ワイの本当の職業が【性騎士】とか言えない   作:恋狸

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動物たちの住む森や自然、愛すべき人間とこの世界を守りたい。


でっっっっ──!!

「おい、起きろ。去勢するぞ」

「ふぁっ!?!?」

 

 どうも。今までに類を見ない最悪の起こされ方をされました。アルスです。

 飛び起きて視界に入ったのは美人──だがしかし去勢芸人のリースである。コイツ相手には恐怖が勝って性欲が刺激されない。

 

「変な起こし方しないでもらえる!?」

「もうすぐ勤務時間だというのに貴様が来てないのが悪い」

 

 え、マジ? 

 と思って時計をチラリ。見事に遅刻だった。

 それは俺が悪いですね。

 

「それはすまん。というか何か好感度下がってない? 俺一応お前に認められた気がするんだけど」

 

 刺々しいリースの様子に思わずツッコむと、彼女は青色の髪をイジりながら鼻を鳴らした。

 キツめの美人としては実に様になってはいる。

 

「ふんっ。【聖騎士】としての実力。貴様が聖女様を護るに値する護衛騎士としては認めた。だが貴様の人間性と下卑た表情は一切認めていない。少しでもおかしな行動をすれば即去勢だ。分かったな?」

「殺すより怖いよその脅し文句……」

 

 常に下半身を美人に狙われている──ハッ! 閃いた!!

 ……いや、でも相手がリースだからなぁ……。

 デレたら絶対可愛いのは間違いないんだけど、ハッキリと「オマエキライ」オーラが出てるんだよな。

 

「何を考えているのかは知らんがさっさと準備して来いッ! この間にも聖女様は誰かにお命を狙われているのだぞ!!」

「……あぁ。まあ護衛としての心構えはしっかりするさ。仕事だし」

 

 遅刻は完全に俺のミスだ。

 わざわざ起こしに来てくれたリースに非はない。起こし方と口調には一匙の文句を言いたいけど。

 

「……分かれば良いんだ」

「おう……で、着替えたいんだけど」

「さっさと着替えれば良いだろう」

「いや俺ノーパンで寝る派だから見えるんよ」

 

 早く出ていってくれませんかね? という目線を向けるが、当のリースは素知らぬ顔だ。

 それどころか馬鹿にしたようにニヤリと笑う。

 

「ふっ、貴様の粗末なモノを見たところで意味はない。だが貴様がしっかり護衛に来るか見張らねばならないからな」

 

 ──はぁー?

 ぷっちーんですわ。もう血管という血管かブチギレですわ。

 

 人格、性格を馬鹿にされるのは良い。

 そんなもん自覚してる部分だってあるし、大して傷つきはしない。はぁ、そうですか、で済ませられる大人の余裕はある。それは嘘かも。

 

 でもなぁ──!!

 

 俺のムスコを馬鹿にするヤツを──許しはしない……ッッッ!!!

 

 俺は無言のままバッと寝間着を抜き捨てる。

 現れたのはバッキバキに割れた腹筋と、均整の取れた体つき。

 そして愛する自身の息子だ。

 

「なっ……!? ごほんっ、まあ、それなりに鍛えて──」

 

 リースは俺の行動に面食らった様子だったが、咳払いをして落ち着きを取り戻すと、上から下へと視線を移していく。

 腹筋を見て多少赤面していたのは可愛らし……ごほん! ともかくとして、徐々に下に移されていく視線は──ついにムスコとかち合い……

 

 

 

「でっっっっっ────!!!!」

 

 

 白目をむいて気絶した。

 

 

 

 

☆☆☆

 

「よう、今日からまたよろしくな」

「……昨日は?」

「昨日はメイとレベル上げしてたな。そーだよ聞いてくれよ。昨日はイビルホーン的なやつと──」

 

 気絶したリースを部屋に放って置き、聖女様の自室に入った俺を待ち受けたのは、一昨日と変わらず窓の外を見つめる彼女の姿だった。

 ただ違うのは話しかければ言葉少なくとも返事が返ってくること。

 

 昨日のレベル上げについて語ると、聖女様は表面上は冷静に取り繕っていても、目の端がピクッと動いたり口の端が震えていて、しっかり話を聞いていることが分かった。

 

 どうしてこんなに無表情になっちまったのかは知らねぇが、少なくとも俺の目線では普通の女の子なんだよなぁ。

 いつか普通に話してやろう、と少しの覚悟を決めた。

 

「……護衛は、そんな感じじゃない、と思う」

 

 話し終えると、ポツリと呟くように聖女様が言った。その無表情の奥には、戸惑いのようなものが見えた。

 

「聖女様は嫌か?」

「……どっちでも、いい。どうせいなくなる」

 

 ふ〜ん、なるほどな。さっぱり分からん。

 さておき、これまでの護衛で何かがあったことは確実だが、わざわざ過去を掘り起こそうとする程デリカシーが無いわけじゃあない。

 ただ、どうもすぐいなくなる、っつー単語がきな臭さもあり少々ムカつきもする。

 

 確かに俺は【聖騎士】じゃなく【性騎士】。

 【聖女】という伝説の職業と並ぶには穢らわしすぎる。率直に言うと汚い。ばっちい。

 

 でも鍛えてきた実力には多少の自信はあるし、どのみち護衛を完遂できなきゃ"死"である。

 

「俺はいなくならない、なんてくっせぇ言葉は吐かねーよ。人間何があるか分からんし、死ぬ時は死ぬしいなくなる時はいなくなる。だがな、俺は一切死ぬ気はない!! どんな手段を使ってでも生き残ってやる。潔さ、誠実さなんぞクソ食らえだ」

 

 ハッ、と笑い飛ばす。

 生き汚いだぁ? んなもん知るか。誰だって死にたくねーんだから足掻くのは当たり前だろ。

 

「聖騎士、らしくない」

「聖騎士、聖女なんて言われよーがただの人間だろうが」

「……!」

 

 聖女様は俺の言葉に目をパチクリと驚いたように瞬きをした。あ、やっべ。

 

「あ、今の言葉ナイショな。教会くんにバレたら処刑されっから」

「……台無し」

 

 聖女様は再び窓の外を見つめ始めた。

 どんな表情をしているか分からないが、決して悪い表情ではないと思った。

 




前半と後半のギャップで風邪引きそう

沢山のお気に入りと高評価、ありがとうございます。
現在進行系で泣き喚いて喜んでおります。
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