冒涜的なヒーロー   作:月ノ蛇

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投稿が安定しているので初投稿です。

現在時刻、水曜日の3:30分。あと2時間30分で投稿なのでギリギリでした。
今回の話で林間合宿編は最後となります。
いまだに本筋を追っているだけなのでオリジナル展開を出していきたいなと思う今日この頃。
それでも、やくざ編は少しだけ展開が変わると思います。


肝試しと襲撃じゃい

3日目、相も変わらず個性伸ばし訓練。

 

「虎さんに、もういい。お前がいると戦闘本能が刺激されると出禁を食らった太陽です。昨日の訓練時間の5割ほどをタイマンに費やしていたのが悪かったのでしょうか」

「なら、お前は適当に他の奴らと一緒になんかやってこい。どうせ、お前なら〝仮免〟くらいとれるだろ」

「イエッサー!!!」

 

「と、言うわけで一緒にやりにきたよ。お茶子ちゃん」

「うっぷ、マジでどう言うわけ?てか、名前で呼ばれるの初めてなんだけど」

「これからはみんなと仲良くしようと思ってね」

「じゃあ、私も太陽くんって呼ぶわ。それで、なんでここにおるの?昨日は我ーズブートキャンプしてなかったっけ」

「あぁ、出禁食らった」

「ほんまになにしとんの!?」

 

太陽は地面から5mほど空中に浮かんでいる。空中なのにも関わらず自由自在に動き回り、現在は胡座をかきながら頭を下にして麗日と話している。麗日は昨日と同じ様に自らを酔わせてから色々な大きさの岩を浮かばせている。

 

「そこ、気を抜くな。…何をするにも原点を常に意識しておけ。向上ってのはそういうもんだ。何のために汗をかいて何のためにこうやってぐちぐち言われるのか、常に頭においておけ」

「……飽きた。解除解除」

 

太陽は《空中浮遊》を解くと宙返りをしてスタッと着地する。太陽は麗日のところから移動する。

 

「へーい、食べてる!?」

「うおっ、夢見か。どうしたんだ?」

「夢見さんではないですか」

「暇だから、食べ物の供給しようかなってね!!」

 

八百万と砂藤は露骨に嫌そうな顔をする。しかし、その間も食べる手は止めない。

 

「何食べる?ラーメン?マリトッツォ?焼きそばパン?トンカツ定食も作れるよ」

「何ですの。そのラインナップ」

「…………マリトッツォで」

「へい!力道くんにマリトッツォいっちょう!!」

 

太陽は力道の目の前のテーブルの上に山積みのマリトッツォを出す。見ただけで胸焼けしてしまうのではないかというほどの量。

 

「くっ、悔しいがうまい」

「そりゃあ俺特製ですしおすし…………そういえば、今夜クラス対抗肝試しあるらしいね」

「それ聞きました。なにやらA組とB組で脅かし合うらしいですね」

「いっぱい脅かしちゃうか〜!!」

 

夕方、4:00。夕食も昨日と同様自分たちで作ることになっている。今夜の献立は肉じゃが。

太陽はジャガイモを宙に投げると包丁を振るう。目にも止まらぬ速さでジャガイモは一口大の大きさに切断されて下にあるボウルに落ちる。

太陽の作業がひと段落つき椅子に座っていると後ろから服の裾が掴まれる。振り向くと洸汰が立っていた。

 

「なぁ、昨日の続き」

「おっ!いいぜ。何やる?カードゲームもあるぞ」

「じゃあそれ」

「了解。てか、料理できるまで待っててな」

「えぇ……」

「大丈夫。終わるまであそこの緑谷っていう少年に代わりにやらせるから」

 

太陽はそういうと緑谷の元へと行く。緑谷は薪を用意して火をつける準備をしていた。

 

「へい、出久くん!!」

「えっ!?どうしたの?」

「暇でしょ?こっちきて」

「え、暇じゃな」

「俺が代わるから暇になるって」

 

太陽は緑谷の腕を掴んで洸汰の元へと行く。緑谷は驚いた様子で太陽を見ている。

 

「ほら、このお兄さんが代わりにカードゲームやるから」

「え、夢見くん?」

「ヒーロー候補生なんかとやれるかよ!!」

 

