漢な頭ぁああああ!!!

 

殴る、殴る、殴り続ける。

今までここまでパンチをした事は、一度もない。

ここまで殴って壊れなかったものなんてない。

 

だけど、目の前の宇宙戦艦装甲は傷一つつかずバルンバルン愉快に揺れている。

私の乙女が死ぬのを嘲笑うかのように壁は無傷。

 

 

『おいNAGISASAMA部!鍵は、鍵の予備はないのか!!』

 

『あったら出してるよ!!』

 

『なんで作ってないんだ!!』

 

『お金が足りなかったんだよ!そもそもそっちが唯一の鍵を壊すのがいけないんだぞ!』

 

『警告なしの発砲なんてするから!』

 

『そうだ!そうだ!』

 

『う、うるさい!そもそもこんな騒動をお前達が引き起こしたのが…』

 

「気が散る!黙って!!!!」


 

『はい!!』

『ごめんなさい!』

 

イヤホンから威勢の良い返事が聞こえるが、ソレどころじゃない。

殴っても殴っても、目の前の障害が取り除けない。

『ソレ』が迫ってくるのがわかる。

今の状況ですら先生に知られたくないのに、その先が引き起こされようとしている。


焦りが背筋を震わせる。

ついでに震えたくないところも震えてる。

 

殴るスピードが落ちていく。

足が内股になるのがわかる。

 

殴っても殴っても結果は変わらない。

無意味なのだ。

サオリも言っていた

「虚しい…全てはただ、虚しいだけだ。」と

その残酷な事実に、ついに私は膝から崩れ落ちた。

 

 

ナギちゃん部は優秀だ。完璧に今の私のパワーを封殺し切ってしまっている。

ここに私の銃があればと後悔するも時すでに遅し。時間は巻き戻らず、私の銃は寮の部屋に置きっぱなしでここまでワープしてくる事はない。

 

あと、私にできるのは

 

 

「…」

 

『ミ、ミカ様?』

 

『音がしない…まさか、もらs』

 

「…〜♪」

 

『え?歌?』

 

「〜♪」

 

『この歌は…』

 

「〜♫」

 

『これは…Kyrie eleison…?』


 


私の歌声が流れていく。

私の慈悲を縋る声が響いていく。

私の祈りが、祈りがこぼれ落ちていく。

主よ 憐れみたまえと

 

いや、本当。今回私は何も悪いことしてないよね?
助けてくれても良いよね?
本当に助けてください

 

前回歌ったときとは全く感情も込める質も違う祈りを込めて、力強く両手を握りしめ両手を高く挙げて祈る。

 

力強く握った理由が祈るためなのか『ソレ』を我慢するためなのかは、もう私にはわからない。

 

 

だけど、何も起きない。

あのときと同じ奇跡は起きない。

 

 

ああ…もうだめ……なのかな

 

中の音が聞こえなくなる

緊張した時になるキーンとした音だけが耳に響く

 

そして

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『諦めるな!聖園ミカ!』


 

!?

 

突如聞こえたリーダーの声

その声が私の筋肉をキュッと引き締めた

 

ソレに続くかのようにリーダーの叫び声が聞こえる。

 

『私たちが知っている聖園ミカは、そんなことで諦めなかった!!』

 

『色々悪いことしたってのは後から聞いた。でもお前は人を救うことを諦めなかった』

 

『裁判が終わって色々といじめられても、お前は諦めず日々頑張ってきたじゃないか』

 

『そんなお前に憧れたんだ…そんなお前に勝ちたかったんだ。だから...』

 

『だから、許さないぞ!諦めたら!!』

 

『諦めたら絶対に、私は聖園ミカを許さない!』

 

その声は、今日一番に感情が乗っている声であり、

その感情はまるで火傷するかのような熱い熱意、

そう、この声はリーダーの私に対しての告白であった。

 

その声に釣られるかのように、次々に声が聞こえる。

 

『そうだ…そうだ!許さないぞミカ様!』

 

『諦めたら許さない!』


 

『許さない、許すな!』

 

『諦めようとする...』

 

 

 

『聖園ミカを許すな!』




 

 

 


数々の温かい思い

 

その声を聞き私は諦めて弛緩し始めていた筋肉にグッッと力を込めた。

 

そうだ、諦められない。

私はまだお姫様でいたい。お漏らしバブちゃんはいや!


