ワイの本当の職業が【性騎士】とか言えない   作:恋狸

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どないすればええねん

『好きに揮いなさい。培ってきた力も性欲(それ)も、結局は己に起因しているモノです。私には……持ち得ないものですからねぇ』

 

☆☆☆

 

「誰だよお前……」

 

 夢の中で好き勝手生きろとお節介的な助言を受けた件について。

 普通に誰だよお前。

 好き勝手生きるとか当たり前だろ。言われんでも好き勝手振る舞ってるし好き勝手生きてるわ!

 

 ……まあ、王命で王都に行くのは、ね?

 仕方ないんよ。おけ?

 

 なんて自己保身に走っていると、聞き覚えのある声が聴こえた。

 

「起きましたか」

「俺どんくらい寝てて────え、誰?」

「メイです」

 

 ふぁっ!?

 え、メイ? このドチャクソ美人が!?

 

 眼の前にいたのは、金髪ロングの超絶美人。

 顔がえげつない程整ってるのもそうだが、吸い込まれるような切れ長の金色の瞳、雪化粧のように幻想的で白い肌。

 

 紛うことなきドタイプの美人ですありがとうございます。

 

 つか良く見れば例の黒い鎧は纏ってるけど……何で兜取ってんだ? というかあのスキル全力で使ってから記憶ないんだけども……。

 

 すると、妙にキラキラした瞳で、メイがバッと片膝を突いて頭を下げて言う。

 

「これまでの非礼、お詫びいたします。貴方様……アルス様は紛うことなき聖騎士だということが分かりました。私の攻撃を防いだあの盾。そして強力無比な攻撃と美麗な技術。そして、アダマンタイト製の私の兜を容易く打ち砕いた技。どれをとっても完璧でございます。私、メイ、感銘いたしました」

「…………」

 

 めっちゃ喋るじゃんコイツ。こわ。

 

 ……なんのこと? とか言える雰囲気じゃねーんだが。十中八九俺が意識を飛ばした後の出来事なんだろうけどさ。

 え、俺がメイを倒したって? 兜までぶっ壊して? ムリムリムリ、何言ってんだお前できるわけねーだろ。

 

 ……あの夢で変なアドバイスしてきたヤツ。

 姿も靄で覆われてて知らんけど、アイツが何かした可能性は十分にあるな。

 

 ──まあ、とりあえず好都合ってことで頷いとこ!

 

「あぁ。まあ、当然……だな」

「……ですが、最初からあの技を使わなかった理由は何ですか?」

「え、えーと、あれだよ。メイの力を試してたんだよ。【黒騎士】の力を確かめたくてな!」

「なるほど、そうでしたか。そんな深謀遠慮があったとはつゆ知らず」

 

 んなわけねーだろ適当だよボケ!

 180°態度が変わってるんですけど。

 やりづれねぇなクソが。

 

 ……とはいえ美人に傅かれるのは素晴らしい快感ですがね……フフ。

 

「ってことは俺が【聖騎士】ってことも分かったし予定通り王都に行く感じ?」

「ええ、お約束どおり王都までお連れし、王と謁見していただきます」

「了解。何をするのかはまだ教えてくれないのか?」

「そこから先は私の管轄ではないので、お答えすることはできません。申し訳ありません……」

 

 しゅんっとしょげるメイ。

 ……そんな可愛い表情するタイプじゃねぇだろ!! 今更そんな表情するな! 好きになっちまうだろうが!!

 

 勿論声には出さんがな。

 俺は自重できる変態なんだ。

 例え馬車の中で息子がおっ勃つことがあっても、華麗に足を組んで誤魔化すことができるのだ。

 そんな配慮に溢れた俺が性欲に支配されて行動するわけがない。

 

『好きに揮いなさい。培ってきた力も性欲(それ)も、結局は己に起因しているモノです』

 

 ブンブンと頭を振る。

 何で夢の中の出来事を思い出すんだ俺は。

 

 人間の本能に向かって誘惑してくるヤツは碌でも無いって相場が決まってんだよ。

 

 

「あ、ちなみに俺ってどのくらい寝てた?」

「一日半ですね。もう王都に着きますよ」

「ふぁっ!?」

 

 金髪美人と俺の二人きりドキドキ野営は!?!?

 無いの!?!? じゃあ死ね!!!!!!

 

 御者? 知らない子ですねぇ。

 

☆☆☆

 

 

 ドキッ! 美人と野営チャンスっ!

