ギャルとブレンパワード   作:vespa MDRN

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めちゃくちゃ今更ですが、英理佳は髪をツーサイドアップに結っています


リバイバルって、ダブルなの!?

 グランチャーから逃げてきた英理佳は、窮地を救ってくれたコモドにあれこれ聞かれることとなった。アメリカからやってきたこと、ブレンパワードのこと。そしてクルーエル・ブレイズという変人に付きまとわれていることも。

 

「なら、あなた達は民間人なのね?」

「いや私は……」

「そーなんすよ! ホントこんなところに来るつもりは無くて……」

 

 英理佳は言葉を遮って返事をするがブレイズは、まぁいい、と水に流す。彼女には、こういうところがある、困った子なのだと自分に言い聞かせて。

 

「あれって?」

 

 英理佳は正面を指をさして見せた。その先には一人のブレンパワードがおり、こちらに向かって飛んで来ているのだ。それは特徴的な砂色の体色に優しい瞳──紛れもなくヒメ・ブレンだった。だが何故かハッチは開いたままで、その上には人が乗っている。オルファン研究の第一人者である伊佐未夫妻の息子、勇だ。

 

「ノヴィス・ノアの……。それにあのブレンパワード達は?」

「コモド、敵と接触したの!? それにブレンと、この……なんてヘンテコなブレン!」

 

 ヒメ・ブレンのパイロット、宇都宮比瑪はブレイズのブレンパワードの姿にあんぐり口を開けた。さすがの勇もコメントに困り、何も言えずに苦い顔を浮かべている。それを見て英理佳も、そうなるよなぁ、と半笑いで、もう一度、例のブレンパワードを眺めるのであった。

 

「民間人よ。それよりもグランチャーの数が多いわ。七、八機はいる。プレートも四枚はあった」

「そんなに出たのか」

 

 勇が目を見開いて驚いていると、それを聞いた英理佳は「普段は少ないの?」と訊いてみるが「民間人には関係ないことだ」と淡々とした口調で返された。その対応に不機嫌になった英理佳は、勇の乗るヒメ・ブレンに組み付く。

 

「ちょっとさ~、そういうのは冷たいんじゃない?」

 

 まるでカツアゲするかの勢いで接触するのだが、衝撃でハッチという不安定な場所でバランスを崩しだす勇。振り落とされそうになるのを、なんとか両足でしがみつくが、落ちるのは時間の問題だろう。

 

「あ、ごめん」

「落ちるか~!」

「コモドさん!」

 

 比瑪の掛け声でイランドがヒメ・ブレンの足元に素早く移動する。コモドは飛び移ることを催促するも、勇はそのことの意味を見出せないと、拒否する。実際イランドは一人乗りの戦闘機。彼が飛び乗ったところでキャノピーは閉じられないし、出来たとしてもすし詰め状態だ。

 しかし、そんな勇の抵抗むなしく、ヒメ・ブレンが角度をずらしたことで強制的に乗り換えさせられる。結局、イランドは勇をキャノピーに張り付けたままで飛行することになった。そんな滑稽な様を見て英理佳はクスクスとこみ上げる笑い抑えている。

 

「君、笑っている暇があれば彼をブレンで運んでやれ。それくらいは出来てもらわなければ困る」

 

 ブレイズからの叱責を受けた英理佳は渋々と勇をブレンの掌に載せた。彼女が人を扱うのは初めてだったが、思いのほか迅速に上手くいった。これも才能か、はたまたブレンが優秀なだけなのか、ブレイズはわからずにいた。

 

「ウェッジ、ヒギンズ・サスはどこにいるんです?」

「北側にいるわ」

 

 報告を聞いた比瑪はブレンを上昇させるのだが、その様子を見た勇からツッコミを入れられる。

 

「正気か? 頭を出したらやられるだけだろ!」

「何よ! 遠くから指揮官様のつもり?」

「そんなんじゃない! 低空で行くんだ。ヒギンズさんだって、高度を取る訳ないだろ!」

「そうか!」

 

 比瑪は納得してシャッター、ハッチを閉じて高度を下げ始めた。そうしてグランチャー達のプレート回収を阻止しに向かうのであった。対してイランドのコモド、ブレンの英理佳達はウェッジと合流。勇をウェッジに乗せた後は、民間人が集まる避難所の位置を教えられて別れることとなった。だが、英理佳には言語化できない心残り、もやもやがあったのだ。

 

「やっぱり、あの数のグランチャーを、あの子だけでどうにか出来るわけないよ!」

「いきなりどうしたんだい?」

 

 コクピットからブレイズは顔を覗かせて、英理佳の様子を伺う。彼女はシャッターに座ったまま、わなわなと貧乏ゆすりをしている。それを指摘しようとブレイズは自分のブレンから飛び移るのだが、本来足が付くはずの場所には何もなかった。丁度良くハッチが閉められていたのだ。彼女は茂みに落下して、腰に集中する痛みに耐えている。そんな間にもブレンは飛び立とうと、オーガニックエナジーを解き放っている。

