冒涜的なヒーロー   作:月ノ蛇

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普通に投稿できたので初投稿です。

この話で劇場版は終わりです。


劇場版:やっぱ、戦闘って速さ(DEX)順じゃないといけないよねって話

実体のないトルネンブラに変身して適当にセントラルタワーを登っている太陽。普段の肉体とあまりにも違う筈なのに挙動に悪戦苦闘するわけでもなく普段の肉体よりも機敏に動かしている*1

50階あたりに到達したところで何故か廊下の隔壁が降り始める。

 

(気体より固体の方が音が伝わりやすいって言うしね)

 

本来なら移動を阻む障壁も太陽はトルネンブラの姿の特性をうまく利用して素通りする。

 

(てか、壁すり抜けれるなら上に直進すればいいじゃん)

 

今までそれに気が付かなかったのか1人で納得すると先ほどまで登ろうと向かっていた階段を無視して頭上にある天井をすり抜けながら最上階まで進む。難なく天井はすり抜けることができ、一気に階層をスキップする。道中、廊下に移動を阻むための障壁があるが天井をすり抜けることは想定していないだろう*2

190階層へと到達したあたりから多くの警備兵ロボットを発見する様になった。その多くが損傷を受けておりまともに起動するものはいない。オーバーヒートしているかの様にその体からバチバチと電気が走っているものや球体に固定されて動かないもの、ネットに捉えられているものなど多種多様。この形跡から緑谷たちがすでにここを移動していることがわかる。

 

(急ぐか)

 

太陽はさらに速度を上げて移動する。今度は天井をすり抜けるのではなく、緑谷たちとの合流を目的にちゃんと廊下を移動する。

案の定、それから数階層移動すると緑谷たちの後ろ姿が見えてくる。太陽は変身を解除して緑谷たちに接近する。

 

「よっ、元気?」

「うわっ!?」

「敵か!?」

 

特に緑谷と轟が飛び退く様に驚く。それに釣られて他の面々も後ろを振り向く。

初めは敵かと臨戦体制に入っていたものの太陽の姿を見るとホッとした様に臨戦体制を止める。

 

「嫌だなぁ、俺だよ俺。みんなが心配で追ってきたんだ」

 

太陽は飄々と話す。緑谷たちはその様子を信じられないと言う様に見ている。恐る恐る葉隠が質問する。

 

「な、なんで!?捕まってたはずじゃ!?」

「いや、普通に逃げれた」

「どうやって!?人質はみんな敵に監視されてたんじゃ」

「え、あの姿でトイレ行きたいって言ったら簡単に行かせてもらえてね。いやぁ、美しいのも罪だよね」

「えぇ!?でもそれだったらバレるんじゃ」

「大丈夫、俺とそっくりのやつを代わりに戻したから。てか、いいの?200階まで行くんでしょ?」

 

太陽の発言で緑谷たちの間に急速に緊張感が走る。太陽が現れたことでの穏やかな雰囲気は霧散した。

 

「そうだった。急がないと!!」

「え、えぇ。早くこのセントラルタワーの制御権を奪わないと」

「太陽くんも一緒に行くの?」

「ここまで来ればそうなるでしょ」

 

太陽たちの意志は一つになる。廊下を走り階層をどんどんと進めていく。

 

「あと、ちょっと」

「はぁはぁ、頑張らないと」

「メリッサさん。大丈夫ですか?」

「えぇ、私が行かないといけないもの」

 

メリッサの体力は一般人に毛が生えた程度しかない。200階もの高さを登るのも本来は精一杯。途中で倒れることすらあり得た話だ。しかし、彼女は気力とその使命感だけで登っている。それでも何百段もある階段、徐々に疲労が蓄積していく。太陽の覚えている呪文の中にも怪我を治すのはあっても体力を回復するのはない*3

 

198階層。残り2階となったところで突如、前方から攻撃が来る。太陽だけが反応でき、咄嗟に全員の前に出て対応する。

 

「《被害をそらす(そらす)》」

 

ギリギリで逸らしたそれは天井にぶつかり天井には大きな拳の痕ができている。

廊下の奥からは1人のローブを被った人物が歩いてくる。

 

「なんと?!私のこの呪文を止めれるとは!!」

 

白いローブを被った人物は喜びを孕んだ声で話し出す。

太陽はその攻撃に見覚えがある。と言うよりも太陽がよく使う呪文と同じ攻撃であった。

 

「では、これはどうですかね!?ブツブツブツブツブツブツブツブツ《幽体の剃刀》」

 

またしても太陽がよく使う呪文を唱える人物。不可視の斬撃が太陽たちを目掛けて飛んでくる。太陽はそれに合わせて呪文を唱える。

 

