ワイの本当の職業が【性騎士】とか言えない   作:恋狸

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タッチ・ザ・リビドー

 やっべ、バチクソ睨んでくるんだけど何かミスったか? まあ、登場の仕方に悪意があったのは認めておこう。  

 

 シリアスな雰囲気が耐えられんくて場を和ませようかと思ったんだけど逆効果だったみたいだな、うん。

 

 なんて冗談はさておき、俺はリースに視線をやる。

 

「一旦二人で話をさせてくれ」

「──【自決の禁止(ピースエリア)】の範囲内にはいるからな。地下牢への扉の前までが限度だ」

「ああ、それでいい」

 

 むしろそのスキルのお陰で安心して話せる。なんという拷問向きなスキルを持ってるもんだと思ったわ。

 自決の禁止。名前通り一見平和的に見えるかもしれないが、その実死にたくても死ねない生き地獄を味わせることのできる最悪なスキルだ。

 

 性格の悪いリース向きのスキルだと言え──あ、はい、何でもないです。……なんで口に出してないのに振り向いて睨んでくるんだよコイツ。

 

「……」

「さて、と」

 

 リースが扉を閉めたことを確認して、俺は少女に向き合う。

 

「どうして聖女さまを狙ったのか──なんて聞いてもまあ答えてくれねーだろ?」

「…………なぜあたしを生かした」

「んー、私情? ……俺はさ、結構人の表情とか感情を読み取ることに長けてんだ。だからこそ、どうしてお前と戦った時に殺意以外に恐怖だとか、怒り、憎しみがあったのか気になった」

「それはきっとお前への感情だ」

「いや、違うな」

 

 【性騎士】である俺に対して恐れ慄いている……訳でもなかった。殺意は本物。でも、それすらも別のナニカに向けられているような気がした。

 

 暗殺者ってことは誰かの依頼を受けているのだろう。普通はそこに感情は付随せず、ただただ機械的に任務を遂行するために動くはずだ。

 

 だが、少女からは圧倒的な感情の昂りを感じた。ただの暗殺者ってわけでもないと俺は踏んだ。

 

「どうしてか、教えてくれないか? 場合によってはお前の助けになれるかもしれない」

「はっ、あたしを助けてどうする! 聖女を襲ったあたしに待つのは処刑だ!」

 

 少女の処刑を望むような姿勢に、俺は目を細める。

 ……忠誠心から自死を望むような表情には見えない。さっきも言ったように、おおよそそういうヤツは得てして自我が薄いからな。

 

 何かがある。しかし、それを聞き出すことは叶わない。絶対に彼女は口を割らないだろう。

 

「あんまり使いたくなかったんだけどなぁ……」

 

 そもそも話してくれる確証が無いんだけど、取れる手段が一つしか残ってねぇ。

 

 ──思い出すのは()()()との会話。

 

 俺に【性騎士】としての力の使い方を教えてくれたよく分からない存在。……アイツと話した記憶の八割が消失しているものの、たった一つだけ憶えていることがある。

 

☆☆☆

 

「まあ、雑な使い方をするアナタには丁度いい雑な技ですかね」

『そんなに雑って言うなよ。俺の心は繊細なんだぜ?』

「図太いくせによくもまあそんな戯言を……」

『太いのは俺のち◯こだけです』

「そこは別に太くないでしょう?」

『あ~お前言っちゃいけないこと言ったね。ぷっつんですよぷっつん。──てかなんで俺の息子の太さ把握してんの!?』

「一心同体(物理)ですからね」

 

☆☆☆

 

 いやいや思い出すのそこじゃねぇよ。

 えーと……確かこの後に……。

 

☆☆☆

 

「さて、この技は無闇に乱用してはいけません。最悪の場合、犯罪者になります」

『どういう警告……!?』

「謂わばこの技は触れた相手の溜め込んだエネルギーを取り込む力。ポーションは用法用量を守る、的なイメージで良いかと思います」

『はぁ』

「しかし、この技の本質はエネルギーを取り込むことにあらず。──他者から()()を奪い取ることにあります」

『性欲を……奪い取る……。──わりぃけど、性欲に素直なのが人間の美徳だと俺は思う。だから、それを取り上げる技ってんなら俺は使わない』

「ふふ、アナタらしい回答ですね。ですが問題ありません。時間経過とともに性欲は回復します」

『先に言ってくれな!』

「まあまあ。……そして、性欲が奪われた相手は、一時的に全身の虚脱感と無気力状態に陥ります。どれだけ強いモチベーションや動機があろうと、この技の前では無力。──その名は」

 

☆☆☆

 

 俺は気づかれぬようにリースからパクッた牢屋の鍵を使って、鉄格子を開ける。

 脱獄に備えて、囚人の手首には吸引の魔道具という、持続的に魔力を奪い取る魔道具があるため脱獄の心配はない。

 

「な、何をする気だ」

 

 急に牢に入ってきた俺を、微かに怯えた目で見る少女。……クックックッ、その顔を恥辱に歪めてやるぜ……この技でな!

 

「そこまで話してくれないなら──体に聞くしかあるまい!」

「……ふんっ! 所詮は男か。だがそんなもので口を割ると思ったら大間違──」

 

 俺は右手に魔力を込め、少女の頭に触り、スキルを発動させる。

 

「【性の握撃(タッチ・ザ・リビドー)】ッ!!」

「──ああんっ!!!」

 

 刹那、少女が艶めかしい声を上げ、凄まじいエネルギーが集まってくる──俺の下腹部……つまりは息子に。

 ぎゅいんぎゅいん!! と集まるエネルギー。

 

「くっ──マズイっ!」

 

 俺は急いで前傾姿勢を取る。

 フル勃起したことを悟られてはマズイ。このままじゃ女体に触れてフル勃起するただの変態と化してしまう。 

 

「──んっ、くっ……ハァッ……あん……!」

「ヤバいて……!」

 

 その間にもエネルギーの吸収は止まらず、変化は体だけには留まらなかった。

 

「性欲が……抑えきれないッ……!」

 

 見る者全てがエロいものに見えてくる。

 牢屋? いや絶好のシチュじゃねーか。

 銀髪貧乳男装暗殺者と拘束シチュを加えるなよ。勃つだろーが。あ、もうすでに勃ってたわ。

 

 ──性欲を奪い取る。

 

 これは何も、人のエロい欲求を吸い取るってものだけじゃない。

 性欲とは謂わば気の根源。やる気、殺る気、ヤる気……様々なモチベを司るものなのだ。

 

 【性の握撃(タッチ・ザ・リビドー)】は、そんな衝動《リビドー》を純度100%の性欲に変換して根こそぎ奪い取るスキルだ。

 

 ゆえに、奪い取ったヤツのモチベが高ければ高いほどに高純度の性欲となって俺に吸収される。

 

 つまりは──

 

 

 

 ──俺はギンギンだった。

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