冒涜的なヒーロー   作:月ノ蛇

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なお、題名は一切内容に関係ないものとする。

今回も一気に2話投稿するので初投稿です。

時間感覚が狂ってたので投稿できませんでした。ネッ友に聞かれて漸く思い出したほどです。
あと、この辺はその場のノリでできたのでプロットなどないです。


別名や異名や化身がある神話生物って全部うざったいよね、ってコト。

警備員2人を犬神家にした後、2人は施設内へと入っていく。自動ドアをくぐると広いフロントにたどり着く。深夜ということもあり受付には1人もいない。それどころか2人が歩くたびに反響する靴の音だけがその場に響いている。終業後であり暗いかと思ったが未だに残業をしており人への配慮なのか電気が点いている。しかし終業後には変わりないためフロントから左右に伸びる廊下は除夜灯の明かりが唯一の光源である。運がいいのか受付の後ろの壁にはこの公安委員会施設の地図が大きく付けられており一目で何がどこにあるのかがわかる。

 

「あれ、あのなんだっけ………七光り野郎の部屋ってどこ?」

「あいつね。あ〜、最上階の一室だったっけ?」

「覚えてないんかい」

「仕方ないでしょ。あいつの私を見る目がキモ過ぎて絶対に近づきたくなかったんだから!」

「それはしゃあない」

「でしょ。で、どうするの?片っ端から探す?」

「ゆーて、6階くらいしかないし。適当に面白そうなところを漁りつつ探そう」

 

探索可能箇所の開示

〈1階〉

・受付

・ロッカー室

・エレベーター

・電気室

・階段

〈2階〉

・オフィス1〜3

・休憩室

・食堂

〈3階〉

・オフィス4〜6

〈4階〉

・オフィス7〜9

〈5階〉

・オフィス10〜12

〈6階〉

・会長室

・《七光り》の部屋

・資料室

・会議室

 

太陽は今調べた受付を後にして初めにロッカー室へと赴く。男女で分かれておりどちらもドアに鍵はついているがかかっている様子はない。

一先ず太陽は女子更衣室へと入っていく。

 

「待て待て。お前男だろ?」

「何を言っているんだい?火伊那くん。今の俺は女だよ?」

「くっそ、そうだった」

 

女子更衣室の中は綺麗に整頓されていた。太陽は手慣れた手つきでロッカーを開けていく。鍵がかかっているやつは適当にこじ開ける。その姿は不法侵入した上でテキパキと家財を漁る犯罪者のよう*1

 

「おっ、カードキーゲット」

 

一つのロッカーの中には忘れ物なのかカードキーが置いてあった。どこのカードキーかは一切わからないが持っておいた方がいいだろうと太陽はポケットに押し込む。その躊躇いが一切存在しない手つきに火伊那はドン引きする。

 

「流れるようにポッケに入れたわね。絶対、前に何回かやってるでしょ?」

「ふっ」

 

太陽は火伊那の質問をよそに女子更衣室を出る。ついでに男子更衣室にも入っていく。

中は女子更衣室と同じでロッカーはちゃんと全部施錠されていた。開けるのが面倒くさくなった太陽は漁ることなく退出する。

 

「次は…電気室は……何もなさそう。じゃあ階段で、いや、普通にエレベーターで上行くか」

「そうね。エレベーターに態々罠を仕掛けるアホもいないでしょ」

 

2人は稼働中のエレベーターに乗り込む。2階のボタンを押すとエレベーターは音を立てて上がっていく。チンという音と共に扉が開き2人は2階へと着く。2階はエレベーターから一直線に廊下が続いており活気のない廊下を除夜灯がただ照らしている。

そして、目の前にはフラッシュライトを携えた1人の警備員が立っている。

 

「誰だお前は!?」

「チッ、当身(あてみ)

 

スルリと警備員の背後に回った太陽はその首筋に手刀を落とす。トンッという音が響き警備員は白目を剥いて倒れ込む。

屈強な成人男性、しかも動物の異形系個性の持ち主であろう警備員を一発で倒すその膂力。火伊那は目を見開いて驚く。

 

「ふぅ、危なかった」

「いやいや、一発!?なんで!?」

「そりゃ、まぁ。この体はえぐい腕力してるし*2

「それなら、まあ。わかるかな」

「よし。じゃあこいつどうするか考えるか」

「普通に縛るんじゃダメなの?」

「え?邪魔だし、起きたらめんどいし。………そや、窓から落とすか。2階だし耐えるだろ」

 