洸汰はそう言うと走って行く。緑谷はその様子をただ黙って見ていることしかできなかった。太陽は額に手を当てて天を仰いでしまう。

 

「あちゃー、ダメだったか」

「夢見くん、どうして?」

「ほら、出久はあの子と仲良くなりたいんだろ?昨日の見てたし。それなら手っ取り早く遊べばいいかなって」

「昨日の見てたの?」

「ん、まぁな」

「なら質問なんだけど。僕はあの時なんて言ったらよかったんだろう」

 

緑谷は俯いて小さく呟く。太陽は楽観的に両手を頭の後ろで組んで話す。

 

「一緒に食べようとか、遊ぼうとかでよかったんじゃねぇか?」

「え、でも」

「出久が洸汰くんの考えを訂正しようとかいいこと言ってあげようとか考えてるならお門違いだぞ。両親の死の悲しみは自身の心の中でしか整理できないし、人に何か言われて変えられるわけないだろ。あの子はまだ5歳なんだ。時間なんていくらでもあるんだよ。だから今は少しでも楽しくあるべきだ」

「そう、かな」

「まぁ、まずお前がすることは面と向かって話せる様になることだけどな。後で探しに行けばいいさ」

 

太陽は顔に笑みを浮かべながら調理に戻る。緑谷は少しだけ憑き物が落ちたのか表情が柔らかくなる。そして先ほどまでやっていた作業へと戻っていった。

 

「さて……腹も膨れた。皿も洗った!お次は…」

「肝を試す時間だ〜!!」

 

ピクシーボブが夕食を食べ終わって集まったA組の前で説明を始める。夕食を食べて元気になったのか芦戸が大きな声でコールをする。先刻までの訓練が大変だったのか肝試しで楽しもうと言う魂胆の様だ。

ピクシーボブが続きを話そうとする前に相澤先生が「その前に」と話を始める。

 

「大変心苦しんだが補修連中は─────────────これから俺と補修授業だ」

「嘘だッ!!!!」*1

「嘘じゃない。日中の訓練が思ったより疎かになっていたんでな。こっちを削ることにした」

「堪忍してくれーー!!試させてくれー!!」

「やめろー!!死にたくない!!死にたくないーー!!」

 

ギャーギャーと喚きながら補修組は相澤先生によって連行されていった。何事もなかったかの様にピクシーボブは説明を続ける。

 

「はい、と言うわけで初めに脅かす側はB組。A組は3分おきに2人1組で出発。ルートの真ん中に名前の書かれたお札があるからそれを持って帰ること」

「脅かす側は直接接触禁止で〝個性〟を使った脅かしネタを披露してくるよ」

「創意工夫で多くの人を親近させた奴らが勝利だ!!」

 

最後の締めに虎の不穏な発言が飛ぶ。その後ろにいたマンダレイは頭に手を当てて呆れている。

 

「それじゃあ籤引きね。みんなこの箱から一枚紙を引いて!!同じ番号の人とペアね」

「今日は21人から5人の補修組を引いて……8組できるのかな」

 

マンダレイがどこからともなく籤の箱を取り出す。補修組以外は1人ずつ籤を引いていった。

籤引きの結果太陽は緑谷とペアになった。ラストの組のため27分は暇になると言うことだ。

3分おきに続々と初めのペアがスタートしていく。漸く5組目、つまり折り返し地点に到達した頃、異変が起きる。

 

「おい、なんか焦げ臭くねぇか?」

 

峰田が呟く。緑谷は鼻に集中して匂いを嗅ぐと絶妙に焦げた様な匂いがする。

ふと空を見ると暗闇でよく見えないが黒煙が上がっているのが見える。

 

「黒煙…?」

「飼い猫ちゃんは邪魔ね」

「何っ!?」

 

ピクシーボブの体が吸い込まれた様に移動する。ピクシーボブ自身何が起こったのか分からず困惑している。ピクシーボブが移動する先には2人の人物がおりそのうちの1人が担いている白い布が巻かれた棒状の様なものでピクシーボブを殴りつける。某の様なものがぶつかった頭からダラダラと血が流れ落ちピクシーボブが地に倒れる。

 

「万全を期したはずじゃ……なんで、なんで!!(ヴィラン)がいるんだよォ!!」

 

