ワイの本当の職業が【性騎士】とか言えない   作:恋狸

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貫通

 

 ──何が起きた……ッ! 

 

 一瞬にして加速したかと思えば、次の瞬間にはもう攻撃が飛んできていた。

 

「あっしも他対一は得意じゃない。……なら分断すれば良いよね? ってね」

「よくもアルス様を……!」

 

 俺死んでないよ? 

 ペッと血反吐を吐き出し、剣を握り直す。

 メイはパワータイプで、スピードタイプのあの男とは相性が悪い。現に攻撃は躱されていて、圧倒的な速度に翻弄されている。

 

 だからこそ、俺が攻撃を仕掛けて隙を作り、そこにメイの攻撃力を活かすという手段がベスト。

 

「……そう簡単には無理か」

 

 とりあえず戦線復帰してから考えるとするか、と立ち上がると、リースが駆け寄ってきた。

 

「おい貴様、私も参戦したほうが──」

「いや、ダメだ。変に隙を突かれて聖女さまに危険が迫るのは見過ごせない」

「くっ……ならば回復魔法と補助魔法は受けろ」

「頼んだ」

 

 リースは苦虫を噛み潰したような表情をしながら、俺に回復魔法と速度上昇の補助魔法をかけた。

 蹴られた傷は癒え、更に体が軽くなった。

 

 これで少しは男の動きに付いていけるはず。

 リースに軽く礼を言って、俺はメイの攻撃をナイフで防御した男の隙を狙って剣を斜めに振る──が、スッと横に回避された。

 

「メイ。大丈夫か」

「ハァ……ハァ……ええ。ですが私では相性が悪いようです」

「だな。俺がどうにか隙を作るから、メイはその隙を頼む」

「分かりました」

 

 軽く作戦会議を行う。

 その最中も、男はヘラヘラと笑いながら待っていた。完全に舐められているな。

 慢心という言葉がこれほど似合う奴はなかなかいねぇぜ。

 

「作戦会議は終わったぁ?」

「あぁ。完璧だ……ぜ!」

 

 言い終わるやいなや、俺は大振りの一撃を放つ。

 当然その攻撃は防御され、その隙を狙って蹴りが飛んでくる。

 

「小出し【性なる盾(ホーリーシールド)】!」

「これは……【聖騎士】のスキルのようだねぇ」

 

 蹴りは、俺のスキルによって阻まれる。

 消費する性欲を小出しにしつつ、狙った位置のみに盾を出現させる──ぶっつけ本番で不安だったが、無事に成功したようだ。

 しかし、十分な隙を生み出すことはできず、バックステップで距離を取られてしまった。

 

「ちっ、コイツ冷静だな……」

 

 引き際を理解できている。

 

 ──間違いなくコイツは童貞じゃない。

 

 

「今度はあっしの番だ」

「……っ! 速いっ」

 

 非童貞の早漏か……!!

 男がこれまで以上の速度でナイフを振り下ろしてくる。

 厄介なのが、攻撃を防がれる度に立ち位置を変更して攻撃に一切慣れさせてくれない。

 

 面倒なタイプだなまったく……!

 俺は小さく毒づきながらナイフの攻撃を防ぐ。

 その度にキンッ! と甲高い音が鳴り響く。

 小回りの利かない長剣だと防戦一方で、ナイフにだけ警戒していると──、

 

「【性なる盾(ホーリーシールド)】ッ!」

 

 

 ──蹴りが飛んでくる。

 

「ひゅ〜、やるねぇ」

「はぁ……はぁ。舐めてんじゃねぇぞゴラ!!」

 

 俺が隙を作ると宣言した手前、メイは攻めあぐねているようだし、男は俺と違って一切息切れしてない。……これが経験の差ってやつか。

 

 ──それならそれで、方法がある。

 

 再び攻めてくる男。

 ナイフを弾いた瞬間、俺は脱力しながら身を屈めた。

 

「んなっ!」

 

 そして、腹に魔力を集めて勢い良く姿勢を戻す。

 男が驚愕している隙に、俺はナイフを剣で弾き飛ばした。

 生まれる隙──今がチャンスとばかりにメイが後ろから駆けてくる。

 千載一遇……だが何かがおかしい。こうも簡単に武器を手放すか?

 

 不意を突かれたにしては行動が余りにお粗末すぎる。

 まるでわざと隙を生んだような──。

 

「……マズイッ」

 

 ふと、男の表情を伺うと、まるでイタズラが成功した子どものようにニヤリと笑っていた。

 

「ダメだメイッ! 罠だッ!!」

「え──」

「だいせーかい〜!」

 

 叫んだ時にはもう遅かった。

 飛び出してきたメイを迎え撃ったのは、()()()()()()()()二本目のナイフ。

 【性なる盾(ホーリーシールド)】で守ることも間に合わず、大振りの攻撃の隙を突かれて、メイは袈裟に切り裂かれながら吹っ飛んでいった。

 

「──メイッッ!!」

 

 ──落ち着け。今こそ冷静になる時だ。

 派手に吹っ飛んでいったけど、ギリギリ上体を逸らす回避行動が間に合っていた。……重傷は免れないが、致命傷になならないだろう。

 

 ……でも冷静になるの無理!

 

「このド腐れ野郎がァァァ!!」

 

 頭は幾ら沸騰していても良い。

 けれど、行動だけは冷静に……と、落ち着いて攻撃を仕掛ける。

 しかし、その尽くがナイフによって防御される。……あまりに隙がない……!

 

 そして、少しでも俺が隙を見せると、即座に反撃を仕掛けてくる。戦い慣れしていることが分かる動きだ。

 まずは動きを止めないと話にならない。

 

 そこで、俺は目の前に【性なる盾(ホーリーシールド)】を構築し、それを起点に攻める作戦を立てる。

 

「【性なる盾(ホーリーシールド)】!」

 

 残存性欲の八割を消費した盾はかなりの強度がある。

 そう簡単に破られはしないだろうという心積もりは、ニヤリという笑みとともに見破られた。

 

「それはもう見たよ────【貫通】」

「あっ……あ……」

 

 痛い痛い熱い熱い……ッ!!

 ゆっくりと自身の身体を見下ろす。

 そこには、腹部を貫通したナイフがあった。

 

「暗殺者の職業レベルが100に到達した際に覚えるスキル【貫通】。これは如何なる防御をも突破するスキルなんだけど──【聖騎士】のスキルも例外じゃなかったようだねぇ」

 

 ──体が焼け付くように痛い。

 

 力が入らない。

 激しい痛みと失血によって、体が崩れ落ちるように倒れる。

 

「──ルス……!」

 

 何かが聴こえる。必死に叫ぶ声。

 まさか聖女さまが俺の名前を初めて呼んで──、

 

「アルスッ! 貴様! 立て!!」

 

 ──お前かよ。

 リースの呼びかけを最後に、俺は意識を失った。

 

 




アルスくん、お腹の処女散らしちゃったね(激キショ感想)。

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