英国アホツヨお嬢様(ヤケクソ)   作:つええせしりあがよ…

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#0.2くらい セシリア・オルコットという女

霹靂(サンダーボルト)』『神速の乙女』『世界記録保持者(レコードホルダー)』『人類のバグ3人目』『英国のIS開発を遅らせた女』

 

 様々な異名を取る彼女であるが、この物語の主人公として扱うには全くもって掘り下げが足りていない。見切り発車で投稿されたからである。

 故に、第0.2話というあまりにも苦しい言い訳のもと、IS学園入学前の彼女の1日を通して、彼女について短く説明をさせていただきたい。

 

 

 10 a.m.

 

 

 セシリアの朝は遅い。

 恵まれた頭脳と愉快なお友達を併せ持つ彼女は早々に学を修め、イギリス代表候補生としての立場にあることが多かった。

 

 故に、彼女の専用機についての検証や、他の代表候補生達との訓練を基準としたライフワークが根付いていた。

 

 ──相変わらず、優雅なお目覚めで。

 

「あなたも同じことでしょう? そもそも、わたくしをそうしたのは半ばあなたの性質もあるでしょう」

 

 ──おいおい、人のせいか? 

 

「一心同体ですもの、人のせいもクソもありませんわ」

 

 ──まあ、違えねえか。

 

 物心ついた時から彼女の中にいる愉快なお友達との会話は、基本的には脳内でのみ行われる。しかし人の目がない時にはお互いに生身の口を使っての会話を好んだ。

 やはりお友達の口調はセシリアも影響を与え、今は亡き彼女の両親の教育の甲斐なく、お嬢様らしい口調と節々に悪い言葉とが混ざったチグハグな口調を形作っている。

 諸事情により日本語訳によってお送りしているが、話し言葉に関してFワードに感してのノルマが存在するのかと疑うほどの頻度で彼女の口からFが飛び出ている。

 

 

「チェルシー! 起きましたわー!」

 

 

 そんなこともあってか、彼女の使用人であるいくつか年上の少女はとっくのとうに彼女に正しい言葉遣いや規則正しい生活をおくらせることを諦め、今ではむしろチャームポイントとして扱っている節がある。

 とはいえ、代表候補生としての収入と出資の才によってオルコット家を支える家長たる彼女に、今更そんなものを教え込む必要があるのかという部分も確かにあった。

 

 最終的に使用人の少女、チェルシーは主人の予定に合わせて身の回りの世話をし、寝坊しかねない時のみ彼女の寝室に足を踏み入れるようになった。中学男児を子に持つ母親のそれである。

 

 

 11 a.m.

 

 

 ピクルスが過分に挟まれたホットドッグを頬張るセシリア。

 言うまでもなく遅めの朝食であり、早めの昼食である。オルコット家の家長が朝食と昼食を分けて摂ることは週に一度程度のレアケースと言える。

 

 

「今日は13時から新兵装の試験、ほか予定は?」

「特にはございませんね」

「では、お遊びの時間も取れそうですわね。19時には帰りますので、夕食は家で摂るとシェフにお伝えくださいませ」

「かしこまりました」

 

 

 尚、シェフと言っても街で拾ってきた料理人崩れの失職者の男である。

 両親の時代から雇っていたベテランのシェフが一線を退いた後に雇い入れたこの男は、名家の料理人として努力するとともに、ホットドッグだのハンバーガーだのを作らせても文句を言わないので彼女のお気に入りであった。

 

 

 

 14 p.m.

 

 

 

「1分18秒、まあ1つ前よりはよく持った方では?」

「クソ生意気お嬢がよゥ……どうやったらそんな連発できんだよゥ……」

「もうやめさせて……」

 

 

 ISのシミュレータ筐体から3人の少女が出てくる。

 試験が終わり暇になったセシリアと、同日に訓練に訪れていたばっかりに彼女に捕まった哀れな被害者が2人だ。

 言うまでもなく1分18秒はセシリアがこの2人に撃破判定を出すまでに要した時間のことである。

 誤解を招くので釈明をすると、セシリアはイギリス代表候補生の序列1位。この2名はそれに次ぐ2位と3位であり、IS操縦者の中では上澄みも上澄みの両名と言える。

 

 純然たる事実としてセシリア・オルコットという人間は果てしなく強い。

 とりあえずスペックを盛った機体に彼女を乗せれば世界を獲れる、という結論が出てしまったせいで、イギリスがISの新世代機開発において他国に若干の遅れを取る程度には強い。

 

 

「1発まだなら当然できる……2もいける……4の方もまだなんとかならないこともない……8は何? どうやったら8連なんてできるの……?」

「説明している通り、8連まで行くと習得の段階で若干のズルが含まれるので例外ですわ。普通は脳みその領域が足りませんもの」

「教わった通りにやってみてるけどできる気がしないよね」

「まあそこは資質と言うものもございますわ。それに何も、それだけが強さではありませんし。別にお二人がいきなり16連まで習得したとしても負ける気はしませんわね」

 

 

 軽く言ってのけるセシリアに2人は歯噛みするが、事実であるために何も言い返すことができなかった。

 しかしそれでも、霹靂(サンダーボルト)の由来ともなったその技を習得すれば操縦者(パイロット)として数段上に行けることは事実。

 

 

「もう一回! もう一回いこう!!」

「えぇ〜!? まだやるの〜!?」

「ふふ、構いませんわよ」

 

 

 それ故に、彼女たちはセシリアのサンドバッグとして志願することをやめないのであった。

 

 

 

 23 p.m.

 

 

 

 既に夕食を終え、身を清めて寝巻きに着替えたセシリアは真っ暗な寝室のベッドの中で映画を楽しんでいた。完全に寝落ちを決め込む構えである。

 尚明日の起床予定は11時。何もなければ丸三日寝れると豪語する程に彼女は超ロングスリーパーであった。

 

「IS学園、楽しみですわね」

 

 ──ああ、織斑千冬かい? 

 

「いえ、それ以外にもいくつか楽しみが。屋上でお弁当を食べたり、お友達と買い物へ出かけたり、クラスの方々とパーティーをしたり……」

 

 ──友達いねえもんな。

 

「本気でぶち殺しますわよ。別に、友達が作れないわけではありませんわ! 諸々忙しかったから作らなかっただけでしてよ!」

 

 ──どーだか……まあ、その、なんだ。できるといいな。俺も協力するぜ。

 

「間違ってもあなたを表には出しませんわよ。オルコット家が山賊一家だと思われるでしょう」

 

 ──俺もキレるときはキレるんだぜ。

 

「お互い様ですわ」

 

 軽口を叩き合う兄妹とも姉弟とも取れる2人であったが、そのうち内容はクラスメイトとの会話デッキだの、休日のカラオケへの誘い方だのに派生していき、握手の角度にまで話が発展する前に睡魔が2人の意識を奪っていった。

 

 世界初の男性IS操縦者が発見される前日のことであった。

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