湖畔に宿る苗木  ~義兄・グンヒルド~   作:灸丘

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後半に続くと言ったな???アレはマジだ。
一日の間に2話投稿って、、、奇跡かな???
それもこれも全て隊長のおかげなんだ!(マジ)

この話には隊長関連のネタバレが多く含まれますので知らない人はブラウザバック、知ってる人は隊長のどんな所が好きか書いてけ。

感想乞食より
ではどうぞ


執行官第一位「隊長」 (後)

翌日、隊長とその精鋭達の宿舎にて

 

 

男が執務の間にふと口を開く。

 

「   グスレッド   」

 

その名は亡国の騎士に地獄の業火に焼かれてもなお忘れる事無き昔日の影を追憶させる。

自身と共に並び立ち、同格でありながらも自身の副官という立場にあって異国の戦場に命を落とした英雄の姿を。

 

「もし今の俺の心境を見るとすればお前はなんと言うだろうな。

 酒の席の余興だと言ってくれるか? それとも俺が女々しくなったと一笑に伏すだろうか。

 

 

      すまないお前達、もう暫くの辛抱だ。」

 

その言葉を発した時、己の心の臓が声を、鼓動を響かせる。

それはこの場において彼以外には決して耳に届かぬ騒音であるが彼の心を乱す類のものではない。

男は、心臓に手をかざす。

 

「英雄達よ。いつの日か、必ずお前達を約束の場所へと送ろう。」

 

 

 

 

 

 

「リサナウト候、グスレッド、サンハジ、アイズ。そしてジェレミアと。

 本当に俺は人に恵まれているな。」

 独り言か、はたまた自身に言い聞かせているのかそれは本人ですらも分かり切れていない。

 

スネージナヤ執行官第一位「隊長」 

その真名をスラーイン。

その来歴は波乱万丈などと言う安易な言葉では語り切れないだろう。

亡国カーンルイアの騎士爵位が頂点の一つたる「天柱騎士」の称号を与えられ、炎神ハボリムの統べる国ナタの部族が一つ「迷煙の主(ミクトラン)」の伝承記(ウォーベン)に記されし500年前の古代ナタ伝説の英雄その人にして文字通りの生ける伝説(リビング・レジェンド)である。

 

人の身でありながら俗世の七執政とも肩を並べ得る絶対強者。

「人に恵まれた」と彼は口にしたがその認識は少し異なる。

前提として先に挙げられた5人は共通して俗に言う、他とは一線を画す「強者」または「異端」に分類され、それぞれが特筆すべき力を持つが故に周囲との認識に齟齬を産みやすい。

例外として族長や副団長と二人ほどそれなりに上手くやる者も居るがその隔絶した広すぎる視野の違いに大小問わず苦悩があったのは言うに及ばずだろう。

だが個人差はあれども一癖も二癖もある者達が彼との縁を強く、永遠に保ちたいと思う程の高潔な精神と圧倒的な力を併せ持つからこそ彼らは絶対の尊敬や信頼を男に向けるのだ。

 

だがその事実を男はこれからも知りえない。知る必要もない。

何故ならば彼が人に恵まれているのは彼の無意識化で当たり前のように険しい道を選びそれを実行してみせる。その姿にこそ人は引き寄せられているのだから。

口にした言葉を実行して見せる事が大抵の人間にとってどれだけ難しいか。

そしてその後ろ姿に暗き世を照らす日輪にも劣らぬ眩い光を放ち続けている事こそが彼らの脳と心を燃やし尽くしているという事を。

 

 

コンコン

ジェレミア「隊長様、ジェレミアです。執務中に立ち入る無礼をお許し下さい。」

 

隊長「ああ、入れ」

 

「失礼します、本日はお別れを伝えたく此処に参上しました」

 

「ああ分かっている、個人としてはお前を俺の副官として置き、俺の部下達の育成に力を入れてもらいたいという欲はあるが、、逆にこうも思う。その力はお前の愛する、守るべき者のために尽くすべきものなのだと。」

 

「その言葉、深く胸に刻み込みます。

 隊長様、暫くの間お世話になりました。ここでの経験は生涯、決して忘れません。」

 

「礼を言うべきはこちらの方だ、お前のおかげでばらつきのあった部下達の指揮系統や士気の効率化と上昇、馴染めていなかった新入りの者たちの心意気も目に見える変化があった事を一目見て伝わった。」

 

「私はきっかけとなる本当に小さな一歩を踏ませたに過ぎません。

 それに、アイツらならばいずれは同じ路を辿っていただろうと思います。

 なにしろファデュイきっての精鋭たち、なにより師匠の直属麾下なのですから。」

 

「事実としてそうだったとしてもお前が彼らを変えた事は明白だ。

だからこそ、ファデュイではなく個人としてもお前を良く思っている。」

 

その言葉を受けた青年は目を大きく見開き、同時に深い溜息を吐き思った事をそのまま口にした。

「はぁぁ、、世の中には漢の中の漢という任侠の通ずる言葉がありますがこの言葉の語源となったのは隊長様だったのでしょうか?

