「ぐぬぬぬ……」
顔が険しくなる俺。なぜか対応するように顔が険しくなる聖女さま。どことなくショボンと落ち込んでいる様子だったが、ようやく落ち着いて立ち上がった時には、聖女さまはすでにやる気に満ち満ちていた。
「魔力強化無しで五周ね。うん、悪くない。ところで聖女さまのレベルってなんぼなん?」
「レベル……36」
「善行だけでそんなに上げたのか……すげぇな」
魔物を狩るだけがレベルアップではないが、確か【聖女】がレベルアップするには善行を積まなければいけない、的な制約があった気がする。
役割的にも外に連れ出して魔物を討伐させるわけにはいかねーし。
「よし、じゃあ早速修行のほうを始めて行くが──聖女さまには魔力強化を身に着けてもらう」
「魔力、強化?」
聖女さまがコテンと首を傾げた。かわいい。
……ん〜、わりとオーソドックスな手法だと思ってたけど一般にはあんまり伝わってないんかね?
「まあ、簡潔に言えば魔力を使った身体能力の強化術のことだな。これができるかできないかで身体能力が雲泥の差なんだよ」
「どうやってやるの」
凄まじいまでのやる気。傍目には相変わらずの無表情に見えるだろうけど、俺には背後に燃え盛る炎のような情熱があることが分かる。
そもそも食いつき方が違う。あと近い。また屈まなきゃいけなくなるから離れてもろて。
俺は自ら数歩聖女さまと距離を離して説明する。
「魔力強化は、緻密な魔力操作が必要でな。全身に魔力を行き渡らせて、それを回転するイメージかな。つっても一発で成功するのは不可能だから、まずは部分の強化からしていこう」
俺ですら魔力強化の習得は時間がかかった。
……いや、俺に才能が無いだけっていう線はある。むしろそっちの説の方が合っている気がする。悲しいから考えたくねーけど。
……俺のことはさておき、まずは手を……その次は足を……というように、ステップを積んで、魔力で身体を強化するコツを学ばせるのが目的だ。
「むぅ……」
「ははっ! 随分と不満そうじゃねーか。修行は積み重ねだからな。そんな劇的に強くなれる修行法があんなら世の中強者だらけだよ」
笑いながらそう言うと、聖女さまはまるで「なんで言いたいことが分かったの?」みたいな表情をしていた。
少し前にも同じようなことを聞かれたが、俺の観察眼が優れてるって言ったって限界はあると言いたいのだろう。
けれども、聖女さまは意外と──。
「意外と分かりやすいぜ? 聖女さまの感情」
「はじめて言われた」
「そりゃ聖女さまのご尊顔をジロジロ見てたら不敬になるかもしれねーからな」
ははっ、と笑って茶化すと、聖女さまはジト目で不満そうに俺を見た。
やれやれ、嘘じゃないっての。
「さ、時間もねーしさっさと修行始めんぞ」
そう言い放って、俺は懐のとある
「ソレは……?」
「え、猫耳」
「どうして……猫耳……」
「まともに修行やってる暇はねーからな。要は罰ゲームだ、罰ゲーム。時間内に指定した部分の魔力強化ができなかったら、猫耳を着けて猫のモノマネをしてもらう」
……何修行にかこつけて性癖満たそうとしてんだ? って? ……うん、まあ否定はしない!
でも一応理由があるんだよ理由が。
実際俺が修行に励んでいた時も、師匠から課題を出されていた。例えば落ちてくる葉を全てを四等分に斬り落とせ、だとかな。
んでもって、クリアできなかった場合、厳しい罰が用意されていた。
それがもう、嫌なほど厳しくてだな……。
罰を回避したい欲求がモチベーションとなって、結果的に俺は強くなることができた。
それの簡易版をやろうということだ。
見るからに聖女さまは嫌そうな表情をしているし、こういう場合は羞恥心を煽るのが一番効くって誰かが言ってた。
ちなみに猫のモノマネが罰である必要はない。
俺の性癖ですけどなにか?
☆☆☆
修行一日目。
まずは懇切丁寧に魔力強化の方法を教えた。
常日頃から回復魔法を使っていたこともあって、魔力操作の腕前はなかなかなものだった。
座学の後に実践。
今日の課題は右腕の強化である。
「にゃ、にゃーん」
「甘いッ! もっと媚びた感じでッ!」
修行二日目。
前日の課題である右腕の強化に成功した。
とはいえその精度はまだまだ甘い。少なくとも、実戦レベルに仕上げるには、強化を発動するまでの時間を短縮するに他無い。
ちなみに今日の課題は右足の強化である。
「にゃーん、にゃん」
「違ぁうッ! それは猫のフリをした人間だ!」
修行三日目。
足の強化で躓いている。
どうやら強化した自分の姿をイメージするのが難しいらしい。魔力操作は基本的にイメージ。
腕の強化は力持ちになる自分、というイメージで成功したらしいが、足となると難しいっぽい。
ということで、走りながら挑戦したら良いんじゃない? って感じで雑にアドバイスしたら成功していた。才能って羨ましい。
今日の課題は四肢の強化です。
「フシャァ〜」
「良いぞ良いぞ! 猫に近づいてきてる!」
修行四日目。
あらやだ才能って怖い。
爆速で魔力強化をものにしてきている。四肢の強化も完了したため、全身の強化は時間の問題だろう。
あとは最後の鬼門である脳への強化。
これは思考速度や反射速度を向上させる効果があることから、習得は必須となっている。
大まかな理論は伝えたから、あとは実践あるのみ!
「な〜お」
「やっぱもうちょっと猫っぽくなくていいよ」
「……!?」
修行五日目。
脳への強化に成功した。
俺でも習得に一年かかったのに……。まあ、状況的に良いことではあるんだけども、師匠としてはちょっとだけ複雑である。
あとは脳の強化も含めた全身の強化で、魔力強化の修行は完了となる。
「にゃーお」
「今わざと失敗した?」
「……してない」
なんで猫の真似にハマってるんだよ。
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