え〜い!という擬音と共に警備員の巨体を窓の外へと投げる。ドスンという音が辺りに響く。

 

「やべ」

「逆効果じゃない」

「しゃーなし。急ごう」

 

駆け足に1番近い休憩室へと向かう。休憩室の中はフローリングと畳があり畳は一段高く設置されている。フローリングには長机と椅子、畳にはちゃぶ台と座布団が置かれており机やちゃぶ台の上にはお菓子や今日の新聞などが置いてある。普段からこの場所はよく使われていることがわかる。

 

「何もねぇな」

「普段使いのものしかないわね」

「いや、畳の下になんかあるかも」

 

太陽は畳を持ち上げその下を見る。しかし、そこには何もなかった。そう何もないのだ。一段高くなっているから何か入っているのではと考えるもそもそも中が空間だった場合畳が簡単に落ちてしまう。太陽はそんな初歩的なことも考え付かなかったのだ。

 

「よし、次だ。食堂へレッツゴー」

 

太陽は畳を乱雑に捨て置くと失敗を隠すように火伊那を連れて食堂へと直行する。

 

食堂。いくつもの長テーブルと椅子が設置されている。扉の真正面の位置には厨房がよく見える。食券式なのだろう厨房のすぐ隣にはそれらしき機械が2つ置かれている。一目見て何も手掛かりがないのがわかる。そもそも、食堂などと言う不特定多数が出入りするところに重要なものは置かないだろう。

 

「おし、スピリタスゲットだぜ!!」

 

何故か厨房に未開封のスピリタスが10ダースほど置いてあった。料理に使うものでもないし、どうしてここにあるのだろうか。

太陽はそのうち2本を端に置き、残りを食堂にばら撒く。食堂ばかりでなく廊下、オフィス、休憩室。2階のすべての部屋にばら撒く。

それが終わると端に置いた2本を持ち次の階層へと向かう。

 

「なにしてるの?」

「え、暇つぶし。スピリタスがあればばら撒くでしょ」

「普通はしないわよ!?」

「明日、酒臭えオフィスに嫌な顔をするやつら見たいでしょ?」

「まぁ、私たちは見れないけどね」

 

エレベーターに乗っていくより階段を走った方が早いと睨んだ2人はダッシュで6階へと向かう。オフィスにはいいものはないと踏んだのだろう*3。6階はオフィスがないため全体的に豪勢な作りとなっている。廊下一つをとってもワックスが綺麗に付けられており定期的にやっていることがわかる。壁にも傷などはなく真っ白い綺麗な壁だ。廊下の真正面には特に豪勢な扉があり、そこが会長室なのだろうと直感的にわかる。会長室のすぐ手前には会長室ほどではないが豪勢な扉がある。そこが七光りの部屋なのだろう。また、一番手前には金属的な扉がついておりドアノブの部分には代わりにカードリーダーが付いている。

 

「カードリーダーって言ったらカードキーだろ」

「確かにそうだけど。そんな簡単に開く?」

 

太陽あポケットからカードキーを取り出しカードリーダーに通す。ピピッという音がすると扉が横に開く。

奥は薄暗いがよくみると多くの書類がファイルに閉じられて棚に入っているのがわかる。

 

「開いた」

「本当に開いたわ」

「じゃあ、調べるか」

 

ヒーローの個人情報が載った書類がファイルに綴じられていくつも棚に置かれている。また、資料室の奥には1つのファイルが置いてあった。それは他のファイルと違い背表紙に何も書かれていない。気になった太陽はそれを開く。中にはこれまでレディ・ナガンが始末してきた人物の情報が書かれている。

 

「何だろう。重要な情報が一個もない」

「ヒーローの情報とか重要じゃないの?」

「俺が欲しいのは神話生物の情報なんで」

「それならここにはないんじゃない」

「だから、さっさと七光りの部屋行くか。あとここ燃やしてこ」

 

太陽はマッチを取り出してマッチ棒を擦る。ボウッと火がつき資料室を赤く照らす。ポイっとマッチ棒を棚に放り投げて2人は七光りの部屋へと移動する。資料室は紙が殆どなためよく燃える。

 