 が俺の大寝坊によりふいになってしまった俺は、酷く気落ちしていた。

 年寄りしかいない村から出て、大凡(おおよそ)初となる超絶美人女性。

 浮かれない方がおかしいってんだ。

 浮くのか立つのかは置いておいて、確執が取れたからには是非ともこなしておきたいイベントだったのだ。

 

 それが? 起きたらもう王都?

 というかこういうのって膝枕で起きるパターンでは? 鎧で痛くても俺は喜ぶよ。当たり前だろ。

 

「どうかいたしましたか?」

「いや……随分とひっそり王都に入るんだなって思って」

「良くも悪くも私の顔は広く知られております。加えて、【聖騎士】が新たに現れたという情報は現在秘匿されています。ですので、目立つのを避け、すみやかに事を済ませる予定です」

「まあ、【聖女】が現れた時も俺ん村まで情報が届いて大騒ぎだったからな」

 

 しかも確かその時【聖女】が5歳かそこらの年齢の時だろ?

 ったく、ガキ囲んで祀り上げて何が楽しいんだか。有名な職業っつたって一人の人間だろうが。

 

 ……なんてことを言うと教会に怒られちゃうんで口には出さないけどな!!

 

「……そうですね」

 

 ははっ、と笑いながら言ったのだが、横を見るとメイが憂いを帯びた表情で遠くを見据えていた。

 何かしらのトラウマに触れてしまったのか。

 ただデリカシーの欠片もない俺は、美人はどんな表情しても美人なんだなぁ、とかクソどうでも良いことを考えていたのである。

 

 ──馬車が進む。

 城の裏口(?)から入って行き、少し進んだところで止まる。どうやらここからは歩いて行くようだった。

 

「でっか……」

「アルス様は王都は初めてですか?」

「あぁ。田舎暮らしには何もかも新鮮だよ」

「ようこそ王都【ヴェール】へ。歓迎いたします」

 

 そう言って、メイは微かに微笑んだ。

 そよ風で美しい金髪が揺らぎ、それを片手で押さえるメイの姿は、まるで一枚の絵画のようだった。

 

「うっ……露骨に女性の免疫無いのが出てんぞ俺ェ……!」

 

 思わず見惚れてしまった俺はニヤけそうな口元を押さえて小声で呟く。

 その表情にメイは首を傾げる。

 

 やめろ俺の性癖を刺激するな……!!

 

 

【年上の無表情金髪美人が俺にだけ見せる笑顔】

 

 とか嫌いな奴いないだろッ!

 いたら殺す。俺にだけじゃないだろ、とか言ったやつも殺す。

 良いんだよ。

 妄想の中だけはせめて俺だけにしてくれ。じゃないと歪む。俺の汚い心が。

 

「こちらからお入りください」

 

 案内に従って進む。

 そこはもうすでに王城の中のようで、キラキラと眩しい装飾が至る所に散りばめられている。

 どーしてこう金持ちってのは金色を好むのかねぇ、とか前は思ってたけど、師匠が「金は富の象徴。一国を束ねる主たるものが豊かに暮らしておらぬと、民もまた貧しいと思われるのじゃ」とか言ってたから納得はしてる。

 

『その分、メッキが剥がれるのも一瞬じゃがのう』

 

 とかも言ってた。台無しだよ師匠……。

 

 まあ、とはいえこんな豪華な場所に行ったのは初めてなわけで、キョロキョロと視線を張り巡らせていると、メイがクスリと笑った。

 

「物珍しいのは分かりますが、もうすぐ玉座の間に着きますよ」

「いやぁ、金を実物で見たの初めてだからついつい」

 

 壁からちょっと金引っ剥がしてもバレねぇかな、とかは考えてない。本当だからな!!!!

 

「──この扉を開けると王がいらっしゃいます。非公式の場ですので、正式な挨拶等は不要ですが、くれぐれも失礼のない態度でお願いいたします。ここから先はアルス様のみとなりますので」

「さすがに王様相手に失礼するほど馬鹿じゃないさ。じゃあ行ってくる」

 

 どうやらメイとはここで一時お別れのようだった。付いてきてくれれば目の保養になったんだが仕方ねぇか。我ながら思考が下世話すぎるな!!