 

「ウチが助けに行く!」

「君一人行ったところで変わらない!」

「一対三で勝った、ウチならば!」

「そういう問題では……」

 

 ブレイズは立ち上がって英理佳を止めようとするが、すでにブレンは飛び去っていた。なんて困った子だ! と憤りを感じながらも、自分が彼女ぐらいの年齢だった頃は同じだったと思いふける。過去の思い出の懐かしさは、腰の痛みと共に。

 

 

 

***

 

 

 

 景気をつけて勢いよく飛び出したはいいものの、肝心のヒメ・ブレンの位置は英理佳には把握できなかった。彼女のブレンは操縦席や操縦桿、モニターや計器類を装備していない。オーガニック・レーダーのようなものも無いのだ。

 

「カッコつけたのにこのザマかぁ。マジでダサいよなぁ」

 

 そう言って飛び続けていると海上に出たブレン。緑が広がる山々よりかは、敵も味方も見つけやすいはずだ。勇が言っていた通りに、なるべく低空で海上すれすれを飛ぶ。飛沫が上がり、水が切れる。その時に英理佳は水の弾ける形状がおかしいことに気づいた。

 

「丸くなっている……これがチャクラ・シールドってやつなの? あ!」

 

 英理佳の青い瞳に爆発と稲光が映る。それはヒメ・ブレンとグランチャー達の戦闘で発生したものだった。そこにもつれるようにして、コモドのイランドがミサイルを撃ち込みながら割り込む。それでも多勢に無勢。グランチャーの物量にヒメ・ブレンは次第に押されていく。

 その間に割って入り、英理佳はすかさず助太刀に参上した。そして比瑪の背後から迫る敵の一人をソードエクステンションで迎撃する。

 

「あなたは!?」

「ソロじゃキツいんじゃないかと思って」

「民間人なんでしょ!?」

 

 コモド、英理佳、比瑪で女三人、姦しく会話をしている間も敵の攻撃は休むことを知らない。複数のグランチャーは波状攻撃と飽和攻撃を使い分け、じわじわと追い詰めていく。

 

「左! それと右も!!」

「危ない!」

 

 ヒメ・ブレンが一人のグランチャーと対峙している所を、もう二人が側面から挟撃する。コモドと英理佳の二人がかりで片方を辛くも落とすが、片割れが間に合わない。

 しかし、突如現れた青色のブレンパワードが窮地を救う。その後にもう二人が続くようにして現れた。そのうちの一人は調子が良くないのか、動きが少し鈍い。

 

「ラッセ!? ナンガに、ユウのブレンも!?」

 

 比瑪は鳩が豆鉄砲を食ったような表情で、辺りを見回した。彼女の危機に駆けつけてきたのは三人のパイロットとブレンだ。ノヴィス・ノアの乗員であるラッセ・ルンベルクとナンガ・シルバレー、そして元リクレイマーのカナン・ギモスの三人。カナンは馴れないブレンでの出撃で疲労困憊の様子。

 これによりブレンパワードが五人も出揃うことになる。これにはリクレイマー達も面食らってしまい、容易に手が出せない。そんな中でジョナサンは冷静に状況を見極めて判断を下す。

 

「プレートをヌートリアに収容させるのが先だ。ブレンがあれだけ集結したとなれば、戦い方を考えなければならん」

 

 その言葉を皮切りにグランチャー達は引き下がり、その姿が米粒のように小さくなっていった。それ確認した英理佳はガッツポーズを決めて勝ち誇る。今回は共同とは言え、人生で二回もグランチャーと戦い、その全てで勝利を収めているのだ。

 

「やっぱりブレンパワードもグランチャーあいつらみたいにいっぱい居るんだ」

 

 英理佳が勝利の余韻を感じながら、駆けつけたそれぞれのブレンを観察した。形こそどれも同じだが、体色が違ったり、目力や立ち振る舞いが違ったりして、人のよう十人十色なのだと知る。それに対してグランチャーはどうだろうか。相対した米軍やリクレイマーのそれらは似た体色のものが多かった。そこがブレンパワードとグランチャーの違いなのだろうか、と英理佳は考える。

 

「比瑪、ラッセ。後退するぞ。そこのブレンもついて来てもらう」

 

 ブレンパワード隊チームリーダーのナンガに言われるがままに英理佳はその後についていく。訳の分からない仮面の女よりはマシだろうと信じて。

 そうしてブレンパワード達は浮きながら後退を始めるが、リバイバルの光がパイロット達の目に映る。プレートは眩い輝きを放ち、荒々しく舞う粒子の中でアンチボディを誕生させていく。

 

「リバイバルに立ち会ってやれば、こちらに合わせてくれるのがアンチボディなんだ」

 

 勇に言われるがままに、皆は固唾を飲んでその様子を見守るのだった。しかし、どれだけ待ってもアンチボディは光のカーテンの中から、姿を現さない。英理佳は待ちくたびれて、コクピットの中で足を投げ出した。初めて目にするリバイバルが、こんなにも時間がかかるものだとは聞かされていない。彼女の中でブレイズに対する不信感はさらに募ることとなった。