 

七光りの部屋。会長の部屋を見ていないのでどれほど豪勢か分からないが全体的に金ピカな部屋である。まず調べるとしたら部屋の中にある本棚だろう。本棚の大きさに対して本の数が異様に少ない。本棚にはファイルが一つと表紙も背表紙もない本が一つある。ファイルの中には多くの人物の顔写真と個人情報が書いている。また、経過観察という欄がありそこには『処分』と書かれているものとそうでないものに分かれる。この内容を見るからに七光りは何かしらの実験をしているのだろう。

また、もう一つの本を開くとそこには日記が書かれていた。その日記は半年ほど前から記されている。内容には『不老不死』や『カルナマゴスの遺言』、『クァチル・ウタウス』と書かれており何をしたいのか一目瞭然であった。

 

「さ〜て、めんどそうなの来たわ」

「これはえぐいわね。このファイルに書かれているの最近行方不明になった人たちばかりよ」

「おっと、それはぶっ殺さないといけない案件じゃん」

「んで、実験室とかどこにあるんだろう」

「この建物じゃないとか?」

「いや、地下室とかあるんじゃね?」

「私はそんなのあるって聞かされてないわよ」

「いやいや、エレベーターの床ぶっ壊したら地下行けるとかない?それか、この部屋に仕掛けあるとかかな」

 

太陽は目の前にある本棚を見る。

 

「例えばこの裏に何かあるとか」

 

太陽は本棚に拳をぶつけるとその拳は軽々と本棚を突き抜ける。太陽が拳を抜いてそこを覗くと裏には空間があるように見える。太陽は本棚の端に手をかけるとそのまま本棚を取り外す。案の定、本棚の裏には人1人が入れるような空間がある。そこには下へと降りる穴がある。四角い穴のためここに何かしらの地下に降りる用の物があったのだろう。それは今、下に降りているのだろうか。

 

「よっしゃ、降りるか」

「いや、死ぬわ」

「問題ない。地面に着く寸前に浮かぶようにするから」

 

太陽は《空中浮遊》と唱え火伊那の手を掴んで飛び降りる。体が宙に浮かび内臓がふわりと浮かぶような感覚を受ける。大体25mほど下に降りると漸く地面が見えてくる。勢いが消えることなく地面にぶつかる寸前。3cmほどの地点で2人は急激に止まる。

 

「死ぬかと思った」

「死んでないだけマシ。死んでも簡単に生き返せるから安心して」

 

地下室は異様に近未来的なものであった。天井から白い光が常に輝いている。廊下にはいくつもの扉がついており、すべて近未来的な構造にあったスライド式の扉。手を翳すと簡単に開き廊下の光が室内に入る。光が照らすのは多くの檻のついた箱。人が1人入るほどの大きさの箱であるが中には誰もいない。それでも檻は開いており先ほどまで何かがいたのではないかと考えてしまう。

 

「何もないか…」

「他の部屋も簡単に見たけど何もなかったよ」

「そっか。じゃあ、一番奥の扉かな?」

 

2人は廊下の正面にある両開きの特に厳重そうな扉の前へと立つ。他の扉と違うのは厳重にロックされている点。見たところカードキーとパスワードが必要に見える。太陽は試しに持っているカードキーを翳すもうんともすんとも言わない。別のカードキーが必要そうだ。

 

「どうする?」

「ぶち破るか〜。《ヨグ=ソトースの拳(えいっ)》」

 

扉に不可視の打撃がぶつかる。扉はその力に耐えることができず拳の跡をつけながら室内へと吹き飛ぶ。

 

「さ〜て、初めまして〜!!」

「………な、何なんだお前は!?」

 

室内にはボロ切れを着て両手を後ろで縛られた多くの人々と無駄に豪勢な服を着た中肉中背の男性がいた。その男性は目を飛び出るほど見開いて扉をぶち破ってやってきた二人組を見つめている。多くの老若男女は一つの魔法陣の中にぎゅうぎゅうに押し込められている。今まさに魔法陣の起動でもしているようだ。絶望に染まった表情を2人に向ける。

 

「何だ何だと言われたら!!」

「答えてあげるのが世の情け?」

「テメェの企みを潰しにきました。よろしくねっ?」

 

フリーズしていた男性は火伊那の姿を見ると再起動したようにぺちゃくちゃ話し出す。

 