取り戻した力強い想いとともに、私はお腹を押さえ大福のように蹲った。

 

 

と、その時だった。

 

 

 

『え?…うそ』

 

『奇跡だ…』

 

呆然とした声が聞こえる。

だがその声には希望を感じさせる色があった。

 

『やった...助かる。きっと助かるぞ聖園ミカ!』

 

 

嬉しそうな声が聞こえる。

誰かが来たのだ。それも外にいるみんなが『私が助かる』と確信できるよう人物が来たのだ。

 

 

そう、あのときと同じように私が祈り、私を助けてくれる人が...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ん?あのときと同じ?

 

 

 

『彼なら助かる!助ける術を用意してくれるぞ!』

 

彼?

 

『そうですよね……』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『 先生!! 』


 

 

その声が電気信号に変換され、神経を通り、脊髄に届くよりも早く、私の体は自動的に動いた

私の体が最高スピードで扉の前に移動する。

加速の必要がない…ッッ

いきなり最高速度!!

 

構えるのは必殺の型

拳はすでに振り切っている!

奴が、先生に余計なことをいう前に....!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

『先生!!ピンチなんだ!聞いてください今聖園ミカがおもらs』

 

 

「いやぁああああああああああああああああああ!!!!!!」

 

その日、私の神秘()は光をも超えた。

 

 

 

 

 

 

 

<完…?>

 

 





「さて、これが今回の事件の詳細だよ。先生」

「ミカは無事に壁を突き破り楽園にたどり着くことができたという訳だ。納得したかな?」

「ん?随分と微妙な顔をしているね?あのとき何が起こっていたのか訳がわからないと言っていたのは君じゃないか先生」

「シッテムの箱を頼りにミカの場所に駆けつけたら、突如ミカが扉を殴り飛ばした後、先生に語りかけていた1人の首根っこを掴み、正面の壁を全て破壊して逃げていった事。なぜか事件の詳細を知るもの達が口をつぐんでいる事。疑問に思っていたのだろう?」

「え?別に詳細は聞きたいとはいっていない?ソレはもう遅い。先生は聞いてしまったんだ。後には戻れない」

「なんでこんなことを話したかというとね、あの事件の後からミカが恥ずかしがって先生と喋るどころか顔も合わせられないだろう?」

「一日や二日ならまだよかったのだが、二週間も同じ状況が続いているのを見ていると、大好きな先生と会話できないミカがかわいそうに思えてね」

「それなら、全部知ってもらって吹っ切れてもらうのが一番だと思ったまでさ」

「じゃあ次はナギサとナギちゃん部がどうなったかなのだが…ん?事件の詳細を伝えたのはそれだけじゃないだろうって?なぜそう思うんだい?」

「口が笑ってる?…どうもいけない。最近よく表情に出るようになってしまってね。ティーパーティーの一員として恥ずかしく思うよ」

「確かに、正直に言うとミカをからかう意味もあったよ。だがたった今、私は後悔している」

「なぜかって?……後ろを振り返ると良い。私は君の後ろをこれ以上見たくはな……待ちたまえ、私たちはまだ話し合う余地が….」



先生は怯える彼女の横を通り過ぎ、後ろを決して振り返らず、そそくさとその部屋を出た。

「先生?次はどこに行くのですか?」

先生はアロナの質問に答える。

行先は、草むしりをしている彼女達のところ。
ミカも後から来るだろう。

晴れやかな空を窓から見上げながら歩を進める。

後から聞こえる悲鳴(青春)から耳を背けながら






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