峰田の悲鳴が木霊する。その悲鳴はここにいるもの全員の心と一致していた。虎とマンダレイは臨戦体制をとる。残っている飯田、峰田、尾白、緑谷、口田はいつでも逃げられる体制をとっている。

そんな中、スピナーは両手を広げて高らかに宣言する。

 

「ご機嫌よろしゅう雄英高校!!我ら(ヴィラン)連合開闢行動隊!!」

(ヴィラン)連合…!?なんでここに…」

「この子の頭、潰しちゃおうかしら?どう思う?」

「させぬわ。このっ……!!」

 

棒を担いだ人物はゴリゴリとその棒をピクシーボブの頭に擦り付ける。その行動によってさらに緊迫感が上がる。虎が怒りを孕んだ声を出す。

スピナーはその2人を制止する様に両手を出す。

 

「おおっと、待てマグ姉、虎もだ。生殺与奪の権は全てステインの仰る主張に沿うかだからな」

「ステインの思想に当てられたやつか」

「ああ、そうだ。俺の名はスピナー。ステイン、彼の夢を紡ぐものだ」

 

そう言って背中に担いでいた白い布に包まれたものをお披露目する。それは、大量の刃物をベルトや鎖で繋ぎ合わせた武器。見てくれは殺傷力が高そうだがそれをするより多くの刃物を持っていたほうがいいと思う*2。しかしそれでも見た感じで威圧感を出すその武器に緑谷たちは一歩後退る。

 

「なんでもいいが、貴様ら………そこに倒れてる女、ピクシーボブはなぁ。最近婚期を気にしてんだよ。女の夢を掴もうって本気で努力してんだよ。そんな女の顔を傷物にして。へらへら笑ってるんじゃあねぇよ」

「ヒーローが一般的な幸せを夢見るか!?」

 

その言葉を合図に戦闘が開幕する。

マンダレイ耳に手を当てて〝個性〟を使用する。一瞬でこの合宿に来ているヒーローにテレパスを送る。それと同時に虎に指示を伝える。

 

「虎!!『指示』は出した!!他の生徒の安否はラグドールに任せよう。私たちはここでこいつらを食い止める。……みんなは先に行って!!決して戦闘はしないこと!!委員長引率!!」

「わかりました!!……夢見くんは!?」

「あいつどこ行った!?」

「…飯田くん。先に行ってて─────────────マンダレイ!!僕知ってます!!」

「緑谷!?」

 

マンダレイは一瞬緑谷の方を向いたあと何も言わずに戦闘に参加した。緑谷はその表情で察したのか〝個性〟を全身に回して木々を伝いながら洸汰がいるであろうところまで向かう。飯田は緑谷を止めるよりも太陽を探すことよりも他の生徒を引率することを優先して苦虫を噛み砕く様な表情で進む道を見る。

 

 

件の太陽は現在森の中を移動している最中であった。スピナーたちが現れる寸前に無断で森の中に入っていた。

目的のところがわかっているのか迷うことなくズンズンと進んでいく。到着したのは森の中でも木々がなく土が剥き出しになっている広場の様なところ。

 

「ラグドールについていた加護が消えたから見にきたけど………なぁ、何してんの?」

「ダレオマエ?」

 

そこには木に体をしなだれ掛け気を失っているラグドールとその前に立っている全身真っ黒の異形の生物。ラグドールの頭からは血が流れており強くぶつけられたことが容易にわかる。その異形はラグドールを掴もうとしていたため太陽が到着していなければ連れ去られていたのか殺されていたのかの二択だろう。異形はギョロリと脳みそにびっしりついている眼球を太陽に向ける。

 

「キモっ。なんだっけ……脳無だっけ?」

「オモイダシタ、オマエ、ヒョウテキノヒトリ」

 

脳無は太陽を指差すと嬉しそうにはしゃぐ。太陽は頭を掻いて面倒くさそうに話す。

 

「まずは、ラグドールか。さて、《戦闘開始》」

「ツカマエル」

 

脳無が飛びかかろうとするもその寸前で体が硬直する。

 

「お前、俺の後な?」

 