失礼。その言葉に対して心からの感謝を、今の言葉だけで全ての疲労が消し飛んだように感じます。」

 

「では、またいつか会おう。 俺たちはいずれ、必ず再会する。」

 

「必ずや。生きて再び執行官第一位の名の下にこの槍を振るいましょう。

 そうだ、よろしければひとつお願いを聞き届けてはもらえないでしょうか?」

 

「俺に出来る限りのことならば」

 

「ありがとうございます。では最後に一合交えてはもらえないでしょうか」

 

「成程な、良いだろう、ならばこちらからも1つ。お前のいま放てる最高の一撃を所望する」

 

男の顔つきが変わる、喜び、怒り、恐怖、畏怖、戦慄、そのどれとも違うような、はたまた全てが当てはまるような顔に笑みを浮かべて宣言する。

「ええ、この一撃に今の俺の全てをもってその答えとさせていただきます」

 

 

 

その言葉と共に両者の手に獲物が握られる。

大気が淀む。

片や人界、いやテイワットにて極致と言える元素蒐集力の具現、その氷霜は無骨ながら鮮やかに儀式剣と比べても遜色ない程に流麗な、見たもの全ての目を引く重厚な片手剣。

 

片や戦争の国から数多くの戦場を共にした戦斧。

 

双方の手から重厚な元素が武具に纏われるとともに空気が揺れ、青年は最速の縮地走法により飛び出した。見るものが見れば自身の才能に嘆き、あるいは互角だと心からの賞賛を送るだろう。

 

 

 

だが、、それは違う。現実は非情だ。

誰もが夢見る理想などでは現実という真実には到達し得ない。

今にも全身全霊からなる生涯においても有数な特記と言うべき一撃を、目の前の英雄に打ち込まんが為に飛び出した男は知っている。

否、()()()()()()と言うべきだ。

眼前にて自分を待ち構えて()()()いる強者を、、その身が対峙する者の強大さを。

一介の挑戦者。いや、その言葉は余りにも烏滸がましい。

何せ相手は格上も格上、軍事において他国の追随を許さぬ雪国「スネージナヤ」の氷の女皇が最高臣下にしてテイワット最強の一角。

 

|執行官第一位「隊長」《ファデュイ・ペルヴォーイェミェスタ・カピターノ》

 

 

自惚れなど無い。

この身は生来理想主義者ではあるが戦いにおいては限りなく現実主義者である。

だからこそ見える自分と対峙、いや。

待ち構えてくれている者とのあまりにも遠すぎる、圧倒的な差

だが

 

 

「それがどうした!?」

 

 

無意識に、されど意識して青年は咆哮を上げる。

言葉は武器だ。時に傷つけ、守り、時に利用するもの。

「自らへの鼓舞と士気上昇」俗にいう喝、または鼓舞。

後になって彼が精神修行の一環として追憶した時、あの際にて無意識に言葉に乗せたのはそれだったのだと気付くことだろう。

 

「彼方にこそ栄えあり。届かぬからこそ挑むのだ。」

理想を掲げど歩むは現実、目の前の壁を越えていく。人間はそういう生き物だ。

だからこそ彼は全てを賭けて目の前の壁を越えて打ち砕かねばならない。

 

ふと脳裏に思い返す。もう4年が経とうとしている自身の存在と五ヶ国巡遊の全ての始まりたる魔龍ウルサの討伐による西風騎士の拝命。

欠けた記憶の中でも朧気に、しかし確かに存在する夜叉との死闘の記憶、洞天仙境にて幾度も励んだ数多の修練いや試練。自身が一目見て狂信せざるを得なかった崇高という言葉すらも軽々と凌駕する程の武芸と気高き心根を併せ持つ麒麟の血を引く半仙半人との手合わせ。

砂漠という環境での数多の魔物達との闘争。

水を通さぬ元素生物との闘い、自身と互角の腕を持つ決闘代理人との手数と手数の応戦、そしてあの女との死闘による痛み分けの辛勝。

戦争の国で相対したアビスとの乱戦。

そして、いま地に足を付けている雪国での三連星との死闘に遠征の記憶。

 

 