「《ナーク=ティトの障壁の創造》」

 

不可視の斬撃は太陽の呪文によって目に見えない障壁に阻まれる。太陽は一瞬思考に陥ると緑谷たちに話す。

 

「先に行け」

「え、でも…」

「ここは俺が食い止める。だからいけ」

 

太陽の闘志のこもった目に緑谷は決心する。他のクラスメイトも普段は見せない姿に驚きつつも緑谷に続いていく。

緑谷たちは対峙する2人を素通りして上階へと移動を始める。太陽は勿論、ローブの人物もその姿を追わない。

 

「なんだ、追わないのか?」

「あなたみたいな人材を無視して追うだなんて。あんな有象無象よりも私どもと同じ神に見初められたあなたの方が重要です」

「あっそ」

「あのウォルフラムなどと言う小物に付くというのは面倒だと思いましたが思わぬ収穫がありました。あなたを我が神にお送りしましょう」

「俺はお前の理念もここにいる理由もどうでもいい。今は緑谷たちが頑張ってるんだ。邪魔をするなら容赦なく叩き潰す」

 

ローブの人物は懐から一本の小瓶を取り出すと中身を煽る。

 

「改めて自己紹介をしましょう。ダゴン秘密教団所属、魚野。…いあ、いあ、くとぅる、ふふたぐん」

 

みるみるうちにローブの人物の肉体が変化していく。腕が肥大化していき鱗が現れ始める。身長も2mを超えて大きくなりローブが耐えきれずにはち切れる。ローブが壊れたことでその姿の全貌を目にする。頭は本来の人間のものではなく魚のものに変化する。全体的に生命を冒涜する容姿をしているそれは「GUGYAAAAAA!!!!!」と鳴くと太陽を見据えて構えを取る。

 

「へぇ、深きものねぇ。あの薬は増幅薬とかかな。いや、巨大化とかよりは進化かな?ダゴンにでもなったのか?」

「GYAAAAAA!!!!」

 

ダゴンは床を砕きながら太陽に接近する。その鋭利なかぎ爪を太陽に振り下ろす。

 

「進化しない方がいいんじゃないかい?呪文使える?」

 

太陽はそのかぎ爪を難なく回避してそう語りかける。ダゴンはそれが雑音に聞こえるのか今度は反対のかぎ爪を振るう。

 

「単調だね」

「今度はこっち……はぁ!?なんでテメェが動くんだよ!?」

 

太陽は後ろにジャンプして回避する。そのまま逆に攻撃をしようと飛び掛かる。しかし、それよりも先にダゴンは飛び上がって太陽を踏み潰そうと全体重をかけてのしかかる。ボギボギボギと太陽の背骨が音を立てる。どれだけ不死身であっても痛みは感じる。傷がすぐに治るとしても一度ついた傷によって血反吐は吐く。太陽は口から血の塊を吐いてしまう。ダゴンはそんな太陽の足を掴むと勢いよく壁にぶん投げる。

 

「ぐはっ!?」

 

太陽は壁に亀裂を入れてぶつかりさらに血を吐く。ダゴンは追撃することなく太陽がどう動くかを見る。

床に倒れ伏した太陽はこめかみをピクピクさせる。

 

「あぁ、くそっ!!知ってたよ、これが現実だって。まだいいよ。テメェが3回行動するのはよぉ!!でもなあ!!俺が攻撃しようとした時に動くのは違うんじゃねぇか!?」

 

太陽は怒りのこもった瞳でダゴンを睨みつける。

 

「最低限、DEX(デックス)は守ろうぜ!?なぁ!!」

 

太陽の意志と共鳴する様に《個性》が発動する。太陽とダゴンの足元に時計の様なマークが現れる。針が一本のためストップウォッチのほうが正しいだろう。また、2人の頭上には数字が現れる。太陽の上には13、ダゴンの上には14と書かれている。

 

「俺のターン。《完全》。DEX(デックス)に50追加」

 

太陽の頭上の数字が63に変化する。足元の針は太陽は呪文を使っている間に一周する。これが1ターンたった合図である。

太陽のターンを終えると次はダゴンの攻撃ターンである。ダゴンの足元の針が進み始める。

ダゴンは叫び声を上げながら太陽に肉薄する。攻撃は相も変わらずかぎ爪。その両手のかぎ爪をクロスする様に太陽に振るう。

 

「《被害をそらす(邪魔)》」

 

しかし、太陽の呪文によってそれは阻まれる。そして、針は一周する。ダゴンは再度動こうとするも何故か体が動かない。その様子を見て太陽は頷く。

 

「俺のターンだよ。テメェは回避以外できない」

 