太陽は走り出す。脳無を無視してラグドールの元へと向かう。脳無はそれに合わせて手を出して捕まえようとするも動きが制限されていて行動を取ることができない。

太陽は瞬時に気を失っているラグドールを背負うと脳無から距離を取る。

 

「ターン終了。次お前な?」

「ヨウヤクウゴケルヨォ!!!」

 

脳無は両手を地面につけて猫の様な俊敏さで襲いかかる。手からは指と同じ本数の爪の様なものを出す。それを太陽に向けて振るう。

 

「《回避》。てか、捕まえるんじゃなかったのか?」

「ソウダッタソウダッタ」

「じゃあ俺のターン。ラグドール背負ってるから複雑なのできないんだよなぁ。ま、《幽体の剃刀》」

 

太陽の前方、脳無の元に不可視の斬撃が生成される。脳無は本能に従ったのか背中の穴からジェットを吹いてその場を離れる。そのまま滞空して太陽を見つめる。太陽はその様子に驚いて脳無を見る。

 

「それ避けるか〜。お前なかなか才能あるよ」

「ツカマエルツカマエル!!」

 

脳無は空中から同じくジェット噴射で太陽に迫る。

 

「《回避》、ヤベッ!?」

 

《回避》を行った太陽だが運悪く避け切ることができずその凶刃を腹に受ける。脳無の両手それぞれ5本、計10本の手甲鉤による斬撃が太陽を切り裂き腹からブシャリと血を吹き出してしまう。腹には×印の傷ができる。

 

「イッッッタ!?装甲全損!?」

 

太陽は常時《肉体の保護》を張っている。生半可な攻撃では削り切ることができない量の装甲を脳無は一撃で割り切った。太陽の肉体は《延長》によって不死になっておりどれだけダメージを受けても瞬時に元通りになるが痛いものは痛い。今もジュクジュクと傷跡が蠢き再生を始めている。

 

「装甲割る威力か………早期撃墜しないとやばいな………ラグドールも危ないし、降ろすか」

 

太陽は背中に背負ったラグドールを心配し、即座に背後の木に寄り掛からせる。太陽はラグドールの前に立ち脳無と向かい合う。

 

「《萎縮》。まぁ、MP50消費でいいか」

「カクホ!カクホ!」

 

脳無は再度ジェット噴射を使って太陽に迫る。太陽は凶刃が迫っているはずなのに避けるそぶりを見せない。

 

「カクホォォォォ!!!」

「ライフで受けてやるよ!!」

 

脳無はすれ違いざまに太陽の脇腹を切り裂く。深く傷ついたのか腑が零れ落ちる。それも束の間、腑はまるで逆再生する様に体の中に戻っていく。そして傷も元通りになり服の破片のみがハラハラと舞い散る。

脳無は続けて行動する。先程までなら体が硬直していたものの今回は普通に動ける。脳無は歓喜しながら今度は足を狙って攻撃する。

 

「オマエツカマエル!!」

 

太陽は無言で集中している様だ。脳無は太陽の左足を切り捨てるものの瞬時に足は肉体と繋ぎ合わさる。まるで何事もなかった様に太陽は涼しい顔でいる。

 

「さて俺のターンか。まぁ、これでお前の死は確定した。死ね」

「シネシネ!!シ、ネ…?」

 

脳無の肉体がボロボロと崩れ落ちていく。脳無を中心に焦げ臭い匂いが辺りを充満していく。脳無は訳がわからないままその存在を消失させる。

 

「ふぅ、終わり」

「おいおい、気になって来てみれば脳無がやられちまってんじゃねぇか」

「!?誰だ!?」

「俺かい?エンターテイナーさ」

 

太陽は声のする方向を見ると木の上に仮面を被ったいかにもマジシャンの様な格好の男が立っていた。その手には一つのビー玉の様な球体を遊ばせている。太陽はそこで異変に気がつく。マジシャンの男がいた木はラグドールを寄り掛からせていた木のはずだ。しかし、そこには誰もいない。というより、ここには太陽とその男の2人しかいなくなっていた。

 