 

「まぁ、あんなにデカいし。時間がかかって当然かぁ」

 

 そう思い瞼を閉じようとした途端、英理佳は驚いて目を見開くこととなる。それは他の者たちも同様で、各々が違う言葉で同じ事を呟いた。

 

「このアンチボディ……」

「一つじゃないぞ!」

「どういうこと?」

 

 カナン、勇、そして潜航艇パイロットのヒギンズ・サスが目の前で生まれてくるアンチボディ達が"双子"であること開いた口がふさがらないようだ。次第に姿があらわになっていき、それがブレンパワードだと認識できるようになるまでになる。それはとても既存のブレンパワードとは言い難く、どことなくグランチャーに似通っている。

 

「そ、そりゃあ、オーガニックなら双子だってこともあるけど……」

「リバイバルってダブルなの!?」

 

 緊張した面持ちに囲まれながらプレートに広がる光の波は静まった。その上では灰色のアンチボディが二人、立ち上がって自らの主人を待ちわびる。そんな赤子たちにカナンとヒギンズが近寄っていく。すると双子は呼応するかのように黄色と橙色に変化していき、その場に勢いよく座り込んだ。二人はそれに驚きつつも、開いているコクピットハッチを目にして、ブレンが自分たちを受け入れようとしていることに気づくのだ。カナンは橙色の、ヒギンズは黄色のブレンに乗りこんで、それぞれのアンチボディに触れてみる。赤ん坊をあやす母親のように触れるカナンとヒギンズにブレンパワード改め、ブレンチャイルドは呼応するのだった。

 

「直感だけど、ブレンパワードって感じがする……リバイバルっていっつもああいうカンジなの?」

 

 英理佳はコクピットからブレンの手のひらに乗り移り、ヒメ・ブレンに乗る比瑪に問いかけた。それに対して身を乗り出しながら「そうだけど、双子を見るのは初めてよ」と比瑪は答える。

 それを聞いた英理佳はブレンの方へ顔を向けると「あんたもそうやって生まれたんだね」と声をかけると、いつものように返事をする。

 そのやり取りを見ていた比瑪には、ブレンと接する英理佳の姿が昔の自分と重なって見えていた。同時にノヴィス・ノアに勧誘された時に、かけられた言葉を思い出す。君はブレンパワードを道具としては無く、一つの命として接している。そんな短い言葉だったが、比瑪の心には深く刻み込まれることとなった。そして彼女なら、自分のようにノヴィス・ノアの力になってくれるかもしれない、そう思ったのだ。気づいた頃には比瑪は英理佳のブレンの傍にまで、ヒメ・ブレンを寄せていた。

 

「私、宇都宮比瑪っていうの、あなたは?」

「え? 私? あぁ、わた……ウチは英理佳・カミヅル」

「あなたのブレン、すごくいい子みたいね」

 

 そう言って英理佳のブレンへと視線を移す。所々にある傷が目立つがブレンが主人を嫌っている様子はない。先ほどの戦闘でもいい動きを見せてくれたので、互いに信頼し合っているのが比瑪には理解できた。

 

「それでさ、良かったら……」

「わかってる、力を貸して欲しいってことでしょ?」

 

 比瑪の言葉を遮るようにして英理佳は回答を下す。その決断の速さと、自分の言いたい事が読まれたことに目を見開いた。

 

「何でわかったの!?」

 

 顔に出てたのかと、モニターの反射ごしに自分の顔を確認する比瑪。しかし、いつも通りの至って普通の可愛らしい顔が映るだけ。

 

「ウチってさぁ、人の心が読めるんだよねぇ~。俗に言う超能力者ってやつ?」

 

 英理佳は金色の前髪をナルシストにかき上げながら天を仰いだ。その大げさな仕草が胡散臭くて、すぐに「ウソ言わないの」と見切られる。それに対して「えへっ、バレちゃった」といたずらな笑顔を見せながら軽く舌を出して見せている。

 

「それに比瑪のカンジを見るに、あんまり堅苦しい人達は居なさそうだし」

 

 その推測に比瑪はとてもイエスとは答えられなかった。司令のゲイブリッジこそ寛容な人だが、艦長のアノーアや副長は厳格なので、自由奔放な英理佳には目の上のたんこぶになるだろう。

 英理佳と比瑪がやり取りしていると、ブレンチャイルド達は既に立ち上がって、ブレンバーを手にしているではないか。

 

「すごい子達じゃない! えらいよ、お利口さん」

「おお! やるじゃん!」

 

 二人の少女達に褒められて、ブレンチャイルドが同時にその方へと顔を向けた。新たに生まれてきた子たちは、ただの赤ん坊達ではないようだ。

 そんなことを知ってか知らずか、ジョナサンはグランチャー達を引き連れて侵攻を開始し始めた。それを察知したナンガは周辺警戒を指示する。そうして各員ブレンパワードに乗り込み、海原へと飛び立っていくのだった。

 

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