その全ての戦闘経験値を一つにしても未だ足元にも及ばないと知覚出来るだけの差が両者の間にはある。結果など手に取るように分かる、鍔迫り合いに持ち込む事すらせず一刀の下に自身の戦斧は弾かれるだろう。未だ自身の中にある強者の枠組には足を踏み入れられていないことを自覚させられる。自身はあの時から本当の意味での成長というものは何一つ経験していないのではないかと言う苛立ちと見苦しさ。

 

 

だがもう一度   それがどうした。

 

 

元よりそんな事は百も承知だ。

なにせその生涯で潜ってきた戦場の数においても質においても文字通り雲泥の差があるのだから。

 

だからこそ、獲物に練り込む元素の意思には「潰す」。

叩くでは力に乏しく、斬るでは遅すぎる。

 

 

故に思い描くは大戦斧。

あの女との死闘の末に最後に握るに至ったあの重さ、この生涯において最高の仕上がりを見せた未だ届かぬ密度と強度。その全てを乗せる。

その刃は常時より更に濃く、より分厚く、文字通りの何かを壊すことに重きを置いた破壊の象徴。

 

その理想が今、満を持して、真の意味で形を成した。

目で確かめずとも理解できる。常時より更に濃く、分厚く何より重い。これだ。

これこそがあの死闘の中で生涯唯一自身の理想を凌駕せし真の武器。

 

(このひと振りに、我が恩義を!)

「はああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!」

叫びとともに特記の斬撃が振り下ろされる。

 

 

「見事だ」

英雄は呟く、その言葉は青年に届いたのだろうか。

 

「ハアッ!」

 

 

 

 

両者の間に火花が散る。周りの物資が文字通り弾け飛び床には亀裂が入る。

 

そして至高の斬撃が瞬く間に放たれ青年は膝をつける。

 

「ガッ!っっっっ。つうううう。ハッハッハッ、     チキショウ」

勝敗は言うに及ばず、もとより戦いの土台は成り立ってすらいない。

 

(悔しい、悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい!)

あの特記の一撃を一振りで返された、その事実に押しつぶされそうだ。

分かっていた、あの一撃ですらも通じないであろう事など予感はあった。それでも、、それでも悔しいという感情は絶え間なく脳に浮上し続ける。

 

 

「見事な一撃だった、遠征の時に見せたあのひと振りよりも更に磨きがかかっていた。

 称賛しようジェレミア、お前はテイワット有数の強者だ」

落ち着きのある低い声が背中に注がれる。青年は恥辱で背中を上げられず、さりとて目を開けることもできない。

 

「お前の気持ちは分かるが気を落とすな。お前はまだまだ強くなれる、それに俺との立ち合いで負けたのは初めてというわけではないだろう」

事実として彼は遠征時を除き隊長麾下の精鋭達に訓練教官として指導したのちに幾度も地面に膝をつけている。

 

「自信があったんですがね、、、やはりまだまだ遠いか、、、、ああ」

深い溜息を付きその言葉とともに青年は言う。

 

「最後まで俺の我儘を受け入れて下さり本当にありがとうございました。では今度こそ本当に、またいつかお会いしましょう隊長様、いえ師匠。」

その絞り出したような声には悔しさが滲み出ていた。

 

「ジェレミア、今日は宿に戻り疲れを取るべく休め。

 出立は今日の夜に、いや明日の早朝でもいいだろう。」

 

「はい、、ではまた明日改めて伺いに 「その必要は無い、お前は今日伝えに来たのだ、ならば礼はとっくに貰っている。だから次に見るときもう一度今度は俺の方からお前に戦いを挑む」

 

その言葉は一戦士として聞き入れないわけにはいかないものだった。格上の武人が自分などに挑戦してくれると言うのだ

ならばこの場は自分が引き下がるべきだ。

 

「分かりました、では失礼します、またいつの日か」

踵を返す。

 

 

ジェレミアは次の機会の挑戦の為に武具を研ぎ澄ませんが為

 

英雄は弟子の成長した姿を思い描き自分を越えさせる事を願って

 

両人は別の道へ歩を進める。未来を切り開く為に

 

 

「「俺たちが歩みを止めることはない」」

 

共に同一の信念を心に抱き、意思を強く歩み続ける。

 

 

 




マジで書き上げられるとは、、、、、、

改めて隊長ってカッコイイねって事を再認識させられた本文でした。
隊長に似合う四字熟語は「力は山を抜きその気は世を蓋う」こと抜山蓋世ですかね、カッコいい

あらすじとタグ見返したら「何が何だかさっぱりわからない」って感じのLになってしまったので変えてきました。その辺からこまめに出していきます。

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