「ラグドールをどこへやった?」

「あぁ、回収対象の1人かい?勝手ながら奪わせてもらった」

「チッ、そのビー玉か」

「観察眼が鋭いね。それなら僕のマジックも見破られるかも」

「はぁ、返せよ」

「君のものじゃないだろ?」

「お前のものでもないけどな」

「確かにそうだな。なら奪い返してみてくれよ。おっと、自己紹介を忘れていた。俺はエンターテイナー、Mr.コンプレス。よろしくな、夢見太陽くん」

 

太陽とコンプレスの睨み合いが起きている中、直接脳内に言葉が流れ込んでくる。その声はマンダレイのものでテレパスだということを瞬時に判断する。

 

『A組、B組総員────…戦闘を許可する!!─────────────(ヴィラン)の目的の一つは「かっちゃん」と「太陽」!!2人は戦闘は避けて出来る限り1人にはならないで!!』

 

「へぇ、俺が狙いねぇ」

「おっ、ばれちゃった?おおかたテレパスかな。まぁ、いいや。捕まえてごらん」

 

コンプレスは軽快な足取りで木々を移動する。太陽はそれを見失わない様に追いかける。途中、コンプレスの放り投げるビー玉から球状に切り取られた土塊や木々が飛んでくるが全てすんでのところで回避する。

 

「チッ、速いな。《肉体変成 ナイトゴーント》」

 

太陽は背中から翼を生やして空へと舞い上がる。空であれば遮蔽物が存在しないため楽にコンプレスを追いかけることができる。

 

「捕まえた!!」

「おっと危ないね」

 

太陽の異形化した脚のかぎ爪がコンプレスを捉える。しかし、コンプレスはその脚に手を翳して空間ごと削り取った。

 

「ハァッ!?脚が!?」

「即時再生か。本当に欲しがる訳だ」

 

太陽の脚は瞬時に再生するも驚きを隠すことはできず硬直してしまう。その瞬間を逃すことなくコンプレスはさらに逃げていく。その先は大量に氷が出現している箇所。恐らく轟が何かしたのではないかと考える。太陽はいくらか遅れてコンプレスを追う。

 

太陽が追いつくとそこには緑谷たちがいた。コンプレスは木に登り緑谷たちを見下ろしている。その手には更に2つのビー玉が握られている。

 

「返せよッ!!!!」

 

緑谷の怒声が聞こえる。太陽は誰かがラグドールの様に奪われたと考え翼を羽ばたかせてコンプレスに強襲する。

 

「もう来たのか?速いね」

「夢見!?今までどこにいたんだ!?」

 

太陽の脚のかぎ爪をコンプレスは華麗に避ける。いきなりやって来た太陽に緑谷たちは困惑している様子。1テンポ遅れてコンプレスに攻撃を仕掛ける。轟が広範囲を凍らせる勢いで氷を出す。しかし、コンプレスはその氷を足場にして高く跳躍する。

 

「早く返せよ」

「熱心なファンは嫌われるぜ?」

「生憎、お前の手品には興味なくてね」

「そうか?じゃあ興味ある手品を見せてやろう。透明な子の血って透明なんだろうか?気になるよな」

「チッ、透か。なんだ?脅してんのか?」

 

太陽の攻撃をコンプレスは空中で華麗に回避しながら手元にある一つのビー玉を見せつける。

 

「いやいや、そんなんじゃないさ。この子は道中で見つけたんだけど君と仲がいい子だっけ?」

「死ねよ」

「ヒーロー候補生がそんな言葉使っていいのかよ!?大丈夫か?殺したら奪ったやつ全員死んじゃうかも」

「チッ………で、どうしろと?」

「本音を言えば君1人いれば他の奴らはどうでもいいんだよ」

「俺1人とこいつらのトレードか」

「正ッ解」

「安いな。乗った」

 

その瞬間、太陽はコンプレスの〝個性〟で圧縮される。そしてそれと同時にコンプレスは高らかに宣言する。

 

「開闢行動隊!目標回収達成だ!!短い間だったがこれにて幕引き!!作戦通りこの通信後5分以内に〝回収地点〟に向かえ!!」

「幕引き…!?」

「させねぇ!!絶対に逃すな!!」

 

コンプレスは氷を伝って逃げる。緑谷たちはどうにか逃さない様にするもあと一歩で届かない。

 

 

〝目標地点〟。すでに荼毘とトゥワイスは着いていた。

 

「あれ、こんだけですか?」

 

