ワイの本当の職業が【性騎士】とか言えない   作:恋狸

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めりーくりすます。明日も更新します。


紳士の嗜み

 無事に公務が終わったようで、二日目の昼にはリアイエスの村を出発することができた。

 

 村人たちに万雷の拍手で送り出され、ローウェンはニコニコと満面の笑みで後方理解面をしており、カルミアとガリアはなぜか渋い表情をしていた。

 

 

 ……ま、まさか俺の説得方法を知ってしまったのか……? いや、誰かと話しているところは見ていない。伝えられるほどの時間はなかったはずだから多分大丈夫……。

 

 

「……アルス様ぁ〜? あくまで秘密裏の任務であることをお忘れでは無いですかぁ〜? 目立たれると少々困るのですけど〜」

「いや俺もどうしてこうなったのかあんまり分からなくて………」

 

 村を離れて少し経つと、馬車を止めて説教タイムが始まった。めちゃくちゃその通り過ぎて何も反論できねぇよ俺……!!

 

 目立つことは避けなければいけないのは俺とて分かってるんだけど、まさかあそこまで感謝されるなんて誰が予想できんねん。俺、自慰行為の大切さを説いただけだぞ?

 

 なんて言い訳をしていると、馬車の扉からにゅっと顔だけ出したルナが言った。

 

「でもみんな、笑顔だった。アルスは悪くない」

「……まあ、聖女さまがそう仰るなら」

 

 ルナの言葉にカルミアは紫色の長髪をイジりながら、ため息を吐いて渋々といった様子で納得した。

 うおおおお、助かったぞルナ!! 

 んでもってルナの言葉なら納得するんかい。ここでも【聖女】と【聖騎士】の力関係が明確化されてる気がするぜ……。

 

 まあ、前もリースが言っていたように必ず世界に一人現れ、数多の人を救ってきた【聖女】と、伝説的な職業ではあれど二百年間現れなかった【聖騎士】とで対応が変わるのは当然の話だろう。ましてや俺【性騎士】だからどんな扱いされても文句は言えませんね、はい。

 

「それでは先に進みましょうか。今日は野営も挟むと思いますから、聖女さまにはご不便をおかけしてしまいますが……」

「大丈夫。アルスがいるから」

「……そうですかぁ〜」

 

 その瞬間、カルミアはギンッ! と強い視線で俺を睨んだ。あの、さっきは感謝したけど聖女を信仰している人間に向かって贔屓発言するのやめてね??

 ……いやまあ天然なルナのことだから、知ってる人間が近くにいると安心して眠れる……的なニュアンスなのは観察してりゃ分かるけど……それ俺しか分からないんだよね。

 

 ……これは完全に嫌われちまったかなぁ……エロいお姉さんに……。

 

 がっくりと肩を落としつつ、俺は内心そこまでショックに思わなかったことに驚きを感じていた。

 

 ……好みドストレートなはずなんだけどな……何でかカルミアがそこまで”良い”とは思えないんだよな……あ、性欲は別です。あれは感情じゃなくて本能なんで!!

 

「では、アルス様は付きっきりで寝ずの番をしていただきましょうかねぇ〜?」

「い、いや、流石に寝ないとヤバいっていうか」

「うふふ〜、冗談ですよ」

 

 カルミアは妖艶な笑みを浮かべて笑った。目以外。

 めちゃくちゃ睨んでおいて冗談は信用できないだろ。今も睨んでるぞコイツ。

 戦々恐々としながらカルミアの追撃を躱し、何とか巡礼の旅は再開した。

 またしばらく暇が続きそうだな。

 

☆☆☆

 

 夕方になった。

 道が見えないまま先に進むのは非常に危険だ。

 だから野営は夕方には準備を始め、朝方には出発できるようなスケジュール間で動くことになっている。

 

 野営に関しては初心者な俺は、御者であるローウェンとガリアがテキパキと準備をするのをぼーっと見ながら大きな切り株にルナと二人で座っていた。

 

「……野営、ちょっとたのしみ」

「城にいちゃできない経験だもんな」

「うん」

 

 微かに表情を柔らかくしてルナは頷いた。

 夕陽に照らされ輝く銀髪は幻想的で、今のルナは物語に載るような【聖女】と言えるほど美しかった。

 さしもの俺も少しだけ見惚れてしまった。

 ……ハハハ、節操なしだな俺のムスコは。落ち着け落ち着け……。

 

 ふぅと息を吐いてムスコにさよならを告げてもらう。『マタクルヨー』という謎の声が聞こえた気がするけど、ちんちんは喋らないので気の所為です。

 

「貴族はどうか知らんけど、普通に生きていたら野営はいつか経験することだと思う。ルナもさ、そういう経験を積んで成長していこうぜ」

「……わたし一人じゃむり、かも」

 

 ふっと笑いかけると、ルナはハッとした表情を浮かべると、赤面しながらそう言った。

 ハッハッハッ、可愛いやつめ。他異が無いのは童貞だからこそ理解しているが、ちょっとグッと来てしまった。

 

「当たり前だろ。誰しも一人で成長していくわけじゃねーんだ。俺もいるしメイもいるし、不覚ながらリースもいる。一人じゃできない経験をいっぱいしていこうぜ」

 

 童貞は一人じゃ卒業できないですからね(台無し)。

 お願いします。俺も成長したいです。

 

「うん……ありがとう」

「良いってことよ」

 

 そんな邪な考えを抱いているとも知らずに、ルナは微笑みながら感謝を告げた。何だかずっと邪悪な考えをしているから申し訳なくなってくるぜ。別に嘘はついてないんだけどさ。

 

 ルナには【聖女】としてだけじゃなくて、普通の女の子としての経験も積んで欲しいって俺はずっと願っている。

 まあ、野営が普通の女の子の経験とは言い難いかもしれんが、そこはメイとリースあたりに協力してほしいところ。普通の女の子ってなんですか。童貞に分かるわけないです。

 

 はははー、と内心自虐していると、ルナが不意に意を決したようにぐっと拳を握って爆弾発言をかましてきた。

 

「アルスも……したい経験があったら、協力する」

 

「スゥーーーーーーー……」

 

 言っちゃいけねぇだろうがよォ!! そういうことはさァ!! メイさん、リースさん、おたくらルナにどういう教育してるんですか。

 男にそんなこと言っちゃダメでしょうが!!

 ……いや待てよ? ワンチャン、ルナもそういう事良いよ、っていうオッケーサインなのでは──、

 

 ──ダメだめっちゃ目キラキラしてる!! 善意だコレ!!

 

 俺は心の中で血の涙を流した。

 洗い流すのは俺の邪な心と性欲……後者は無理だったようです……。

 

 なので俺は懐からサッと()()を取り出すと、カポッとルナに装着させた。

 

「……にゃあ」

「順応早いなおい」

「散々、やらされたから……」

 

 修行の時に死ぬほど猫のモノマネをされたのを憶えているらしい。幸いなのは嫌そうじゃないということくらいか。

 

「初体験は、いいの?」

「ぐふっ……! ふっ……経験はな──しようと思ってするものだけじゃない、ってことさ」

「ふーん」

 

 しようと思ってもできない経験もあります。

 にしでこの娘は一々発言が危ういんだよなァ……!

 将来変なヤツに騙されないか心配だよ俺は。あ、そういうヤツらから守るのが俺の役目か。俺も変なヤツだけど大丈夫そ?

 

「というか──どうして猫耳持ってきてるの?」

「紳士の嗜みだからさ」

 




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