太陽はどこからともなくチェンソーを取り出す。急遽ニャルが用意したものだろう。スターターロープを引いてチェンソーを動かす。チェンソーの刃がギュルギュルと回転していく。太陽はグリップをしっかりと握ってダゴンへと振りかぶる。

 

「ニブイチ*4だ。喰らえ」

 

ダゴンは避けようと後ろに動く。しかし、廊下の辺りに散らばった壁や天井の瓦礫に足を取られてしまう。体制を取り直すこともできず太陽のチェンソーを右腕に受けてしまう。刃がガリガリとダゴンの右腕を削り取る。肉が切れ骨が絶たれる。16,000rpmで回るチェーンがダゴンの体内を流れる血液を吹き出させる。辺りに血肉が飛び散る。太陽はそれを平然とした表情で見つめて難なく右腕を切り落とすことができた。

 

「回避失敗してるとかダッセェな」

「GURAAAAAAAAAAAAA!?!?!?!?!?」

 

ダゴンは地面に落ちた自分の右腕を拾って叫ぶ。その顔には恐怖が色濃く現れている。しかし、それでも立ち向かってくる。理性を失い本能で行動している様に見えるダゴンでも本来の目的を覚えているのだろうか。それとも、目の前の脅威を排除することを優先しなければいけないと感じているからだろうか。

 

「ほら、こいよ」

「GUGYAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!」

 

自分を鼓舞する様に雄叫びをあげると右腕を放り投げて太陽に接近する。残った左腕に全身全霊をかけて振り下ろす。

 

「回避するか」

 

太陽はチェンソーをどこかに放り投げ、ダゴンのかぎ爪を背後に移動することで回避する。先程のダゴンのような失態を犯すことなく太陽は涼しい顔でダゴンを見ている。ダゴンの行動が終わりダゴンがしようとしていた次の行動は制限される。

 

「じゃあ死ね。《拳銃》《一点集中》《狙撃》《一撃必殺》《最大火力》*5

 

太陽が懐から取り出したのはデザートイーグル。銃口をダゴンの方に向けて構える。銃口は熱を持って赤く光り火薬が燃える匂いがする。大きな反動を合わせて飛び出した銃弾は逸れることなくダゴンの頭を捉える。眉間にぶつかり頭蓋を砕きながら動く。脳みそをグチュグチュに崩して頭蓋骨の中から爆発する様に脳漿が空気中に溢れ出す。頭蓋を貫通して背後の強化ガラスを割って銃弾は暗闇に消えていく。後に残ったのは鼻から下しか無いダゴンの姿と割れた強化ガラスのみ。ダゴンは自重を失って前方に倒れ込む。ピンク色の溶けた脳みそが残った頭蓋骨から零れ落ちる。太陽は煙を吹いている銃口に「ふぅ」と息を吹きかけて格好つける。

 

「俺の勝ち。さて、みんなと合流しますか」

 

太陽は拳銃を後ろに放り投げて緑谷たちが移動した階段へと走っていく。

太陽が道中の残っていた警備ロボットを破壊しながら登る。200階にある制御室に到達し開いている扉を潜ると突然太陽の体に衝撃が走る。

正面を向くと何故かいきなり見知らぬところから邪魔が入ったと言わんばかりの顔をするウォルフラムとすぐ近くに床をゴロゴロと転がる緑谷の姿がある。

太陽は腹にうけたウォルフラムの拳によって廊下の壁にまで飛ばされる。人間に出せる腕力ではなく《個性》だと勘づく。壁にぶつかり放射上に罅が入る。

 

「太陽くん!?」

 

悲鳴をあげて近づこうとする葉隠。しかし、ウォルフラムが入り口付近に立っているため向かうことができない。

壁に寄りかかり俯いたままの太陽はゆっくりと顔をあげる。

 

「…ったぁ」

 

その目を唯一見てしまったウォルフラムは戦慄する。その目には深淵が映っておりじっとウォルフラムだけを見つめている。見ていれば見ているだけその目の中に吸い込まれてしまうような幻覚すら見る。

 

「戦闘してるだろうなって思ったらいきなり殴られるもんな。腹立つわ」

 

その深淵もすぐに消えて普通の目に戻る。立ち上がって壁の破片で汚れた部分を手で払う。太陽の目を見て立ち止まっているウォルフラムにゆっくりと近づく。

 

「ここにみんないるってことは、権限を奪い返したのかな?」

「…あ、え、えぇ。一応取り戻したわ」

「そっか。ニャル、動け」

 

太陽は虚無に向かって話しかける。その合図の数秒後、いきなり太陽たちの立つ建物に衝撃が走り足元がグラつく。

 