木の影からヒミコが顔を出す。荼毘はヒミコに作戦の進行度を聞く。

 

「どうだ、何人分採れたんだ?」

「1人です」

「1人!?最低3人って言わなかったか?」

「仕方ないです。殺されると思ったので」

「つーかよ。テンション高くねぇか!?」

「だって、もう少しで会えるんです!!太陽くんと!!」

 

空からコンプレスが降ってくる。風に帽子が飛ばされないように帽子を手で押さえもう片方の手は杖を握っている。

 

「どうだ。ちゃんと捕まえたんだろうな?」

「おっ、見るかい?」

 

コンプレスは一つのビー玉を放り投げる。そこからは変身を解除した太陽が現れる。

 

「へ〜、こうなってたのか」

「太陽くん!!」

「ヒミコちゃん!?」

 

太陽が出て体を動かしているとヒミコが飛びつく。太陽は一瞬驚くもすぐにヒミコを受け止める。

太陽に愛しそうに抱きついているヒミコを一瞥し、太陽はコンプレスに聞く。

 

「ほら、トレードだろ?早く出せよ」

「どういうことだ。コンプレス」

「いやぁね。夢見くんと約束しちゃってね。夢見くんとそれ以外を交換するって」

「はぁ、まぁいいか。1番の目的はこいつだし」

「そういうならいいぜ!!ダメだろ!!

 

コンプレスはポケットを漁り4つのビー玉を取り出す。

 

「ほらこれ」

 

その瞬間、空からいくつかの影がコンプレスを押し倒す。それは障子の背中に乗った緑谷と轟。全身ボロボロの緑谷はどこから出しているのかわからない気迫で叫ぶ。

 

「みんなを返せ!!!」

「知ってるぜ!このガキども!!誰だこいつら!?

「避けろ。コンプレス」

 

荼毘は勢いよく炎を飛ばす。その火力はコンプレスごと焼き払ってしまうほど。しかし、コンプレスは瞬時に理解して自らを圧縮、炎によって緑谷たちが離れた瞬間に解放して炎を避け切った。

緑谷たちは避け切ることができず炎を少し腕や体にうけてしまう。それでも、眼光をぎらつかせて荼毘たちを見る。緑谷から見れば太陽がb(ヴィラン)に抱きしめられて捕まっている様に見えるだろう。

 

「夢見くんを離せ!!」

「嫌です!!」

 

緑谷がヒミコに襲いかかるもヒミコは太陽を盾にする様に逃げる。太陽はされるがままにヒミコに連れられている。

轟が氷で援護しようとするも背後からトゥワイスに襲い掛かられ手間取っている。

 

「爆豪たちは奪った。あとは夢見だけだ!!」

 

障子は大きな声で緑谷と轟に聞こえる様にいう。その手には4つのビー玉が握られている。

 

「あちゃー。…まあいいけどさ」

 

コンプレスが指を鳴らす。するとそのビー玉から爆豪、常闇、葉隠、ラグドールが出現する。

 

「大事だろ?ちゃんと守れよ」

 

荼毘は再度炎をぶつける。それは、気絶しているラグドールに向けたものであった。咄嗟に気付いた爆豪と障子はラグドールと困惑している葉隠を掴んで避ける。爆豪はこの状況を瞬時に理解し戦闘に加わる。

 

「テメェらが(ヴィラン)か。ぶっ殺してやる!!」

「やってみろよ」

 

爆豪は両手から爆破を繰り出して襲いかかる。荼毘もそれに炎で応戦する。

 

「え、え?」

 

意味もわからず捕まりこの場に放り出された葉隠は周りを見て状況を確認しようとする。すると、ヒミコに捕まっている太陽と目が合う。太陽は葉隠に対して言葉をかける。

 

「太陽くん!?」

「大丈夫か?透、早く逃げな」

「トガがいるのに他の女の子と喋るなんて妬いちゃいます」

「早く離せよ!!」

「嫌です!!私のものなんです!!」

 

緑谷は限界をすでに通り越しているはずだがそれでも気力だけでヒミコに食らいついている。対してヒミコはあまり疲れておらず平気な顔で避け続ける。

葉隠は何があったのか理解できないものの太陽に危険が迫っていることだけは理解したのかヒミコに向かって走り出す。

 