「おお!レディ・ナガンじゃあないか!!君もこの呪文に興味があるのかな!?いいだろう。僕が不老不死になる光景を目に焼き付けるといい!!そして、僕の右腕として奉仕してもらおう!!…………それはそれとして、そこの女は何だ?」

「きっしょ。火伊那の言った通りきもいわ。てか言ったよね?俺はお前の呪文、《クァチル・ウタウスの契約》を潰しに来たんだって」

「なっ、お前はこの呪文のことを知っているのか!?」

「そりゃあ、老化が止まり物理的、魔術的効果を一切受け付けなくなるやつでしょ?」

「そうだ!!僕はこの生贄を用いて我が主を呼び出して不老不死になるのだ!!」

 

太陽は耳をほじりながらその話に相槌を打つ。

 

「へぇ〜、ご大層なこった。てか、知ってる?その呪文さ、別の人が契約を結んだら元々結んでたやつは死ぬんだって。泡沫の不老不死を謳歌しな。テメェが契約結んだら速攻俺が結ぶから」

「な、なぁ!?」

「ほらほた、早よ結びなよ。そこの生贄が死のうと俺には関係ないし」

 

生贄の人たちは目を見開いて太陽を見る。口に猿轡を付けられていて話すことができないが太陽の今の発言に意を唱えようとしているようだった。男性、憶田録郎は逡巡している。不老不死になる呪文の欠点を教えられて即座に呪文を唱えることができないようだった。

 

「まあいいや。お前には知りたいことがあるんだよね。《支配》」

 

太陽が呪文を唱えると憶田は狼狽えていたのが嘘のようにいきなりビクッと固まる。太陽はステップを踏むように憶田の元へと移動する。

 

「さて、どこでこの呪文を知った?」

「古本屋にこれが載っている魔道書がありました」

「そっか、ギリシャ語なのによくこれを買えたね」

「ビビッと来たので」

「もういいや。《幽体の剃刀(死ね)》」

 

憶田は不可視の刃で首を刈り取られて死ぬ。その光景を見た生贄たちはくぐもった悲鳴をあげて魔法陣から逃げて壁際へと移動する。太陽はそいつらに興味なさそうに一瞬だけ目を向けると再度首と胴体が亡き別れになった憶田へと向く。

 

「死体はまぁ、処理しとくか。《復活》」

 

憶田の死体は即座に塩のような混合物へと変化する。太陽が足でその塩をさっと蹴るとその風圧で簡単に塩は空間中に舞って消え去る。太陽は未だに怯えている生贄たちの元に向かうと一つの呪文を唱える。

 

「忘れてね。《記憶を曇らせる》」

 

生贄の目が虚ろになりそのまま倒れるように気絶する。太陽は一仕事終えたように額の汗を腕で拭う仕草をすると火伊那の元へと戻っていく。何もすることなくその場で突っ立っていた火伊那は申し訳なさそうに話しかける。

 

「私、何もすることなかったんだけど…」

「あ、ごめん。出番作るべきだった?」

「いや良いけどさ」

「そう?それなら良いけど。じゃあ帰ろうか。てか、帰るとこあんの?」

「あぁ〜〜。確かに」

「ふ〜ん。じゃあうち来る?いろんな呪文…《ゴルゴロスのボディワープ》あたり教えれば普通に生活するくらいできるでしょ」

「いいの?これでも指名手配犯だよ?」

「犯罪者ってことなら俺だって同じだし。姿変えて家見つかるまでだからね。じゃあ、《門の創造》」

 

太陽が生み出した門を使って2人は太陽の家へと向かう。ここまで来れば太陽の出す多種多様な呪文に慣れてしまった火伊那は何も疑うことなくその門を潜る。これにて、公安委員会建物で起きた事件は幕を閉じる。因みに、資料室の放火と2階のスピリタス大量投下によって建物は全焼した。

*1
なお、殆んど事実の模様

*2
怪物の姿の場合。こいつは人間形態で怪物形態のステをしてる

*3
作者がオフィスの描写を用意してないので




その後、火伊那が覚える呪文。
・ゴルゴロスのボディワープ
・空中浮遊
・門の創造
これにより、2人は協力関係となった。ちな、太陽の方が権力が上。火伊那を顎で使えるよ。

2人のヒーローの話はいる?

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