「さ〜て、適当に放置してたけど。お前、(ヴィラン)だろ?」

 

指名されたウォルフラムは気を取り戻したのか攻撃を嗾ける。ウォルフラムが手を振ると辺りの建物に使われている金属が太陽目掛けて変形しながら向かう。それに対して太陽も呪文を唱える。

 

「《被害をそらす》」

 

攻撃は全て太陽を避ける様に四方八方へとぶつかることになった。それを見てウォルフラムは咄嗟に近くにあるアタッシュケースに飛びつく。

そのアタッシュケースを乱暴に開けると中から頭に被るデバイスを取り出す。震えた手でそれを被ろうとする。

 

「これがあれば、もっと強く……」

「させないが?」

 

太陽の使った呪文によってウォルフラムは昏倒する。

 

「やっぱ強化フォームはその前に潰すに限るな」

 

太陽は倒れ込んだウォルフラムに腰掛ける。そしてウォルフラムが手に持っているデバイスを奪い取ってクルクルと回して遊ぶ。

漸く事態を理解した緑谷たちが一気に詰め寄る。

 

「夢見くん!?なんであの攻撃を喰らって無傷なの!?てか、(ヴィラン)だとしても座っちゃいけないよ!?」

「さっきの揺れってなに!?」

「大丈夫だった!?前の階層で置いて行っちゃったけど勝てたの?」

 

その中でメリッサが1人だけ別の方へと向かう。そこには腹部から多量の血を流しているデヴィッドであった。いまにも息絶えそうな様子のデヴィッドを抱き抱えてメリッサは叫ぶ。

 

「パパ!!パパ!!死んじゃヤダ!!」

「…メリッサ…か。すまない……な」

「パパ!?パパ!!」

「なにしてんの?あぁ…適当に《治癒》×5」

 

いつの間にか移動していた太陽はデヴィッドに回復の呪文をかける。見る見るうちに怪我は塞がり顔色は良くなる。

自分の傷がいきなり消え去ったことに目を見開いて驚くデヴィッド。メリッサは奇跡を目撃したかの様に涙を流してデヴィッドに抱きつく。

 

 

エンディングというか今回の事の顛末*6

ウォルフラムは勿論のことデヴィッドもヒーローに捕まった。デヴィッドの場合は自首した。太陽は何が何だかわからなかったが「まぁいいか」と考える事をやめた。198階にある異形の死体は使われた凶器も身元もわからず捜査はされなかった。太陽が使ったチェンソーとデザートイーグルはニャルが回収していたためである*7

事情聴取やらなんやらで次の日を拘束された太陽たちは警察やヒーローに褒められつつ叱られた。仮免もとっていないのに無茶するなだそうだ。

一日拘束されると太陽たちは林間合宿のためにも即座に帰国することになたった。

 

「美味しいもの食べたかった〜!!」

 

帰りの飛行機の中で葉隠は嘆く。葉隠の隣の席で本を読んでいた太陽はそんな葉隠に提案をする。

 

「そうだ、今度美味しいレストランに連れて行ってあげるよ」

「ほんと!?」

「本当本当、林間合宿終わってからでいい?」

「全然いい!!ありがとう!!」

 

しれっとデートの約束を取り付ける太陽であった。

*1
目には見えないが

*2
当たり前だろ

*3
はず…

*4
クトゥルフ・ホラーショウでは成功率50% 貫通すれば四肢のうち任意の一つを切り落とす

*5
拳銃の後の4つは拳銃のダメージを上げる技能。オリジナルです。マーシャルアーツと同じく成功でダメージ2倍

*6
ダイジェストっぽいのは作者が最後まで書くのを面倒臭がったためである

*7
ニャルのくせに優秀だな




・太陽の能力について!!!〜呪文と個性の違い〜
太陽の能力について不思議に思ったことはありませんか?呪文は個性なのかとか、相澤先生の個性で消失するのはどこまでかとか。その説明です。本編では出る気がしないのでここで説明します。

まず、《個性》。
肉体を変化させたり魔導書を出したりすること。この話で覚醒してできる様になった《強制TRPGシステム(仮称)》もその一つです。まぁ、次に出てくる《個性じゃないやつ》ではないもの殆どと覚えてくれれば。

次に、《個性じゃないやつ》。
《呪文》と《技能》全般です。クトゥルフ神話TRPGでPCが持っているものというのが正しいのかな?《呪文》は覚えれば誰でも使えるので《個性》の範囲じゃありません。あと、《技能》も相澤先生の個性で消失すればシャンプ(跳躍)や思考(アイデア、知識)すらできなくなるので《個性》の範囲じゃなくしました。
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