「太陽くんを返して!!」

「おっと、そいつが代わって助けた命なのにそれを守って逃げないのかい?」

 

それを阻むのはコンプレス。圧縮した氷を出して葉隠の進路を妨害する。直接的な戦闘能力を持たない葉隠はギリギリで回避するもその反動で転げてしまう。

 

「どういうこと!?」

「簡単なことだぞ。お前ら、特に透明のあんたを人質に夢見くんを無力化したんだよ。捕まえたのも人質と交換って形さ」

「時間だ。いくぞ」

 

爆豪と戦っていた荼毘は後方に移動する。そこには黒霧のワープゲートが出現していた。

 

「ワープの……」

「それじゃあ、お後がよろしい様で」

「じゃあな!!逃げるぜ!!

 

コンプレスが一つのワープゲートに入る。轟と戦っていたトゥワイスも背後にできたワープゲートで逃走する。

荼毘は逃げる前に辺りを炎で牽制して一言告げる。

 

「こいつのおかげでお前らは助かったんだ。せいぜい噛み締めな」

「太陽くん、ゲットです」

 

荼毘とヒミコもワープゲートに入っていく。太陽もそれに合わせてワープゲートに肉体を沈めていく。緑谷は最後の力を振り絞って太陽の元へと跳躍する。爆豪も轟もそれぞれの〝個性〟で向かいそれぞれが手を伸ばす。

 

「来るな」

 

あと一歩届かず太陽は飲み込まれる。ワープゲートが消え去った後には満身創痍の緑谷たちがいるのみだった。

 

「あ゙、あ゙ぁ…………あ゙あ゙あ゙あ゙ぁぁぁあああああ!!!!」

「そんな、太陽くん……」

 

緑谷は蹲ったまま唸る。それは後一歩で助けることができなかったためか。太陽の最後の一言ゆえか。

その少し離れたところでは葉隠が跪いて手を口に持ってきて太陽がいなくなった場所を見つめていた。この場にいる誰にも見えないがその目には涙が溜まっていた。

 

その後、通報によってやってきた他ヒーローや警察、消防が事件や山火事の対処をした。

生徒41名のうち、敵のガスによって意識不明の重体が14名、重・軽傷者が13名、無傷は13名だけだった。そして。行方不明1名。

プロヒーロー6名のうち2名が頭を強く打ったことによる重症。

一方(ヴィラン)側は3名が現行犯逮捕。それ以外の面々は跡形もなく消え去ったのであった。

(ヴィラン)にばれることを避けて行った林間合宿。しかし、それは逆に雄英高校に完全敗北を伝える形で幕を下ろした。

*1
雛見沢村みたいな迫真の演技

*2
作者の主張




脳無…ネホヒャンとは別個体。太陽を捕まえるためにと金玉おじさんが大判振る舞いしてくれた。持ってる個性は《手甲鉤》《斬撃》《ジェット噴射》《複眼》とハイエンド並みに多い。思考も少しの受け答えもできるがハイエンド一歩手前というところで止まっている。この戦いが終わった時に生きてたらハイエンドまでなっていたんじゃないですか、知らんけど。
《手甲鉤》…その名の通りウルヴァリンみたいに手から爪の様な武器を出す。一度折れても何度でも再生可能。
《斬撃》…あらゆる防御を紙の様に切り裂く。装備や装甲といったものしか切り裂けず、遮蔽物を盾にすれば意味がない。
《ジェット噴射》…背中の穴から体液を爆発させたものを飛び出させて推進力を得る。一瞬だけだが超スピードに至る。
《複眼》…蜻蛉みたいに大量に目がある。脳みそに直につけられる様にしてあるためクッソ気持ち悪い。360°見れる。

《支配》すればいいじゃないかというクトゥルフプレイヤーがいると思いますが、《支配》を使えば全てがヌルゲー化します。そういう経験ありますよね?《支配》を持っているプレイヤーに全てを破壊された経験が。《支配》があれば話も全然進まないので太陽くんには縛ってもらいます。

太陽くんは命を即座にかけられるタイプの子です。探索者だし仕方ないね。自分の命を優先してたらヒロインを死なせちゃうかもだしね。
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