 

 ──扉を開ける。

 自国の君主に会うというのに、俺は不思議と緊張していなかった。

 やらかして打ち首晒し首ィ! になる危険性はあるけど、まあその時は自業自得だし潔く散る。

 

 ある種の覚悟を決めつつ、部屋の中に入る。

 かなり広い場所だ。

 赤と金の装飾が施されたカーペットが入口から真っ直ぐ敷かれていて、その先には一際大きな椅子──玉座がある。

 

 そこには初老の男がいた。

 肖像画でも見たことがある、第32代の王、サイラス・フォン・ライツハルトだ。

 一見するとただのお爺ちゃんだが、こちらを見つめる眼光は鋭く、抜身の刃のようだった。

 

「…………」

 

 黙ったまま俺は歩き、玉座から少し離れた位置で跪いた。

 

「──面を上げよ」

「はっ」

「そう畏まらずとも良い」

 

 だからって敬語外したら打首ですやん。

 いやお前はゼロか百しか無いんか、って話だけど。村にいたら敬語使う機会とか無いんだよなぁ……。

 最低限の礼儀は師匠に教わったけどさ。

 

「お主が【聖騎士】を授かったアルスか。儂が生きている内にその職業を拝めるとは思わなんだ」

「はっ、有り難いことに【性騎士】を授かりました」

 

 嘘は言ってないヨ。

 ちょっとニュアンスと当事者意識が違うだけだヨ。もう誤魔化せる領域に無いし認めるしかねぇんだよなぁ! クソが!

 

「すでに【黒騎士】より話は聞いておる。Lv.1の身でありながら奴のスキル攻撃を防いだらしいな。今一度、その力を見せてはくれんか?」 

「………………はっ!」

 

 断れば死なんよ。このセリフ何回目だ。

 端から断れないことを質問にするのやめてもらってもいいですかね。

 全然好きなタイプは? 性癖は? とか聞かれたら喜んで答えるんだけどね。

 

 俺が心中渋々に頷くと、どこからともなくローブを羽織った妖艶な女性が現れた。

 

 うひょおーー! こういうのこういうの!

 こういうの持ってたんだよ俺は!!!

 

 もうおっぱい出てんじゃんほぼ!

 何でローブ着てんのに前がら空きなんだよ! 意味ないだろ!! 谷間にほくろあるのエロすぎだろ!

 

 内心大興奮の俺であった。

 黒髪ロングで、垂れ目の妖艶なお姉さん。

 こんな要素があって興奮しないのは逆に失礼だと思う。

 

 そんなゲスな心は、次の王のセリフによって消えた。

 

「彼女は宮廷魔術師団長だ。Lvは86。今から威力を絞った魔法を放つからスキルで防ぐのじゃ」

「……はっ!?」

「じゃあ撃つね〜」

 

 違う! 今のは了解の「はっ!」じゃないんだ!! ……あの。撃つね、じゃなくて。

 焦りでテンパる俺だが、状況は待ってくれず、お姉さんが徐ろに放った火球が目の前に迫っていた。

 

 ちょ、建物の中で火の魔法使うやつがどこにいるんだよ!!

 

「くっそ、やるしかねぇじゃねぇか──【性なる盾(ホーリーシールド)】!!」

 

 今度は蛇口から出る水を絞るように、使う性欲の量を減らしていく。

 宣言通り魔法には余り威力が籠ってないように見えたし、これなら大した性欲を使わずに防げるはずだ。

 

「おお! これが【聖騎士】のスキルか!」

 

 ──俺の目の前に光り輝く盾が出現し、火の魔法を完璧に防ぎ切った。

 それと同時に微かな脱力感が襲う。

 

 そして──世界がキラキラしているようだ。

 

「ふぅ……どうでしょうか。これが私の力です」

「うむ、間違いなく【聖騎士】の力のようだ。今日はその確認がしたかったのじゃ。話に聞くのと実際に見るのとじゃまた違うからのう。詳しい話は後日追って話す。下がって良いぞ」

「はっ、失礼いたします」

 

 どうやら()の誤解は解けたようだ。

 まあ、誤解ではないのだけれどね。聖か性の違いだし。

 生命の誕生と言い換えれば神聖だし。

 

 玉座の間を出る。

 さて、トレーニング……いや、太陽を見ながら優雅に過ご──待て待て待て何だこの丁寧な暮らしみたいな思考は。

 

()だけど俺じゃない、みたいな謎の感じになってたんだけど……これが性欲を消費するってことか……」

 

 今度はちゃんと記憶もあったけども……。

 あれ、思ったよりデメリット多くね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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